旅先の方針相談
前回のあらすじ
ブールボン王国の新年祭を観光し、エリーゼの暴走が抑え込める事を証明して見せたワド達。
無事にルマンドの案は廃案となりました。
ルマンド君との面会を終えた僕らは、ゲストルームに戻り今後の方針を立てていた。
「やっぱ一回は住処に帰りたいかな」
僕としては、一度は帰りたいのが本音だった。どこかに引っ越すにしても、荷物も取りに行きたいし。それぞれの希望を出しあった。
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・僕:僕の住処。
・ルクル:行ったこと無い国。
・エリーゼ:僕の住処。
・アル:ザビケット自治区、サトウ=ゼイノフル連合国。
・カルカン:お酒。
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要約するとこんな感じ。
ルクルとアルの、二人の要望を満たすのは、サトウ=ゼイノフル連合国だけだ。必然的に二択である。カルカンは平常運転だったね。
特筆すべきは、話し合いで信者エリーゼが暴走しなかった事かな。
以前だったら「ワールドン様が行きたい所に、賛同しない人はいませんわ!もし賛同しない人がいたら、わたくし全力で説得しますわ!」になっていたと思うよ。
説得(物理)の脅しがあると、皆逆らえないから助かった。
相談した後の結果がこうだ。
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・僕:僕の住処。
・ルクル:サトウ=ゼイノフル連合国。
・エリーゼ:僕の住処。
・アル:僕の住処。
・カルカン:サトウ=ゼイノフル連合国。
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ルクルが、カルカンの取り込みに働きかけた。
僕はアルを取り込みに行った。
結果としては僕の住処になったけど……なんというか、純粋な結果とは違う気もしてはいる。
勝った気がしないのが、ちょっとモヤる。
ーーーワド回想VTRーーー
〜〜〜ルクルside!〜〜〜
「カルカン君、連合国にしないー?」
「そうですよ、連合国のお酒に興味はありますよね?」
「でも遠いのにゃー、それに寒いって聞くのにゃー、このままここでお酒飲んでる方がいいのにゃー」
(ちっ、このへべれけ猫めんどいなー)
「なんにゃー?ルクル氏、表情が不穏にゃー。これはお代わりが必要にゃー」
〜〜〜ワドside!〜〜〜
「アル、僕のコレクションに興味無い?」
「興味はあるのですが、他の大陸に行ってみたい方が、気持ち的に勝ってますね」
(もう一人のわたくしに良い報告をしますわ!耐えますわ!全力ですわ!)
「な、なんだか姉上の無言が……怖いです……」
〜〜〜ルクルside!〜〜〜
「カルカン君、このままだとさー、ワドの住処になっちゃうかもよー?」
「それならそれでもいいにゃー!うぃっく」
「船旅はどうですか?毎日、魚料理ですよ?」
「別に船に乗らなくても魚食べれるにゃー」
(さっさと釣られておけばいいのに粘るな)
「なんにゃー?アル氏、不満かにゃ?これは高いお酒が必要にゃー!うぃっく」
〜〜〜ワドside!〜〜〜
「ここだけの話、僕の家には空路でいくのよ?乗るなら船よりもドラゴンじゃない?(小声)」
「ワールドン様、魅力的なお誘いですが……どうして小声なのですか?(小声)」
(……もう一人のわたくしに良い報告をしますわ!……耐えますわ!……全力ですわ!)
「あ、姉上の圧がなんか強いです(小声)」
〜〜〜ルクルside!〜〜〜
「思い出したー!カルカン君ー!ワドの住処だとお酒が無いよー!洞窟だよー!本当にいいのー?」
「それは一大事だと思うしそんな所は考えたくもないし重要な事だから先に言って欲しかったけどとにかくいやだから連合国にする……にゃ!」
〜〜〜ワドside!〜〜〜
「アル君どうかお願い!君だけが頼り!」
(ワールドン様がお頼りになってるのですわ!早く叶えて差し上げるべきですわ!この愚弟なら他の貴族の迷惑にはならない気がしますわ!殺っ……)
「はい!ワールドン様!行きます!」
ーーーワド回想ENDーーー
なんかモヤる。アルは笑顔で無言の実姉の圧に屈した。たしかに圧だけで殺せそうなプレッシャーは感じたな。
それは良いとしても、行くとなったらルクルとカルカンが「空の旅はイヤだ」と騒ぎ出してグズッてる。
「だーかーらー!今回は防寒対策をしっかりした上で、なるべく低速&低空の安全安心の旅にするから!」
「無理無理無理無理ー!空だけはイヤだー!いくのなら徒歩!徒歩で行こうー!」
「ルマンド様にお願いしてここに住まわせて貰うにゃ。洞窟なんて1ミリも無理にゃ」
「ルクルとカルカンは往生際が悪いですよ?相談で決まったのですから、空の旅を楽しみましょう」
(早く行きたいですわ!早く行きたいですわ!往生際が悪いですわ!往生させてしまえば直ぐでは?……ダメですわ!我慢ですわ!)
こんな感じで制圧したよ。
カルカンはアルの提案「取り敢えずお酒を100L持っていき、足りなくなったらワールドン様が買いに行く」で制圧完了。
ルクルはエリーゼの提案「空旅の間は気絶してれば大丈夫ですわ!気絶の協力は惜しみませんわ!」との内容に、マイティ提案「気絶では無く睡眠薬で眠ってる間」を追加で制圧完了。
お昼を食べたら即日出発の流れになった。
防寒対策は厚手の雪国仕様の服に加えて、高価な暖房魔術具を用意。それと頑丈な倉庫を、僕が運ぶ事になった。皆は倉庫に入ってもらう予定だよ。
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昨日に引き続き見事に晴れて空旅日和だ!
そんな訳で久しぶりに、ドラゴン形態になる為に高速脱衣したんだけど、久々だったのと雪国の防寒服は脱ぐのにモタついた。
(今度からはマイティに手伝って貰おう)
それとアルが真っ赤になって恥じらっていた。
そういう反応をされると恥ずかしく思うのでヤメて欲しい。ってか完全にドラゴンになるとスン……って急に冷めるのなんか屈辱。
(ドラゴンは光ガード無しの全裸なのに!)
さて、皆が倉庫に入ったので持ち上げて、ゆっくりと上昇する。ルマンド君が見送りに来ている。
驚いたのはルマンド君が26歳と聞いた事だ。僕でさえも空気読んで何も言えなかったのに「てっきり36歳くらいと思ったにゃ」とか言うKYがいた事だ。
そういうデリカシーが無いからロアンヌちゃんにおっさん認定されるんだと思うよ?
僕は敢えて大通りの方を低空飛行で飛んだ。
ロアンヌちゃんとサブロワ君が見えた。実は伝令で僕が昼過ぎに大通りにいく事を伝えて貰っている。
飛び跳ねてはしゃいでいるロアンヌちゃん。
軽く一礼するサブロワ君。
どっちが年上かわかんないもんだねぇ。
(汽車じゃない移動も久しぶりだよ!)
ブールボン王国を抜け、ザグエリ王国の山脈地帯の上空まで飛んできた。山脈越しに雪景色と、赤茶の森林のコントラストが眼前に広がる。くっきり違いが出るのが面白い。
暫くは山脈の上空で、緩やかな空旅を楽しんでいた。それから、ふと異変に気付いて速度を緩める。
僕に強大なマナ反応が、近付いてくるのに気づいたからだ。
『よ!久しいな!』
『久しぶりだね。相変わらず印象薄いなぁ。あ、そいやさっきも白にあったんだよ』
『そうなのか!変わり無かったか?』
『うん。全くね。あ、そういや僕は名前を手に入れたんだよ』
『ほぅ?ちなみに[僕]とは何だ?』
『アハハハハ!懐かしいね。昔の僕と同じ反応だね。ワールドンと呼んでくれるかい?』
『何のことだ?それよりさ聞いてくれよ』
山脈の上空で久しぶりにあった緑と、暫く話し込んだ。元々は平原や川沿いを放浪していたのに、煙臭くて敵わないから最近は山脈の上を放浪との事。
『あの煙は一体なんなんだ?何度壊してやろうと思った事か……』
『あれは汽車っていうんだ。壊すのは勘弁してやってね』
『それは……まぁ思っただけだ。神が手を出すのは、神罰の時だけだしな!それであれはなんなんだ?』
『人族が移動手段として使ってるんだ!』
『何故だ?飛べばよかろう?変な事だな!』
『まぁ、誰もが僕らのように大量のマナがあるわけじゃないのさ』
それから小一時間程、緑の愚痴に付き合わされた。
かなり汽車が嫌いらしい。緑は人族から見えないから、縄張りとしていた所にもお構い無しだそうだ。
風の一柱である緑は、大気と同化している為に、マナ感知が出来ないと全く見えない。僕には緑色のマナを纏ったドラゴンが見えているけどね。
ま、ほとんどの人族は見えないよね。そのせいで、インビジブルドラゴンと呼ばれているらしい。
『またな!また愚痴きいてくれな!』
『うん!お土産ありがと。またね!』
僕は緑からお土産を貰って、上機嫌で空旅を再開する。
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(倉庫で外見えないから、高度上げて速度も速くしても良いのでは?)
「エターナルウィング!」
ふぅー久々の最高速だ!気持ちいい!
………………あれぇ?
僕の住処に早く着いたけど、全員から文句言われた。
特にカルカンから非難轟々だった。用意した酒瓶が、全て割れたから。
そして、カルカンのセリフを聞いたエリーゼが、睡眠薬を服用した。
(あぁ、許せなかったんだな……)
カルカンは、旅先に持っていくお酒を厳選して選んでいました。
それはもう凄く楽しそうに……。
そして、開栓前に全て割れたので、怒りは相当なものですw
4章「大公の提案への抵抗」の本編はここまで。
今回の別キャラ視点の閑話は6話予定です。
・ワド達が立ち去った後の領主モンアード視点
・リゼに伝心で真実を伝えた直後のルクル視点
・リゼとやり取りをしているエリーゼ視点
・トランプで遊んでいた時のアルフォート視点
・非常な現実を突きつけられたカルカン視点
・エリーゼ対策の説明を求められたリゼ視点
となります。
前半の3話は、今後のストーリーに大きく関わりますので、読み飛ばさずに読んで頂けると幸いです。
後半の3話は、ギャグ寄りにしています。(前半の3話が重い話の為、バランス取りました)
次回は領主モンアード視点の「閑話:嵐が過ぎ去った後」です。
※色でのキャラ呼称の補足
本作の最高位ドラゴンの7柱は色で呼ばれています。
金、銀、白、黒、赤、緑、青、となります。
特にドラゴン達は敬称も付けずに色で呼び合っているので、唐突に色だけの呼称で出てくる事もあります。
分かりづらくて申し訳ないです。




