表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
お貴族様との揉め事

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/389

分家と分家のお家騒動・前編

前回のあらすじ

宿題となっていたトラブルへの対応を、急遽突きつけられたワド達。

港町モンアードにやってくる、ココ伯爵達の対策を検討していました。

 結局、勝負内容を何にするかについては、決定することが出来なかった。


 一応の候補として快適性などの案は出たけど、どのように差をつけても、相手が納得しないだろうとの意見が出て決定打に欠けた。

 船の速度は差が明確なんだけれど、前回エリーゼが「ワールドン様より遅いのに、速度で競っても意味ないですわ!」と言い切っているからボツ。

 明日にはココ伯爵家がモンアードに訪れるので、「それぞれにアピールをさせてから考えよう」というルクルの無難な案が採用された。


─────────────────────


 翌朝。

 日が変わると土砂降りになっていた。

 昨日の時点でどんよりとした曇り空だったので、雨が降る予想だったけど、思っていた以上の豪雨だ。


(ココ伯爵は船で来るって話だけど今日来れるかな?)


「おはようございます!ワールドン様!」

「おはよ、エリーゼ」


 信者エリーゼが復活している。でも、ココ伯爵相手に暴走しないか不安だ。

 エリーゼは、久しぶりに睡眠を充分採って、とても元気ハツラツだよ。

 逆にマイティは凄くお疲れモードだった。


「マイティ、お疲れ様」

「ええ……ワールドン様、お気遣いありがとうございます」


 夜通し掃除をしていたみたいで「まさか嫌がらせに本当にするとは……」と言うマイティの呟きは聞こえなかった事にした。


「これだけの豪雨だと操船は無理じゃないかなー?」

「今日は来ないかもね。パンデピスあるから皆で食べよう」


 朝食後のデザートに甘いものを堪能しながら、僕らはゆっくり過ごしていた。

 そこに慌ただしく衛兵がやってくる。


「ココ伯爵両家が来訪されております。ワールドン様を呼んでおられる為、謁見の間にお越し下さい」

「あーあ、来ちゃったよ」

「る、留守番を希望しますにゃ!」


 面倒事から逃げようとするカルカンを、むんずと捕まえて謁見の間に向う。カルカンは掴まれた猫のように、だらんとしてされるがままだ。


「おぉ!ワールドン様!お久しゅう御座います!」

「おぉ!ワールドン様!相変わらずお美しい!再会を心待ちにしておりました!」

「ハン!早速、お世辞で点数稼ぎか!浅ましいな!ノサト卿」

「世辞ではなく本心です。そういう見方しかできない方が浅ましいのでは?ノヤマ卿」


 早くもバチバチとやりあっているね。モンアード君の前だってのに良くやるよ、全く。


 ひょろっとしている長身で細身の男性が、ノヤマ・ココ伯爵。

 どっしりとした恰幅の良い中背の男性が、ノサト・ココ伯爵。

 本人達も従者達も、既に皮肉や牽制が始まっている。ほんとなんなの?


 モンアード君が軽く手をあげ、仲裁の言葉をかける。


「事情については少し伺っております。ワールドン様とお話しできる部屋をご用意しました。そちらで構いませんか?ノヤマ卿、ノサト卿」

「はい、構いません。ありがとうございます。モンアード卿」

「モンアード卿。依存はありませんが……何故、ノヤマ卿から先に名前を呼ばれたのですかな?」

「これは失礼しました。他意は御座いません」


 相変わらず面倒だ。すんごい小さな事でも自己主張が強い。

 将来に丸投げした、当時の王様の気持ちがちょっとだけ分かるよ。

 僕らは話し合う為に、別室へ移動した。


「それでワールドン様、何で競いましょうか?」

「即、本題に入るとは、がっつき過ぎではありませんか?ノヤマ卿」

「ノサト卿のようにふっとり……おっと失礼、おっとりしていては時間が掛かりますから」

「技術が無いからって、人の見た目でしか批判できないとは品がないですなぁ?ノヤマ卿」

「喧嘩を売ってるのか!?」

「その言葉、そのままお返ししますよ!」


 あぁもぅグダグダだよ。ストレスゲーだなこれ。「ワドの忍耐力が1上がった」と、脳内でこんなことしていないと耐えられないよ。


(ん?なんか隣から寒気が……)


 そこには笑顔を貼り付けたまま、静かで深い怒りを貯めているエリーゼがいた。

 ヤバい……暴走しそうだよ!どうしよ!?


「ワールドン様を前にして、このような醜い言い争いを行うなんて不敬ですわ!」

「わわっ、エリーゼ様、落ち着くにゃ!」


 あーやっぱり、マジでキレる5秒前だった。

 ルクルに目配せしてみたけど、目を閉じて天を仰ぐ感じで、諦めの境地のようだ。

 今、ジェットコースターは天辺を過ぎた所だよ。もう、走り切るまでは止まらない。


「それに後ろで、険悪な雰囲気を出している従者達は邪魔ですわ!全員退室しなさい!」

「いえ、我々は護衛ですので離れる訳には」


 ブォーン!バリバリバリ!パリパリーン!


「文句お在りなら力尽くで排除しますわ!護衛と言うのなら実力で示しなさい!」


 空気を切り裂く音と、放電したような音が部屋に響き、次いで窓ガラスや調度品が割れる音が響いた。

 エリーゼが正拳突きの素振りをしたら、窓ガラスと調度品や食器が、風圧で全て割れたよ。

 あの調度品は高そうだったなぁ。モンアード君、ごめんよ。後で僕の財布が弁償するよ。


「……くっ!それでも!」


 ブォーン!バチバチバチバチ……


 放電したようなではなく、放電している音が響く。エリーゼは一瞬で護衛の目の前に移動して、正拳突きをしていた。

 うひゃあ、拳を当ててはないけど顔の横を通り過ぎているよ!


(護衛さんは耳が無くなってるじゃん!髪の毛も焦げてるじゃん!ていうかカーテンが燃えてる!消火しなきゃ!)


「二度は言いませんわ!この部屋から退室するか、この世から退室するか選びなさい!」


(あ、護衛は立ったまま気絶して無い?)


 エリーゼの本気を悟ったマイティ達従者3人組が、大急ぎでココ伯爵達の従者を部屋の外に連行した。

 あと数秒遅かったら、トマト祭りが開催される所だった。


(ギリギリセーフ!)


 カルカンが手早くカーテンを消火していた。

 彼は魚と酒さえ絡まなきゃ優秀なんだよ。

 ココ伯爵達は完全に固まっている。


(ん?なんか匂うな……って失禁してるよ!)


 とりあえずルクルに【伝心】(    )で相談した。


『いやー、間一髪。ギリギリセーフ』

『いやいやいや完全にアウトでしょー!?』

『え?エリーゼ暴走ではセーフ枠だよ?』

『どうみても取り返しがつかない事故だよーー!?』

『あはは、面白いジョークだね』


 僕のやらかしを追求するより、エリーゼの暴走を追求したら?死人が出なきゃ全部セーフ枠だよ?

 さっきのも、エリーゼに対する口答えだったから顔の横で済んだ。僕に対する口答えだったら直で顔の正面だっただろう。


「では、話し合いを再開しますわ!もし、ワールドン様に対し不敬と取れる言動がありましたら、わたくしが黙らせますわ!」

「エ、エリーゼ殿!これは国際問題ですぞ!」

「そうですぞ!メイジーを敵に回すおつもりか!?」


 あ、ヤバい。今のエリーゼへの反論はアウトだよ?エリーゼの雰囲気がガラリと変わる。


「ワールドン様の敵であれば、それが何百万、何千万であっても、わたくし、全力で駆除しますわ」


 目がマジだ。普段よりテンションも声のトーンも落ち着いているけど、本気なのは伝わってくる。

 ルクルとカルカンが2人抱き合ってガタガタ震えている。あの目を見たらなぁ。

 うん。メイジー王国全軍に1人で立ち向かって、無双ゲーするエリーゼが僕も想像できた。


 ココ伯爵達も震えている。心は完全に折れたっぽい。


「はい!ぜ、全身全霊、真摯に対応致します!なぁノサト卿?」

「はい!我々は誓ってエリーゼ殿に逆らいません!そうしようノヤマ卿!」

「わたくしではなくて『ワールドン様に逆らわない』ですわ。次は許しませんわ」

「「はい!ワールドン様に逆らいません!」」


 ふぅ~なんとか平和的に解決しそうだね。

暴走エリーゼの「黙らせる」は物理なので、永遠の沈黙を強要する感じです。


次回は「分家と分家のお家騒動・後編」です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元毛玉作品集
新着順最近投稿されたものから順に表示されます。
総合評価順人気の高い順に表示されます。
ドラ探シリーズ「ドラゴンの人生探求」の関連作品をまとめたものです。
本日の樽生ラインナップ樽酒 麦生の短編集です。
セブンスカイズ
代表作。全25話。
なろう執筆はじめました!なろう初心者作家向けのエッセイです。
― 新着の感想 ―
ん? エリーゼの拳一発。 もうこれで解決じゃダメなの? え? ダメ! あまりの恐怖に仲良くなって(?)るんだから、もう問題がないでいいじゃない。 え? やっぱりダメ?
エリーゼ様つえぇ。一体何者なんだ。 あれだけ揉めてた貴族2人も仲良く回答してくれるなんて。 信者エリーゼ様がますます好きになりました。いいキャラだ。
穏便に話し合いで解決…どころか、暴力で脅迫…? エリーゼ、更にパワーアップしてませんか〜?w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ