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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
約束の帰路

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閑話:ホッドケットの門番達

前回のあらすじ

港町ホッドケットに現れた巨大ドラゴンと謎の全裸女を兵士側からどうみていたのか?

ep.「港町巡り・前編」の頃の兵士長ガルド視点です。

(やべーぞ、信じられないほどにデケえな)


 門番のガルドたちは空を見上げていた。

 そこには金色の巨大なドラゴンがいる。近づいてきたドラゴンは、緩やかに地表へと降り立った。


『やぁ、僕の名前はワールドン。港町モンアードからの情報は届いてる?入れて貰える?』


 情報は届いている。

 金色のワールドンを名乗るドラゴンに逆らわないようお触れがあった。


(しかし、よりにもよって俺の当番の時かよ!)


 ガルドは自分の運の無さに苛立っていた。

 部下を怒鳴りつけて伝令を指示する。


「上に報告しろ!金色のドラゴンがやってきたってな!」


 部下が慌てて伝令に走り出す。

 ここでのガルドの役割は上と連絡がつくまで、このドラゴンのご機嫌取りである。


(ったく、向いてないんだよ!俺には!)


 貴族相手のご機嫌取りも苦手なガルドは、途方に暮れながらドラゴンの相手を務めた。


「ドラゴン様、上のものに確認しますので少々お待ち下さい!」

『うん。その間、僕の話し相手になってよ』

「はい、どのような会話がお好みでしょう?」


 会話を暫く重ねていると、国の事などを知らないらしく、その辺りの質問が多い。

 どこまで国の情報を話しても良いのか、平民であるガルドには判断が難しかった。


「ここはメイジー王国の最も東に位置する港町でホッドケットと言います」

『へー、でも町は小さいね。鉄道はあるみたいだけど、人口は?兵士は多いの?』

「…………」


 これから隣国へ行くかも知れないドラゴンに話す内容では無い、とガルドは考え、答えを躊躇した。


『あれ?どうしたの?』

「いえ、人口は俺の様な下っ端だと分かりかねます。兵士も増減が頻繁な為、詳しい数は分かりかねます」

『そっか、上役の人が来たら聞いてみるよ』


 ガルドは、なんとか乗り切ったと胸を撫で下ろす。

 しかし安堵したのも束の間、伝令からの返事は思わしくない内容だった。


「ドラゴン様、上は今ここに来れないとの事です。また、港町にドラゴン様を受け容れる事はできません」

『そっか、誠意を見せろって事だよね?』


 この港町は小さいが鉄道も通っていて、国境近くな事もあり船も多く、このように巨大なドラゴンは海上であっても受け容れるのが難しい。

 上層部は矢面に立つ事を避けて、ドラゴンの対応を現場に押しつけた。

 ガルドは困り果てながら話し相手をしていたが、ふと一つの言葉が妙に引っ掛かり、心がざわつく。


(ん?なんだ?誠意?)


 ドラゴンが頭を大きく振りかぶって、それから勢いよく地面へと頭突きを落とす。

 凄まじい轟音が響き渡り、大地が揺れた。


(やべーぞ、怒りを買ってしまった……どうすればいい!?)


 これほどのドラゴンが暴れれば1日を持たずとして、この港町は廃墟と化す。

 それが分かっていても、ただの兵士であるガルドにどうにかできる範囲を超えていた。


『これで誠意を示せたかな?入れてくれるよね?(にっこり)』


 恐怖を飲み込み、救いの糸口が無いか必死でドラゴンを観察するガルド。

 ドラゴンの表情だから自信は無いが恐らく笑顔なのだろう。

 頭に響く声も柔らかい印象だ。だからこそ怖い。

 そのように考察を重ね、このドラゴンは笑顔で恫喝してくるタイプだと、ガルドは判断した。


「申し訳ありません。ホッドケットはとても小さく、ドラゴン様が入れる場所は、陸にも海にも御座いません。お引き取りを……」

『狭いから無理って事?』

「はい。海上も混み合っており、とても大きいドラゴン様が入れる場所はありません」


 どちらにしてもガルドは謝る事しか出来なかった。

 これでダメなら上が悪いと割り切り、ガルドはダメ元で繰り返し拒否した。


(……ダメか?)


 ドラゴンは暫く困ったように思案を続けていた。

 だが、何か思い立ったようで急に雰囲気が変わる。


『そういえば、猫魔族の国はここから南だよね?』

「え、あ……はい、行ったことはありやせんが、南にある森の深くに猫魔族が住んでる話は知ってます」

『ありがとう。ちょっと行ってくるよ』


 そう言うと、すぐにドラゴンは飛び去っていく。


(た、助かった)


 ガルドは「何故かは知らないが見逃して貰えた」と、息を吐く。

 そして、もうあんな厄災とは出会いたくない、と思いつつ安堵した。


─────────────────────


 それから3ヶ月程は、何も起こらず平穏な日々が続いた。


「ガルド兵士長!大変です!門に不審者が!」


 非番の朝に部下から叩き起こされるガルド。

 あまりに鬼気迫るその声色に、事態の深刻さを感じ取った。

 慌てて兵装に着替え、ガルドは門へと全力で走る。


(な、なんじゃありゃー!?)


 金髪の女が真っ裸で宙に浮いている。

 だが、その身体は金色に発光していて、直視できないほどだった。


「兵士長!あれって文献にある未知の生命体じゃないですか!?せ、攻めてきたんじゃ?」


 確かに文献にある未知の生命体と重なる要素は多く、「発光している」「浮遊している」「一般的な衣服は着ていない」と、どれも当てはまっていた。


(……ふぅ、落ち着け)


 ガルドは自分自身に言い聞かせた。


(文献は眉唾もんだ、確か【オカルト】だったか?【エイリアン】なんて嘘っぱちだ)


 子供の頃の噂や、酒の席で語られるその与太話は、非常に怪しい出自だと思い直すガルド。


(異世界の知識を持つ賢者とかいう胡散臭いやつが残した文献だ。自称の肩書きからして詐欺の匂いしかしねーじゃねーか)


 ガルドは極めて冷静に、自分自身の中で折り合いをつけた。

 だが、周囲の兵士たちはパニックだ。


「うわーーーーー!伝説のエイリアンだ!」

「賢者はこれを予見してたのか!?」

「ウォーーー!全裸女だー!なんとか見え、ねーよ!眩しい!」

「俺は見るぞ!ぐあ!目が目がぁ!だが諦めないぞ!せめてビーチクだけでも!」

「くっそ!眩し過ぎて輪郭しかわかんねーー!美形でスタイルめっちゃいい!」

「限界のその先へ……心眼を開けば……光の向こうは……見える!俺は超えるぅう!」


(なんか半分以上は楽しんでねーか?)


 ガルドは増援を手配しつつ、錯乱している部下を叱咤する。

 そして謎の全裸女を怒鳴りつけた。


「おい!そこの不審者止まれ!」

「はじめまして、僕の名前は……」

「黙れよ!この痴女がぁーーー!」

「え?それって僕のこと?」


 謎の全裸女は不思議そうに聞き返すが、ガルドは必死に声を張り上げる。


「ったりめーだバカヤロー!天下の往来で裸で宙に浮いているやつなんざ信用できるかぁ!?」

「でもでも、お風呂だと全裸だよね?ね?」

「変態の不審者が!それ以上なにか言うなら攻撃すんぞ!」

「だ、ダメなの!?」


 門番への援軍がドカドカと駆けつけて来た。

 ハリボテの虚勢を張っていたガルドは、小さく息を吐く。


(間に合ってくれたか!)


 何故か謎の不審な全裸女は泣きながら逃走した。

 駆けつけた増援組が、罵声を浴びせ続けたから怯んだのだろうと決めつけ、ガルドは安堵する。


「変態さーーーん、待ってーーー」

「くっ……結局、大事な所は見えなかった……」

「輪郭だけでも眼福じゃったー!」


(ちっ、あの辺のアホ共は後日再教育だな)



 それから暫くの期間、港町ホッドケットの兵士の訓練メニューが過酷なものになった。

一部、ファンもいたようですよ?


次回はモンアード視点の「閑話:モンアードの暗躍」です。

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大きく振りかぶって頭突きww もう攻撃ですやん(*´∀`*) ワドの少女形態の光保護ってどの程度かと気になってましたが、輪郭しかわからないくらいなのか。 兵士たちが楽しそうで何よりですww
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