世間知らずドラゴンの奮闘の旅
前回のあらすじ
異世界からきたケタと交流し、オタク知識を得たエターナルドラゴン。
ワールドンという名前も新たに得ました。ワールドンは、転生体を探す旅へ向かいます。
正直にいって、僕は焦っていた。
港町巡りを行っている間は、勉強しながらも順調だったな。
いや、最初の港町と次とその次ぐらいまでは、めちゃくちゃ大変だった。
最初の港町では、凄く恐れられて「ドラゴンが攻めてきた!」的な扱いだ。いきなり武器を出されると、こっちも焦るよね。
誤解を解いて次の港町に行っても、同じ反応と最初から説明し直しで苦労した。
3番目の港町はそこそこ大きくて、そこで知り合った人に噂話を頼み込んでいる。僕の話を他の港町にも広げて貰ったよ。それ以降は、最初から説明するのを省けるようになったね。
(同じ説明を3回もするのマジ、拷問)
3番目の港町では、暫く滞在するついでに言語を勉強させて貰った。読み書きはまだ出来ないけれど、20近くもの港町を回ったら、会話は問題なくなったよ。
7番目と9番目の港町には入れて貰えなかった。港が一杯で、ドラゴンサイズは入れないって理由なんだ。
(……切ない)
それで、色々とあって人に変化するのを、猫魔族から教えて貰う事になる。これもほんと色々あったから、ケタにあったら詳しく話さないとな。
苦労して人に変化できる様になって、9番目の港町に再チャレンジしたけど、入る前にまた止められたの。
ケタも教えなかったし、猫魔族が指摘してくれなかったのがいけないんだ。
僕は悪くない……はず。
全裸のままで、港町に入ろうとしたら衛兵に止められたよ。
僕は変質者扱いされていて、なんだか皆からの視線がとても痛い。
(……シクシク)
そういえばお風呂以外だと、服を着ているなーとは思っていたんだ。でもお風呂では全裸だから、全裸OKなんだろうと思っていた。
ドラゴン姿の時は誰も全裸を指摘しないのに、人の姿になったら往来で全裸はダメらしい。
(どうりで二度見されるわけだよ!)
だって、服を持って無いから、まず買わないと何も無いのは仕方ないじゃん!
服を買おうとは思っていたんだよ!でもその為に人の姿になると、全裸で変質者扱いって詰んで無い?
とりあえず猫魔族の国に戻りベッドシーツを貰って、それを巻きつけて無理やり港町に入った。
(僕、頑張った。変質者卒業だよ)
11番目の港町では、なんか僕の事を信望し、ついてくる人が現れた。最初は断ったんだけどさ……なんか凄くしつこくて。
面倒だから「もう好きにすれば?」って言ったらついて来ている。
(これが異世界でいう所の、ストーカー女なんだろうか?少し怖い……)
黒髪のショートボブの女性で、瞳の色はパープル。年齢はなんとなく聞いて無い。僕が17歳だって伝えたら「まぁ!年下でしたわ!?」と驚いていたから18歳以上だろう。
まぁこの娘の事は後程でいいや。
北側の港町を8~9割ほど回って「もう大陸で確定だな」と思っていた時に、魂の反応が海側になったんだ。
(やっぱ、探す為のレーダー機が欲しいなぁ)
いけない。現実逃避してしまった。
レーダー機があったら「ケタの魂が移動している」状態だったと思うよ。勝手に動かれると困るんだけど、一体どうなっているんだろ?
将棋で喩えると、七手詰めくらいまで追い込んでから、鬼手を打たれて形勢不明まで戻った感じ。
ちなみに異世界のボードゲーム各種は、ケタと一緒に作って遊んでいたよ。
最終的に、僕が9割9分は勝利するようになったら「こんなオタゴンに勝てないなんて、悔しい」と不貞腐れていた。
ケタは何気にディスり方がエグい。
ま、実は【伝心】でケタの思考を読み続けていたから、基本は負けないのだ。バレて無いから僕は悪くない、ふふん。
一先ず北の別大陸へ、向かう事になったのさ。
「ワールドン様、船の手配が出来ましたわ!」
「うん。僕は飛ぶから、別に船は要らないけど」
「わたくしが追いかける為に必要ですわ!」
やっぱり、ストーカー被害届を出した方がいいんだろうか?
と、言ってもこの世界では、そんなの受理している所ないんだけどね。
この娘の名前はエリーゼという。
ストーカー歴7ヵ月。
なんかどこの港町でも顔が効いて、お金も多く持っている。大手商会の令嬢か貴族令嬢ってところだと思う。いつもフローラルな香りがするし、着ている服もひらひらが多くて、異世界知識のお嬢様ドレスみたいだし。
情報提供してくれたり、色々と工面してくれたりと助かってはいるんだけど……どうしても、トラブルを起こすから困る。
一度振り切ったら、先回りされて延々と愚痴を呪詛のように聞かされた。
そういや、ケタも「地雷女はスルー推奨」って言っていたんだけど、この地雷……ホーミング機能ついているんですけど、どうすればいいですか?
「エリーゼ、僕は先に飛んでいくから」
「お待ちになってください!わたくしも!」
「や、なんか怖いから背中に乗せたくない」
「絶対に絶対に追いついてみせますわ!何を使ってでも、どんな事をしてでも必ず!」
(……ひょっとして、ストーカー専用のスキルとか持ってたりする?)
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そういう訳でエリーゼから逃げるように、僕は一足先に移動を開始した。
北にある大陸へ。
久々の一人旅は、解放感でいっぱいだ。
ずっとエリーゼが至近距離にいたから、少し気が張っていたみたい。船だと1ヵ月はかかるらしいし、久しぶりにのんびり空の旅を満喫する事にした。
空の旅では、古くからの知り合いの白と会ったり、海の幸を食べたりと、のんびりしながら過ごしたよ。
(お、あれだな)
水平線の向こうに陸地が見え始めた。
僕は目的の港町で、しばらく情報収集をする予定。
ま、新しい大陸ではまた恐れられて、説明をし直す流れになったんだけど。
『これで僕の意図は通じる?』
「はい。分かります。エターナルドラゴン様!」
北の新大陸は、使う言語が異なっていて困ったな。また、覚え直しになってしまった……ってか言語統一してくれよ。人族はほんと面倒!
新大陸の最初の港町は、鉄道も通っている比較的大きな町だ。市場などもかなり活気があって、色々と欲しいものがあったのさ。
でも、買い物しようとして困った事に気づいたよ。
新大陸は通貨が異なっていて、文化・生活習慣も異なっていたんだ。「もうこの世界の常識は完璧!」と思い始めていた時に、冷や水ぶっかけられた気分。【伝心】で質問をすると、いちいち恐れられるので、両替できる所を探すのにも苦労したよ。
ちなみに、食事処でトラブルもあった。
前の大陸では前払い制で、この大陸では後払い制だったのさ。払ったつもりになって店を出ようとしたら、食い逃げ扱いされて衛兵を呼ばれそうになって、必死に言い訳したよ。
「ココノ、オネダン、イクラデスカ?」
「外国の人ですか?お上手ですね?」
発音で苦労するのは、もう何度目だろう?
なんだろう。皮肉なのかな?
でも、やたらニコニコしているし、これが「いけず」ってやつだろうか?
(一人旅、不安になってきた。エリーゼ!助けて!)
往来で全裸がNGな事を学習しました。
ストーカーのエリーゼが、仲間に加わりました?
勝手についてきてますが、財布としては優秀です。
次回は「あぁ!女神様?」です。
※色でのキャラ呼称の補足
本作の最高位ドラゴンの7柱は色で呼ばれています。
金、銀、白、黒、赤、緑、青、となります。
特にドラゴン達は敬称も付けずに色で呼び合っているので、唐突に色だけの呼称で出てくる事もあります。
分かりづらくて申し訳ないです。




