孤児院を運営
前回のあらすじ
リッツが亡国のお姫様だった!?それはおいといて、ワドは学力テストを学院生と一緒に楽しんでいました。
そして勇者達はリッツのストーカー化しているようです。
「もう!信じられない!」
リッツは大変お冠だったよ。
それは防護服を着ないままに、僕に相談している事からも明らかだよね。
自称勇者達は、ルクルが面談して条件付きで釈放されたんだ。それと僕に反抗できないように、リゼが転写の魔術具で強要していた。これ以上は深く言わない。
ノワール君は「あー、撮られるの快感かも!?」と言っていた。
友達になれそうと思ったけど、変態紳士は無理かな……ごめんなさい。
「ワールドン様!ちゃんと聞いてる!?」
「だ、大丈夫聞いてるよ。迷惑行為を一緒におさらいしようか?」
リッツと一緒に彼らの所業をまとめてみた。
・学院女子寮への侵入。
・学院内外での待ち伏せ&張り込み。
・放課後の移動時の尾行。
・偶然を装った声かけとしつこい粘着。
・他の生徒への解放の呼びかけ活動。
だいたいこんな感じ。
学院女子寮への侵入に関しては、学院女子全員から嘆願書が届いている。だって侵入者の75%は男だし。
身の危険を感じるから、夜もおちおち寝られないと苦情がめちゃ来ているんだ。
待ち伏せ、張り込み、尾行は百歩譲って許しても、声かけとしつこい粘着、それと解放の呼びかけ活動は本当に迷惑している。
ーーーリッツが困っている迷惑行為VTRーーー
〜〜〜迷惑な張り込み〜〜〜
「そろそろ通るはずなんだよな?」
「……姫は今日遅刻か?」
「宿の女将さんから、アンパンというのを貰ったわ!張り込みにはこれとミルクだそうよ!」
「いや、これ周囲の住民に完璧にバレてますよね?」
「大丈夫だ!バレてない!」
「そうよ!何言ってるのノワール?」
「……我々の張り込みは完璧だ」
「あ、ならそれでいいっす」
〜〜〜迷惑な待ち伏せ〜〜〜
「あ、リッツ姫が来たぞ!お前ら隠れろ!」
「……既に準備完了だ」
「私も完璧に潜んでるわ!」
「いや、隠れたり、潜んだりしてる人達の声量じゃないかなーと思うんですけど?」
「ノワールは黙ってろ!」
「ノワールは黙ってて!」
「……お前の意見は聞いてない」
「えー……自分、スナイパーなんで専門だけどなぁ……」
〜〜〜迷惑な女子寮への侵入〜〜〜
「皆!姫様の部屋は3階の突き当りだそうよ!」
「でも、その前にリッツ姫がどんなトイレで用を足してるか、どんなお風呂に入ってるか確認だな」
「えー、それ確認する意味あります?」
「……これは一部の需要を満たす為に必要な事で決して我々が見たいからではなくそれに俺の趣向とも違っていてこれは必要な供給の行為であって不可避な……」
「ルヴァンさん?誰に説明してんですかね?」
〜〜〜迷惑な声かけ粘着〜〜〜
「あ!こんな所で会うなんて奇跡だ!やっぱり俺とリッツ姫は運命で結ばれているんだ!」
「……このような奇跡はまたとない邂逅」
「そうなんだ。じゃ、あたしは行くから……」
「あぁ!お待ちになって、ここからのストーリーが凄いのですよ、姫様!」
「ちょっと……ピコラさん、邪魔です」
「分かったリッツ姫!お腹が空いてて不機嫌なんだろ?ちょうどアンパンがあるんだけどどうだ?」
「それ朝のパンですよね?もうカピカピだし要らないから持って帰って……それに邪魔しないで」
「あぁん!姫様ツレない!」
「ノワールさん、この人たち連れて帰って……」
「すいませんねぇ、自分にそれが出来るんならとっくにやってますよ?」
「はぁ……」
〜〜〜迷惑な呼びかけ活動〜〜〜
「学院の皆さん!リッツ姫が虐げられているんだ!俺たちはそれを解放したい!よろしければこの署名に協力してくれ!今すぐ!あ、そこの君!お願いだ!」
「……姫の為だ。お願い申し上げる」
「私たちは正義の解放者なのよ!この署名活動を通して姫様に未来を与えるの!皆様、協力して下さい!」
「なんだか、自分ら浮いてますよ?」
「ノワールは黙ってろ!」
「ノワールは黙ってて!」
「……浮いてるのはお前だけだ」
「はーい!浮いてまーす」
ーーーリッツが困っている迷惑行為ENDーーー
こんな感じで毎日を送っているみたいだよ。
それに学院の女子からも「リッツ姫」って揶揄われて、それもうんざりしている要因みたいね。
とりあえず、女子寮への不法侵入だけはマジ洒落にならないので、そこだけは強化する事になった。
防犯設備の拡充は勿論だけど、今まで責任者を特段決めていなかったのも問題だったので、これを機に決める事にしたよ。
学院寮は孤児院も兼ねているので、孤児院の責任者も併せて検討するんだ。
ルクルとリゼ、それにカール先生とバラン君にも検討に参加してもらった。
まず、防衛責任者を立てる事になったよ。
防犯設備を用意したとしても、突破された時に誰が対処するかは決めておきたかったから。
でも、彼らと相対してどうこう出来るのって限られているんだ。
候補者は僕、ガトー、エリーゼ、カルカンだ。
だけど、エリーゼとカルカンは候補から外した。
まず、事が起こった時に行動できなきゃいけないから、カルカンは難しい。作業で遠くに行く事も多いから、直ぐには駆けつけられない事もある。エリーゼはめちゃ早いけど、それでも限度がある。
従って、僕かガトーしかいない。
リミッターを外せば僕の方が早く飛べるので、提案してみたけど、やんわり却下された。
理由は僕の甘さが原因らしい。子供たちを人質に盗られた時に、ガトーなら気流操作でなんとかなる。
だけど、僕は安全に人質を救出する術を持たない。
それが大きな理由だった。無念。
続いて寮長の検討だ。これは実際に寮に入っている学院生徒から選ぶことになったよ。
男子はコビス。女子はリッツになった。
コビスはやんちゃな男子だけど、クラスの中心人物で男子のまとめ役的なポジションにいる。
リッツは進化しているし満場一致だった。
孤児院長はリッツが兼任で、副院長にアンを指名する事で決定したよ。
そして、防衛責任者はガトー。ひとまず、これで侵入は完全に防げるよ!
あと、防犯設備と避難訓練は急務の課題となった。
孤児院の子供の人数は爆発的に増えていて、以前の10倍になっている。それには港町の接収も影響していた。
港町の孤児をワールドン王都に引き取って、港町の孤児院は閉めたんだ。それで大幅に増えた。幼い孤児達には、学院生が早朝や夜に勉強を教えている。講師が不足しているので、生徒に教師を務めて貰っているの。
それが意外な効果を生んでいて、生徒全体の学力アップに繋がっていた。皆、幼い子には良いとこ見せたいみたいで、頑張っている。
ドヤ顔したいのは全世代・全世界共通の欲求なんだね!
設備や訓練は一先ずルクルにお任せになったよ。
それから、依頼をする為に関係者を呼び出した。
「おっしゃ!任せてよ、ワールドン様!男子寮をカッコよくまとめるからさ!」
「うん、別にカッコよくなくてもいいんだけど、やる気は買うよ。頑張ってコビス」
「大丈夫!ちゃんとカッコよくするから!」
コビスはやる気充分だった。少し空回り気味かも?
「あたし頑張ります」
「防護服は着なくて良かったの?」
「あたしのせいで皆に迷惑かけてるから、そんな場合じゃないかな……って」
リッツは責任を感じているのか元気が無かった。
「ルクル様、ワールドン様、私、精一杯頑張ります」
「う、うん。アンも頑張ってね」
なんかアンが恋する乙女モードなんだけど……どうしよう?
リゼがいるから応援できないんだ……ごめん。
「なんで、吾輩が防衛責任者なんだにゃん?いない時に勝手に仕事を積むのよくないぞにゃん?」
「こ、これには海より深い理由があってね……」
「水たまりの間違いじゃないのかにゃん?」
ガトーはジト目で僕を睨んでいた。
そこに笑顔のルクルがスっと前に出て懐から資料を出す。
「防衛責任者のガトーには、ガトー専用防衛指令室を用意しようと思ってるけどー?やってくれるー?」
「それを早く言えよにゃん。吾輩に任せろにゃん!」
(専用ついてたら何でもいいの?……って少し思う)
任命が終わって解散する事になったけど、リッツが何やら確認したい事があるらしい。
コビスやアンが去っていった後に、リッツは強くテーブルを叩いて大声をあげた。
「ルクル!あの勇者達にあたしを連れ帰っていいって言ったってホントなの!?」
「んー、まぁねー。リッツの出自の裏は取れたから彼らの主張は一応筋が通ってるしさー」
「あたしはワールドン王国に不要なの!?」
「不要な人に寮長を依頼はしないかなー」
そう。ルクルは許可を出していたんだ。
リッツを説得できて、騒動に関する詫びの素材を全部納品し終わったら……リッツを解放すると。
「ワドワド、これ何の話だにゃん?吾輩関係ないならストローと飲む約束あるから帰っていいにゃん?」
「ちょちょ!リッツの一大事なんだからガトーもいてよ!それになんで僕を呼んでくれないの!?」
「ワドがいると恋バナばっかりになっちゃうから、たまにはそう言うの無しで飲みたいんだにゃん」
(それならそう言ってくれれば恋バナ封印するのに!ハブるなんて酷いよ!)
「それにルクルは単にリッツに選択肢を与えてやっただけだから問題ないぞにゃん」
「あたしの選択肢?ガトー様、どういう事?」
「それはだにゃん……」
ガトーが云うには、自称勇者達に課せられた大量の魔獣素材のノルマは、達成まで最短でも7年はかかる質と量らしい。その間にリッツを納得させられて、リッツ自信が彼らについていっても良いと思えたらそれもありなんじゃないか?という風な提案との事。
「んんんー?おかしいなー。くさやガードは常時発動させてたのに、なんで伝心できてるのー?」
「ふっ……脇が甘いな。ジャックから伝心で抜き取ったぞにゃん!」
「なるほどねー!」
「え、ルクルってば、くさやの匂いを常に思い出してたの?ドMなの?」
「ちょっとワドは黙っててー」
あ、僕ってばノワール君と同じ立ち位置だったりする?
なんだか涙が出ちゃうなぁ。(ホロリ)
「ルクルがそう思ってるのなら……分かった」
肩を落として出ていくリッツは、泣いていたよ……
ルクルはリッツの可能性を広げてあげたのですが、幼いリッツには理解して貰えません。
そしてワドも理解できていません(苦笑)
次回は「冒険者を作ろう」です。




