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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
悠久のドラゴンは自国を建国する

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閑話:神罰と新たなる国策

前回のあらすじ

ザグエリ王国側としては、ワドがコレクションを返してもらいに来たのが天災に見えています。

ep.「ドラゴンと隣国との亀裂」~ ep.「ドラゴン建国する」までの宰相ベコウ・ストロー視点となります。

「宰相閣下、緊急事態です!すぐに会議が行われますので移動をお願い致します!」


 近衛達が慌ただしく、会議の招集へ働きかけとる。

 私こと、ベコウ・ストローはストロー侯爵家の悲願として宰相まで登りつめた。それと同時にミカド陛下が即位して、私の苦悩の日々が始まった。

 あまりに自分勝手な行動が目に余るが、苦言を呈しても聞く耳を持たへん。強く進言したものは解任される恐怖政治が敷かれとった。


(さっきの大地震と、何か関係があるんやろうな)


 廊下を歩いとると、目を疑う光景が広がっとった。

 王宮の離れは全壊しとる。離宮は跡形も無く、祭殿も瓦礫と化しとった。庭園も全ての地面がめくれ上がり見る影も無い。


(一体なんや!?こら地震やないで!?)


 私は慌てて廊下を駆け抜ける。一刻も早く情報が欲しくて、会議室に飛び込んだ。目の前にはフェグレー将軍がおった。


「……ストロー宰相閣下、その様子ではまだ報告を受けてないのでしょうか?」


 将軍の中でもまともな人や。

 私や彼はまともな意見を出す故に、陛下から煙たがられとる。当然、入ってくる情報は遅く、事後報告なんは日常茶飯事やった。


「フェグレー将軍!何があった!?言葉は崩してくれてかまへん!はよ情報が欲しい!」

「先ほどの大きな音と振動は地震やない。エターナルドラゴンが攻めてきたんや」

「なんやて!?聞いてへんぞ!」


 元々、私は反対やったんや。エターナルドラゴンの住処から財宝を盗むやなんて。でも相談も無く陛下は決行してしもうた。

 エターナルドラゴンはここ数年は確かに不在や。

 それにこれまでは住処からマナ鉱石を奪っても何も言わんし、仕返しもせえへんかった。

 力を持つドラゴンに間違いは無いが、上層部の中では戦闘力はほぼ持たへん、温厚なドラゴン言うんが主流派の意見や。

 それでもマナ鉱石と財宝では価値が全然違う。

 私は危険性を陛下に訴えたが、逆にこの件の情報から締め出される結果になってもうた。


「秘宝を取り返しにきたんか!?そんですぐに返したんか?」

「それが……今から陛下が交渉しはると……私も締め出されとる口なんで、人伝の噂ですわ」

「交渉やて!?」


 相手は御伽噺の存在やぞ!?さっさと返して誠心誠意謝るしかないやろ!?なに考えてんのや陛下は!?

 【悠久の宝玉】はとんでもない秘宝や。

 それを手に入れる言うんは、国にとって大きいから黙認しとった。

 その秘宝は目に見える範囲のものに、自在に力を与える事が出来る。肉体の疲労を完全に消し去り、精神疲労や睡眠も1/4で済む。毎日使っても力が継続するといった規格外の品物や。

 その力を陛下は労働力に使おうとしてはった。

 確かに労働者を毎日酷使する事はできる。やけど、確実に反発があるはずや。陛下が思い描いとった1日22時間労働体制は、人の生活やない。いくら疲労をせんくてもそんな生活は誰もしたがらんわ。せいぜい少し残業させて、疲労をとってやるくらいが関の山やろ。


(あの秘宝は、軍事運用でこそ真価を発揮する)


 行軍や戦闘で疲弊せず、野営の時間も短縮できる。

 精神負担も回復してくれる。戦場で殺し合いをした兵士達の精神面が支えられるんは、士気の保ち易さが全然違うやろ。肉体・精神問わず疲労ゆうんは士気を下げるからな。


(必ず、カービル帝国への切り札になる)


 せやけど、エターナルドラゴンが許してくれる場合の話や。戦う力はあまりない言われとったエターナルドラゴンが本気だして、王宮はこの惨状や。とても争う事なんかできん。


「すぐ止めにいかな……ってなんや!?」


 いきなり頭の中に声が響く。


『僕は光の一柱のワールドン。この国の王様が僕に不敬を働いた。30分以内に謝罪に来なければ、今度は癒やしを行なわずに王都を崩壊させる。この国の民よ、恭順を示せ』


 なんやこれは?急ぎフェグレー将軍を見やったが、彼もしらんようで首を振っていた。そこに、扉を開けて入って来た人物が、語り始める。


「宰相閣下、フェグレー将軍、このワールドン言うんわ例のエターナルドラゴンさんや」

「……トカプリコ将軍。それホンマか?」


 トカプリコ将軍は鷹揚に頷いた。この男は陛下の腰巾着で好かん。だがこの場で最も多くの情報を持つのは確かや。


「陛下に秘宝を返すように進言したか?」

「まさか!あの秘宝を手放すなど有り得まへんわ。王都の市街地を修繕させようと、交渉する事を進言しとりますわ」


 その言葉に私は目を丸くした。市街地を修繕やて?


「どういうことや!?市街地にも被害が出とるんか?王宮の修繕も交渉して、市街地もなんて欲張りすぎとちゃうか!」

「いえいえ、王宮の修繕は交渉してまへん。市街地を修繕せんのならクーデターになるやも知れんで?」


(クーデター!?なにが起きてんのや!)


 フェグレー将軍が市街地の事を尋ねた。


「……市街地の被害状況を教えて下さい」

「フェグレー将軍、あんた知らんのか?」

「ええ、私の所には情報がきませんから……」


 フェグレー将軍が苦い顔してはる。その情報を握り潰しとる張本人に聞かんと、何もわからんのは悔しいやろうな。


「実は市街地は7割が全壊しとってな、残りも半壊でとても生活できる状況やないんですわ」


 私とフェグレー将軍は言葉を失った。さらにトカプリコ将軍は話を続ける。


「だけど、あのお優しいワールドンいうドラゴンは、民を全員癒やしてしまってな、あぁ……そういや老人は軒並み死んだみたいやな。若い血気盛んな連中はピンピンしとる。だから何も市街地にせえへんかったら最悪クーデターちゅうわけや」


 言葉が耳には入ってくるんやけど、心に入っていかへん。完全にパニックやったわ。市街地の調査に人を出して情報を待つ。

 すると陛下がお戻りになりはった。


「トカプリコ将軍、貴殿の言った通りあの馬鹿ドラゴンは秘宝を諦めて帰ったわ。補償はさせられんかったけどな」

「陛下、秘宝を使って民を復興に従事させたれば宜しいかと……」

「せやな、そう手配してくれるか?」


 陛下とトカプリコ将軍のやり取りを聞いて、血の気が引いた。唇も乾ききっとって声も出せへん。

 今までの苦悩なんか比較にもならん。暗黒の日々の幕開けやった。

 数日後、被害状況の大凡が判明し頭を抱える。

 死者7000人超えやと……それに治癒されて命を取りとめたんは、王都におったほぼ国民全員や。活かすも殺すも神様の気分次第ちゅうわけか。

 今日はこの情報をもとに、今後の事を決める御前会議や。なんとしても、陛下に秘宝の返却をしてもらわな国が滅ぶ。私は宰相の地位と引き換えにでも、押し通す覚悟やった。

 御前会議には陛下を始めとして、国の重鎮が勢揃いしとる。


「この度は、あのドラゴンの事についての話や、それでな……」

「陛下!どうか秘宝を返却し謝罪をする事をご検討下さい!」


 陛下の発言を遮るやなんて不敬極まりないが、なりふり構ってられん。陛下が発言してまう前に、話の流れを少しでもこっちに寄せたかってん。一瞬、不愉快そうな顔をした陛下が満面の笑顔で再び口を開く。


「ドラゴンの処遇は既に決めてんのや。それを発表するから黙って聞いとけ。あとストロー宰相は半年の謹慎が今決定したからな。代行は特に要らん。トカプリコ、補佐してくれや」

「御意……」


 陛下に一礼するトカプリコ将軍は、陛下から見えん角度で黒い笑みを浮かべとった。

 それから陛下が読み上げた決定事項は悪夢やった。


─────────────────────

・王都崩壊して死者7000人が出た事の発表。

・王都再建特別税を新たに施行する決定。

・娯楽関連の税を3倍に引き上げる決定。

・ドラゴンを悪人に仕立てる世論操作の実施。

・ワールドンというドラゴンを国際指名手配。

・ワールドンを匿ったり協力したものは死罪。

・トカプリコ将軍の元帥への昇進。

・フェグレー将軍をドラゴン討伐隊に任命。

・ストロー宰相の半年間の謹慎。

─────────────────────


 終わった……神様に逆らってどないするんや。御前会議が終わっても、私はその場から動けんかった。


「ストロー宰相閣下……謹慎で気落ちしている所に申し訳ないんやけど、私の計画に協力してくれまへんか?」

「フェグレー将軍……」


 フェグレー将軍から、計画を持ちかけられる。

 その内容はかなり危険なものやった。せやけど私はそれに飛びつく。


「やるわ!やらせてくれフェグレー将軍」

「おおきに……この国の民を守るため、一緒にきばりましょう」


 フェグレー将軍はドラゴン討伐指揮官として、可能な限り討伐任務を遅らせる計画や。仮に出発しても相対しないように行軍する話や。

 バレたら極刑もんやが、それでもやらな国が滅ぶ。

 その間に私はワールドン様になんとかして接触し、謝罪して御慈悲を頂く役目や。謹慎で公務につかんくてええのを、この際利用させて貰うわ。

 なるべく被害を少なくするんわ、私らの使命や。


(……命懸けでやらなあかん!)


 国を抜け出す準備をしている時に、市井の噂話を聞いた。


「聞いたか?バンナ村の連中は悪逆非道のワールドンゆうんを匿っとったらしいで」

「なんでも像まで作って信仰しとるとか」

「もし、新しい元帥にバレたらバンナも終わりやな」


 救ってやりたい。やけど、今の私は力が無い。

 トカプリコ元帥にいいようにやられるだけや。バレんように祈るしかできん事が歯痒かった。

 通り抜けようとしたら、唐突に頭ん中に声と映像が浮かんだ。



『この世界に生きる全てのものに伝える。僕の名はワールドン。光の一柱である。神の名の下に、ワールドン王国の建国を表明する。僕の領土や民に手を出すものには天罰を降す。……心に刻め』


 その神託のおかげで、どこに居るか分かった。

 アモーク辺境伯の領地のフウカナット村や。



 私は急いで村へ向かう事にした。



神像を作った事で、バンナ村はリスクを抱える事になりました。


次回はエリーゼ視点の「閑話:独占ライブのベストショット」です。

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エターナルドラゴンが攻めてきた。凄いパワーワードww 頑張れストロー! いやいや、ミカドさん想像以上に凄い人だな。 ストローさんと国の行方は気になるな(*´ω`*)
うわ~、まともな人がクビになった! この国はもうダメだぁ~! 普通なら出奔しそうだけど、まだ頑張るんだな、この人。
ザグエリ王国にもまともな人が居た〜!(´つヮ⊂)ウオォwww ミカドは暗君ですけども、ストロー宰相頑張ってーー! の気持ちでずっとドキドキしながら読んでしまいました。 でもこれ、内部を客観視できる人の…
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