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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
育児はトラブルの連続

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辺境伯と騒動の終幕

前回のあらすじ

リベラとビットを主役にした映画を撮る事にしたワド。

連作の1本目が完成し、その出来に大満足しているようです。

 季節はちょうど巨蟹節(7月)に入ったとこ。ミカド王からの調査報告書が届く。


「僕、このアモーク伯って人が許せないんだけど!」

「いや、せやからワールドン様、ちゃいますって、アモーク伯も辛かったんですわ」

「許せないって、ワドはどうしたいんだにゃん?」


 調査報告書をめぐって、僕たちは緊急会議を行っていた。今回の騒動について一切合切の報告を求めていて、それに対し律儀に仕事をした訳だけど、内容には物議を醸している状況。

 まず、ザグエリ王国は非常に逼迫している。そらまぁ自業自得と言えばそれまでだけれど、無実の国民が路頭に迷っている事態は、僕の望む所じゃない。

 次に、ミカド王が不在の期間中に、国民の不満を抑えるため、僕を悪者にするプロパガンダが横行していたらしいんだ。

 だから、大量亡命や僕への誹謗中傷に繋がっているって事みたいだね。


 それで、暴動が抑えられない状況になりつつあるので、とある提案がなされている訳。

 それが悠久の秘宝と実行犯の交換依頼だ。

 プロパガンダを扇動していたトカプリコ元帥は、国にとって不可欠な存在だから失う訳にはいかないとの事。

 ミカド王も僕の名で許す通達を既にしてしまっているから、ここで反故にすると僕の国の公約に対し不信感を持たれるのでNGだとさ。


 んで、ようやくバンナ村の虐殺事件の実行犯であるアモーク伯が登場だ。

 誰かがけじめとしての責任を取らないと、もうどうにもならない状況。だから実行犯を処刑する事になったらしいんだけど、ただ処刑するよりは僕の国に処分を渡して、引き換えに悠久の秘宝を手に入れる。

 そうする事で、早めに復興を果たし、国民不満を低減させたいという提案だった。


「僕はミカド王の提案に賛成だよ!けじめだよ!けじめ!これ以上、ザグエリ国民が苦しむのはヤだな僕」

「それは分かる、えらいわかるんですわ。やけど、アモーク伯は立派な御方や、せめて減刑を……」

「くどいよストロー!僕、アモーク伯なんか知らないし?そもそも嫌いだし?早く決着を着けたいんだ!」


 僕は提案の通り実行犯を処分して手打ちにしたい。

 だけど、さっきからストローがやたらと食い下がってくるんだ。

 人格者?どこがだよ!一緒に贈られてきた転写の魔術具の映像。僕は……僕は、アモーク伯を許せない!


(僕が毅然とした対応をするんだ!)


 僕が怒りを必死に飲み込んでいると、ルクルは穏やかな目をしながら優しく問い質してくる。


「ワドはそれで後悔しないのー。俺たちはさー、お前の国の国民だから、お前の気持ちを優先はする。だけどさー、勢いで決めちゃっていい問題と、そうじゃない問題があるのは流石にわかるよねー?」


 ちょっとカチーンと来た。

 言い方はマイルドにしているけど、これって僕が考え無しでKYって事を暗示しているよね。

 僕だって日々成長しているんだから!


「だーかーら!けじめなの!誰かを責任取らせないといけないのに、無実の人に罪を着せる訳にもいかないでしょ!?冤罪はダメ。絶対!だから、アモーク伯を厳罰に処するしかないって訳!Do you understand?」

「流石にちょっとイラっときたよー……じゃあ勝手にすればいいだろー!」

「勝手にするよ!」


 僕とルクルの初めての公の場での喧嘩に、幹部の皆はオロオロ。というよりプチパニック?ん?リゼの様子がおかしい?


「ワワワ……ワド……ル、ル、ルクル、ワド、ルクル……ワワワドワドドワくるっくる~るくるっくる~」

「リゼ氏が壊れたのにゃ!?」

「リゼ、落ち着いて。そんなに珍しい喧嘩じゃないから、あと後半はラザみたいになっちゃってるよ!」


 混乱の収拾がつかなくなり、その日はお開き。

 夜にはガトーから飲みに誘われた。最近は皆で飲む時しか無かったので、ちょっと嬉しい。

 カール先生のビアバーに訪れると、ガトーとストローが先に待っていた。


「ごめんごめん、待った?」

「既に始めてますわ。料理もな適当にやで」

「吾輩も待ちきれずに、もう2杯目だぞにゃん?」

「ちょちょ、そこは『待ってないよ、今きたとこ』でしょ!お・や・く・そ・く☆」


 二人は、また恋バナモードが始まった、と呆れ気味だけど、僕としてはこれは待ち合わせの挨拶だからね!テンプレは守らないとダメだよ?

 それから、最初の一杯のオススメを聞いて、乾杯し、暫く飲んでいたら、ガトーから話を切り出される。


「……後でちゃんとルクルに謝っとけにゃん」

「…………」


 ちょっと感情的なのは分かっている。

 でも、僕としてはバンナ村に沢山の負い目がある。それに、どんな選択をしたって後悔はするんだ。だから、せめてカタキは取りたいと思っている。どうして誰もそれを分かってくれないのかが分かんない。


「せやな……人格者やった、事情があった、とはいえやった事は事実やな……私も納得しましたわ」

「ストロー!分かってくれて僕、嬉しいよ!」

「……このけじめで最後にするにゃん」


 流石は被害者友の会の仲間だよ。ちゃんと説明したら分かってくれた。その足でそのままルクルの元に直行した。謝罪と共に僕の思いを伝える為に。


「分かった。もういいよー、俺も熱くなってごめんなー」


 それからルクルから【ガラケーの魔術具】(          )を借りてリゼに連絡する。


『もしもし、ルクル?今あの子への伝言を書き終えたの。あのね……その……』

『むっふっふーー、リゼの可愛い声、僕、聞いちゃった!』

『ワ、ワド!?』


 リゼの甘えた感じの声、初めて聞いたかも?

 っていうか二人で魔術具で話す時ってこんな感じなのか。これは次の恋バナ緊急MTGが必要だね!

 そうして、ルクルへの謝罪と、リゼへのフォローが出来て僕は大満足で次の日を迎える事が出来たんだ。


─────────────────────


 翌日。

 承諾の書簡をエリーゼに届けて貰う事になった。

 笑顔のエリーゼは「すぐに届けてきますわ!」と意気込んで飛び出していく。

 800kmちょいあるザグエリ王都へ走りで日帰りできちゃうエリーゼに、ホバーバイクは無用の長物だと思うんだよね。譲って欲しい。(切実)

 それから、ここ数日はカービル帝国のちょっかいが相次いでいて、ルクルとカルカンは対応で身動きが取れないみたい。


 あまりルクルと連絡を取れないままに、実行犯の引き渡し&悠久の秘宝を贈与の日がやってきたんだ。

 今日もルクルは、カービル帝国のトラブル対応でやっぱりダメだってさ。

 引き換え現場である両国の中間点に、被害者友の会のメンバーでやって来たよ。先方の担当者はトト子爵のようだ。


「ワールドン様、この度は我が国の申し出を受けてくださってほんまに感謝しとります」

「うん、ご無沙汰だよねトト子爵殿。そちらのおじいさんがアモーク伯かな?」

「ハハハ、そうですわ。でも、おじいさんというほどの年や無いです。私と大して変わらんのですわ」


 トト子爵は頷き同意を示す。それから話を聞くかを問われたので、早速お願いしたよ。

 アモーク伯の猿轡と目隠しが外されるのに合わせて、僕は質問を始める。


「はじめまして、アモーク伯。君をザグエリ国民の為にこれから処刑する訳だけど、何か不満はあるかな?言い訳があるのなら聞くけど?」

「いえ、何も御座いません。儂のようなもんにまでお声をかけて下さり、ありがとうございます」

「……アモーク伯」

「ストロー宰相殿……みなまでゆうなや。儂は満足して逝ける。ほんま感謝しとるんやわ」


 知り合いっぽいストローとトト子爵は、物凄く沈痛な表情をしている。僕も、本当はやりたくない。

 でも、やりたくない事から逃げて後悔するのは、もう二度と嫌なんだ!


─────────────────────


 後味が悪い。

 処刑は恙なく終わった。僕のマナ力場で叩き潰したんだ。

 アモーク伯は、何故か喜んで処刑を受け入れた。

 最期は「ほんまに、ほんまにありがとう」と笑顔で生涯を終えている。

 あんな酷い事をしておいて、笑顔になれる神経が僕には分からなかった。

 後味は最悪だし、なんだか心も重い。


(それでも、これで間違ってないはずなんだ)


 それから少しトト子爵とお話しをしたよ。

 アモーク伯の代わりに伯爵に出世して、彼の領地をそのまま引き継ぐ事になったそうだ。

 僕は知り合いの出世が誇らしくて、凄く喜んで褒め称えたよ。

 決して、処刑の後味の悪さから無理に目を背けている訳じゃないよ?

 いや、本当はそうなのかも知れない。別の事を考える事で少し気が楽になるから。


(僕……僕、悪くない)


 帰り道。

 ガトーとストローからは夜の飲みの誘いを受けた。

 二人が僕に気を遣ってくれている事が分かって嬉しかったな。

 夜にカール先生のビアバーへと足を運ぶと、カルカンとマナ技術者達の飲み会に遭遇したよ。


「んにゃー?ワールドン様見っけ」

「だから、僕を蛍みたいに言わないでよねKYカルカン

「にゃー、そんなに褒められると照れるにゃー」


 なんだか、カルカンがま~たもじもじして喜んでいる。

 KYって言われて喜ぶなんてドMなの?

 マナ技術者達も、カルカンを何度もKYと呼んでいて、その度にカルカンは誇らしそうにしていた。

 めっちゃハイテンションな飲み会に背中を押されて、僕は嫌な事を完全に忘れてはしゃいでいたよ。


(やっぱり、落ち込む事があった時にカルカンといると、凄く癒されるなぁ……ほんと感謝だよ)


 翌日、バンナ村のカタキを取った事をリベラさんに報告する為に、共同住宅を訪問した。

 ちょうど朝食だったので、僕も一緒に誘われたよ。

 そんで食事中に意気揚々と報告をしたんだ。


「僕、しっかりとアモーク伯に神罰しといたからね」

「……伯爵様……」


 僕の報告にリベラさんは泣き崩れた。


(え?え?一体どうしたの?)


 泣き止んだリベラさんにどうしたのかを尋ねる。暗い表情をしていたリベラさんが、重い口を開いた。


「……伯爵様には、えらい良くして貰ってはりました。ウチにとっては恩人やったから、悲しくて」



(……え?……え?カタキじゃない……の?)



罪悪感から一気に老けたアモーク辺境伯は、神罰がくだされる事を喜んだようです。


次回は「深刻な小児科不足と薬不足」です。

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おや?主犯格なのに何かありそうですね〜、王の命令に逆らえなかったとかでしょうかね〜? 「ちょちょ、そこは『待ってないよ、今きたとこ』でしょ!お・や・く・そ・く☆」←なんかクレヨンしんちゃんを思い出し…
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