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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
さぁ…観光へ、ようこそ!

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200/389

海と陸からの同時侵攻

前回のあらすじ

回転寿司ストローと、クラッツ寿司のオープンを楽しくお祝いした後、エリーゼは睡眠薬で長い眠りについてしまいます。

ルクルの話ではカービル帝国が攻めてくるとの事で、緊急会議をする事になりました。

「エリーゼ将軍は約1か月間は目覚めない。その前提で防衛戦を考えようかー」


 そう切り出したルクルの発言から、緊急会議は始まった。

 エリーゼを動けなくしたのだから、何かを仕掛けてくるのは確実だとルクルは主張している。

 皆も色んな意見を出しているけど、狙いが不透明過ぎてどうにもまとまらない。

 そこで僕がズバッと方針を打ち出してみた。


「まずは仕掛けてくる内容を特定しなきゃだよね!」

「そらまー、特定できるなら特定するけどー?」


 すかさずルクルからツッコミが入る。

 だけど、僕の作戦は完璧なはずなので、渾身のドヤ顔を添えて高らかに言い切った。


「博士の新しい助手?の人を捕まえて伝心で読み取ればいいんだよ!それとね、攻めてくる場所の守りを固めればいいんだよ!(超ドヤァ!)」


 ルクルの大きくて長いため息を皮切りに、他の面々もやれやれだぜってな感じで呆れた空気が充満する。

 カルカンだけが「名案ですにゃ!」と言っているから、これがダメな案だとすぐに悟った。

 それからはルクルが指折りダメ出しをし始める。


 僕の案のダメな点は次の様に言われたよ。

─────────────────────

・既に助手の自室はもぬけの殻との事。

・スパイは情報を持っていないと思われる事。

・守りに割ける人員と国土のバランスが合わない。

─────────────────────


 即、助手の身柄を押さえにいったけど、ダメだったらしい。それに、仮に身柄を押さえられたとしても、碌な情報は与えられていないと言う。

 【伝心】(    )の詳細を知らない時から、徹底しているのにこの重要局面でそんな大ポカをするなんて考えられないそうだ。


 守りについても課題が多い。

 圧倒的な強者は多いけど絶対数は少ないので、被害を出さずに、全ての国土を守り切るのが困難なのだ。

 狙いが不明な現在では、どこに守りを割くのが適切かが読み切れないと皆が言っている。


(僕の案は、ダメダメだなぁ……)


 僕がしょんぼりと肩を落としていると、ポンポンと背中を軽く叩かれて振り向く。

 そこにはガトーの笑顔があった。


「ワドよ、大丈夫だにゃん。吾輩の作戦と吾輩の力があれば守り切れるぞにゃん」

「ガトー……」


 ガトーが皆へ作戦を語りだす。すると会議の雰囲気は大きく変わり、その実現へ向けて具体的な検討に移り始めていた。

 ガトーの作戦はこうだ。


─────────────────────

・哨戒人員の拡充。

・内部に入り込んでいる不審人物の割り出し。

・外への哨戒には、望遠の魔術具を使用する事。

・疑似マナ心眼の秘薬を使用し、警戒強化。

・外部からの侵攻には、ガトーが気流操作で対抗。

─────────────────────


 戦闘員で無くても哨戒は可能だから、その人員拡充を先ずは行う。

 次に、内部から悪さをするのが最も防ぎにくいので、不審人物を【伝心】(    )で炙り出していく。

 調べた後で工作員に侵入されたり、敵味方入り乱れての乱戦になると厄介だ。そこで早めにキャッチできるようにしていく。

 その為の望遠の魔術具と、疑似マナ心眼秘薬。


 最後にガトーの気流操作。

 ガトーは仮に乱戦になっても、敵だけを拘束する事ができる。但し、全ての戦場を制御するのは難しい。

 新しく受け入れた内陸の村と、港町キシガイでは700kmも離れている。そんな距離を細かく把握するのは如何にガトーでも困難だろう。

 その為の哨戒強化だ。なるべく乱戦になる地域を少なくすれば、その分、ガトーの負担が減る。

 そして皆は、ガトーの負担をどうやって減らすかを真剣に議論しているところだ。


(僕、役に立たないな……ガトーが羨ましいよ)


 頼もしすぎる友達に、僕は正直嫉妬していた。

 ドヤ顔したい訳じゃないけど、国民が信頼して、命を預けてくれるのが僕じゃない事が不満なんだ。


 守る人達がいる。

 守る手段がある。


 それだけで幸せな事のはずなのに、随分と欲張りになってしまったようだ。蚊帳の外の会議風景をみながら、僕はそんな事を考えていた。


─────────────────────


 明けた翌日から、本格的な防衛強化月間が始まる。

 僕も【伝心】(    )での炙りだしに駆け回っていた。

 虎柄のクシマ博士も、エリーゼを目覚めさせる薬品の研究に入っている。

 地下シェルターへの避難訓練も始まった。

 そっちはカール先生、ヴェスト、ポポロが上手くまとめているみたい。


 猫魔族や勇者パーティーは本格的な哨戒業務に当たっている。

 勇者パーティーは、リッツの事を一旦飲み込んで協力してくれる事になった。恐らく、ノワール君が説得したのだろう。

 カルカンも凄いやる気だった。

 スローガンに「飲みません。勝つまでは」を掲げている事からも、呑兵衛組の本気が分かる。とても頼もしいよ。

 他にも、建国時からの国民は総出で手伝ってくれている。心強い味方に支えられて、僕も誇らしい。


 だけど、悲しい事もある。

 皆が楽しみにしていたココ伯爵達の第三回船舶コンテスト。僕の国からは参加を見合わせる事になった。

 遠足も、社員旅行も皆が楽しみにしていたので、とても悲しい。

 出来ればやりたかったのが本音だよ。

 突然の辞退申し出にも「状況が状況ですから」と、ココ伯爵達は事情を汲んでくれて有難いよね。


 とても多忙だったけれども、準備も一段落したので僕とガトーは一息つく事ができた。

 それでリベラさんから晩御飯に招待されたので、今日は二人でお邪魔する事にしたんだよ。


「こんばんはー、リベラさん。来たよ!」

「吾輩の舌を唸らせる食事はできてるかにゃん?」

「御二人とも、いらっしゃい。ウチ、嬉しいわぁ」


 部屋に案内されたんだけど、急に入った定期健診でちょっと時間がかかるからと、終わるまでビットと遊んでいるように言われたよ。


(定期健診って、急に入るものなの?変だよ……)


 僕は不思議に思いながらも、新作のおもちゃを携えてビットに挨拶をする。


「ビット、こんばんは。新しいおもちゃだよ~」

「わーりゅどんしゃま!がちょーしゃま!おもちゃ!おもちゃ!」

「だから、吾輩はガトーだと何度も言ってるだろにゃん?がちょーって誰だにゃん……」


 ビットの笑顔に心が癒されるよ。

 なんだかんだで緊迫した最近の雰囲気に心が疲れていたみたい。その疲れが解かれていくように感じた。


「ブーーーン、ブーーーン、キャッキャッ」


 ホールンとヘーゼルの協力を得て作った新作のおもちゃは、気に入ってくれたようだ。ホバーバイクのミニ模型みたいなそれは、振ったり傾けたりすると光ったり喋ったりする。

 収録されているのは交通安全上の注意だ。遊びながら安全に気を付けるように配慮してある。

 アイデアと監修はサブロワ君に依頼した。そのお墨付きのおもちゃで、自信作だよ。


「ブーー……」

『まがりかどだよ。さゆうをよーくみて』

「さりゅうをようくみて?」

『きゅうにはしると、あぶないよ』

「きゅうりはしる、あぶない!」


 いつもの積み木には見向きもしないで、新作のおもちゃに夢中なビット。凄く喜んで貰えて心がほっこりしてくる。

 そんな時にクイクイっと袖をひかれた。ガトーだ。一体何事だろう?と、そちらに目をやる。


「吾輩、あのおもちゃが欲しいぞにゃん。ビットに欲しいって言ってきて良いかにゃん?」

「ダメに決まってんでしょコラー!幾らなんでもビットから取り上げるなんて酷すぎでしょ!?」


 僕が叱っても、欲しそうにうずうずしていたから、新たにガトー専用でもう一個作って、好きな言葉を登録してあげるって事で何とか説得。

 ガトー専用って言葉でかなり興奮していたけど、他人が楽しそうにしているのを欲しがるのは昔から変わっていない。

 にしても、見境が無さすぎるよガトー。僕は呆れながらも、笑いの輪の中にいた。けれど……


(な、何?これ……黒の結界?)


 その時、フウカナット村一帯が強力なマナの結界で覆われたのを感じた。慌ててガトーとやり取りする。


「ガトー、これって黒の?」

「だにゃん。破らないとここから出られないぞにゃん。多くのマナを放出すれば破れるが……無理だにゃん」


 黒の結界は、多くのマナを吸収させないと破壊できない。この場合のマナは、僕ら基準での量だ。実行はできるけど、しちゃいけない。

 この結界を破れる程のマナ濃度は、フウカナット村にいる妊婦や胎児、赤子がヘタすると死亡する。

 長い時間かけてゆっくり体に慣らした場合は別。だけどそれだと結界を破るのに凄く時間がかかってしまう。

 そういう意味で、ガトーの「無理だにゃん」は的を得ていた。


 僕は慌ててルクルに【伝心】(    )を飛ばす。


『ルクルルクル……えっとね、緊急事態なんだよ!』

『ワド!?た、助かった!今すぐこっちに来てくれ!緊急事態なんだよー!』


 僕が報告したのに、向こうも緊急事態だと言う。

 訳が分からないけど、とにかく情報のやり取りをしていく。


『えとえと、僕とガトーは結界に捕らわれたんだ。出るまで……結構かかりそうだよ?』

『恐らく、72時間くらいかかるぞにゃん』


 ガトーが【伝心】(    )で割り込んできた。

 目安の時間が分からなかったので助かったよ。


『最悪だ。やられた……くっそー』

『そっちは何があったの?』

『魔獣の軍勢が3つの村に同時襲撃!もう一杯一杯だよー』


 魔獣の軍勢が来ている時に、僕らとエリーゼが動けないのは厳しいかも知れない。でも、三か所ならギリギリで守り切れる範囲に思えた。


『一か所をカルカン一人に任せて、他は皆でどうにかできないの?』

『ワドワド。魔獣の強さや規模にもよるぞにゃん』

『それだけじゃないんだよー』


 なんだかルクルの感情に泣きが入っている。

 ただ事では無さそうな雰囲気に僕はゴクリと唾を飲んだ。


『海上からも二つの大艦隊が攻めてきてて、二つの港町が同時に攻撃されてるんだー!どうしよー!?』


 その報告を受けて、僕とガトーは一瞬見つめあう。暫くの静寂が過ぎて……



『『な、なんだってー!?』』

ワドとガトーは黒の結界に閉じ込められて、エリーゼは眠りについていて目覚めない。

そして、招かれざる客は大勢。

ルクルは焦っています。


14章「さぁ…観光へ、ようこそ!」の本編はここまで。

今回の別キャラ視点の閑話は5話予定です。


・専門外の医学分野で不安が多いルクル視点

・趣味への情熱と恋愛に燃えるクラッツ視点

・一生懸命に病気と戦い奔走するリッツ視点

・ライブ会場にて思い出を語るマイティ視点

・猫魔族のお悩み相談役を頑張るガシマ視点


となります。


次回はルクル視点の「閑話:不安を抱えるギルドマスター」です。

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いよいよ本気を出して来ましたね… ガドーとか見ていると本当に龍ってチーターですねぇ〜普通国土を一部放棄して守りを固めるのに…でも民を傷つけられないのを見計らってやるのは敵ながら天晴ですね… ルクルが…
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