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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
大公の提案への抵抗

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友達の説得

前回のあらすじ

エリーゼを救うための会議を行いました。エリーゼ自身が会議に参加し「任せて欲しい」と対策実行を請け負いました。

 エリーゼは「色々と準備があるから」と言って、退室していった。


 無理している笑顔が痛々しくて、僕は直視できなかったよ。

 部屋に残った皆も、エリーゼの変化に驚いていた。それぞれが思い思いに、エリーゼの事を語りだす。


「まるで別人みたいに雰囲気やわらかくなったにゃー」

「暴走せず、あれだけ理性的に話をする姉上は、生まれて初めてみました」

「あだ名……嬉しそうだったね、ワド」

「……うん……僕にも、そう見えた」


 色欲エリーゼの中の、何かが壊れた様な気がする。

 ちゃんと向き合わず先延ばしにして、より深く深く傷つけた事を……僕は悔いた。

 こんな気分になるのなら、もっと早くからあだ名で呼んであげれば良かった。

 僕が「もっと早く呼んであげれば良かった」と、呟いたのを聞き取ったアルフォートが小さく挙手した。


「私も、皆ともっと打ち解けたいです。今よりも……もっとです。私にもあだ名を貰えませんか?」

「あだ名で呼んで欲しいにゃ!」


 皆でワイワイとあだ名を考えた。


「じゃあー、アルで決定ねー」

「ありがとう、ルクル」

「アルって呼びやすくていいね。僕も改めてよろしくね」


 アルフォートのあだ名はすんなり決まった。けど、お冠な猫が騒いでいる。


「なんであだ名がカルカンなのにゃ!」


 カルカンはカルカンと言うあだ名がお気に召さないらしい。

 でもカルカンが他のあだ名に文句言うからさぁ……無難って事になった。


ーーーあだ名命名ダイジェストVTRーーー

「カカとか、どうでしょう?」

「『おかか』みたいでなんか嫌にゃーお腹すくにゃ」

「カルカとかルカンはどうかなー?」

「なんか噛んだみたいで嫌にゃ」


「ワガママだなぁ……なら紅の猫は?『萌えない猫はただの猫だ』みたいな?」

「おいーワドー?ネタに走るなー」

「何で長くなってるにゃ?紅はどっから出てきたにゃ?」

「いつも酔ってて顔が紅いから」

「却下にゃ!」


「酔っ払い猫、呑んだくれ猫、泥酔猫、酒瓶猫、へべれけ猫……どれか気に入りました?」

「おぅ、ちょっとアル氏、表出ろにゃ!こらーにゃ!お酒から離れるにゃ!」

「KYカンってのはどうかなー?」

「いいね!めっちゃ似合う!」

「言葉の意味はわからないけど、とにかく凄い馬鹿にされてる事だけはわかるにゃ」


「もうオカカで良くありませんか?」

「戻ってるにゃ!悪化してるにゃ!」

「家なき猫とかは?」

「あれー?そのドラマって見せたっけー?」

「家はあるにゃ!勝手にホームレスにしないでにゃ!」

ーーーあだ名命名ダイジェストENDーーー


「カルカンがワガママ言うからだよ。諦めたら?」

「そうだぞー、本名があだ名でいいじゃんかー、もうネタ出すのも疲れたしー」


 カルカンがムキになるから、後半はネタ合戦だったと思う。僕もルクルもかなりふざけていた。

 けど、アルは真面目に意見を出していたみたいね。

 今もまだ、しつこく提案しているよ。


「カルカン、私はオカカがいいと思いますけど、もう一度検討しませんか?」

「もうカルカンでいいにゃ!ってアル氏はそれ本気だったのにゃ!?」


 騒ぐだけ騒いでいた。

 カルカンは酔い潰れて既にぐーすかぴーだった。

 ルクルも二徹で疲れていたのか爆睡している。

 【伝心】(    )に付き合ってくれて、ありがとう。


「私も少し皆に染まって来たのかもしれません」


 そう言ってアルフォートが、2人を起こさないよう声を出さずに笑っていた。


「いやいや、アルは僕らの常識枠だからさ。あんまり悪い影響を受けないでよね」

「一番、常識がないワールドン様に言われると、説得力が違いますね」

「え?僕、常識あるよね?アルの次に常識的だと思うけど?」


 あ、あれ?アルフォートが「これマジか」って内心で驚愕している。


(……あれ?マジ?)


「アル、僕が常識知らなくておかしな事をしたら止めてくれる?」

「はい、それは必ず」

「絶対だよ?友達の約束だからね」


 アルは「はい。約束ですね」と、力強く頷いてくれた。


(ふふふ、これで安心)


 夜も遅くなりアルフォートが自室に戻った。部屋の中で起きているのは僕だけ。

 1人深夜に窓の外を眺めながら、時間をもて余す。繰り返し思い出すのは……今朝のエリーゼ(リゼ)

 廊下に響いた嗚咽が、耳から離れない。


「……ワド、ごめんな」


 背中越しにルクルが小さく呟いた。


「……起きてたの?」

「伝心を使えば、リゼもワドも傷つけると分かってて提案した。俺を責めていいんだよ」


 【伝心】(    )の前の「ごめん」の意味がやっと理解できた。

 でも、リゼは当然としても……疑問がふと口に出た。


「どうして僕もって分かったの?」

「そりゃあーーー、あんな濃密な3年間を過ごしたんだ。親友の本音くらい分かるさ……」

「……本音?」


 僕は窓から視線を外し、ルクルに向き直る。


「ホーミング地雷だとか何だかんだ言って相談してきても、本気で嫌がっては無かった。本当に嫌がってたら俺は相談に乗ってたよ」

「……エリーゼが怖かったのは本当だよ?」


 ルクルもリゼも分かっていたんだな。僕は長く生きていても人との交流はダメダメだ。

 リゼが「嫌がるフリなだけで喜んでる」って思い込むのも、仕方なかったのかも知れないな。

 再びルクルが寝る前に、明日は信者エリーゼとちゃんと向き合う事を約束した。

 エリーゼの事を考えていたら、夜が明けていたよ。


 朝はルクルとカルカンと3人でルームサービスを食べ終えた後、エリーゼからの連絡を待つ。

 すると、筆頭従者がルクルだけを呼びに来た。


「じゃーいってくるねー」

「うん……待ってる」


 あぁ嫌だ。分かってしまった。ケタに見せて貰ったアニメを幾つも思い出す。


(これが嫉妬、なんだな……嫌な気分だ)


 エリーゼが僕じゃなくて、ルクルだけを呼び出した時に、今まで感じた事がない不快感があった。僕の本心と向き合う事で、生まれた感情だと何となく理解できたよ。


 僕が呼ばれたのは昼過ぎだ。

 従者に連れられてエリーゼの部屋に入る。エリーゼが直ぐに駆け寄ってきた。


「ワールドン様!わたくし、ご迷惑だと知らず……」

「エリーゼ、落ち着いて。僕は逃げないから、ゆっくり話そう」


 エリーゼを宥めた後、座ってマイティにお茶を淹れて貰う。待っている間も、エリーゼは落ち込んだ表情をしていて、とても気になる。

 先に来ていたルクルをチラリと見ても、落ち着いているようだ。


(信者エリーゼはどこまで聞かされてるんだろう?)


 僕はルクルに【伝心】(    )で質問した。


『ルクル、どこまで説明したの?』

『いや、俺は説明してないよ。色んな質問をされただけだよ。リゼが何かしたんだろうね』

『質問って何を?』

『二重人格が本当なのか、眠ると入れ替わるのは本当か、他国で揉めるのを回避する為、眠らせようとしてるのは本当か……とかね』


 ルクルがわざと情報を伏せた。けど【伝心】(    )はしっかりと読み取ってしまう。この能力が不便だと感じたのも、初めての事だ。

 悲痛な表情のエリーゼが「もう一人のわたくしがワールドン様を傷つけたのですか?」と問いかける一部始終が鮮明に。

 エリーゼの手は震えていた。ルクルの返事で取り乱す所まで見えた。見えてしまった。


「ワールドン様!わたくし、わたくしはあまりに罪深いですわ!」

「エリーゼ、思い詰めないで。僕はこれからも君といたいよ」

「……わたくし、これから感情が抑えられない時は入れ替わりますわ」


 心を閉ざそうとするエリーゼが嫌で、僕は続ける。


「エリーゼ、ちゃんと聞いて。心を押し殺して欲しくないんだ……今までの何事にも全力な君も大好きだから」

「~~~~~っ!ワールドン様!わたくし、どうしてもお願いしたい事がありますわ!」


 急に立ち上がったエリーゼが、強く声をあげた。


「お願いって何?僕に叶えられる事?」

「この世でワールドン様にしか叶えられない事ですわ!」

「うん。わかった、聞かせて」


 力強く、「言えませんわ!」と言い切るエリーゼ。

 え?お願い言って貰わないと叶えられないよ?何で言えないの?ワケガワカラナイヨ。


「願い事を教えてくれる?」

「絶対に言えませんわ!」

「ど、どうして?」


 言えないとの言葉には、強い意思が感じられた。


「わたくしと、もう一人のわたくしが、ご迷惑をかけなくなった時にお願いしますわ!」

「少しくらいの迷惑なら大丈夫だよ?ルマンド君を困らせない範囲でね?」

「わたくし、ご迷惑をおかけしないよう全力で頑張りますわ!」



 迷惑かけない事にも、全力なのか……

 でもルマンド君の案じゃなくて、僕らの案でエリーゼを守れそうな事に、心底ホッとしたよ。

ワドははじめて嫉妬を理解しました。

カルカンのあだ名は思いつかなかったので、あだ名もカルカンになりました(苦笑)


後に閑話でエリーゼ視点の描写をいれます。

お願いの内容はそちらで触れます。


次回は「王都見物・前編」です。

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静かなエリーゼ様。とても新鮮。あんなにも変わってしまうなんて。 猫ちゃんのあだ名はあの中だとオカカに一票かな(^O^)/ エリーゼ様の気持ちが気になる! 引き続き展開が気になるところですね。
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