閑話:闇鍋パーティー
前回のあらすじ
ワールドンカップの後の鍋パーティーにワドが出れなかった為、ガトー&ストローの懇願により急遽追加の鍋パーティーが開催される事となりました。
ep.「開国1周年祭」の頃のカルカン視点となります。
私は猫魔族の英雄の子、カルカン。
今日は白羊節の最終日。
夜はワールドンカップの打ち上げで、ビール部主催の鍋パーティーを予定している。
「カール先生、残念だったにゃ!でも一番旨かったのにゃ!」
「カルカン君……私は自信が無くなりました」
カール先生の料理は、とても美味しかったのに何故か優勝できなかった。とても不思議にゃ。この世の神秘なのにゃー。
「大丈夫なのにゃ!次はマイティ氏にも勝てるにゃ!今夜は私が来るまで鍋パーティー始めないで待ってて欲しいのにゃ!」
「……善処致します」
なんかカール先生が暗いのにゃ。お腹でも痛いのかにゃ?
私はそっと胃腸薬を手渡した。
「これは……?」
「ルクル氏の前世の胃腸薬にゃ。ラッパのマークはボン氏が書いたのにゃ!」
カール先生は「スルーしておきましょう」と呟いている。ちょっと元気になったみたいで良かった。
ワールドンカップ後は、港町からの参拝の国民の誘導係の仕事を務めている。
「ワールドン様!港町からの国民が到着したのにゃ!」
「うん……順次、通してくれる?」
「任されたのにゃ!」
私は港町の防衛責任者を務めていたから、港町の国民の案内をする必要があった。でも、本当は早くビール造り部隊の鍋パーティーに合流したくて、ずっとそわそわしていた。
(にしても多いにゃ。これ待ってられないにゃ)
参拝する国民があまりに多いので、鍋パーティーに間に合わない可能性が出てきた。そこでテトサ氏に後を頼んで先に上がる事にする。
「ワールドン様。私も鍋パーティーに行くのにゃ。後はテトサが案内するのにゃ!」
「うん……カルカンも楽しんで来てね」
暇の挨拶をしたら、何故かワールドン様はとても悲しそうだった。
(ワールドン様もお腹痛いのかにゃ?)
でも、今日は飲むから明日の自分自身の為に残して置かないといけないので、これ以上はラッパのマークの胃腸薬を減らせない。
(ワールドン様は癒しがあるから多分平気にゃ)
私はそそくさと退室して、鍋パーティー会場に急ぎ向かった。
「あーーー、皆もう始めてるのにゃーーー!」
あれだけ待つように伝えたのに、既にパーティーは始まっていた。
「お、カルカン君ー。仕事は終わったのー?」
「なんで先に始めてるのにゃーーー!」
「カルカン君、すみません。待ちきれなくてせめてビールだけという話から、もういっそ鍋も先にとなりまして……」
「ぐぬぬ!楽しみにしてたのににゃー!」
「カルカン、これ飲んで機嫌直すにゃん?」
「ぷはーー旨いにゃーー沁みるにゃーー!」
(((チョロ猫)))
仕方ないから許してやるのにゃ。私は小さな事を蒸し返すようなガトー様とは違うのにゃ。
「む?カルカンよ。吾輩の悪口を考えて無いか?」
「そ、そんな事ないにゃ!あと、語尾忘れてるから、トスィーテに言いつけるにゃ」
「ちょ……それはやめろにゃん!」
ガトー様は、もうちょっとトスィーテの見た目なのを意識して欲しい。妹の姿で残念な所を見ると、とてもいたたまれない気持ちになる。
ガトー様に注意していると、ビノーが勝手に具材を追加した。
「あ、勝手に具材追加するなにゃ!」
「お、これもう行けそうかなー」
「ルクル氏!それはまだちょっと早いにゃ!こっちが煮えてるからこっちにするにゃ!」
適当に放り込むビノーはセンスがない。オールレーの美的センスを見習うべきだと思う。
それにルクル氏は「俺はレア派ー」と言って生煮えなのを取ろうとする。
(ちゃんと仕上がってないと、最高の味にならないのにゃ!全然ダメにゃ!)
「うまいにゃん!イノシシも悪くないにゃん!」
「ガトー様!こらーなのにゃ!肉ばかりでなく野菜もしっかり食べるにゃ!あ、ビールお代わりにゃ」
私はビールを飲みながら、ガトー様に注意する。ジョッキが空になったので、仲居さんにすかさずお代わりを頼んだ。
「では、具材を追加しますね」
「カール先生!そんな適当に具材いれたら見た目が悪いにゃ!ちゃんとこう!聞いてますかにゃ!?」
普段は見た目にも気を配るカール先生までもが、適当に具材を放り込んでしまい、鍋の見た目がカオスになった。私が叱ると、カール先生はとても驚いた表情をする。
「……いえ、飲めれば何でもいいやのカルカン君がこんなに細かいのは何か意外で……」
「最高にうまいビールを飲む為には作法が必要にゃ!そんなことカール先生なら分かるはずにゃ!」
「仰る通りです……」
見た目がぐちゃぐちゃなのと、見た目が綺麗なのだと、同じ味でも後者の方が美味しく感じる。料理が美味しいと合わせる酒も美味しく感じる。この基本を教えてくれたのはルクル氏とカール先生なのにゃ。
ーーーカルカンのビール衝撃再現VTRーーー
「と、このように見た目にも気を配ると更に美味しくビールを堪能できますよ」
「カール先生!凄いのにゃー!」
「流石、カール先生。分かってるー」
「ほほほ、師匠のおかげですぞ」
「おいらはビールが最高っす。ビール嫌いなやつとは理解しあえないっす」
「だよなー、ビノー。俺もビールは友達って前世で公言してたらさー、凄い残念な人扱いなんー」
「マジかにゃ?異世界おかしいにゃ!」
「そーなんよー。ボールは友達は凄い人扱いでなんか差別だよなー。バールは友達、ビールは友達、ブールは友達、ベールは友達も同じハ行だろー。差別すんなよなー」
「意味は分からにゃいけど、気持ちは分かるにゃ」
「師匠、それ間違ってますよ?」
「ふぇ?先生?俺、何か間違ってるー?」
「ビールは友達というのが、そもそも間違い。ビールは人生。他人ではありませんよ?この世のビールは自分自身に還って来る為にあるのです。だからお帰りと迎えてあげるのです」
「先生ー!俺、感動したー!」
「カール先生!凄いにゃ!哲学にゃ!」
ーーーカルカンのビール衝撃再現ENDーーー
カール先生は酔っ払って甘くなったようだけど、旨いビール飲む為なら全力ですにゃ!気合いですにゃ!ビールは人生にゃ!
そんな事を考えていたら、ガトー様が相談してきた。
「なぁ……ルクルよ。鍋パーティーの延長戦をやりたいぞにゃん?」
「んー?もうお腹いっぱいだしさー、何人かは脱落して夢の中だよー?」
「でもな、ワドが参加できてないぞ……可哀想にゃん」
その台詞の直後、潰れる寸前だったストロー様が立ち上がった。
「ルクル様、私からもお願いしますわ!ワールドン様は国王として頑張ってはりますわ!」
「そうだそうだ!ワドにもご褒美必要にゃん!」
「んー……カール先生どうですー?」
「今日はお開きにして……明日、趣向を変えて開催でどうでしょうか?」
そうにゃ。今日はもう限界、お腹パンパンにゃ。
何故かガトー様とストロー様は、物凄く再度の鍋パーティーを猛プッシュしていた。
「じゃあさー、明日は闇鍋にしようかー!」
「ルクル氏、闇鍋ってなんにゃー?うぃっく」
「んー?闇鍋ってのはねー……」
なんかルクル氏の説明が段々遠くに聞こえる。
とにかく明日も飲めるという事実が心地よい。
(なんか、ふわふわ……天国ですにゃー)
翌日。
凄く頭が痛いにゃ……ちょっと飲みすぎたかも?
審査員なので、頭痛を我慢して審査員席に座る。
「エントリーNo.7 ガトー様の変身!」
あわわ……こんなのトスィーテに見られたらと思うと、凄く怖いのにゃ。
チラリとワールドン様とガトー様を見ると、あちらも凄く怖がっているみたい。その直後、なんか悪寒が全身を駆け抜けた。
……風邪かにゃ?
そして、いよいよ鍋パーティー2日目。
今日はルクル氏が「それぞれ変わった具材を持ち寄ることー」と言っていたから、港町から仕入れたナマコを持ってきたにゃ。
「闇鍋はねー、灯りを消して持ち寄った具材を入れてそれを暗闇の中で食べるんだよー」
「それだと鍋の見た目がわからないにゃ!」
「そうだよー。鍋奉行のカルカン君には悪いねー」
「なんか、また馬鹿にしてるにゃ?にゃ?」
「えー?そんなことないのにー、被害妄想やめてー」
(絶対また馬鹿にしてるのにゃ!そもそも奉行ってなんにゃー!?)
灯りを消してみたら、ワールドン様が発光していて、暗くならないという事が発覚。毎回お騒がせな神様にゃ。
だから、全員目隠しする事になった。
「ルクルよ。目隠しすると食べれないぞにゃん」
「んー、じゃあ食材入れるときと食べる人が取る時だけ目隠ししようかー。で、隣の人がアーンして食べさせる感じでー」
(んにゃ?目隠ししてもマナ見えるにゃ!)
私は食材のマナを確認した。
ワールドン様がマカロン入れているのにゃ!鍋になんてもの入れるにゃ!?
ガトー様はキウイ?なんで果物入れるにゃ!?
カール先生はカエル!?やめるにゃ!なんか嫌にゃ!
クラッツ氏はたこ焼き入れている。
リゼ氏は……ラッコ!?ラッコ鍋なんて食べれるのにゃ?
ルクル氏は……焼売にゃ。なんか普通にゃーガッカリにゃ。
そこからはまさにカオスだった。
ーーーカオスな闇鍋パーティーVTRーーー
「ワドよ、観念して口を開けるにゃん?」
「や、ヤダよ!なんか鍋に似つかわしくない柑橘系のフルーティーな香りがしてるんだけど!?」
「あ、口があいたにゃん!」
「ぐぉおぉ。鼻に色んな香りがむわっとくるぅ」
「バラン様、何か嫌な予感がします」
「ヴェスト殿、そんな事はありません。さぁさぁ」
「ぐぁーーー、辛い辛い!死ぬぅぅ」
「あ、それ私や。ハバネロですわ。辛いやろ?」
「「「大戦犯!」」」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「なんか、リゼに食べさせるの変な気分になるんだけど?僕、悪くないよね?」
「「「…………」」」
「ねぇ、皆で黙秘権はやめてくれない?」
「ワド、まだなの?理性が……持ちそうにないの」
「またカルカン君は焼売なのー?これで何回目ー?」
「むぐむぐ、無難な味でうまいにゃー」
「ハハハ、カルカン様は運がええなぁ」
「おい!カルカンはイカサマしてるぞにゃん!」
「あ、ほんとだマナ心眼で見えてる!」
「あぁぁ、伝心で覗くのもイカサマにゃー!」
「「「完全にギルティ!」」」
ーーーカオスな闇鍋パーティーENDーーー
皆、酷いのにゃ。あれから連続でハバネロの刑だったにゃ。もうしないのにゃ……許して欲しいのにゃ。
「バールは友達」はマジやべー奴ですねw
カール先生の格言は、この世の真理です。
友達も、恋人も、人生の伴侶も超えて、人生そのものです。
次回からは新章「ドラゴン革命の黎明期」となります。
次回は「学院テスト作成」です。




