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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
ドラゴン外交

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バンナ村の虐殺事件

前回のあらすじ

バンナ村に遊びに行きたいとせがむも却下され続けたワド。

勇者パーティーから衝撃の事実を得ます。

「ねぇ、今のとこ……もっと詳しく教えてくれる?」

「ワド!待て!おい、お前ら外に出てろにゃん!」


(なんだかガトーが焦ってる?)


 ノワール君が他の3人を連れて走り去っていった。

 でもね、彼らから【伝心】で読み取れたんだよ。


「ねぇ、バンナ村で起こった大量虐殺ってのは何なの?僕、聞かされてないんだけど?」

「これには海より深い訳があってだにゃん……」

「ガトー?友達の僕に隠し事は無しだよ?」

『う~?ワド~?なんで怒ってるの~?』


(怒ってる?これは違うよ。悲しんでいるんだよ)


 友達だと思っていた人達に隠し事をされて、とても傷ついている。


「僕、バンナ村の人達を助けに行くから……」

「待つんだにゃん!今、ルクルがこっちに向かってるぞにゃん!事情を聞いてからにするにゃん!」


 そうだ。ルクルも知っているはずだ。

 この件だけは、ちゃんと問い詰めないと……皆が信用できなくなりそうだよ。

 事情を理解できていないラザだけが、陽気に餡子スイーツを食べている。ちょうどスイーツが底をついた頃、血相を変えたルクルとリゼが駆けつけた。

 二人とも大急ぎで来たのか、肩で息をしている。


「ワド。バンナ村の件を聞いたんだって?」

「うん。どうして僕に黙ってたの?」

「あのね、落ち着いて聞いて欲しいの」


 二人は口々に落ち着くよう促してきた。

 それから、遅れて駆けつけたマイティとボンがお茶を用意してくれた。アップルティーの爽やかな香りで、ざわついていた心が少しだけ凪いだかな。


「実は……」


 そこからルクルが語った事実は、とても許せるものじゃ無かった。

 まず、朗報としてはリベラさんとビットは無事らしい。でも予断を許さない状況のようだ。

 次に、凶報。

 僕はミカドを許せそうにない。

 バンナ村に僕の神像ができていた事で、バンナ村を反逆の村と認定し、断罪したとの事だ。

 ストローはバンナ村が反逆をしていないと弁明するのと、減刑を願い出る交渉に向かっていた。勇者達はその護衛役。道理で誰もストローが長期不在な事を気にしない訳だ。僕以外は全員知っていたんだな。

 そして交渉も虚しく、9割もの住民が見せしめに……殺された。村長も帰らぬ人となったそうだ。


「……ミカドに天罰を下してくる」

「落ち着けワド!まだリベラさん達が人質なんだ!」


 そうだった。まだリベラさんやビットが囚われているんだ。絶対に助けなきゃ。


「ワド、落ち着いて欲しいの」


 そういってリゼが僕の手を握ってきた。凄く心配そうにしている。でも、僕は隠し事をされたショックと、バンナ村の事実の衝撃で立ち直れそうにないよ。

 それから隠し事をしていた理由をルクルが説明してくれた。

 僕が無暗に【伝心】を使ってショックを受けてしまうから、バンナ村の件は無事に村人を解放してから話す予定だったとの事だ。皆が僕の為に隠し事をしていた事は分かったけど……それでも辛いよ。


「とにかく、明日ストローと話せる場を設けるから、それとな、伝心で読み取るのは絶対ダメだからなー」

「……ルクル分かったから、これからは隠し事をやめてね?」

「くれぐれも暴走するなよー?」


 ルクルは何度も【伝心】を使わないように念押しをしていた。恐らく、相当にショッキングな状況を読み取れてしまうのだろうな。その配慮は有難く受け取っとく事にするよ。それから翌日まではガトーがずっと謝っていた。ガトーは友達思いだから、隠し事は辛かったんじゃないかな?


「……許すよ。ガトーも辛かったでしょ?」

「お前ほど辛くはないぞ……吾輩がそのリベラのマナを知っていれば救出に行けるのにな」

「ふふっ、ありがと。それと語尾忘れてるにゃん?」


 ガトー&ラザと一緒に餡子夜食を食べて過ごしたけど、その餡子はとてもしょっぱい味がしたな。


─────────────────────


 そして陽が昇ると、改めて幹部が僕の部屋に集められて、バンナ村の詳細を共有する場が設けられた。

 部屋の流れる水は温水にしているから湯気が立ち込めているし、会議前の静けさで、流れる水の音だけがやけに大きく聞こえていた。

 僕は会議前に譲れない事だけ宣言する。


「先に一つ言っておくね」

「ワールドン様、何なりとお申し付けくださいませ。わたくし達は全力で対応しますわ!」

「なんですにゃー?」


 エリーゼとカルカンだけが普段通り。他の皆は僕に気を使っているのか顔色が悪いね。


「ミカド・ザグエリは僕の敵だ。絶対に容赦しない。だけどザグエリ王国の国民には被害を出したくない。安全にリベラさん達を助けられる案を僕は求めてる」


 皆の顔に緊張の色が走った。僕が明確に敵と呼んだ事に反応したみたい。確かに僕は争いを好まない。でも、大切な人を危険にさらされて無抵抗でいるほど、温厚でもないよ。


「今すぐミカド王を駆除してきますわ!」

「わわっ!待つのにゃ、エリーゼ様!」


 エリーゼが暴走しかけて、カルカンが止める。リッツも止めに加わって、何とかエリーゼは冷静さを取り戻した。

 そこへストローが挙手して立ち上がる。


「バンナ村の一件と、ザグエリ王国との交渉を報告させて頂きますわ」


 そこから語られたストローの報告には腸が煮えくり返った。皆も同じような表情をしていたから、気持ちは同じだと思う。

 まず、ストローは竜鱗や黄金聖水、マナ鉱石を手土産にバンナ村の人質の解放を申し出た。解放に必要な金額は用意する旨を伝え、それでも難しい場合はせめて減刑だけでもという提案をした。

 回答は否。手土産を受け取っておきながら、交渉に応じる素振りも見せなかったミカド。そこでどのような条件なら応じるかを粘り強く交渉。出された条件は次のようなものだった。


─────────────────────

・マナ鉱石の半永久的な納品。

・メイジー王国のモンアード領の占領と献上。

・カービル帝国のナワオキ領の占領と献上。

・ワールドン王国の国民の全奴隷化。

─────────────────────


 とても呑める訳がないよ。百歩譲ってマナ鉱石を納品したとしても、メイジー王国やカービル帝国に戦争をしかけて領土を奪えってのは嫌だ。

 それに僕の国民を奴隷化するだって?

 ふざけるな!こんなの対等な条件じゃないよ!


「んー?ザグエリ王国の上層部はおバカしかいないのかなー?」

「ハハハ……耳が痛いで」

「しかしこれでは戦争不可避では?ストロー殿?」

「バラン殿もお手柔らかにやで……ま、せやな」

「吾輩がちょっといって神罰してこようかにゃん?」

「ちょ!?ガトー様やと洒落にならへん!」


 皆もザグエリ王国と戦争回避は無理だと考えているようだし、僕もそう思う。問題はリベラさんやビットをどうやって安全に救出するかなんだ。


「ストロー、リベラさんの救出は出来そうだった?」

「あ……いや、あのそのな……」

「ストロー?」

「……せやな、ひとまず無事ではありますわ」


 煮え切らないストローが気になって、伝心を……


「「ワド!」」


 ルクルとガトーから強めの叱責が飛んできた。

 そういや【伝心】は使わないって約束だっけ?

 ついうっかりだよ。そんなに怒らなくてもいいじゃん。

 リベラさんやビットが心配なだけなんだからさ。

 そこからストローが、リベラさんとビットがどこかに幽閉されているという情報を語ってくれたよ。危険に晒すわけにはいかないのと、所在が分からないからホリターの暗部を使って慎重に調べているそうだ。


(安全第一だよね。焦っちゃダメ、落ち着こう)


 僕は早く助けに行きたい気持ちを、必死に押さえていた。ストローも元部下を現地の協力者として動員する事を確約してくれている。ルクルから時間がかかっても安全第一でロングスパンで取り組む方針が出されて、全員がそれに賛同したよ。

 次に交渉失敗した詳細も説明を受けた。

 ミカド王は娘をバンナ村の人に奪われて殺されたと思い込んでいるらしく、恨みが凄かったらしいんだ。

 それに……

 僕の神像が決定的で、火に油を注いだような状態だから反逆の意思がない、と説明しても聞く耳を持ってくれなかったと。


「私の力不足ですわ……えろう申し訳ない」

「そんな事ないよー、ストローは良くやったよー」

「そうだぞにゃん。ストローで無理なら誰がやっても無理だったぞにゃん」


 僕もそう思う。久々に会ったストローはかなり憔悴した見た目だ。彼が全力でリベラさん達を救おうとして、ボロボロになるまで頑張ったんだって分かるし、ストローを責める事ができる人は誰もいないよ。

 そこで強烈な炸裂音と間欠泉のような水しぶきが上がった。エリーゼが平服した状態から頭を地面に叩きつけたからだ。


「エ、エリーゼ?何してるの?」

「わたくしの建てた神像がご迷惑をおかけして申し訳ありません。お詫びの気持ちですわ」

「エリーゼ様、それ……ワールドン様のマネにゃ?」


(はいーーー?)


 なんかカルカンが僕のマネとか訳の分からない事を言っているけど?

 そしたら、エリーゼが肯定の言葉を語り出した。なんで!?


「必殺、ワールドン流奥義、邪覇丹畏頭ジャパニイズ……怒牙挫ドゲザ!……ですわ。心からの謝罪の時に使う必殺技ですわ」

「土下座はやめるにゃー!」


 とにかくエリーゼには、土下座はしないように厳重注意。リベラさん母子の捜索隊が結成される事になって会議は終了。僕も探しに行きたいけど、光って目立つからと皆に諭されたよ。


(だけど、だけど……僕も心配なんだ……)


 こんな大変な時期なのに、何故かルクルからは物凄い量の仕事を積まれた。忙しすぎて捜索の事を考える暇もないよ!どうしてこんな鬼畜な所業するのさ!


─────────────────────


 作業に忙殺される日々。ここ最近は大雪だった。

 僕は雪の中で必死に作業している。

 そこにリゼがやってきたよ。


「ワド……少しは休みましょう?ね?」

「でも僕、早く終わらせてリベラさんを探しに行かなきゃ」


 顎に手を当て少し考えたリゼは、静かに告げる。



「ワド、あのね?実は……」

ここでワドに説明した内容は事実と一部異なります。

交渉した後に村人が殺された事になっていますが、

実際には交渉の前に殺されています。

本当の現状を語る事は危険と判断し、ルクルが台本を変えました。


その詳細についてはこの後の閑話でご確認下さい。


次回は「母子を捜索」です。

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 お邪魔しています。  とっても心を痛める出来事ですね。でも、何かいろいろと事情もあるようで、如何なる真実があるのかはまだよく分かりませんね。  とにかく、ワドの気持ちは落ち着かないんでしょうね。こ…
ミカドはシンプルにゴミですね、もしかしてリッツのいた王国もミカドに滅ぼされたとかありそうですかね? ルクルはなんで伝心を気付いたんですかね〜?読んでいたのかな?
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