姉弟との出会い
前回のあらすじ
引き続きブールボン王都まで鉄道旅の途中です。かなりの長旅です。
(早く補給終わらないかな?)
僕らは港町ホッドケットまで来ていた。この港町の兵士には、変質者と思われているから凄く居心地が悪くて、早く立ち去りたい。
「次の駅は~、隣国ブールボン王国の港町ワイナッカです。乗り遅れないようご注意下さい」
駅員さんのアナウンスが入る。
カルカンが駅弁を抱えて駆け込んで来た。僕らの弁当は従者3人組にお任せコースだけど、カルカンはどうしても自分の鼻で選びたいようだ。
いつも念入りにクンクンしている。
そもそも猫魔族の国は大森林の中にあるから、海の魚はたまにしか食べれないらしくて情熱が凄いよ。
ケタを探す旅で、10番目に訪れた港町ワイナッカ。ここでアルフォートと出会った。そういや、その時もエリーゼを連れ戻す為に旅をしていたなぁ。
アルフォートの所の兄弟は、エリーゼの尻拭いに奔走しているのが常だそうだよ。
そうそう、アルフォートには色々とプレゼントやアドバイスを貰ったよ。
僕が常識知らずでほっとけなかったんだと。
ーーーワド回想VTRーーー
「金色の髪のそこの君!何故、裸足なのですか!?靴は!?」
「はじめまして、僕の名前はワールドン。君の名前はなんて言うのかな?」
「私はアルフォートと申します。靴はどうなされたのです?」
「靴はお金が足りなかったから、買えなかったの」
「何か事情がお有り……ウエェッ!?あ、あの……し、下着……いや……あのその……」
「どうしたの?」
「……どうか、長いスカートと靴をプレゼントさせて下さい……」
「え!?僕お金無いよ?」
「プレゼントですから、お代は私が払います」
「わぁラッキー!君は良い人だね」
「……さ、流石に目のやり場に……困ります」
ーーーワド回想ENDーーー
人の姿になってホッドケットにいった時に、服を一式揃えたんだ。変質者はなるはやで卒業したかったからね。
でも、汽車にも乗りたかったから、一駅分の乗車賃を確認して、先に切符を購入した。
残りの所持金で人の食事にするか、靴と下着にするか、とても迷ったけど食事にしたんだ。
だって僕は常にホバーだから、靴は飾りだし。
服を買ったから下着は見えないし、後でいいかなーと軽く考えていた。だって靴も下着も結構なお値段するんだもん。
でも、顔を真っ赤にしたアルフォートの反応と、履いていない事を知った時のエリーゼの反応から推測するに、あまり良くなかったのかも?って今は思う。
服は店員さんにお任せしたら「今年の夏のオススメです」って言われたので、ライトグリーンのミニスカートワンピースを購入した。
薄手だったのでヒラヒラと涼しげで、とても気に入っていたんだけど、アルフォートに「危ないから長いスカートでお願いします」としつこく言われて、長いスカートの服を貰ったよ。
危ないって言われてもなぁ。防御力はどっちも変わらないと思うんだよねぇ。
ん~~、フルプレートアーマーをおねだりするべきだったのかな?でも脱衣が大変なのはメタモルフォーゼで時間がかかるし、やっぱりワンピースが時短できていいね。
その後も「宿を取ってないのですか!?」と、驚かれた。だってお金無かったし、僕は眠らないし。夜は適当に町を散策して過ごしていると伝えたら「女性1人で夜ウロウロするのは危険です!」って叱られた。
僕はドラゴンだから危険は無いよって説明したんだけど、アルフォートは頑固でさ、無理矢理に宿を取らされたよ。
お金が勿体ないから雑魚寝の所とか、同室で構わないって言ったんだけど「自分を大切にして下さい」って1人部屋にされた。
僕は自分を大切にしているから、宿にお金使うよりは食事に使いたいって言ったらさ、食事も全額出してくれたんだ。
【伝心】で心を読み取っても、本気で僕を心配して善意で言ってくれていたから、僕はアルフォートを信頼したんだ。
まぁ、姉の部分は信用してはいけなかった……と今でも思う。
信頼していたから、僕が光の一柱としてのドラゴンだとも伝えたよ。あの時は美しい女神って言われて、嬉しかった。
あの頃までは。
姉は神話が好きで、美人も着飾るのが好きだから、姉に色々と買って貰うといいと言われた。ふーん、そうなのかと当時は思った。
その代わり少々暴走する事が多くて、アルフォートの言葉を全然聞いてくれないから、家に戻る説得に協力して欲しいって言われたよ。
色々とプレゼントを貰ったし、そのくらいならいいかなーと思っていた。
(どこが【少々】!?【少々】の意味知ってる!?説得?出来るかーーー!)
僕に常識が無いって、注意する前に【少々】の意味を勉強しようね!アルフォート!
軽い気持ちで頼みを引き受けたら、とんでもないホーミング地雷がついてきた。
未だに撤去の兆しは見えない。
ブレーキがない暴走娘だったので、帰るように説得しようとしたら、逆についてくる方向で、僕が説得させられたよ。
11番目の港町ルモイで、後のホーミング地雷ことエリーゼに出会う。
初対面の時から、何故か既にテンションMAXだったね。ついさっきアルフォートから聞いた話だと、アルフォートが呼んでも来ないから、僕が女神だと伝令で伝えていたらしい。道理であのテンションな訳だよ。
服が「このロングスカートのワンピースしかない」と伝えたら「今すぐ買いに行きますわ!」と最初の暴走が始まった。
服を買いにいった時は「え?付けてない……履いてない……ですって?」と呟いたと思ったら、凄い勢いで大量の下着を購入していたよ。ほとんど着ていないけど100着を軽く超えている。数が多すぎて把握出来ていないんだ。
あの時は試着が終わらなくて「これも似合いますわ!あ、これも似合いますわ!」って感じで、1日中の試着を5日間も続けていた。
(正直、しんどかった……)
服は「オーダーメイドで作りますわ!」と言われて服の完成を待っていたから、結構な足止めを喰らったよ。
服も多すぎて総数を把握していなくて、服の管理も併せ何を着るかは、いつもマイティにお任せしている。
それから食事もエリーゼのせいで、僕が常識ない感じになってしまったんだ。
ーーーワド回想VTRーーー
「ワールドン様!何をお召し上がりになりますか?わたくし、いくらでもご馳走しますわ!」
「うーん、どれも食べたこと無くて、美味しそうで迷うなぁ」
「どれとどれで迷ってるのですか?両方頼みますわ!」
「うーん、うーん、どれも美味しそうだから全部気になってる」
「全部頼みますわ!」
「いいの?ありがとうエリーゼ」
「も、勿体ないお言葉ですわ!お気に召したのがありましたら、いくらでもお代わり頼みますわ!」
「嬉しい!本当に嬉しいよ、エリーゼ!」
「~~~~~っ!フゥーーーーー!もっともっと頼みますわ!頼みますわ!」
「わぁ、美味しい。ここの料理美味しいよ」
「今すぐ確保しますわ!」
ーーーワド回想ENDーーー
お店の食材を全て食べ尽くしてしまった。
最初の餌付けからこうだったんだ。エリーゼに間違った人の食事量を叩き込まれている。
指摘されなかったから、それが普通の食事量だと思ったんだ。
意識体ケタに【伝心】で見せて貰ったアニメでも、全部食べ尽くす作品が幾つかあったし、そんなに変じゃ無いのかな……って。
(でも、教えてくれなきゃ分かんないよ……)
そんな話をしていたら、カルカンが新たな情報を投下してくる。
「えっと……猫魔族の国では、ワールドン様の元々のドラゴンサイズに合わせて、多めに食事を用意してましたにゃ!」
「そ、そんな事、今更言われても……あれが一般的な食事量だと思って、エリーゼのはちょっと多めくらいかなーって」
僕が悪くない事をやんわり主張していると、食い気味に言葉を被せてくるカルカン。
「用意するの大変でしたにゃ!」
「な、なんで言わないの?」
「こらー、ワドー、カルカン君を困らせないー」
「女神であるワールドン様に、心ゆくまでお食事頂くのは当然ですわ!」
「姉上……もう少し節度を……」
一般的な人の食事量も教えてくれればいいのに……全く、カルカンは気が利かないよね。
思い出話に花を咲かせながらも鉄道は進んでいく。
そろそろ、乗換駅に着きそうだったから、僕は皆に声をかけた。
「あ、もうすぐみたいだよ」
「港町も最後ですにゃ!魚の駅弁たくさん買うにゃ!」
「カルカン君、ほんと好きだねー」
「ふふ、私からご馳走させて下さい。オススメの海鮮弁当あります」
アルフォートからの海鮮弁当の情報に、目を輝かせるカルカン。姉に引き続き、弟にも餌付けされているな。
「アルフォート様、ありがとうにゃ!」
「敬称は要りませんよ。友達ですから」
「アルフォート氏!感謝にゃー!」
「……まだ大丈夫ですわ……まだいけますわ……まだ……まだですわ……まだまだまだ……まだ……」
港町マトイコに着いた。ここでブールボン王都方面行きに乗り換えだよ。
(王都は初めてだから楽しみ~!)
色々と常識が足りず、警戒心が薄かったのでワドは騙されました。
ちゃんと伝心で読み取っていれば、【少々】ではない事に気づいたはずなのに……。
次回は「大公に面会」です。




