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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
ドラゴン外交

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母子を捜索

前回のあらすじ

皆に隠し事をされていたバンナ村の真実を知ってしまったワド。

すぐ助けに行きたいのに、何故か大量の仕事を積まれて身動きが取れないようです。

「ワドが探しに行けない様に仕事を積んでいるの」


 雪の音が強くなる中、消え入りそうなリゼの声に耳を澄ませる。既に吹雪に変わり始めた雪の中で、僕とリゼは見つめ合っていたよ。


「……どういう事なの?」

「ルクルを怒らないであげて。これはルクルなりの優しさなの」


 どうやら、余計な事を考えなくて済むように仕事を大量に積んでいるらしい。時間が出来るとどうしても助けに行きたいと考えてしまうからと言われて、そうかも知れないとは思った。


「最初から教えて欲しいかな……」

「ワドの気持ちが落ち着いてるのなら、捜索隊のお見送りにいく?」

「うん。いきたい」

「ん、分かったの。ルクルの説得は任せて」

「ごめんね、リゼ」

「……何のことか分かんないの」


 忙しくしていたから既に宝瓶節だ。リゼが誕生節を楽しみにしていた事は知っていた。でも、バンナ村の事件があってそれどころじゃ無くなった。

 リゼ自身は何も言ってくれないけど、エリーゼからも聞いていたし、僕も本当は祝ってあげたかった。リゼとルクルの婚約を。


「今はリベラさんが大変な時期だから、また今度にするの」


 そう言ってリゼはルクルとの婚約を延期したんだ。

 リベラさんを救出したら、直ぐにでもお祝いするよ。それまでリゼには待っていて欲しいかな。

 本格的に雪が強くなってきたので、今日の作業は切り上げて戻る。冷えたのでラザの所にいって、お汁粉を飲んで温まった。


(うん、餡子の甘い香りが染みわたるなぁ。おいし)


 その柔らかい甘さで、気が急いて強張っていた心と体がゆっくりとほぐされる気がしたよ。明日は冷静に捜索隊を送り出せそう。


─────────────────────


 翌日。

 雪が積もったパウダースノーの広場に捜索隊が勢ぞろいしていた。

 総指揮官はストロー。副指揮官はクラッツが務める。

 捜索本体であるホリター暗部の面々と、表の偽装部隊としてレオ勇者パーティーが選出されていた。

 そして、ステルス特務部隊隊長のガトー。

 隊員0人なんだけど、隊長の肩書に拘ったガトーの為に用意された役職だよ。


「ガトー……僕の代わりにお願いね」

「うむにゃん。任せろにゃん。絶対に助けてくるから泥船に乗った気分で待ってろにゃん」

「……そこは大船だよ?」

「ココ伯爵様達の船やおもて、任せてや」


 気を遣ったのか、クラッツも軽口を叩いている。

 まだ夜が完全には明けきって無くて薄暗い朝。今にも雪が再び降りそうで天気は下降気味だけど、ガトーやクラッツの軽口に、少しだけ気分が上向くよ。

 レオ勇者パーティーも大量の荷物をホバーバイクに積み込んでいる。彼らは陽動&目くらましが主な活動だから、かなり派手に立ち回るみたいだ。

 彼らにも激励を送る。


「ノワール君、頼むよ。リベラさんとビットを無事に連れ帰ってきてね」

「おう!俺らに任せろ!絶対に助けてやる。俺は勇者だからな!」

「あの今、声かけられたの自分……」

「ノワールは黙ってろ」

「ノワールは黙ってて」

「……は?はぁ?」

「なんだか最近ルヴァンさんが辛辣っす~!」


 うん、それは僕も感じていた。ムッツリのルヴァン君は語りを止めるノワール君に厳しくなってきているね。

 捜索隊が出発する頃には雪がちらつき始め、粉雪が舞う中、彼らは足取りを進めて行った。


「みんな!頼んだから!」


 僕はその背中達に、エールを送る事しか出来ない事が歯痒かったよ。

 それからも不安な毎日を作業漬けで過ごしていた。


『う~。ワド~、ボクのおはぎもたべる~?』

「……どうして?ラザはおはぎ好きでしょ?」

『ワドにあげる~元気出して~』


 僕が不安で落ち込んでいる事を、ラザにまで心配されているみたいだ。でも、仕事で忙しい時は考えなくて済むけど、少しでも手が空くと不安で押し潰されそうになる。

 見かねたリゼが、とある提案をしてくれた。


「……ワド、あのお薬を使う?」

「ううん。今、本能のままに動いたらダメな気がする。そんな気がして怖いよ……」

「でも、不安に押し潰されそうなワドをこれ以上見てられないの」


 ホリター家の媚薬は不安を解消する効果がある。

 副作用としては、異性に触れられる以上の接触があると本能が押さえられなくなる。性が無い種族でも関係ない。異なる性だと認識する相手に反応してしまうんだ。僕はリゼ達と長く過ごした事で、人の女性を同性と認識してしまっている。

 それは。飲んだ後の影響も顕著なことを意味する。


「男性の人族に、接触以上のふれあいを暫くしなければ平気なの。リゼも一緒に飲むから……」

「リゼは飲まなくていいよ。ルクルといちゃいちゃ出来なくなるでしょ?僕だけ少し貰おうかな?」


 ラザの所から引き上げて、僕の自室でジンジャーティーに媚薬を入れて飲んだ。不安が雪解けのように綺麗に流れていく。


(少し楽になったよ。リゼありがと)


 それからはブラック労働に明け暮れて、隔日で媚薬に溺れる日々が続いた。飲むと不安は無くなるけど、時間が空くとまた不安に飲み込まれそうになるんだ。

 最近の摂取量はマイティから凄く心配されている。


「ワールドン様、これ以上は危険です」

「大丈夫、触れないように細心の注意を払ってるから。それに飲まないと僕もう不安で動けないんだ」


 今日もそのやり取りをしていた。

 マイティからルクルへの密告があったみたいで、ルクルの執務室に呼び出しを受けたよ。


「ワド、それ以上近づくなよー。お前は絶対に男性に触れちゃダメだからなー」

「うん……」


 それから、ルクルと色んな話をした。

 ルクルが僕に気を遣ってくれているのは分かった。

 その中で有意義な提案もあったかな。


「ワドはさー、リベラさんとビットを救出した後の事を考えておいてくれるー?」


 ルクルから、せめてリベラさんが救出できた時に不自由なく迎えられるようにしよう、との提案だよ。

 とにかくネガティブな事に囚われて、不安に押しつぶされそうになっているのは良くないし、それを媚薬で無理やり誤魔化すのは良くないって事だった。


(頭では、分かってるんだけど)


 僕は曖昧な返事をして、部屋を後にした。

 考えないようにしようとすればするほど、考えてしまう。どうしてこうなったのかを。


 ミカド王が僕をナメているのは分かっていた。

 ルクルは僕が分かって無いと思っていたみたいだけど、僕だって気づくよ。でも、怖がられるよりはいいと僕は思っていたんだ。

 だって、怖がられて会話を拒絶されたらそれまでだし、話し合えばいずれ分かり合えるかもって思っていたんだ。


(僕が甘かった)


 皆が僕の事を甘いとかお人よしだと思っていたけど、それは僕にとっては嬉しかった。だって怖がられて無いって事だしさ。だからどれだけ失礼な対応を取られても、受け流したよ。でも、それが原因でこんな大事になるなんて、僕は思っていなかった。

 本来であれば、ミカド王が失礼な対応を取った時、僕は厳しい対応をする必要があったんだ。


(今なら分かるよ)


 ルクルが、それをしなくて済むようにしてくれていたんだって。それに甘えてあの時、有耶無耶にして放置したんだって。でもそれじゃダメだったんだ。

 僕は自問自答する程に、後悔に打ちのめされた。

 そしてその分、媚薬の量が増えていったよ。


─────────────────────


 季節はそろそろ双魚節。

 捜索隊が中間報告の為に、一時帰還する事になっている。僕は気が急いてしまって、待ちきれなかったから少しでも近くまで出迎えに行きたいと懇願し、どうにか許可をもぎ取ったよ。


「ワドー。この辺りまでだからなー」

「うん、ここで待つよ」


 僕、ルクル、エリーゼ、カルカン、それと従者3人組でバンナ村の近くまでやってきた。アルが不在だけど、バンナ村に訪れた時の初期メンバーだね。

 どことなく見覚えのある小川があった。この川を辿ると、リゼの独り占めリサイタルをした場所につくはずだよ。ちょっと行ってみたいと思って聞いてみる。


「……ダメだ。そこは絶対にダメだ」


(こんなに強く拒否られるとは思わなかったよ?)


 仕方ないので、気を取り直してエリーゼとの思い出話に花を咲かせた。

 ん?ルクルに近寄ったカルカンは、なにやらソワソワしていて、ルクルにおねだりをしている。


「なんか暗いのにゃー、私の誕生節は盛大にお祝いして欲しいのにゃ!」

「えー?カルカン君さー。今の状況わかってるー?」

「今年はスタウト祭りを所望するにゃー」


 相変わらずのKYだよね。ちょっと不謹慎すぎるかな?僕もカルカンを諭そうと声をかけたけど、反論されて一理あるなと思っちゃったよ。


「ガトー様が迎えにいったから、リベラ氏とビットは必ず助かるにゃ。楽しい気持ちで待ってればいいのにゃー、という訳でお酒が飲みたいにゃ」


 モラル的にはガトーに思う所があっても、なんだかんだでカルカンは信頼しているみたいだね。

 なんで、そんなにガトーを信頼しているの?


「んにゃ?ワールドン様は信頼できないのにゃ?友達はまず信じるのにゃ。きよくやさしいのワールドン様ならきっとできるにゃ」


 なんだかKYだから出来るとかイキナリディスられたんですけど!?しかも、すんごい笑顔だよ?何気に酷くない?

 でも、そだよね。友達は信じなきゃだよね。


(ありがとう。少しだけ気が楽になったかな?)


 それから2時間程待っていたら、レオ勇者パーティーが遠目に見えた。ん?何やら戦闘しているっぽいよ?

 ちらりとエリーゼ&カルカンを見てみたけど、落ち着いた雰囲気だ。加勢は必要ないのかな?とか考えていたら、戦闘終了したみたい。

 レオの薙ぎ払いで大木が5本まとめて薙ぎ倒されていたし、ルヴァンは4丁どころか16丁も扱ってバンバン連射していた。二人が決めやすいように敵の位置を調整するピコラの動きも良かったね。


(うん。ノワール君は役に立ってないね)


 隠れていただけのノワール君と合流してこちらに向かってきたよ。

 でも、いるはずのメンバーが見当たらない。



(あれ?ストローとガトーは?)

ホリターの媚薬は不安が取り除かれる効果が含まれてます。

結婚、出産、育児、金銭、将来などなど

色々と不安があると踏み出せないので、不安を全く意識できないという代物になってます。

……本能のままに振る舞う事に、一切不安を覚えないという事です。


次回は「総合ギルドの設立」です。

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 お邪魔しています。  とってもワドの気持ちが心配な回ですね。何とか薬で気持ちをもたせるなんて、体にいい訳がないんです。でも、そうしないといられないくらい辛いということが分かります。  国を維持する…
「……ダメだ。そこは絶対にダメだ」→まさかあの村になにかあったんでしょうか… ワド荒れてますね〜、媚薬には麻薬のような効果もあるのかな?
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