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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
お貴族様との揉め事

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鉄道の旅と潮騒

前回のあらすじ

大公からの呼び出しで、エリーゼの里帰りに付き添う事になったワド達。

鉄道でブールボン王都まで向かっています。

(鉄道から見る雪も悪くないかな?)


 右の風景に雪景色、左の風景に海という絶景が続く。

 静寂の海沿いを、汽笛の大きな音と規則的な車輪の音が駆けている。

 するとルクルが、海を眺めながら不思議な事を言い出した。


「なんていうか毎日のように海が穏やかだねー。不自然なほど潮騒も聞こえないしー」

「ここ最近は、嵐が来てませんから。至って例年通りですね」


 ルクルは車内の空気を入れ替えようと少しだけ窓を開けて、海への感想を述べている。

 お酒の香りが充満していた車内に、少しひんやりした潮風が入ってきて心地よい。

 アルフォートの海の説明を皮切りに、カルカンや僕も便乗してツッコミをいれていく。


「ルクル氏は変わった事をいうにゃー」

「ルクル、異世界の海とこの世界の海は違うよ」

「ワールドン様!異世界の海を見せて頂きたいですわ!」


 エリーゼにおねだりされたので、ついでに皆まとめて、【伝心】(    )でケタの世界の海を共有した。


「これが異世界の海ですか?嵐でも無いのに荒れてますね」

「不思議にゃー」

「いやー、俺にとっては、この世界の凪いだ海のほうが、変わってるというか変な感じー」


 間髪入れずに、僕はルクルへ質問を返す。


「へ?だって、ルクルが前に言ってたから当たり前じゃない?」

「ふぇ?何か言ったっけー?」

「ワールドン様!この屋台の焼きそばとかき氷を、もう一度詳しくお願いしますわ!」


 あれ?ルクルから教えて貰ったのになぁ。

 あ!まだ思い出せて無い記憶かも!


「月が無いから満潮や干潮が無いんじゃ?って話をしたけど覚えてない?」

「……したっけ?覚えてないー」

「満潮?干潮?なんですにゃ?」

「ワールドン様。それは、どういった法則なのでしょうか?」

「……かき氷のレモン……あの柑橘果実とハチミツで、再現できるか料理人に確認ですわ……」


 カルカンとアルフォートは全く分からないみたいで、首を傾げている。

 エリーゼはさっきからブツブツと何か呟いている。

 月に関することをルクルが覚えていないから、僕が説明しないといけない流れだ。

 月見関連の食べ物しか興味無くて、割と聞き流していたから正直、合っているか不安に思う。

 でも、定番の知ったか&ドヤ顔で押し切るよ!


「異世界には月というのがあってだね、海を操作するのさ!海の水が増えたり減ったりする特殊能力があるのさ!(ドヤァ)」

「……思い出せない……なんでー?」


 僕の完璧な説明を聞いても、ルクルはまだ思い出せないようで、しかめっ面で頭を抱えている。

 皆は口々に月への質問をしてきた。


「月って神様ですかにゃ?」

「水量を操作する能力ですか?水神竜様のような存在でしょうか?」

「ワールドン様!わたくし、水神竜様にもお会いしてみたいですわ!」

「青はどこにいるか、わかんないんだ」


 なんで青の話になったんだろ?

 皆が見当違いな事を言い出す。それに僕は海底に行かないから、青とは長いこと会っていない。


「月様は海を泳いでるのですかにゃ?」

「月様は海底にお住まいだったりするのでしょうか?」

「ワドー、皆が月を勘違いしてるから共有してー」

「どれが良いかな……あ、月見団子のが美味しかったからこれにしよ」

「ワールドン様!異世界の食べ物はより詳しくお願いしますわ!」


 ケタの時に【伝心】(    )で得た、お月見の状況をイメージ共有する。


「そ、空を飛んでるにゃ!?」

「これは文献にあるエイリアンとは別物でしょうか?何故、食事を?危険では?」

「ワールドン様!お団子素晴らしいですわ!早速、全力で再現させますわ!」


 なんだか凄い変な方向に解釈されている。エリーゼだけは通常営業だったけど。

 すかさずルクルから指摘を貰う。


「ワド、なんか勘違いが拡大してるよー?」

「ど、どうしてこうなったの?」


 慌てて月を補足説明したよ。

 生物ではない事。襲ってもこない事。太陽のように一定の周期で空に見える事。月見という、ルクルの前世の国の文化がある事。僕もあんまり詳しくないよ?

 ま、ケタにお願いして美少女戦士は全シリーズ見たけど。ちなみに僕は火星推し。


「思いだしたーー!」


 突然、ルクルが叫んだ。ちょ……ちょっと、他の乗客に迷惑じゃん!

 全く、常識の無い人はこれだから困るよ、プンスコ!


「月ってのは衛星と言って……」


 なんか唐突にルクルのお月様講座がハジマタ。へーへーへー、引力で満潮と干潮なのかー。ほぅほぅ。

 関心して聞いていたら、ルクルから僕へのジト目&指摘が飛んでくる。


「ワドの説明がデタラメだからー、皆が混乱するんだよー!」

「なら最初からルクルが説明すればいいじゃん!月なんて無いんだから『だいたい合ってる』タグがつけられれば充分!僕、悪くない(ドヤァ)」

「異世界、難しいにゃ」

「常識の齟齬を感じますね……」

「ワールドン様!自信がお在りのお顔がとても素敵ですわ!」


 ルクルのケタ記憶は、オタク知識以外はあんまり戻っていないみたい。

 でも、何が記憶の呼び水になるのか分かんないな。

 不都合な事態になるまでは、問題を先送りしよっと。

 少し難しい話が続いていたので、カルカンが話題を変えようとしてきた。


「それにしても鉄道の旅は快適にゃー」

「お酒が飲めるからでしょ」

「お酒飲めるからねー」

「お酒ですね」

「カルカン、あなたお酒臭いですわ!」

「違うにゃ!誤解にゃ!酷いにゃ!」


 全員から総ツッコミが入り、カルカンが慌てて弁明しようとワタワタしだした。

 誤解も何も、その大量の空き瓶を見て、なんの説得力があるというの?このダメ猫さん?


「魔獣に襲われ無いし、速くて寝てる間も進むから快適と言いたかった!ですにゃ!」


 カルカンが誤解だと力説している。

 でもさ、力説する間も右手に握られている酒瓶が、全て台無しにしているよ?


(カルカン、分かってる?)


「そもそも、鉄道関係ないですわ!ワールドン様とご一緒なら魔獣は出ませんわ!」

「あー、徒歩の時も出なかったねー。ジャックさん達、わざわざ離れて狩りにいってたしー」

「皆!信じるのにゃ!なんでスルーするにゃ!」


 ワタワタと必死に弁明するカルカンを、アルフォートが優しく諭していた。

 それにしてもカルカンうるさい。


「落ち着いて下さい、持って振り回すのは危ないので、右手の物を置きましょう」

「皆さ、もうちょっと声を小さくしようよ。他のお客さんに迷惑でしょ?常識を少しは学習してくれる?全くもう……」


 近くの席のお客さんがさっきから咳払いしている。

 アニメ知識だと、これって暗にウルサイって言っているのと同義だったはず。

 僕以外は常識知らずばっかりで困るよ。


「全裸徘徊してた人に言われたくないなー」

「土下座破壊したワールドン様に言われたくないですにゃ!」

「……えっと……あ、あの……あのその……あぁ!」

「ワールドン様!わたくしはいつでも味方ですわ!常識は少しずつ覚えれば大丈夫ですわ!」


 なんかアルフォートの顔が真っ赤だ。お酒の香りだけで酔ったのかな?

 あと、エリーゼさぁ、君にだけは言われたく無いよ!

 僕が常識の無い人みたいに言われるのは釈然としないよ!僕は学習したからもう完璧さ!


「それにしても鉄道は遅いですわ!これなら走った方が速いですわ!」

「姉上……その冗談面白くないですよ?」

(それ、ワドとエリーゼ様限定ですしー)

(エリーゼ様がおかしいのにゃ)

(エリーゼの足音、汽笛より爆音なんだよなぁ)

「あ、あれ?皆さん、何故黙るのです?」


 そっか、アルフォートは最近エリーゼの走りを見て無いんだっけ?教えたら、また胃を痛めそうだから、黙っているのが優しさだよね?

 僕はルクルとカルカンに目配せをした。二人共、ゆっくり頷いたよ。


「え?……冗談ですよね?……いやしかし……船を破壊したあの体技ならあるいは……」


(気づいたらきっとまた胃を痛めるよ。ご自愛しようね?スルースキルを高めよう。ね?)


 それからも素晴らしい景色を堪能しながら、皆とワイワイと話が弾む。

 色んな話が出来て、皆も笑顔で凄く楽しかった。


 ポーーーーーーー……!


 そろそろ、メイジー王国の最東端だ。

 旅は順調過ぎて、なんか逆に怖いね。



 本日何度目かの雪溶かしで、窓の外が真っ白になっていた。

アルフォートの様子がおかしいのは次回で触れます。


次回は「姉弟との出会い」です。


※色でのキャラ呼称の補足

本作の最高位ドラゴンの7柱は色で呼ばれています。

金、銀、白、黒、赤、緑、青、となります。

特にドラゴン達は敬称も付けずに色で呼び合っているので、唐突に色だけの呼称で出てくる事もあります。

分かりづらくて申し訳ないです。

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凪だけの海だと海中の酸素濃度がかなり低くなりそうだな。青が頑張って攪拌してたりするんだろうか? いや、酸素不要の生物がいたりする?
月がないから、満潮や引き潮がないんだね。凪だけの海……。個人的には、海は激しく波打つほうが躍動感があってワクワクします。(・∀・) 列車の旅……。羨ましい〜!楽しそうですね♪ 駅弁食べて、会話を楽し…
大体合ってるタグ。まあ確かにw 潮の変化させるなら海神様、そうきたか。確かに月知らなかったらそうだよね。 後半のアルが気になりますね。何だろう。
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