学院テスト作成
前回のあらすじ
港町に自称勇者達がやってきました。それをカルカンが撃退します。
一応、ワドも戦闘にアシストできたようです。
拘束した自称勇者達は、今、牢にいる。
【伝心】で彼らを読み取ると、裏にはラコア将軍がいる事が分かった。僕のザグエリ王都事件を誇張して聞かされて、僕が悪のドラゴンだと思い込んでいるみたい。
(ザグエリ王都の件は、ほんとに申し訳ないな……)
その件で僕の部屋に集まって協議しているけど、僕は彼らに寛大な処置がされるよう、ルクルとリゼに懇願した。
「ワドが言うのなら……わかったの」
「まー、暫く頭を冷やしてもらうしかないねー」
「シュコーシュコー!シュシュシュコー!」
「えとね、リッツが『反省するまでの間、身の回りの事は任せて』だってさ」
「リッツは進化してるのでしょう?諦めないの?」
「シュコーシュ!シュコココー!」
既に進化していても、最後の最後まで諦めないみたいだ。立派なバスケットマンだよ。
一旦、勇者達の話題は終了し、それからドラゴン学院の話題になる。
「開校してから結構経つしさー、そろそろテストとか実施するべきかなーって」
「ふむふむ。学力を測るんだよね?で、1位のご褒美は何なん?」
「ふぇ?1位のご褒美ー?なんでそんな話にー?」
「だって面白そうだから僕も受けたいし?どうせならご褒美欲しいし?」
「めっちゃ個人的な理由だったー。そうだなー……」
ルクルはガトーを見ながらニヤリと笑って、提案してきた。
「じゃあさー、来年完成予定の遊園地の優待チケットを、テスト上位者のプレゼントにしようかー」
「お、めちゃやる気でてきた!」
「シュッシュッシュッコーーー!」
「む、それなら吾輩もでるぞにゃん?」
「あー、ガトーは専用優待券あるからー。でもねー、ワドが銀のマナ鉱石回収をエタってるからさー、色々と乗り物が不足しそうなんよねー」
だって銀を探しに行きたかったけれど、色々と立て込んでいたんだし!?
「ぼ、僕だって忙しかったんだけど!?」
「えー、B級映画撮る暇があったのにー?」
「ぐぬぬ、それを言われると……でも、リゼのデートの為に必要だったんだよ!あ、そうだデートはどうだったの?」
「あ……いや、その……」
ルクルもリゼも顔が真っ赤になった。
そこに凄い勢いのリッツが割ってきたよ。
「シュ……コーー!シュ……コーー!シュシュコーー!」
「え、それマジなん?」
「ワドワド、翻訳ヨロにゃん」
僕たちがカール先生のビアバーで打ち上げしている間に、そんな事があったなんて……
結局、テストの日取りだけ決まってその日は解散。
ガトーだけ優遇されるのはなんだか釈然としないけど、ガトーは赤をちゃんと見つけて来ているから文句を言えない。
「カール先生、こんな感じでどうかなー?」
「ふむ、師匠のテストはかなり難しいですね……上級者向けかと。バラン様のは適度な難易度ですね」
カール先生、ルクル、リゼ、バラン君はテスト作成に勤しんでいた。内容が気になったけど、【伝心】でカンニングしたらおしおきって言われたから我慢。
ガトーとストローはペテン師の第二弾の活動に出かけている。人の噂もなんとやらで、噂の力が弱まってきたから再補強に向かったんだ。
っていうか、その為にガトーには専用優待券にしたんだと何となく察する事ができた。
僕も成長しているのさ!(ドヤァ)
テストの前日に僕はリッツから相談を受けたよ。
「シュコーー……シュコーー……シュシュシュ?」
「うん。ちょっと話してみるね」
捕虜の勇者から、何か変な事を言われて困っているらしい。僕の国民は僕が守るんだ!
それで牢の前までやってきた。少し錆びた鉄格子越しに彼らと対面したよ。
「あ!おい!悪逆非道なドラゴン!そんな美人な見た目でも俺は騙されないぞ!ここから出せ!」
「うん。出すのはいいけどさ、僕の国民に被害を与えるのはダメだからね?」
「……姫を人質から解放しろ」
「そうよ!なんで姫様を捕えてるの!」
「あー、なんかこの人、そんなに悪人じゃない?なんて思ったり?」
うーん、会話が成立しそうにないな。
黒髪の人は少し冷静そうだから、話をしてみる。
「ノワール君だっけ?姫ってなんなの?」
「え?自分ですか?えー、姫ってのはリッツ姫の事ですけど?」
「おい!ノワール!この悪逆非道に何情報を渡してるんだ!リッツ姫にどんな被害でるか分からないぞ!」
「……ワールドンよ。人の心があるのなら今すぐ姫を解放しろ」
「ん?僕は人の心はないの。だってドラゴンだから」
なぜかリッツが姫と呼ばれていて、【伝心】で追加情報を読み取ると、色々分かってきた。
彼らは旧ビスコナ王国の生き残りらしい。国が滅んだ後は、リアロッテに落ち延びたようだ。
その際に、王族の唯一の生き残りである姫とはぐれた。
赤髪で紅緋色の瞳をした姫の名はリッツ。
それは彼らの記憶から読み取っても、今のリッツと同じ色をしていた。
「リッツはリアロッテ出身って言ってたけど?それに幼い頃の記憶は無いってさ。出会った時は奴隷だったしさ。君たちの姫を詳しく教えてよ」
「誰が悪逆非道のドラゴンに教えるか!」
「へぇ、背中に王家の紋章の刻印があるんだ?」
「な、なんでそれを貴女が知ってるの!?」
「……不愉快」
リッツの事を聞いても中々素直に答えてくれない。
仕方なく【伝心】で読み取り続けていると、ノワール君が少しだけ助け舟を出してくれた。
「あ、なんかこの人、心を読んでるのかなーと。さっきからそうじゃないと説明つかないかなーと……」
「ノワールは黙ってろ!」
「ノワールは黙ってて!」
「……いいから黙ってろ」
「はーい。悲しいなぁ……」
なんだか、ノワール君とは友達になれそうと思う。
リッツの背中は気にして見たことが無いから、今夜にでも見てみようと思って、エリーゼに相談したよ。
「ありますわ!リッツの背中に刻印!どこかで見た気がすると思ったら旧ビスコナ王家の紋章でしたわ!」
「え!?じゃあ……リッツってお姫様なの?」
「シュ?」
お風呂でリッツの背中を撮影して、改めて書物のビスコナ王家の紋章と見比べたけど、本当に同じだった。
「これ、僕の手に余るからルクルにも見せるね」
「シューーーーーーーーコーーーー!」
え?そんなに嫌がるの?
裸を見られるのが嫌みたいだし、とりま映像は見せないで相談する事になったよ。
「……そっかー、なるほどねー」
「えと、勇者達はどうする?の?」
「そっちは考えておくからー。明日のテストに全力を尽くすようにねー」
うまく会話をはぐらかされたけど、回答前の沈黙の時に物凄い高速で思考を張り巡らせていた。
(リッツが望むなら、彼らに帰すか……なんかヤだな)
僕は一夜漬けのテスト勉強を頑張った。
そしてテスト期間が始まったよ。テストの方の出来はまずまずだったけど、ルクルのテストが鬼畜難易度だった。
(テストでも鬼畜なのかよ!)
僕は学院の女の子達と、食堂で一緒にテスト勉強しながら恋バナしていた。
ーーー学院の女の子とテスト勉強VTRーーー
「じゃあねー、お互いに想定問を出し合って、間違ったら、恥ずかしい事をカミングアウトね!」
「あ、ワールドン様も例外じゃないから!容赦しないよ?」
「うん、プッカ、マーデル、僕も分かってるよ」
「じゃあ、私からね!えとね、マナの……」
「……で、次の3つから答えよって問題だけどどう?」
「あ!僕、分かったかも!」
「うぅん、難しいなぁ」
「アン姉わかんないの?罰ゲームだよ?」
「あたしもー!わかったー!答えはー!Cだよー!」
「なんでリッツは席そんなに離れてるの?もっとこっち寄ってよ?」
「これ以上はー、むーりー!」
〜〜〜出題中!〜〜〜
「じゃあ第19問……次は僕が出すから……」
「コウカちゃん!僕、僕っ娘として負けられない!」
「ふふふっ、ワールドン様、必死すぎだよ~」
「アン姉とシーナ姉はそろそろ挽回しないとだよ?」
「「分かってる」」
ーーー学院の女の子とテスト勉強ENDーーー
カミングアウトの罰ゲームはアンとシーナだよ。
二人の赤裸々なお話が楽しみ!って感じで楽しみにしていたら、アンからは爆弾発言が出たんだ。
「えと……最近、気になっている人がいて……」
「え!?アン姉に誰か好きな人できたの?」
「え!?この学院の男子じゃないよね?サブロワ君しか見込みある男子いないよ?」
(やっぱり、サブロワ君はモテてるみたい)
「この勉強会にもサブロワ君呼んだけど、他の男子からの嫉妬がキツイからって断られたよね~」
「え!?アンの好きな人って……」
「なになに?ワールドン様、心を読んだの?」
「あ……ワールドン様、自分で言いますので……」
アンの気になっている人はルクルだった。中々視線が合わなくて、気が付いたらいつも視線を追っているくらい気になっていて、最近好きと自覚したらしい。
なんかこの告白にリッツが一番動揺していたかも?
シーナは、将来に絵を書く職業につきたいって話を告白してきた。そこまでだったら特に恥ずかしい告白じゃなかったんだけど、最近描いた絵を見せて貰って誰が好きなのか分かったよ。
「なんか、ボンさんの絵ばっかりだね?」
「でも働いてるボンさんってカッコイイよね!」
「シーナ姉、他にも色々描いたら?」
「シーナはー!ボンさんのー!事がー!好きー!なんでしょー!」
「「「リッツいい加減こっちきて!」」」
絵の師匠として一緒にいる事が増えたから、ボンが男性として気になってきたらしいよ。それにしても将来の夢が、孤児院以外にも見つけられたのは良かった。
……無事にテスト期間が終了。
僕は3位だったよ……トホホ。
2位がリッツ。絵画以外は高得点だった。
1位はサブロワ君。勉強の為だけに国をまたいで来ただけあって、他の子供達とは勉強にかける意気込みがまるで違う。そしてマナ工学は圧巻の満点だった。
カール先生もバラン君も、マナ工学に関してはもう教える事がないと言っていたくらいだ。
サブロワ君に教えられる人と言えば、カルカンかヘーゼルだけかも?
要は専門家で国のトップレベルじゃないと教える事が無いレベルまで達しているんだ。これって天才って言うのかな?
そしてテストが終わった後、リッツがストーカー被害について相談してきたんだ。
(はぁ、自称勇者達の迷惑行為にも参ったなぁ)
女子のテスト勉強は、巨大な学院食堂で行っています。
リッツは一番離れた所に座っているので、40mくらい離れています。
次回は「孤児院を運営」です。




