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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
ドラゴン革命の黎明期

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142/389

役場じゃなくてギルドだよね

前回のあらすじ

新しく冒険者と冒険者ギルドが発足しました。ルクルが初代ギルドマスターに就任します。

それと前後してアルが失踪しました。

「アル……大丈夫かなぁ?」


 アルが失踪してから1週間が経った。

 マナは感知できるから生きてはいる。ルマンド君に鉱石ラジオで連絡とってみた所、ホリター家の暗部で追跡は出来ているとの事だった。

 今も僕の部屋で、アルの行方を話している。


「ワールドン様!アルフォートの居場所は分かっているので心配要りませんわ!」

「でもでも、僕、心配だよ」

「むむ?アル氏のルートだとホバーバイクで猫魔族の国を目指してるのかにゃ?」

「む?その先のブールボンかもしれないぞにゃん?」


 アルはホバーバイクを勝手に国外へ持ち出して、猫魔族の国&ブールボン王国方面に向かっている事が分かっている。ほんとアルはどうしたんだろう?


 ルクルは新しく設立したギルドの運営が忙しくて、この一件が起こってから会っていない。

 【伝心】でアルの事を相談したら、今は時間が必要という回答だった。ここの所で自信をつけていたアルの中の何かを、エリーゼの暴走が壊してしまった、とルクルは見ていたよ。


 僕はそんな簡単にアルの事を割り切れなかった。

 それに、リッツの件も片付いていないんだ。あれからリッツは一度も従者の仕事についていない。どうも避けられている気がするんだ。学院に様子を見に行ってもよそよそしいしさ。

 これも【伝心】で相談したけど、今は放っておくのが一番だって回答だった。僕、そんなこと無いと思うけどな。話し合う事が大切だと思うんだ。


 そう考えていた所に、モンアード領の役場から連絡があった。移住希望の女性が現れたんだ。

 ちょうどいいから、リッツと二人きりで行く事にしたよ。君主命令を使ってリッツを無理やり連れ出した。

 空輸邸の前までリゼと2匹の猫魔族が、見送りに来ている。


「じゃ、行ってくるから留守番よろしくね」

「ん、任せて。リッツも頑張って」

「…………はい」

「リッツ氏、暗いのにゃ!モンアードはお魚美味しいとこにゃ!代わりに行きたいくらいにゃ!」

「吾輩は港町は行かないぞにゃん」

「お土産買ってくるね!ほらリッツ行こう!」

「どうしてもと言うのなら、吾輩も一緒に行ってあげても良いぞにゃん?って聞いてにゃん!」


 このツン・デレネ子には構ってられないよ。


─────────────────────


 僕は久しぶりのメタモルフォーゼをして、空輸邸を運んだ。

 別にもう日を改める必要はないんだけど、なんとなくいつもの宿を取る。見慣れた店主に挨拶を済ませて、ベッドの上に荷物を置いたら、さっそくリッツと向き合ったよ。

 今夜はじっくり、リッツと語るんだ!


「さ、リッツ。僕とお話しようよ!」

「……あたしに話す事は無いよ?」

「どんな話でもいいよ!」

「……あたしには無い」

「僕にはあるよ!大好きなリッツといっぱいおしゃべりしたいな!」


 僕がそう言うと、リッツは物凄く長いため息を吐いた。なんか気に障る事いったかな?


「はぁ~~~……なんで、あたしに言えるのに、肝心な所で言えないのかなぁ」

「な、なんの事?」


 僕はリッツの言葉の意味が分からなくて狼狽えた。そしたらふいにリッツが笑ったよ。


「ふふっ……ワールドン様はKYだから仕方ないかぁ」

「え!?僕、KYなの!?カルカン枠なの!?」

「うん。幹部の皆はそう言ってるよ」


 めちゃくちゃショックだった。特にカルカンにも言われているのが屈辱だよ!

 でも、やっと心を開いてくれたリッツとお話が出来たんだ。


「あたしも頭では理解できてるんだ。でもね、心が受け付けないんだ」

「嫌なら出ていかなくていいんだよ!僕、大好きなリッツにいつまでも居て欲しいから!」


 またもリッツが凄くガッカリした声をあげたよ。


「はぁ~~~……なんであたしに言うかなぁ?」

「え?え?」

「こっちの話!気にしないで!」

「でもでも気になるよ?」

「ワールドン様って……発言に気をつけてって誰かから言われたりしない?」


 リッツの指摘にちょっとドキッとした。めちゃ心当たりしか無いから。


「何故だか良く言われるよ?」


 リッツは鼻で笑って答えた。な、なんなの?


「ま、そこがワールドン様っぽくて、可愛い所でもあるからね」

「そう?僕ってば可愛い?なんだか嬉しいな!」

「……別に褒めてないよ?ま、いっか」


 面と向かってディスられるの結構キツいかも?

 それからリッツがゆっくりと自分の考えを語ってくれた。


「受け付けない理由は分かってるんだ」

「良かったら、僕にも教えてくれる?」

「あたしが……ルクルの一番じゃ無いって事に、心が追いつかないんだ……分かってても、突きつけられると辛いから……」


 それはなんとなく分かる。

 ルクルの中でリゼが一番になっているのは、僕も受け入れるまでに時間がかかったから……


「映画デートの後、リゼお姉ちゃんとルクルがキスした事を知っても、諦めたく無かった。でも、連れ帰っていいなんて、あたし居なくてもいいんだって……」

「そんな事ない!そんな事ないから!」

「分かってる。ルクルもそんなつもりじゃないと思う。……けど、辛いと感じるのはイケない事なのかな?」


 僕は慰めるつもりで口を開いたけど、言葉は出てこない。だって仕方ないと思っちゃったから。


「ワールドン様……あたし、辛いよ」

「リッツ!ゆっくりでいいんだよ!僕も時間かかったから!ゆっくり受け入れよ?」

「……いいのかな?まだ好きでいても……」

「全然OK!恋のアディショナルタイムはありだよ」

「ふふっ。ワールドン様はホント恋バナ好きだね」

「落ち着いて行こう。まだ慌てるような時間じゃない。だよ?」

「ふふっ……うん。あとちょっとだけ好きでいたいな」


 僕はリッツも大好きなアニメの台詞で励まし続け、心が前を向くように応援したんだ。


「ありがとう。少しだけ心が軽くなったよ」


 日付が変わる頃には、リッツの自然な笑顔が戻っていた。やっぱりちゃんと話し合うのが大事だよね!


─────────────────────


 翌日、モンアード君への挨拶を済ませた後に、さっそく役場へ訪問したよ。手続きもスムーズだったな。

 帰り際にリッツから思いがけない事を指摘される。


「ワールドン様、王都に役場は作らないの?まだ無いけど困らない?」


 盲点だった。

 今まで無くても何となく回っていたから気付かなかった。でも、ルクルは気づいているはずなんだ。帰ってから聞く事を心に決めたよ。

 けど、国に戻ってからもルクルは忙しくて会えなかった。

 アルも居ないから僕が決めないと……そうだ!

 アルの執務室で公務を代行しているストローへ、僕のアイデアを伝えにさっそく向かったよ。


「ワールドン様、役場はアルフォート様が計画進めてたみたいやで?いきなり居らんようなってもうたから頓挫しとるみたいやわ」

「ストロー!別に役場じゃ無くてもいいんだよ!ギルドだ!ギルドを作ろう!」

「はいー?冒険者ギルドはありますやん?」

「他の色んなギルドだよ!」


 僕、思いついちゃったんだ!

 どうせなら新しくギルドの文化を作ればいいんだってさ。

 それから僕はひたすらに働いた。

 数日間、頑張ったかいあって、各ギルドの骨格が決まってきたんだよ!

 僕の裁量で決めた書類をエリーゼに手渡す。


「では管理者はルクルに決定ですわ!わたくし早速、説得してきますわ!全力ですわ!」


 ドドドドドドドド……!


 エリーゼに任せておけば説得は問題ないね。

 一仕事追えた僕は、達成感でいっぱいだったよ。


─────────────────────


 だけど、ルクルに仕事を積みすぎたのもあって、色々と歯車が噛み合わなくなったんだ。

 港町も役場をやめてギルドにしたら、あちこちでトラブルが頻発して大変な事になった。それの収拾に追われて、ルクルはもっと身動きが取れなくなったんだ。


 僕が困り果てていた時に、港町のトラブルを解決してくれたのが、自称勇者達だった。

 最近は、港町近辺のクエストを優先して受注しているみたいで、ギルド職員がうまく案件処理できていない時に、王都でどのように捌いていたかの情報をくれたらしい。……主にノワール君がね。


 でも、一連の混乱については、吊し上げを受ける事になったよ。


「では、ワドがギルティだと思う者は手をあげるにゃん!」


 ガトーが仕切っている会議で、今まさに吊し上げされている。ルクルは現場指揮で居ない。アルも失踪したままだから、僕を抑えられる候補としてガトーが議長に選ばれていた。


「ほら、ワドよ。目を閉じてないでちゃんと現実を見よにゃん。お前とエリーゼ以外、全員が手を上げてるぞにゃん?」

「ぼ、僕、見えてないかな!」

「ワールドン様!往生際が悪いのにゃ!しっかり目を開けるにゃ!」

「せやで。現実は受け止めましょ?」

「わたくしが悪いのですわ!ワールドン様を責めないで下さいませ!」


 僕を止められるルクルをエリーゼで封殺して、常識担当のアルが不在のままで、色々と改革を強行推進した事で大変な事になった。

 エリーゼは僕を庇ってくれているけど、僕が自重しなきゃならなかったのは、今なら分かる。止めてくれる人がいるって大事な事だと痛感したよ……


─────────────────────


 更に数日が経過し、ようやくルクルに余裕が出来たのか、僕の部屋へとやってきた。


「ワドー、お前なー。エリーゼ様を送り込んでくるのはヤメロよなー。いや、マジで洒落にならんからなー」

「ごめんごめん。で、いつギルドの仕事に戻らなきゃなんないの?今日はゆっくりできる?」

「んー?諸々マニュアル化してきたから、よほどのトラブルが出ない限り、俺の仕事は無いよー」


 え?そうなの?心配して損した気分。


「俺が大変だったのは事実だからなー」

「だから僕、謝ってるでしょ!?」


 そこにリッツが乱入してきた。最近来なかったのにどうしたの?


「ワールドン様!前にお話ししてた水泳大会をやろうよ!」

「急にどうしたの!?」


 リッツはキッとルクルに強い視線を向けた。


「あたし、悩殺水着で最後の花火をあげるんだ!」

「よし!面白そうだからやろう!」

「おいー?ちょっと話が見えないんだけどー?」


 僕とリッツは笑顔で頷きあった。



「マイティさんみたいに悩殺しちゃうから!」

「マイティの紐水着を超えてみせるからね!」



 後ろで控えていたマイティが、動揺して後ずさっていたな。



いつもは止めてくれるルクルとアルがいなかった事で、ワドはズレた政策を推し進めてしまいました。

エリーゼは常にワドのYESマンですから止めませんし……。

元々、役場で行政が回っていた港町の方は大混乱だった模様です。


ここでワドは止めてくれる人の大切さを学びました。


次回は「ドキッ!ドラゴン水着大会」です。

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[良い点] アルくんはどうしたんでしょうかね〜、自分を見つける旅に行っちゃたんでしょうかね? [一言] ルクルが駄目ならもういっその事勇者とくっついちゃうんでしょうかね〜
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