ボードゲーム作成
前回のあらすじ
村の改善の一環として、娯楽としてボードゲームを作る事になりました。
イカサマを封じられたワドは、真剣勝負に挑みます。
お酒の改善の為に頑張ったな。
痩せた土地を回復させ、醸造も回転率をあげた。
今朝の食事を終え、ボドゲの進捗を見にいったよ。
「あっしに任せといてくだせぇ。お昼過ぎには頼まれてたのは完成しやすぜ、旦那」
そう言って従者のボンはポーズ(フロントダブルバイセップス)を決めた。
なんかボンは、やたらルクルになついている。お前の主人は一体誰なんだ?って言いたくなるよ。旦那呼びだしさ。両方のエリーゼを抑え込めるルクルを、心から尊敬しているみたい。
優勝の褒美と罰ゲームの話をしたら、カルカンとリゼがめちゃくちゃやる気出していた。
「トランプは相性が合ってなかったのにゃ!戦略的なボードゲームは貰ったのにゃ!」
「うふふ……ルクル約束守ってくれて、ありがとう。絶対にリゼはご褒美を手にいれるの」
カルカン、君の勝率は…………だけど、相変わらず根拠のない自信は凄いね。
リゼのご褒美への執念は何か怖い。
(な、なんか悪寒が……風邪かな?)
僕は一度もひいた事のない風邪の心配をしながら、リベラさんの身の回りを手伝ってあげた。
「悪いねぇ、お客様にこんなんしてもろて」
「……いいの。僕がしたいからやってるよ」
水汲みを手伝って水を運んだり、薪を運んだりと、お昼までリベラさんの手伝いに勤しんだ。
妊婦さんには、水汲みも重労働だからね。
(これで許されるとは思わないけど、元気な子を産んで欲しいな)
お昼を食べ終わったら、今日はボドゲ大会だ。
お昼には、僕らがお手伝いしたレーズンパンと、シチューが並んでいた。
普段より少しおいしく感じたよ。
とはいえ、僕は薪や水をマナ力場で運んだだけなんだけどさ。それでも、普段より美味しい。
ボンの所を再び訪ねると、ボドゲが幾つかできていた。ほんとに見た目にそぐわず手先が器用なんだな。
それで現時点で出来たのは次のゲームだ。
─────────────────────
・カタソ。
・カルカンソヌ。
・コムト。
・アグリコヲ。(作成中)
・クラソク。(作成中)
─────────────────────
まだ作り終わって無いのもあるけど、一日で作ったってのは本当に凄いね。徹夜で作成を依頼するルクルは、安定の鬼畜仕様だ。
「さて、どれからやるー?」
「私の名前に似てるカルカンソヌからやりたいにゃ!なんか勝てる気がするのにゃ!」
まずはカルカンソヌから始める事になった。
タイルの絵柄を繋げていくゲームだ。たった一回の【伝心】で絵柄を完全に再現した匠の技に驚く。しかも絵が綺麗に繋がっているよ。意外な才能過ぎる。
ボンは従者辞めて、職人やった方が良いと思う。
ミープルの再現度も完璧だよ。それを褒めたら「あっしの趣味が役にたってよかったっす」って言っていたけど、完全に趣味のレベル超えているからね?
(なんならボドゲ職人に転職しない?)
このゲームは、ミープルという駒を城・道・草原においていくんだ。得点がそれぞれ違う。草原に駒を置く時は寝かせて置くんだよ。高得点のロマンがある。「果報は寝て待て」的な感じかな?
各自のターンでタイルを1枚めくって、絵を繋げるように置いていく単純なゲームだ。でも結構性格が出るね。アルは手堅く、カルカンはロマン狙いだ。
狡猾で戦略的なルクルと、勝ちに異常な執念をみせるリゼは強敵だった。
なんか違和感。
(ねぇ……二人って手を組んでたりしない?)
カルカンが後半にベソかくのは、平常運転。
10回ほど遊んでみた。トップ結果はこうだ。
─────────────────────
僕:3回。
ルクル:3回。
リゼ:3回。
アル:1回。
カルカン:0回。(10回最下位)
─────────────────────
アルがトップになった時なんか、明らかにルクルとリゼが僕のトップ目を妨害しにきていた。
なんか怪しい。
でもあの黒い笑顔を見ると、昨日の和ホラーを思い出して【伝心】はどうしても躊躇してしまう。
「カルカン君は寝すぎー!」
「カルカン、寝てばかりでは勝てませんの」
「ロマン狙いは程々にした方が良いですよ?」
「僕も、もう少し起きた方がいいと思うよ?」
「んにゃーーー!」
カルカンはロマン狙いで、草原で寝まくっていた。そして、どれも完成せず毎回最下位だ。「今回はタイル運が悪かっただけにゃ」と全て寝たのは、なんのネタなのかと思ったぐらいだよ。
速攻で寝すぎて、すぐに手持ちのミープルが尽きていたし、考え無しすぎるよカルカン。
「カルカンソヌは相性が悪いのにゃ!こんなゲームじゃ内なる潜在能力が発動しないのにゃ!次にゃ!次で挽回するのにゃー!」
(カルカン君に悪いけど負けないねー、これは負ける方が難しいよー)
(リゼは勝つの。ワドのご褒美は絶対に逃せないの。カルカン勝手に沈んでなさいな)
(フッ……下には下がいますね)
(僕、本当にカルカンが友達で良かった……絶対に罰ゲームは回避できそうだよ)
カルカンソヌは猫が終始寝て……終わった。
次はカタソだ。カタソは土地を確保して、拡大再生産するタイプのゲームだ。六角形のタイルを組み合わせると、寸分たがわぬ精度でピッタリはまった。
マジでボン……凄い。
「さぁて、ここから挽回なのにゃ!開拓なら任せるのにゃ!得意分野にゃ!」
「これ複雑ですね?資材ですか?多いです」
「アル、大丈夫。やってれば慣れるよー」
「そんなことよりさっさと始めますの」
「リゼ、インストは大事だよ?なんでそんなやる気なの?圧が凄いんだけど?」
(リゼのやる気が怖いんですけど?)
このゲームはダイスを振って、出た目の領土から資材を得られるんだ。その資材を使って、都市を発展させていくゲーム。様々な勝利点があるので、それを稼いでいく。カルカンソヌより少し時間がかかるので、5ゲームだけプレイ。
1~2ゲーム目を圧勝したら、ダイス操作のイカサマを疑われたよ。僕、イカサマして無いし、悪くないのに、3ゲーム目からは、ジャックがダイスを代わりに振ったんだ。
ねぇ……ジャックのダイスの出目が、明らかにオカシイんだけど、どうなっているの?
(このおっさん……イカサマしてない?)
疑わしいからチェックしなきゃね……って訳で【伝心】してみた。
「ぎゃあーーー!なんでジャックが和ホラーを知ってるのさぁ!?怖い怖い怖い!」
「お、イカサマか?伝心はダメだぜ?」
「ワールドン様、イカサマですか?」
「あら?ワド、罰ゲームの覚悟はあるの?」
「なんのことですにゃ?」
僕の苦手な、和ホラー映画を思い描いていた。
映画の怖がらせる演出の数々を、ルクルが皆へ丁寧に説明している姿が読み取れたよ。
(くっ……これじゃ、うかつに伝心使えない)
「ち、ちがうよ……ジャック相手だからイカサマじゃないでしょ?ちょっとダイスの偏りが気になっただけだよ?僕、悪くない」
僕は必死にイカサマ疑惑を否定したよ。カルカンだけは二日酔いで寝ていたから、事情説明が省かれているみたい。クッソ、カルカンの思考なんか読んでも役に立たないんだよぉぉぉ!
(なんとか、否定できたよ。疲れた)
トップ結果はこんな感じ。
─────────────────────
僕:2回。
ルクル:3回。
リゼ:0回。
アル:0回。
カルカン:0回。(5回最下位)
─────────────────────
おかしい。絶対にルクルとリゼはグルだよ!
リゼはダイス目が良くなかった。そうすると、明らかにルクルを勝たせるように動いた。
証拠は貿易だ。貿易で資材をやり繰りできるんだけど、ルクルに都合の良い貿易がどんどんやり取りされていた。僕が貿易を交渉できるのは、アルとカルカンだけだ。ルクルとリゼは絶対に僕の貿易には応じなかった。
これはグルだよね?僕は猛烈に抗議したよ!
「ルクルとリゼは裏で繋がってるよ!これってイカサマじゃないの?」
「えー?なんのことー?俺わかんなーい」
「あら?ワドは、リゼとルクルの仲を妬いてますの?伝心で見てみてもいいのよ」
ルクルとリゼは黒い笑顔をしている。
クッソ、これ絶対に思考を和ホラーガードしているよ!
「アル!おかしいよね!おかしいよね!」
「確かに、貿易には違和感が……」
アルが違和感を話題にしようとしたら、やたら笑顔のルクルとリゼが割り込んで来た。
「アル?そんな事ないよねー」
「アル?……リゼを疑うの?」
「いえ、違和感はありません(キリッ)」
「ちょ、ちょっとー!アルーーー!」
僕は流れを変えようと、慌ててカルカンに話を振る。
「カルカン!おかしいよね!ね!?」
「そうにゃ……おかしいにゃ……建設が進まないのにゃ……違和感しか無かったのにゃ……」
「カルカン君は麦ばかり取りすぎなんだよー」
「カルカン、なんで麦ばかり取りますの?」
リゼが、不貞腐れ気味なカルカンに尋ねた。
「麦が無いと、ビールが作れないのにゃー!」
(((コイツバカだ)))
「あら?じゃあビールをあげるから、機嫌を治して欲しいの」
「やった!リゼ氏は優しいのにゃ!違和感なんて無かったのにゃ!」
おい、麦にこだわっていた理由がくだらなすぎるぞ。しかもあっさり買収されている。クッ……やっぱりカルカンに期待した僕が馬鹿だったよ。
(ま、まだ挽回できる……はず……)
次の対戦はコムト。
これ以上は負けられない。夜も遅いのでこの勝負を終えたら、残りのゲームは明日に持ち越しとなっている。従者のボンは「必ず明日までに仕上げやす」と意気込んでいた。
大量のカードには牛の絵が描かれていて、その引き取った牛の数が多いほど、得点がマイナスされるゲーム。ってか従者のボンが牛の絵に気合い入れ過ぎだよ。手作りなのもあるけどさ、牛のポーズや柄が全部異なる力作だった。あ、この牛は角があるな。
無駄に洗練された無駄のない無駄な牛の描き分け。
(努力の方向音痴だよ、ボン……)
実はトランプの時もボンが作成していました。
その完成度を見て今回の依頼に繋がります。
ボンの匠の技は今後、凄く活躍します。
次回は「第1回ボードゲーム対戦決着」です。




