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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
娯楽を充実させよう

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閑話:ビアバー開店

前回のあらすじ

むうびいの魔術具が講義用に支給され、少し余裕が出来たカール先生は、次の事を始めます。

ep.「ペテン師と聖水世界デビュー」~ ep.「映画館と初主演作品」までのカール視点となります。

 私はワールドン王国の講師をしているカール。


 ワールドン王国に来てからというもの、激務の日々が続いていました。ほぼ毎日を20時間労働で過ごします。

 黄金聖水という素晴らしい回復薬があるので、どうにか仕事を熟す事ができています。誠に感謝です。

 ワールドン様からは「カール先生までブラック社畜にならないで!」と泣きながら懇願されましたが、何のことだか全く分かりませんでした。


(それにしても、これは素晴らしい……)


 新しく支給された、むうびいの魔術具が素晴らしい物です。これのおかげで教材が用意できて、私の勤務時間もたった12時間で済むようになりました。物凄く授業が効率的になりましたし、私以外でも講師ができるようになった優れモノです。


(これなら、あと8時間は働けますね)


 私が別の仕事を申請しに行くと、またもワールドン様から「これ以上のブラック社畜良くない!」と、懇願されました。意味が分からないのでスルーしておきましょう。ルクル師匠からも気にしないように言われていますし。

 ルクル師匠に誘われて、色々なビール造りも体験しています。新しい仕事はビールに関わる仕事が良いですね。

 早速、ルクル師匠に相談してみます。


「それならさー、ビアバーとかどう?」

「師匠、ビアバーとは?」

「……って感じだけどー、先生なら行けると思うよー」


 なるほど。ビール専門の飲み屋ですか。

 これは私にとって第二の天職ではないでしょうか?

 実はこう見えて、料理が得意なのでというか料理とお酒が好きすぎて、少しぽっちゃり体型なのです。師匠やワールドン様からは「メタボ体型」と言われていますが、これも謎です。スルーしておきましょう。


 ヴェストさん達にビアバーを作る相談を持ち掛けたら、大興奮で話に乗っかってきました。なんでも協力すると意気込んでいます。その情熱に便乗して、ビアバーの店舗建築を依頼しました。快く請け負ってくれて何よりです。


「カール先生!俺の作ったビールも置いてくれよ」

「あ、おいらも手作りビールを提供したいです!」

「それなら私のもお願いします先生!」


 ヴェストさん、ビノーさん、オールレーさんはビール造り部隊なので、3人ともご自分で造ったビールに自信があるようです。私はスタイルの指定をする事を条件に快諾しました。


「では、IPAは3種類ずつ、ベルジャンスタイルやジャーマンスタイルは2種類ずつ納品して下さい」

「先生、ブリティッシュスタイルは?」

「そちらも2種類でお願いします」

「おいら、他も納品していいですか?」

「その他のスタイルは合計で2種類迄として下さい。多すぎても管理しきれないので」

「先生、ボトルにすれば良くないですか?」


 なるほど。

 サーバー&タップでの提供ばかりを考えていましたが、ボトルもありですね。


「ボトルの王冠を作るのに、赤と銀のマナ鉱石が必要ですが、現在は不足しているので師匠に相談しておきましょう」

「「「お願いします先生!」」」


 ルクル師匠の所に相談にいった所、物凄く乗り気でした。最高品質で用意してくれるとの事です。


「カール先生!冷やすのも必要でしょー?俺、ワド達を使って、最高品質の青と赤と銀を用意するよー」

「師匠、そんなに良いのですか?」

「これはビールの為だから仕方ないのさー」


 ワールドン王国では最高品質のマナ鉱石がほいほい使われていますが、他の国ではあり得ない事です。私もこの感覚に慣れすぎると、他の国に行けなくなりそうですね。

 一ヵ月後。

 師匠は約束通り用意してくれました。


「カール先生、ごめん。ワドが使えなくてさー、銀の最高品質のマナ鉱石だけまだなんだほんとごめん」

「いえいえ、青と赤の最高品質だけでも凄いです」


 本当に凄いのです。目の前に並べられている熱を感じる赤と、ひんやりとした青。これだけで10憶カロリはしそうです。高額すぎて持つのが怖いくらいです。


「しかし師匠。マナ鉱石だけあっても魔術具が……」

「それは当てがあるから一緒にいこー」


 私は師匠のホバーバイクに乗せて貰って、港町キシガイにやってきました。カルカン君が迎えてくれて、今回の事情を説明します。


「カール先生!やるのにゃ!全力にゃ!」

「どのくらいで仕上がりますか?」

「不眠不休で1週間で仕上げて見せるのにゃ!」

「カルカン君さー、ちゃんと防衛の仕事もやってよねー。まー、気持ちはわかるけどさー」


 カルカン君は約束通りに1週間で仕上げてくれました。師匠から防衛をしていないと叱られています。

 さすがに擁護はできませんね。


(さてと、お店の料理を考えますか)


 師匠やヴェストさん達からビールの提供は頂いているので、それにあわせた料理をメニューに加えるべく研究の日々です。

 白羊節の最後には料理コンテストが実施されるので、そこでお披露目して反応を伺う事にしました。


(では、私の手作りビールも用意しましょう)


 私は師匠の故郷の味である日本の鍋に合うビールを造りました。

 師匠にテイスティングを頼みます。


「先生ー!これ、米を使ってるのー!?」

「はい。チェコスタイルのピルスナーで、麦芽だけでなくお米を使って造りました」

「凄いよー!知らずにこれに辿り着くなんてー!」


 師匠にべた褒めされて自信がつきました。料理コンテストの打ち上げで、師匠自慢の鍋料理と私のビールを振る舞う鍋パーティーを企画します。今からとても楽しみです。


「ほほほ、せっかくですから優勝して鍋パーティーを迎えたいですね」

「カール先生の料理の腕なら優勝間違いなしさー!」


 料理コンテスト当日。


「「「マイティ姐さんマジパネェす!」」」

「「「すっごく綺麗でしたーーー!」」」

「「「マ・イ・ティー!マ・イ・ティー!」」」


 なぜかマイティさんが優勝しました。出場していないのに一体何故?

 とても自信がなくなりました。

 ですが、気持ちを切り替えて鍋パーティーです。


「うぉぉぉ!ルクル様この鍋は何ですか!?」

「カニ鍋、ブリしゃぶ鍋、牡丹鍋だよー」

「師匠、牡丹とは?」

「イノシシの事だよー!しかも味噌しゃぶなんだー」

「吾輩は牡丹鍋だけでよいぞにゃん!」


 ふむ。イノシシだと癖がありそうなので、少しパンチのあるビールも用意しておきますか。海鮮には元々予定していたお米を使ったビールにしましょう。


(無事に始まりましたが、それにしても……)


 参加者がビール部メンバーだけというのもあって、ビールの進みが早いですね。ゲスト参加のワールドン様は公務で来られるか分からないそうです。


「あーーー、皆もう始めてるのにゃーーー!」


 カルカン君が遅れて到着され、宴会は本格的に盛り上がって行きました。


ーーーカール先生の鍋パーティー回想VTRーーー

「あ、勝手に具材追加するなにゃ!」

「お、これもう行けそうかなー」

「ルクル氏!それはまだちょっと早いのにゃ!こっちが煮えてるからこっちにするのにゃ!」

「うまいにゃん!イノシシも悪くないにゃん!」

「ガトー様!こらーなのにゃ!肉ばかりでなく野菜もしっかり食べるのにゃ!あ、ビールお代わりにゃ」


「では、具材を追加しますね」

「カール先生!そんな適当に具材いれたら見た目が悪いのにゃ!ちゃんとこう!聞いてますかにゃ!?」

「……いえ、飲めれば何でもいいやのカルカン君がこんなに細かいのは何か意外で……」

「最高にうまいビールを飲むためには作法が必要にゃ!そんなことカール先生なら分かるはずにゃ!」

「仰る通りです……」

ーーーカール先生の鍋パーティー回想ENDーーー


 ルクル師匠曰く「カルカン君は鍋奉行気質だねー」だそうですが、本当に鍋に関しては厳しかったです。

 それから、鍋パーティーがちょうど終わったタイミングでワールドン様が参加したがっているとの事で、ガトー様とストロー様が一生懸命お願いしています。

 翌日に改めて別の鍋パーティーを催す事になりました。

 ……闇鍋の事は忘れましょう。


 それから約1か月後。

 ついにビアバーのオープンにこぎ着けました。


「では、完成試写会の打ち上げを貸し切りですね」

「うん、よろしくね!カール先生!」


 オープン初日とワールドン様達の映画の完成試写会の日が被ったので、今日はビール部メンバーで打ち上げの貸し切りとなっています。

 併設オープンしたジャックさんのショットバーで二次会を予定しています。そちらでは私も飲めるので、今から楽しみです。


 初日はベルジャンスタイルを多めにタップに繋いでいるので、料理もそれに合わせています。度数が高めなので、濃い味付けの料理を取り揃えました。

 時間になり、皆さんが次々に来店します。


「ワールドン様、ガトー様、ストロー様、映画の完成おめでとうございます」

「ありがと。カール先生もオープンおめでとう」

「おぅ!ありがとにゃん。吾輩は毎日通うぞにゃん」

「いやぁ~、カール先生。ええ店ですな~」


 挨拶を済ませたら大急ぎで最初の一杯を提供です。


「では、映画の完成とビアバーのオープンに乾杯ですにゃーーー!あ、これめちゃうまーーにゃ!」


 カルカン君から乾杯の音頭がとられ、皆さんはビールと料理に舌鼓をうっています。私はひたすら追加の料理やビール提供に追われ、まったく休む暇が無かったです。


「俺さ、皆に改めて報告があるんだけどさ……聞いてくれるか?」


 忙しさが一段落した時に、ヴェストさんが何か報告をしようとしているのがキッチンまで聞こえました。


「俺、俺……双子節の終わりに結婚するんだ!」

「なーんだ、そんな事。おいら知ってますよ」

「私も知ってます。ヴェストさんおめでとう。テトサさんと末永くお幸せに」

「ヴェストヴェスト!僕達から結婚祝い用意してるから期待しといて!」

「え?……なんで皆知ってんの!?」


 ヴェストさんとテトサさんの結婚は、ワールドン様が言いふらしていたので皆知っていますし、私も結婚祝いの贈り物を用意しています。

 そこでカルカン君が、驚愕の表情で絶叫しました。



「なんにゃーそれ!?全く聞いてないのにゃーーー」



(あ、誰もカルカン君に教えなかったのですね)



カール先生……考え方がブラック社畜すぎますよw

でも、これがワールドン王国の標準なのです。


ちなみにオープンの打ち上げにルクルは参加していません。

リゼとディナーデートを楽しんでいます。


次回はカルカン視点の「閑話:闇鍋パーティー」です。

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― 新着の感想 ―
カール君、とっても面白いです。 でも、大事なことはスルーしない方がいいかも。特に、メタボは危険ですよ!
[良い点] ヴェストさんとテトサさんの結婚おめでとうございます!めでたい! [一言] カニ鍋いいなぁ… ビアバー開店おめでとうございます! 立派な社畜が出来上がりましたね…
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