無自覚ドラゴンのやらかし・後編
前回のあらすじ
様々な港町でのやらかしがバレてしまったワド。
追及をかわす為の弁明をする事になりました。
「ほほぅー、エリーゼ様が悪いというのかなー?では、被告人は証言をしたまえー」
土下座で脅すつもりは無かったから、冤罪だと説明。
反抗的だった猫魔族は、土下座の直撃で大怪我をしたので癒やしたけれど、加減できず寿命が10年減った件は故意では無いので、軽い過失だと訴えた。
確かに全裸徘徊してしまったけど、マナ加減が出来ていなくて発光していたから、大事な所は光ガードでセーフと主張しておく。
それに、全裸OKだと思っていたから悪気は全く無く、不審者でも無いと説明したよ。
宿屋の件は、エリーゼに騙されて浮遊の力を解除したのが原因だから、僕は無罪だと再度説明。
飲食店は食事中に少し浮いてしまい、エリーゼから指摘されて慌てて浮遊の力を切ったら、結果的に店を破壊してしまったのは事実。
だけどさ……
エリーゼが、食事中に指摘をしなければ大丈夫だったはずだから、軽い過失だと弁明した。
食事中に余計なことを指摘するエリーゼが悪い、と念の為に補足しておく。
メイジー王国の使者の船は、エリーゼが煽った結果、強度を試す事になって、試したら沈没してしまった。だから僕は無罪だと強く主張。
屋台を食べ尽くして、収穫祭から全ての食材が無くなった件は、人の食事量を知らなかった事やお店の在庫事情を知らなかった事。あと、欲しいと言ったらどこまでも買ってきたエリーゼが、全面的に悪いと主張を続ける。
それに「これ以上は売れません!」と言っていた店員を、笑顔で脅していたエリーゼの方が問題だと、補足説明した。
(あれ?おかしいな……)
説明すればするほどに、ルクルの視線が汚物を見るような目になっていく。
カルカンは、僕とルクルの顔色を伺って交互に見ているので、キョロキョロと挙動不審だ。
「カルカン君……どう思う?」
「え……と、その……」
(これ、証言失敗すると、凄くトンデモないヘビーなおしおきを……されちゃうのでは?)
さらに続きの証言を催促されたので、僕は悪くない事をどう説明すべきか考える。
不安な気持ちを押さえて必死に証言したよ。
料理人の拉致は僕は関与していなくて、逆に開放するよう諭したから、どちらかといえば僕は褒められるべきだと主張を繰り返す。
鉄道運行の件は、つい見物をし過ぎて遅れた。
けれど、僕は時計を持って無いから仕方なかったと説明する。あと、運行を止めたのはエリーゼだから、僕は一切悪く無いと主張したよ。
それに、たった3時間遅れたぐらいでダイヤが混乱する鉄道側が悪いと補足も付けておく。
ラコア将軍は勝手に挑んできて勝手に自滅したので、僕は悪く無いんだと説明。
身振り手振りを加えて、そら必死の弁明だったよ。
で、「ワールドン様に敵うはずがありませんわ!」と煽ったエリーゼが一番悪いと主張しておいた。
定期船の運休は、僕を追いかけるために無理したエリーゼのお祈りが嵐の原因なので、僕は無罪だとシッカリ主張しておくよ。
グルのエリーゼと白が悪く、エリーゼを振り切っただけの僕は一切悪く無いと力説をする。
僕、頑張ったよ……
「カルカン君、容疑者の弁護するー?」
「これは、無理です……にゃ」
(カルカン、君だけが頼りだ!頼むよ!)
祈りも虚しく、カルカンは弁護をしてくれなかった。
更にルクルが細かい所をチクチク指摘しはじめる。カルカンもルクルも酷い。
「まず、被告人の『脅すつもりは無かった』発言ですが……相手がどう思ったかが重要なのでギルティー!」
「ちょ!待って!弁護人!弁護人!」
「……異議なしですにゃ」
ふぁ!?いきなりカルカンに裏切られたよ!?
「次に猫魔族の住人を大怪我させて、回復させたから寿命が削れるのは仕方ない、と主張している件について弁護はありますかー?」
「……ありませんにゃ」
なーーーーーーんで弁護しないんですかね!?この猫魔族!使えない弁護人だよ!
「全裸OKだと思ってたらしいけどー、これは?」
「それは指摘したのですけど、ワールドン様は大丈夫といって聞く耳もってくれなかったのですにゃ!」
う……確かに。
人への変化を習い終わって、港町へ移動しようとした時に「御召し物なくて平気ですか?」とカルカンに言われた。だけど意識体のケタも全裸だったから全裸OKだと思い込んでいて「大丈夫(キリッ)」と返していたんだ。
(そっか……カルカンは全裸NGって知ってたんだな)
「はい。ギルティ確定ですねー」
「ちょっと待って、僕の光ガードあるから!」
「青い光線やAT-×だと、光は透明になるからアウトー!」
「そ、そんなぁ……」
カルカンが頭の上に【?】出している状態だ。
異世界知識が無いと分からないよね。
ルクルも十分にギルティだと思うけど?僕、悪くないよ?
「さて、宿屋や飲食店の破壊についてー」
「大丈夫!エリーゼが全額弁償したから!」
「ちなみにワドの体重はー?」
「えと……乙女のヒ・ミ・ツ……なんちゃって!」
「はい、キモいからギルティー」
体重なんか測った事ないからわかんないよ!
120m超えている僕が、人サイズになったらめちゃくちゃ圧縮されている事しかわかんないよ!
そもそもキモいって理由でギルティすんな!
「メイジー王国の使者の船は何故破壊したー?」
「だからそれは宿題の件で相談してるじゃん」
「あー、面倒事をこっちに持ってこないでー」
「人の貴族と揉めるのは面倒ですにゃ」
「カルカン君もそう思うよねー?」
相談しているのに、聞いてくれないのはそっちじゃん!
宿題だって言っているのに!
カルカンもなに同意してんのさ!
ホーミング地雷の相談も「俺は爆弾処理班じゃないのでー」と言ってはぐらかすしさ!
(酷いよ!)
「収穫祭の屋台を一人で全部食べつくしたと……これは他にも余罪がありそうですねー」
「え……と……収穫祭は凄い多く人が集まるから1万食を超えると思うんですけど?……にゃ?」
「食べれるんだから仕方ないじゃん!それに買い占めろなんて指示してないよ!」
必死に弁明したんだけど「エリーゼ様の暴走を知っていながら止めなかった」とギルティ認定される。
いや無理じゃん。既に行動済みだったし、仮に事前に察知できてもエリーゼ説得を誰がするんだよ?
(エリーゼ止めるなんて無理だよ?)
ここからは本当に僕は悪くない部分なのに、これまでの心象が悪くて形勢が思わしくない。
「料理人の拉致は僕じゃないから!むしろ改善したんだよ!僕を褒めてよ!」
「被告人はこう言ってますけど、カルカン君はどう思うー?」
「……も、黙秘しますにゃ」
だーーー!弁護人が黙秘権行使してどうすんの!?なんか喋れよこの猫!
これは僕が悪くない件だぞ!完全に冤罪!
「鉄道運行を3時間も止めて『僕は悪くない』と主張している件についてー」
「時計が無かったの!それにエリーゼが勝手に止めたの!僕は次の汽車でも良かったの!」
「はい、カルカン君ー、引導渡してー」
「最初から次の汽車でいいって伝えておけば回避できたと思います……にゃ」
えぇーー!この流れで僕が悪い事になるの!?
結果論だから!結果論でもっともらしい正論を言ってくる友達にはガッカリだよ!
「ラコア将軍に関して僕は手を出してない!」
「エリーゼ様に責任転嫁してますねー」
「責任転嫁は良くないですにゃ」
嘘でしょ!?責任能力が無いと主張するのは弁護士の仕事だろ!?何言ってんの?
「嵐に関しては白が勝手にやったんだよ!」
「海で1週間も大嵐なんて迷惑ですねー」
「定期船だけじゃなくて、漁師さんも困ると思いますにゃ」
ついには検事と一緒になって被告を口撃し始めた。
……こんな弁護人、要らないよ……
弁護人が全く役に立っていませんが、ワド自身は本当に自分は悪くないと思っています。
「知らなかったから無罪」の主張です。
次回は「まるで別人」です。
※色でのキャラ呼称の補足
本作の最高位ドラゴンの7柱は色で呼ばれています。
金、銀、白、黒、赤、緑、青、となります。
特にドラゴン達は敬称も付けずに色で呼び合っているので、唐突に色だけの呼称で出てくる事もあります。
分かりづらくて申し訳ないです。




