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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
ドラゴン外交

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ホラーハウスで女子会

前回のあらすじ

各国訪問にカルカンを連れまわす為、回収で訪れた猫魔族の国。

ワドと同じ姿を選んだアルと遭遇します。

「ダミアちゃん、よろしくね」


 この、あーしさん事、ダミアちゃんはメイジー王国の男爵令嬢だとさ。とてもニコニコしている。年齢は17歳。僕が同い年だねと伝えたら、「あ、はい」ってすんごい真顔で言われた。何か変だったかな?

 彼女はアルが謝罪で各地を回っていた時に出会っていたらしくて、今回のアル失踪中に再会を果たしたそうだ。


(ふむふむ。二人は家出コンビなのか……)


 ダミアちゃんも家出みたいだ。というか成人と同時に意に添わぬ結婚を強いられるって状況で、それが嫌で逃げ出したそうだ。相手のお家柄はいいけど、かなりのオッサンらしくて、生理的に無理だとさ。

 貴族は政略結婚が当たり前の様だ。でも、そんなんじゃ恋バナもつまんないから、こういう駆け落ちラブストーリーもいいね。いい飲み会のネタが見つかったよ!


「アルは戻りたくなったらいつでも戻ってきてね」

「……はい。申し訳ありません」

「成人のお祝いもしたかったん。部屋の前にいっぱいプレゼント置いといたから!僕のは自慢作だよ!」


 僕はアルが戻ってきやすい様、必死に言葉を選んで伝えたよ。部屋の前がプレゼントだらけなのも伝えとく。僕が一生懸命アルに話しかけている間、エリーゼは終始無言だった。

 エリーゼはリゼから本気で叱られたらしい。

 リッツもアルに申し訳ないのか、無言だったな。

 マイティは、アルとダミアちゃんの仲の良さを見て、静かに失恋していた。ぼ、僕的にはまだ脈ありなんじゃないかなーと思うんだけど?


(僕、マイティには頑張って欲しいかな!)


 それから、今日はカルカンの家にお泊りする事になったんだ。アルが「今夜だけは一人になりたい」と言っていて、ダミアちゃんも1泊お泊りなんだよ。

 これはもう、女子会オール待った無しだよね!

 皆でワイワイと晩御飯を食べた。カルカンの妹自慢がうざかったけど、確かに自慢するほどの料理上手。


「ワールドン様、わたくし御前失礼致しますわ!」


 食事を終えた後に、エリーゼが就寝を告げてきた。

 エリーゼは、女子会をリゼに譲る為に睡眠薬を飲んで眠りにつく。トスィーテちゃんも明日仕事だからと夜食だけ用意したらすぐに寝ちゃった。

 と、いう訳で、僕、ダミアちゃん、リゼ、リッツ、マイティで女子会オールなんだ!楽しみ!


「ワールドン様、おやすみなさいにゃ。あ、それと、トスィーテの部屋には夜近づかない方がいいにゃ」

「え?どうして?」

「忠告はしましたにゃ!私はもう寝ますにゃ!」


 カルカンからの就寝前の挨拶。

 妹の部屋に近づくなってのは過保護な気もするけど?

 ま、騒音に厳しいからなぁ……トスィーテちゃんは。一応気にしておくかな。

 トスィーテちゃんが用意してくれた夜食は、サツマイモチップス、スイートポテト、サツマイモケーキ。

 そのラインナップを見て「犯罪だよ」ってリッツが呟いていたけど……僕、太らないから!(ドヤァ)


「あーし、このチップス好きかも?」

「ダミアちゃんはしょっぱいお菓子派なの?」

「ん。確かにおいしいの」

「リゼ姉さんって、本当に別人みたいですよね」

「ちょっとー?お姉さんと呼ぶにはまだ気が早いんじゃないかな?僕はマイティ推しなんだけど?」


 ダミアちゃんは、エリーゼ姉さん、リゼ姉さん、と呼んでいて、既にアルを結婚相手でロックオン済み。

 僕がマイティに援護射撃をしているんだけど、マイティは困った顔で黙るだけだった。


「あー、伝説の勇者のマイティさんですね。あーしはどっちが一番目の妻でも構いませんよ?」

「あの、ダミア様。私の事はお気になさらず……」

「ってか、その伝説の勇者って何なの?僕知らない」

「え?ワールドン王国では有名じゃないんですか?」


 ふむふむ。戦犯はカルカンと……メモって置こう。

 確かに、マイティは勇者だろう。伝説級だ。多くの国民が集まる最中で、全裸を魅せ付けた勇者。ん?なんかマイティから訂正要求がきたから訂正すると、紐みたいな水着でほぼ全裸(・・・・)を魅せ付けた勇者。あれはワールドンカップの伝説にはなっている。しかしわざわざ言いふらすとは相変わらずKYだね、カルカン。


「あ、あたしちょっとお手洗い!」


 そう言って、リッツがトイレに向かった。

 夜も遅く、日付は既に変わっている。気づいたら随分と楽しくお喋りしていた。

 マイティもついさっき眠ったよ。

 それにしても、ダミアちゃんっていい娘だね。

 色んな話題の引き出しがあり、話の切り返しも巧かった。何より一緒に話していて楽しい。

 【伝心】で読むと、結婚相手はリコム・クーロン伯爵という、ちょび髭メタボのおっさんだから可哀想。


「じゃ、あーしの番ね。それでね……」

「きゃーーー!」


(な、何事!?)


 遠くから、リッツの叫び声が聞こえた。特に敵意や攻撃的なマナ反応は無いから敵じゃないとは思う。


「あーしがリッツちゃんの様子みてくるね」

「うん、ダミアちゃんお願いね」


 ダミアちゃんが駆け足でリッツの所に向かった。そこにコッソリとリゼが内緒話をしてくる。リゼの提案はリコム伯爵だと可哀想だから、マイティとダミアちゃんの両方を娶るように、アルへ働きかけるのを協力して欲しいって事だった。僕はサムズアップして快諾したよ!


(アルには甲斐性みせて欲しいかな!)


「「きゃーーー!」」


 今度はリッツとダミアちゃんの二人の叫び声。

 これはただ事では無いけど……僕は怖くて足が引けている。聞こえなかった事にしよう。


「ワド?怖いの?リゼが見てこようか?」

「僕、怖いの!オナシャス!」

「ふふっ、ワドは甘えん坊なんだから」


 リゼがゆっくりとリッツ達の所に向かった。これで一安心と思った……安心?

 なんだかまとわりつくような視線を感じる。僕一人になった部屋はやたら静かで、その静寂さが不気味に感じた。

 でも、その静寂の中で耳を澄ますと……


(これって、刃物を研ぐ音?)


 肌が泡立つような音がかすかに聞こえる。音の方向を見ると、音は消え、また背後から聞こえ始める……

 よく見るとリゼが出て行った扉がほんの少し開いて……る?その隙間から見えたのは……



「ギャーーー!」



 僕はいつの間にか叫んでいた。

 だってそこには、血まみれになった包丁を持つトスィーテちゃんが……生気の無い目でこちらを見つめていたんだ。

 でも、僕が叫んだら既にそこには居ない。


「ワド!?どうしたの大丈夫?」


 僕の叫び声を聞いたリゼが慌てて駆けつける。

 肩には気絶したリッツとダミアちゃんを抱えて。

 楽しかった女子会は、急遽お開きとなったよ。


─────────────────────


「おはようございますにゃん!」


 翌日の朝。

 現れたのは普段通りの明るいトスィーテちゃんだった。

 昨日のは幻?

 朝食後にカルカンに問い合わせる。


「だから忠告しましたにゃ」


 どうやら、トスィーテちゃんはここの所は毎晩、自室で包丁を研いでは、緑色の蜥蜴を包丁で切り刻んでいるらしい。でも朝になるとその事実を全く覚えていないんだ。


「この間の呟きは本当に怖かったのにゃ。伝心で読み取りますかにゃ?」

「無理無理!結構ですから!」

「でも、ガトー様にこの事実を伝えないと危険にゃ」

「そ、それは分かるけどぉ……怖いの無理!」


 その後も、リッツが見たトスィーテちゃんや、ダミアちゃんが見た事を報告される。もう天秤節なのに、背筋が凍るようなホラー話を聞かされて、僕は涙目だった。

 エリーゼが猫魔族の国王との外交を済ませたら、即座にお暇する事にする。もう一泊とか考えたくない。



(あの家はホラーハウスだよ!)



 それから大慌てで出立準備だ。

 空輸邸の近くは朝霧が立ち込めていて、昨日の件もあって何だか薄気味悪かったから、さっさと立ち去りたい気持ちで一杯だよ。


 僕の国に移住したい猫魔族を、カルカンが取りまとめてくれた。20人もいる。【伝心】で関係性を探ったら昔の飲み仲間みたいね。

 お酒を餌にギルドマスターから無理難題を吹っ掛けられる未来しか見えない。カラフルな色合いで、黒猫はいないけどさ、ワールドン王国に来ると漏れなくブラック確定だから。黒猫化まっしぐらだよ!?

 未来の社畜候補達がぞろぞろと空輸邸に乗り込むのを待っている間、アル達と挨拶を済ませる。


「アル、気持ちの整理がついたらいつでも帰ってきてね。僕、待ってるから!」

「はい」

「ワールドン様、兄をよろしくお願いしますにゃん!今度来る時はゆっくりしていって下さいにゃん」

「う、うん……用事が出来たらね!」


 嘘です。嫌です。無理です。怖いです。

 トスィーテちゃんと僕が笑顔の応酬を繰り広げる中、ダミアちゃんがエリーゼに何か耳打ちしていた。


(何だろ?アルの事かな?後で聞いてみよっと)


 出発の準備が整ったので、ドラゴン形態へメタモルフォーゼし、空輸邸を持ち上げて上昇する。



「またね!」



 大声で別れの言葉を告げ、そのまま大空へと飛翔。

 メイジー王国に入る頃には天気も良く、気分も上々。

 ミレール女王には事前連絡してあったから、王都の指定された空き地に着陸する。

 そして、猫魔族の皆さんは完全にグロッキー。

 その事についてカルカンから追及されて、ぶち切れたエリーゼが全員再教育って流れになったよ。


ーーー猫魔族 vs エリーゼVTRーーー

「ワールドン様!なんにゃあの加速は!慣れてない人には耐えられないにゃ!仲間に謝るにゃ!」

「ごめんごめん、最近は進化した人ばかり乗せてたからさ、つい……ね?」

「なーーにが、つい……ね?なのにゃ!?反省が足りないにゃ!」


〜〜〜カルカン、頭を鷲掴みにされる〜〜〜

「反省が足りないのは猫魔族ですわ。そうでしょう?カルカン?」

「はいにゃー……」


「カルカン氏!?なんでそんな女に従うのにゃ!?」

「そうにゃ!猫魔族の権利を主張するのにゃ!」

「ヤってやるにゃん!」

「待つのにゃ!クシマ氏!ガシマ氏!アマミ氏!だめにゃ!逆らってはだめなのにゃ!」


「全員、性根を叩きなおしますわ!」

ーーー猫魔族 vs エリーゼENDーーー



 外交予定にない熱血指導の日が加わっちゃったよ。

ワドもガトーも本気でトスィーテちゃんを怖がってます。

今の状態のトスィーテちゃんと一緒に過ごしても、

激痩せするだけで世界一可愛いと言い切るカルカン。

筋金入りのシスコン&KYですね。


次回は「屋台完全制覇」です。

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― 新着の感想 ―
 お邪魔いたします。  なんとなく、アルは上手くいきそうな雰囲気なので、安心です。  トスィーテちゃんは、いったいどうしたんでしょうか? これは、夜みる風景じゃないですよね。何があったのかな?
二人目の失恋キャラですかね〜、リッツの二の舞になるか一発逆転するか!果たしてどうなるのでしょう!
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