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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
失った物と新たな贈り物

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第1回ボードゲーム大会決着

前回のあらすじ

ボードゲーム対戦でワドはやや劣勢です。

ルクルとリゼが手を組んでいる疑惑の中、どうにか逆転を目指します。

 5回勝負のコムトの結果はこうだ。


─────────────────────

 僕:1回。

 ルクル:2回。

 リゼ:1回。

 アル:1回。

 カルカン:0回。(5回最下位)

─────────────────────


 コムトは各自にカードが配られ、場には列となるカードを並べる。各ターンはカードを全員で同時に出し、数が少ない順に処理をする。それを手札が尽きるまで繰り返す。

 列よりも数字が少なく、もっとも近い数字の後ろに出したカードを並べていく。列が6枚になったらその列のカードをプレイヤーが引き取る。出したカードがどの列よりも少ない場合も引き取らなければならない。


 うん。カルカンが場を荒らしていた。毎回66頭の牛をドナドナしていったよ。なんか不完全燃焼。

 とにかくカルカンは損切りをできない。これに尽きる。そしてカルカンはリーチ列があるのに果敢に攻める。引き取る列にはいつも大量の牛がいる。

 結果として、カルカンが常に自爆して大量の牛をドナドナしていく。と、いう訳で僕らはカルカンが自滅するまでの消耗戦だ。たまたま終了時点の差が出るだけで、読みや駆け引きをした感じがしない。

 荒らしと不完全燃焼な理由はそんなとこ。


「カルカン君さー、なんでさっき損切りしなかったのさー?」

「むむ?自分から牛さんを引き取りに行くなんて出来ないにゃ!ルクル氏はそう言って騙そうとしてるにゃ!騙されないにゃ!」

「カルカン。僕もさっきのは損切りした方が良かったと思うよ?常にカルカンが爆速で自滅するから楽しくないし」


 ヒートアップしたカルカンが、濡れ衣をかけてきた。


「自滅じゃないのにゃ!運がたまたま悪かっただけなのにゃ!寧ろワールドン様がイカサマしてたんじゃないのにゃ?」

「僕、してないし。仮にしてても、勝手に自滅するカルカンまで面倒見切れないし?」

「これは運なのにゃ!たまたま牛さんに好かれてしまったのにゃ!」


 カルカンはあくまでも運が悪いと、激しく主張し、肩で息をしているよ。


「ぜー、ぜー、うぷ……酔いが回るにゃ……」

「良かったわね。酒の肴は牛のBBQ食べ放題じゃないの?大量ですの」

「リゼ氏?喧嘩売ってるのにゃ?絵の牛さんは食べられないのにゃ!」

「そうだ、カルカン。ボンに頼んで牛の代わりに猫魔族の女性版を作って貰いましょう。いつもハーレムに出来ますよ?」

「おう!アル氏!やんのかコラーなのにゃ!表でるのにゃ!猫魔族の女性に失礼なのにゃ!あ、でもボンさんに妹の似顔絵描いて欲しいにゃ」


 カルカン以外は運ゲーだったとはいえ、ルクルに2回もトップを先行されているのは屈辱だよ。


(これじゃ、僕がドヤ顔できないじゃん!)


 夜も遅いので勝負は明日に持ち越しになり、皆は眠りについた。起きているのは徹夜作業のボンと僕だけ。

 既に罰ゲームは圏外だね。イカサマさえしなけりゃモウマンタイさ。僕は明日のゲームの対策を練っていた。必ず勝って渾身のドヤ顔を決める。そう決意していた。


 夜が明ける。今日は最終決戦の場だ。


 今日はリゼからエリーゼに選手交代だ。ルクルとの連携もこれで崩れるだろう。エリーゼが僕以外にアシストするなんて考えられないし、直感でしか動かないから駆け引きも皆無だしね。今日こそ勝たせて貰うよ!


 本日の1戦目はクラソク。


 ボンの絵の才能はヤバい。凄いクオリティだよ。彫りの深い顔もきっちり再現。

 ルクルもフレーバーテキストまで全部憶えているのは、強烈な思入れを感じるね。僕もドラゴンとして、ちょっと思入れがある。

 ざっくりルールを説明すると、ドラゴンの住処へ探索に入ってお宝を盗んでくるんだ。なんて傍迷惑なゲームなんだろ?ドラゴンが困るとか考えないの?自分がやられたらどう思うか考えてよ。相手へのリスペクトは大事なのよ?


(ん?なんかこの設定は最近デジャヴが……)


 探索にはカードを組み合わせてデッキを作るのね。

 カードはマーケットで購入してデッキを改良していく感じ。お宝を回収して生還するゲーム。

 物音を立てるとクラソクキューブが貯まる。キューブは麻袋から手探りで取り出す。不正防止の為に、村長に協力して貰ったよ。

 マーケットにドラゴンカードが出ると、ブレスが来るんだ。黒マナで染まったキューブはハズレ。自分のマナ色が出たらダメージを受ける。ルクルが赤、エリーゼが白、アルが青、カルカンは緑を選んでいた。

 僕?僕は当然だけど金だよ!(ドヤァ)


 それにしてもこのドラゴンは好戦的だね。温厚な僕とは大違いだよ。モデルは赤かな?赤って短気だし。

 クラソクは、プレイしないと楽しさが伝わらないかもね。結構ハラハラドキドキするんだ。そんな訳で、今までで一番ロールプレイが盛り上がった。


ーーークラソクのプレイVTRーーー

「盗った僕は悪くない。そこに置いてあるのが悪いんだ」

「ワドー、それ最近のお前の住処でブーメラン戻ってきてないかー?」

「ハッ!?クラソクって僕のコレクションを盗むゲームだったのか!?ぐぬぅ。異世界人のボドゲクリエイターめ。ぐぬぬぬ」


「押し入った僕は悪くない。そこらへんのトラップがヘボいのが悪いんだ」

「ワールドン様の住処にトラップはありませんでしたね」

「ハッ!?極悪な罠を仕掛ければ良かったか。罠を開発して、コンボ決めてポイント貯めて……」


「ワールドン様、出来ないこと妄想するのやめるにゃ!それじゃルクル氏なのにゃ!」

「ハッ!?危ない。危うく厨二病になるとこだったわ。助かったよカルカン」

「ワドー、カルカン君、後でたっぷり話そうかー?(にっこり)」

((ガクブルガクブル……!))


「まだいけますわ!気合いですわ!」

「エリーゼ様、そろそろ引き返したらー?」

「まだイケるのにゃ!エリーゼ様に続けなのにゃ!」

(あ、カルカンが踏み込んだ。そろそろ引き上げ時ですね)

((撤収撤収!))


「ワールドン様、息しないで欲しいのにゃ!気を付けるのにゃ!」

「このブレスは僕じゃないし!僕、悪くない!」

「エリーゼ様も足音がうるさいのにゃ!いつもドドドドドドドド騒音なのにゃ!」

「ルクル!獣は他国の貴族に入りますか!?入らないなら、わたくし……(あの世に)……持って行きますわ!」

「そんなバナナはおやつに~みたいな事いわれてもー?それに空白部分が凄く不穏だけどー?カルカン君は逃げて?いやマジ」

(全く、姉上は本当にうるさいですね)

「持ってくのは2つに追加ですわ!」

((ガクブルガクブル……!))

ーーークラソクのプレイENDーーー



 10回勝負のトップ結果はこうだ。


─────────────────────

 僕:2回。

 ルクル:2回。

 エリーゼ:2回。

 アル:4回。

 カルカン:0回。(10回最下位)

─────────────────────


 堅実なアルが、頭1つ抜けた戦績で終了。


 エリーゼとカルカンは、ハイリスク・ハイリターンに振り切っている。エリーゼは機動力特化のデッキ構成。カルカンは戦闘力特化だ。

 明確な差は、圧倒的なリアルラックの差。

 エリーゼは超絶なハイリスクを、リアルラックのみで乗り切ったよ。1度も白マナのキューブが引かれなかった。ちゃんと麻袋に、白マナのキューブが入っているか、何度も確認したさ。不正は無かった。恐るべしリアルラック。

 カルカンは足が遅くて、いつもドラゴンの餌食だった。僕に許しを請われても、困るんだけどなぁ?

 僕はマーケットの運に恵まれなかったけど、何とか2回はトップ取れた。僕らが限界ギリギリの所でやっていると、エリーゼ&カルカン組が音を立てて、予定外の事態になる感じ。

 いつもリスクを避けて、しょっぱい報酬で切り上げていたアルが、漁夫の利を得ていたね。


 そして、最終戦アグリコヲ。ここで逆転しなきゃ。

 現在の総合トップ回数はこうだ。


─────────────────────

 僕:8回。

 ルクル:10回。

 エリーゼ:6回。

 アル:6回。

 カルカン:0回。(30回最下位)

─────────────────────


 残り時間的に4回プレイとなったよ。

 ところが、ここでカルカンから待ったがかかる。


「これじゃ逆転トップが狙えないにゃ!最終戦は1回のトップで3回分にするにゃ!そうじゃなきゃ、これまでのはノーカンにゃ!」

「それじゃ、これまでが意味ないでしょー」

「僕、ワガママは良くないと思う」

「私はカルカンの意見に賛成です。逆転の目が無いとやる気がでませんし」

「わたくしはどんな状況でも全力ですわ!」


 最終の総合トップ回数はこうなった。


─────────────────────

 僕:11回。(実質9回)

 ルクル:13回。(実質11回)

 エリーゼ:9回。(実質7回)

 アル:9回。(実質7回)

 カルカン:0回。(34回最下位)

─────────────────────


 僕はいつかリベンジすると、心に誓った。


 こうして第1回ボドゲ会は、ルクルの優勝で幕を閉じた。僕らは対戦を終えて、夜の宴会に参加したよ。

 カルカンが死んだような目……ってかレイプ目をしている。見事に全最下位だった。

 あのカルカンが酒も飲まずに黄昏ているので、目の前にそっとお酒のジョッキを置いてやった。

 すると脊髄反射で飲んでいる。ぶれないなぁ。


「じゃあー、1位の俺からのお願いは明日発表するからねー」

「さすがに今のカルカンは可哀想ですしね」

「…………にゃ……」

「僕もそれでいいんだけどさ……だけど、広場にあるアレはなんなの!?」



 広場には、僕の神像が出来上がっていた。



 従者ボンが「いやぁ~、急ぎだったんで大変でしたが、お嬢の為にあっし頑張りやした」と良い笑顔で言っていた。神像作成が無ければ、ボドゲ作成は初日で終わったらしい。

 エリーゼが無理を言ったのだろうし、神像が出来たのは仕方ないよ。出来ちゃった訳だしさ。

 でもさ、ボンには一言文句を言いたい。



(なんで人の形態の全裸なのさ!?)



 問い詰めたら「神像とは基本全裸ですわ!」ってエリーゼに返されたよ。

早速、ワドの後悔がやってきましたw

でも、光ガードでモデルの見れない部分を、ボンが想像できず作れなかったので、腕や手で隠すヴィーナスの誕生のポーズです。

…なので、ギリギリセーフ?


次回は「誕生節のお祝い」です。


※色でのキャラ呼称の補足

本作の最高位ドラゴンの7柱は色で呼ばれています。

金、銀、白、黒、赤、緑、青、となります。

特にドラゴン達は敬称も付けずに色で呼び合っているので、唐突に色だけの呼称で出てくる事もあります。

分かりづらくて申し訳ないです。

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ずっと知らんゲームの話なのでなんかわちゃわちゃ楽しそうにしてるなーくらいは前話でも思いましたが、正直……2話連続コレだとルールがわかんないのでなんとも言えん回でした……(うう、ごめんなさい……m(>_…
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