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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
悠久のドラゴンは自国を建国する

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国を作っちゃう?

前回のあらすじ

ザグエリ王国との決裂とリベラの出産を経て、ザグエリ王国から国際指名手配にされたワド。

今後の身の振り方を相談する事になりました。

 僕らは、今後の方針を検討していた。


「ルマンド君の所に迷惑かけるのもヤだし、モンアード君の所に迷惑かけるのもヤだな」

「でも、ワールドン様。このままザグエリ王国領に留まるのは危険ですよね?」


 アルの指摘は最もだ。だからと言って、知人を安易に頼るのは憚られた。

 僕は、突っ伏していた状態からゴロンと向きを変えて、体を起こす。そして姿勢を正してからルクルに問いかけた。

 静かに「ルクル、どうすればいいと思う?」って。

 はぐらかされるのが嫌で、ジッとルクルの瞳を見つめ続ける。

 僕の真剣さを感じ取ったのか、ルクルはお酒の状態確認を中断し僕に向き直った。


「ワド自身がどうしたいか言葉で説明出来るー?」

「知人に迷惑掛けたくないし、ザグエリ王国みたいな面倒事にも関わりたくない。でも、バンナ村のように人と関わって行きたい」


 僕は、僕の気持ちを正直に吐露した。矛盾する望みを口にしている自覚はある。でも、僕は真剣だった。


「……そんなの無理ですにゃ」

「確かに……色々と矛盾してますね」


 いつの間にか起きたカルカンが、ポツリと呟く。

 アルも、僕の望みの矛盾に気付いている。


「気合いで全力なら大丈夫ですわ!ワールドン様にはわたくしと、もう一人のわたくしがついてますわ!」


 エリーゼは、根拠の無い応援をしてくれる。

 従者3人組は、無言で成り行きを見守っていた。

 僕は皆の顔を一通り見回した後に、再びルクルを正面に見据えた。

 少しの沈黙の後、ルクルは静かに語りだす。


「方法は1つだけあるよ」


 僕は目を見開き驚いた。てっきり我儘を言うなと、窘めてくると思っていたんだ。

 僕は方法を知りたくて、神妙な面持ちで「その1つだけって方法は?」と尋ねる。


 ルクルは木箱に腰掛けて、太腿の上に肘を乗せて口の前で手を組んだ。あの司令のモノマネを再現している。

 少し溜めてルクルは口を開く。


「ワールドン王国を作れば、全ての条件を満たせる」


 とんでも発言に、堰を切った様に皆が喰い付いた。


「ルクル!素晴らしい案ですわ!流石はわたくしと、もう一人のわたくしのブレーンですわ!それしかありませんわ!」

「姉上!国を作るとは、簡単ではありませんよ!」

「アリだと思うにゃ。ワールドン様は神様ですにゃ、国くらい作れて当然にゃ」


 エリーゼがカルカンに続いて、力強く断言した。


「カルカンも分かってますわ!そうですわ!女神で在らせられるワールドン様に不可能はありませんわ!」

「ですが、カルカン!姉上!」


 常識担当のアル以外は乗り気なようだ。僕は国を作る大変さが、良くわかって無い。だから素直に聞いてみたよ。


「ねぇアル。僕は国を作る大変さを知らないんだけど、どういった問題があるのかな?ルクルも国のメリット・デメリットを教えてくれる?」


 アルから領土問題、各国政府との外交問題、住民の問題などを告げられた。国庫が無い事もどうするのかを問われたよ。

 ルクルが問題について回答する形で、アルとの問答が始まった。


「これはワドがさー、神様だから使える案でもあるんだよー」

「と、言いますと?」

「各国の領土は、人の都合で引かれてる線引でしょー?住民を納得させて、神の名の下に接収してしまおうよー」


 アルの問いに、ルクルは接収すると回答した。

 するとアルはやたらと興奮して、強めの否定をし始める。


「住民も、そこの国家も納得しませんよ!」

「エリーゼ様の暴走……じゃなくて努力でー、ワドの布教が行き届いてる地域も多いよー。利益さえもたらせれば不可能では無いねー」


 アルの強い口調にも動揺せずに、ルクルは普段通りの言葉を返していく。


「利益とは!?国が納得する利益なんて、無理ですよ!?」

「国と考えるから、大袈裟になるのさー」


 ルクルは、バンナ村の例をあげて説明し始めた。


「国から価値が低く見られてる土地を、マナ鉱石を納めるなどを対価に手に入れるのー。規模は小さくて構わない、それこそ村でOKー」

「価値が低い土地では、対価に見合わないのでは?手に入れた後はどうするのです?」


 ルクルは、村の規模で良いと説明している。

 アルがそれに質問する形で、話が進んでいく。


「マナ鉱石は、ワドがいれば無限に手に入るしー。村の生活改善を行って土地の価値を上げればいい。それこそバンナ村で実践したようにねー」

「国防は!?ザグエリ王国に対抗出来ませんよ!?」


 アルが激昂しているから、これは常識から外れた意見なんだろうなと思った。


「あのさー、アル……ザグエリ王国が全軍をあげて攻めて来たとしてもさー、ワドをどうこう出来ると思うの?本当に思ってる?」


 言葉に詰まったアルへ、「無理だよねー?」と被せて畳みかけるルクル。

 確かに僕は強い。

 ザグエリ王国の王都を半壊させたのだって、咆哮を1/10以下に抑えた結果だ。あれの100倍でも1000倍でも、1日掛からず殲滅可能だよ。

 でも、進んでやりたくは無いよ?


「ルクル、出来れば僕は戦いたくないんだけど?戦争は回避出来ないの?」

「ワールドン様、大丈夫です。戦争にはなりません」

「え!?そうなの?国防を気にしてたの君だよね?」


 国防とか戦争とかヤだな……って思って発言した。

 そしたら、それを主張していたアルから、戦争にならないって言われて、困惑したよ。


「ワールドン様の存在が抑止力になります。蟻がどれだけ集まってもドラゴンには敵いません。私も指摘されるまで、先入観や固定観念に捕われていました」


 どうやら、アルは納得したみたいだ。

 僕はまだ不安がある。ルクルに改めて、メリット・デメリットを問い質した。


「ねぇルクル。デメリットは無いの?そのデメリットに見合うメリットはあるの?」

「デメリットはそりゃーあるよー」


 僕は「どんなん!?」と、グイグイ詰め寄った。

 デメリットをちゃんと教えてよ!説明不足だよ!


「色々な課題や問題を、俺らだけで解決してかなきゃだしー、規模を小さくしてるだけで、アルの指摘は問題点としては残ってるしねー」

「それって大変じゃないの?」

「大変だけどさー、色んな柵に縛られずに、村の人達を助けて楽しくやってきたいでしょー?」


 ルクルは人を助けて楽しくやっていくと語る。

 バンナ村みたいな生活を思い浮かべて、心が温かくなったよ。


「う、うん。僕、そういうのがいいよ」

「だからそれがメリットさー。他には変えられないメリット。自分の国なら飲酒の年齢も思うままだしー、酒税もゼロにも出来るよー?」

「ルクル氏!酒税ゼロは素晴らしいにゃ!なんて頭がいいのにゃ!最高なのにゃ!」


 お酒の話に、カルカンが喰い付いた。

 お酒が自由に出来るのは確かにいいね。


「お酒に限らないよー。ワドがやりたがってた、冒険者や、ギルドだって作れるしー、学園生活もやってみたいんだっけ?それも出来るよー?」

「え!?それってマ!?」


 僕はグイグイ顔を近づけながら確認したけど、ルクルには鬱陶しそうに押し返された。ぐぬぅ。


「マジマジ。まー、やる事いっぱいだろうからすぐには無理だろうけどー、目標にするのはいいよねー?」

「確かに!夢が広がるよ!」

「あ、ついでに魔法の研究機関もお願いしたいかなー?なんて……」


 僕らは全員でルクルをジト目で見た。すると目を泳がせながら「冗談だよー?」と逃げていた。

 この厨二病は、まだ魔法を諦めて無かったみたい。

 それは置いといて、1から国を作るという途方も無い夢が、夢物語では無い事を示されて、僕らはやる気になっていた。

 魔法は夢物語だけどね。

 既に話題は、どこに国を構えるかにシフトしている。


「ザグエリ王国とカービル帝国の国境沿いは、貧しい村が多く狙い目かも知れませんね。紛争の抑止力にもなれますし」

「でもさー、今時点の情報だけで国を構える場所を決めちゃうのは、先走りすぎじゃないかなー?」


(アルの提案は、凄く有難いんだけど……)


 目の前に広げられた少し古くて痛んだ世界地図。

 それを見ながら、人の世は分からない事だらけだと思い返していた。

 他に知らない国や地域が多いから、どこが良さそうかの判断がまだできない。

 僕もルクルに賛同した。


「確かに。僕も他の地域を良く知らないよ」

「ワールドン様が世界征服すれば問題は解決ですわ!わたくし早速説得に向かいますわ!全力ですわ!」

「待った!エリーゼ様!リゼに怒られるよー!」


 エリーゼが暴走して走り去ろうとしたのを、ルクルがぶら下がって全力で止めた。


(ナイスブロック!)


「危なかったですわ!止めてくれて感謝しますわ!ルクルは恩人ですわ!」

「お酒があればどこでもいいにゃ」


 カルカンがどうでも良さそうにしているから、僕がお酒の話題を投下したよ。

 カルカンが眺めていた熟成樽を見ながら、一緒に考えるように促していく。


「カルカン、気候や気温によって、造り易い酒や、造り難い酒があるから、ちゃんと考えようね?」

「なんでそんな大切な事を先に言わないのにゃ!土地はどこにするか重要にゃ!皆ふざけてないで真剣に検討するにゃ!」


 そこからのカルカンのやる気が凄かったね。

 相談に相談を重ねて、深夜に差し掛かると、ひとまず方針が決まった。


「やっぱりさー、不動産物件は下見しないとねー」


 ルクルの提案に乗っかって、僕らは下見の旅に出る事にしたのだった。行ったことの無い国に行くのが、今から楽しみだよ。

 外は小雨が降り始めたのだろうか?

 ほんのり雨の匂いがしている。それも気にしないで話は盛り上がった。

 皆でワイワイと、地図を見ながら希望を語り合う。


「お酒が特産に出来る所が良いですにゃ」

「俺も麦の畑が欲しいなー。あと水田も確保したい。日本酒も造りたいしー」

「僕は温泉!温泉は譲れないよ!」

「なら、わたくしも温泉がいいですわ!」

「マナ鉱石を量産する為に、鉱山ある所が良いのでは?あとは畜産関連でしょうか?」



 僕らは夜明けまで回るルートと、譲れない物件情報について語り明かしていた。

やっと国作りの話題に入りました。

ここまで長かった……。(ホロリ)

カルカンのやる気ゲージは、お酒を投入すると即満タンになりますw


次回は「物件巡り前夜」です。

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金銭面はワドのマナ石があるからなんとかなりそう。 酒造りから生まれる村なら、一度やってるからうまくいきそう。 皆でワチャワチャに戻ったようで何より展開です(*´∀`*) あとは、指名手配をどうにかし…
国は何より管理するのが大変だと思うがねえ。 いや、ルクルは気づいている、というか知っているか。
ほへー、目標が国づくりにシフトしてくんですねー。 こういうのって、現実だと話して目標立ててる時が1番たのしいですよね(*´˘`*)エヘヘ やっぱりルクルはブレインだー! な回でもありましたね。ワールド…
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