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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
大公の提案への抵抗

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閑話:嵐が過ぎ去った後

前回のあらすじ

港町モンアードに訪れたワド達を歓迎して、旅立ちを見送った後のお話です。

ep.「大公当主の呼び出し」の直後から、ep.「旅先の方針相談」までの水面下の動きを含めた、モンアード視点です。

 私は港町モンアードの領主として、あまりの惨状に頭を抱えていた。


(一体なんだというのだ!この悪夢は!うまく利を掠め取ろうとした私への天罰か!?)


 私は確かに、より多くの将来の利益の為に、恩義に厚い人物像を演出しようと画策した。実際、それ自体は成功していた。大成功と言っても過言では無い。


(だが、その代償があまりにも……)


 代償が信じられない。目の前にある惨状が、どうか嘘で合って欲しい。私は瓦礫と化した調度品の数々の前で崩れ落ちた。

 エターナルドラゴンを、大恩ある存在と思い込まされた私は、案内した部屋に最高の調度品を揃えて持て成した。

 各部屋に合った自慢の物をよりすぐって、その部屋に並べたのだ。それを当然の対応と思い込んで。そして、大恩ある御方に壊されたのであれば、笑って許すのだと思い込んで。


 確かに、買い求めたに匹敵する金額は提示されてはいる。

 だが、そうでは無い!希少価値がまるで分かって無い!

 二度と手に入れる事は叶わない歴史的な美術品の数々、製作者が既に亡くなっている調度品の数々、その至高の品々が……見る影も無い。

 まさに悪夢だ!夢であれば醒めて欲しい。


 目を閉じて後悔に打ちひしがれて、一縷の希望と共に目を開き絶望する。それを何度も繰り返していた。

 何度繰り返しても現実は変わらない、変わる訳が無い。現実主義者と言われ、またその自負もあるが……無念が未練が私を離してくれなかった。

 断腸の思いで部下に指示を出す。


「お館様、本当に宜しいのでしょうか」

「あぁ、掃除の手配を頼む。だが決して捨てるな……一欠片でも価値はあるものも多い」

「畏まりました」


 私は後ろ髪を引かれながらも、何とか歩みを進め部屋を離れた。足を動かしながら指示を出す。


「……ホリター公爵家の情報をかき集めろ!特に長女であるエリーゼ公爵令嬢の情報は念入りにだ!」


 先代には恩もある。最近、代替わりした現当主のルマンド大公も知己の存在だ。

 だが、私は強い憎悪に縛られた。

 この惨状を引き起こした元凶の女に、憎しみを抱いた。

 そもそも、当の本人が謝罪にも来ない。弟君が謝罪に来て何が誠意なのか!?手に入れた時の金額を渡して「はいサヨナラ」ふざけるな!私を格下と見下すその態度の全てが許せ無かった。

 元々、問題のある言動が多く、悪い噂も常に絶えない存在ではあった。今までは対岸の火事だったが、当事者になった……なってしまった。

 国の中央の貴族にも、彼女を憎む者が幾人もいる。復讐に囚われる愚かな者達だ。そう思っていた。

 ……今は違う。


(必ず復讐してやる!)


 闇の深いホリター公爵家と揉めるのは現実的ではない?知ったことか!有益な同盟国と軋轢を作るべきではない?知ったことか!自領に隣接するカービル帝国や、ザグエリ王国がいるのに、更に敵を増やすのは得策ではない?知ったことか!

 私の中の現実主義者が、止めようと何度も私の前を訪れる。だが私が、その訪問者を受け容れることは無かった。

 まとめて「それがどうした!」と突き返す。


(あぁ、私も愚かな貴族の仲間入りだ)


 利益よりも自己の感情を優先する貴族が最も嫌いだ。私は私がそこに足を踏み入れた事を自覚していた。

 手元に集まってくる情報を検分し、有益な情報にほくそ笑む。


(あの厄災女を、陥れる事が出来そうだ)


 まずは自国の当事者達をまとめ上げ、その反感を他の貴族にも浸透させてやろう。他国の当事者とのパイプ作りも迅速に行うべきだ。特にラコア将軍とは早急に接触すべきだろう。屋敷であの厄災女に当てた部屋内での情報も活用して陥れてやる。


─────────────────────


 私は復讐の為に尽力した。年が明け、やっと対面する事が叶う。


「はじめまして、ラコア将軍。モンアードと申します。噂以上にお美しい方で驚きました。本当に美しい」

「世辞はよせ、モンアード殿。例の女を陥れる事が出来るとは本当か?」

「はい、準備を着々と進めております。水面下に蜘蛛の巣を張り、気付いた時には身動きが取れない事でしょう」


 私は目の前の女を煽てつつ、数年がかりの罠の資料をテーブルの上へ差し出した。彼女はそれを手に取り、パラパラと流し読みをして、懸念を口にする。


「だが、ホリター大公の手駒である、暗部への対策はどうなっている?我が国でもアレと揉めるのは厳しいぞ」

「……そちらは少しずつ慎重に進めております。ご安心を」


 痛い所をつかれた。暗部への対策は万全ではない。

 ホリター公爵家の暗部の闇は深く、簡単に対応できるものでは無いのだ。先代と付き合いのある私は、それを良く知っている。


(チッ、都合良く煽てられていればいいものを)



 だが、どれだけのリスクがあっても、私の足が止まる事は無かった。

流石に失った物が貴重な品々すぎました……。


次回はルクル視点の「閑話:裏取引の密談」です。

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モンアードめちゃくちゃ怒ってるやーん(ToT) まぁ、仕方ないといえば仕方ないのかな…^^;
やり過ぎエリーゼの災害がモンアード領主を怒らせました。 ワールドンに対して、極上のおもてなしをしたのに破壊され、それを信者エリーゼは、強引にお金で解決してしまったんですよね? 怒るのも分からなくも…
忍び寄る魔の手! しかし彼女本人は超人化し、エリーゼに何かあればさらにワドの報復が予想出来るのに……………。 とは言え、エリーゼのした事は中々擁護出来ないよなあ。 勿論モンアード自身も自業自得ではある…
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