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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
ドラゴン学院

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アポなし伝心

前回のあらすじ

ルクルとの賭けに負けたワドとガトーは、白も(無理やり)巻き込んで探索の日々に勤しんでいました。

白は優秀なのですぐに青を見つけて来ます。ワドの銀探しは難航しているようです。

「それじゃーカービル帝国への対策を協議するよー」


 ルクルがそう宣言した。

 ガトーは【ドラ猫ラジオの宅急便】のおつかいでブールボン王国に出かけている。そのまま、周辺エリアの火山で赤の探索をするみたいだよ。

 幹部は、僕の部屋に集まり対策会議に臨んでいた。


「そいや、モンアード君には連絡しなくていいの?」

「んー?ま、ほぼほぼ黒って分かったからねー」

「んにゃ?アビスゲート様にゃ?」

「ドラゴンじゃないよー。領主モンアードは敵だって事だよー」


(ふぇ?何言ってるん?)


 僕は思わず立ち上がった。周囲に水が飛び散り、皆も水浸しになる。ティーカップも倒れたけど、今はそんな事を気にしている場合じゃないよ!


「ルクル!モンアード君は味方だよ!」

「……なるほど。色々と腑に落ちました」

「アル!」

「ルクル……リゼがモンアードを殺してきていい?」

「リゼ!」


 なんで皆が、モンアード君を敵と言うのか分かんない!これまで良くしてくれているのに!


「私はモンアード様は味方だと思うにゃ!」

「カルカン、心の友よ!」

「リゼ、手を出すのはダメだよー?リゼの噂に関しては、俺もムカついてるけどさー」

「ちょ……ルクル!リゼの噂って何!?」


 白の所に出向いたり、銀の探索をしている間に色々と変わりすぎていて、僕は状況が呑み込めて無かった。


「ワドー、モンアードのマナは分かるよね?」

「うん。この間のビデオレターの返信もあるし、ちゃんと分かるよ」

「じゃあさー、今から伝心でモンアードに尋ねてみてくれるー?内容はね……」


 尋ねる項目概要は、以下。


・カービル帝国の兵士達を手引きした事。

・ダフ村に派遣した徴税官のスパイ行為。

・エリーゼがお漏らししたとの噂の流布。

・ラコア将軍との密会の内容や接触目的。

・僕を利用して画策している陰謀の全容。


 なんで、こんな容疑者を問い詰める様な聞き方を、しなきゃなんないのか分かんない。

 僕は強く抗議し、声を荒げる。

 テーブルを拭いていたリッツが驚いてビクッて体を震わせていた。ごめん……


「僕はモンアード君を信じてる!」

「ならさー、伝心でさっさと聞けば潔白を証明できるよー?」

「ワールドン様、私もそう思います。潔白を証明する為と思えば良いのですよ」

「大丈夫にゃ!モンアード様の無実を伝心で確認するのにゃ!」


(そっか無実の証明か……あ、でも)


「そういや、モンアード君に連絡する時は前日にアポが必要だよ!」

「それはダメだ、許可できない。いきなり伝心で質問して、心の中を読み取る事。これは譲れないからー」

「ルクルの鬼畜!おトイレの真っ最中だったらどうすんのさ!?」


 ルクルの目が据わった。


(な、なんか怖い……)


「相手がどんな状況だろうが、どんな言い訳をしようが一気に読み取る事。これやってよねー」

「もういいよ!やればいいんでしょ!?」


 まだ、ルクルのトイレ中に【伝心】(    )した事を根に持っているの?心が狭いよ!人間がちっさいよ?仕方ない、後で謝ればいいんだしモンアード君に繋げようっと。


『やあ、モンアード君!突然で申し訳ないけど聞きたい事が幾つかあるんだよ』

『な、ワールドン様、一体どこから!?すみません、今は手が離せず……明日にして頂けますと……』

『質問するね。カービル帝国の兵士を手引きした?』


 モンアード君の動揺が伝わってきた。


『何故、カービル帝国の兵士を手引きした事の情報が漏れてるのだ!?』

『え!?……』

『しまった……カービル帝国に恩を売りつつ、戦力把握をしようとの考えが漏れる……マズイ』

『戦力を把握しようとしたのは何故?ダフ村に被害が出るかも知れない事は考え無かったの?』


 モンアード君は必死に思考を隠そうとしている。なので強制的に意識させる言葉を紡いだ。ここまでくれば僕にだって分かる。

 ……モンアード君はクロだ。


『隠さなければ、隠さなければ……』

『戦力を把握する意図は?君にはどういうメリットがあるの?』

『あの厄災女のエリーゼを始末する為、戦力把握が必要だった事を悟らせてはならない!絶対に!』

『そう……なんだ……ダフ村の損害はどう考えてたの?』


 残念だよ……とても残念だよ。

 僕はモンアード君の事を気に入っていたし、信頼もしていたんだ。こんな形で裏切られるなんて、悲しいよ。


『ダフ村が被害を受ければ、賠償請求するつもりだったなどバレたらマズイ!』

『あぁ、だからモンアード帰属のままにしてたんだね。他にも理由ある?徴税官かな?』

『隠さなければ!徴税官がスパイ行為をしてた事まで漏れたら、私は破滅だ!』


(酷いよ……なんで君が?)


『スパイ行為の内容は?』

『脅威になる人物がいないか調べてたなど悟らせてはならない!あの女を始末する隙がないかを調べてたなどバレる訳にはいかない!』

『ふーん……じゃあ、エリーゼの噂は何を流したの?お漏らしなの?』


 エリーゼを強く憎んでいる感情が流れ込んできた。

 あぁ……あの被害を許しては無かったんだね。ルクルが記憶の欠落が不自然だと言っていた事と……やっと繋がったよ。


『ゲストルームであの女は糞尿を漏らしていた』

『どうしてそんな嘘の噂を流したの?』

『清掃で廃棄されたベッドシーツなどからもこれは事実だ!それを噂として流して何が悪い!』


 あ、リゼが拘束されていた時か……マイティが掃除していた事と繋がる……って事はコレはマジな情報なんだな。でも、女の子のそういう情報を流すのは、フェアじゃないよ?


『開き直るんだ?もう隠さなくていいの?』

『隠そうとする事が筒抜けだ。これでは意味が無い』

『話が早いね。ラコア将軍との接触は?』

『勿論、けしかけて、あの厄災女を始末する足がかりにする為だ!』


 思っていた以上に恨みが深い。これは想定外だった。


『ラコア将軍でエリーゼを倒せると思ったの?』

『倒せない。だが将軍と揉める事でリアロッテとの戦争の引き金にする』

『戦争なら倒せるの?』

『倒せない。あの厄災女は規格外だ。戦争犯罪人として、国際法廷の場に引き出すのが目的だ』


 戦力分析は正しかった。国際法廷なら裁けるのだろうか?


『国際法廷ならエリーゼを始末できる?』

『出来ない。だが、問題が大きくなればホリター大公が処分に動く。これが最終目標だ』

『随分詳しいね?けしかけるのはいつ?』

『徹底的に調べた。2~3年後だ』


 もう隠す気は全く無いようだ。確かにモンアード君のプランなら、ルマンド君がエリーゼを処分するだろうね。でも、そんな事は絶対にさせない!


『僕を利用して、何をやろうとしてたの?』

『メイジー王国のさらなる発展だ』

『どんな風に?』

『ザグエリやカービルと戦争する事なく、平和的にメイジー王国を発展させる為だ』


 あ、あれ?僕を利用しての陰謀は、そんな悪い事じゃないよ?


『戦争しない事ができるの?』

『出来たはずだった。神がメイジーについてるのなら抑止力になる。それにマナ鉱石で国も富む』

『はずだった?』

『厄災女への恨みで全てが狂った。元々、私はメイジー王国を発展させる為に動いていた』


 って事は、当初の予定と大きく変わってしまったと言う事か。


『その陰謀をどうやって隠した?なんで隠したの?』

『記憶の一時的な混濁と暗示で隠した。メイジー王国の為に、神を利用する事は畏れ多いから隠した』

『どう利用するつもりだったの?』

『抑止力、マナ鉱石、腐敗した貴族達の一掃と、私の王座への後押しだ』


 そんなの、お願いされれば協力したのに……


『私は神罰を受けるのか?』

『処分は追って沙汰するよ。教えてくれてありがと』


 僕は【伝心】(    )を切った。

 エリーゼへの恨みが無ければ、手を取り合えた存在なのに……どうしてこうなったの?

 僕は脱力し、着席して水飛沫をあげてしまう。


「ワドー、終わったー?」

「……うん。彼はクロだったよ」

「ワドの辛そうな顔をみれば分かるの。辛い思いさせて……ごめんなさい」

「……リゼが悪い訳じゃ無いから……」


 僕の発言に、驚愕の表情をしたのはカルカンだけだった。

 カルカンは最後まで、モンアード君を信じていたみたいだしね。他の皆は確信していたのか、全く反応が変わらなかったな。


「って訳でさー、俺らはカービルに反撃するんよー」

「モンアード君はどうするの?」

「ワドはどうしたいんー?」


 僕は正直な気持ちを、告白した。


「その……エリーゼの名誉を傷つけた事は、何かしら落とし前がいると思う……」

「他にはー?」

「領主館の被害の一件を忘れさせて、後はお咎め無しにしたいんだ……僕は」

「オッケー、分かったよー。そうしよっかー」


 全員が驚いて、一斉にルクルの顔を見た。

 いや、ジャックだけが普段通りにしている。


「そっか……僕がお咎め無しにって言う事までがルクルの台本なんだね?」

「そゆことー」

「ルクル!どう言う事ですか!?」


 今度はアルが席を勢いよく立って、ルクルに詰め寄った。それを僕が諭す。


「ごめん、アル。……ルクルは、僕の心が痛くないようにするプランを、考えてくれたんだと思うんだ」

「な、いえ……ですが、そこまで読み切るなど……」

「ジャックは台本を知ってたんでしょ?」

「はい、ワールドン様。ご明察です」


 そこでせきを切ったようにリゼが笑い出した。


「ふふっ……ふふふっふふふふ!そういう事なら仕方ないの。リゼ達の名誉なんかどうでもいいの」

「え、でも……」

「ワドの心が一番大切なの。ルクルはやっぱり凄いの。リゼが一番喜ぶ事を知ってるの」


 アルは悔しそうな表情でドカッと席に座る。

 何かを、噛み殺している。そんな様子だったよ。



 その後、会議でカービル帝国への報復が決定した。



ルクルはワドが変に介入して予測できない事態を避けるために、赤、青、銀のマナ鉱石を要求していました。それを集めている間に、モンアードが敵である確証を得ます。

青は国民から要望上がっていたり、銀は利便性からすぐに欲しい理由もありますが……依頼時期はワドの目くらましが理由ですね。


次回は「周辺村の取り込み」です。

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 お邪魔しています。今回は、ちょっとシビアな展開ですね。  なかなか信頼とか信用とかで、国を支えるのは難しいのでしょうかね。どうしても陰謀と策謀まみれになりがちですが、ワド君は気持ちが優しいし、相手…
[良い点] 伝心つぇえ! ルクルまじで二本の政治家になって欲しい〜 [一言] リゼ…我慢出来なかったのか…。マイティもトイレ位行かせてあげてよ!?
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