誕生節のおねだり
前回のあらすじ
ワドは空旅の休暇を貰ったのですが、それはトラップでした。
ですが無事に白のマナ鉱石を手に入れます。
帰ってきたワドは、エリーゼのビデオレターをリゼと一緒に見ました。
エリーゼの想いが詰まったビデオレターだった。
ーーーエリーゼのビデオレターVTRーーー
《はじめまして、もう一人のわたくし。こうしてお話しするのは、初めてですわ》
照れたように少し俯き、それから意を決したようにカメラへと視線を向ける。晴れやかな笑顔だ。
立て続けに感謝を述べ始める。
《わたくしが、罪を犯す前に、教えて下さってありがとう》
《わたくしが、耐えられない時、支えてくれてありがとう》
《わたくしを、常に励まし、応援して下さってありがとう》
それから笑顔のままで、涙が頬を伝う。
《感謝している事を、こうしてお伝えしたかったのですわ》
《わたくし、直接感謝を伝えられて、本当に嬉しいですわ》
《わたくしがあるのは、もう一人のわたくしのお陰ですわ》
言葉を切ってから一礼して、涙を拭う。
《ですから……》
いつもの強い意思を感じさせる笑顔で告げる。
《もう一人のわたくしには、もう少しご褒美が必要だと思いますわ!》
《もうすぐ誕生節ですから、そこで素直なおねだりをしますわ!》
《わたくし、もう一人のわたくしのおねだりを叶える事を、ワールドン様におねだりしますわ!》
ほんの少しだけ、声が震えた。
《だって、もう一人のわたくしはこんなにも頑張ったのですわ。ご褒美は必要ですわ!貴女の素直な願いをお返事で待ってますわ……》
深くお辞儀をして、そのままもう一度告げる。
《待ってますわ。どうか……わたくしに、貴女の願いを叶えさせて下さいませ!》
ーーーエリーゼのビデオレターENDーーー
うん、エリーゼの気持ちが伝わってきた。
僕も、リゼにご褒美は必要だと思うんだ。あれから一度もセクハラされていないし、本当に良く我慢していると思う。
(少しなら大丈夫だよね?)
「ね、リゼ。誕生節は素直なおねだりしてね!」
「あの子だけでなくて、ワドまでそんな事言うの?」
「少しくらいなら、エッチなお願いでもいいよ?」
「~~~~~っ!ほ、ほんとにいいの?」
耳まで真っ赤になったリゼに、笑顔で答える。
「少しだけだよ?R18はダメなんだからね?」
「こ、コッソリでもダメ?」
困ったな。まだ諦めて無かったの?
「今までしてきた内容までがボーダーだよ?それ以上に過激なのはNGね」
「……ん、わかったの。ありがとう」
リゼも笑顔で、涙を流していた。さっきのエリーゼを思い出す。
夜も遅かったので、その日はリゼにオヤスミを告げる。その後は朝まで、転写の魔術具で国民達の笑顔を眺めてニヤニヤしていた。
(もっといっぱい撮りたいな!)
そう思っていたら、エリーゼとリッツが突撃してきた。防護服を着ていないリッツが、部屋に来るのは久しぶりだよ。
「ワールドン様!もう一人のわたくしに、素直になるように御言葉を賜りました事、厚く御礼申し上げますわ!」
「凄いよ!リゼお姉ちゃんが『少し素直になってみる』だって!」
「エリーゼ、リッツ、おはよ。ビデオレターを見たからね……ご褒美必要でしょ?」
エリーゼとリッツはハイタッチして喜んでいた。仲が良いなぁ。
結託して、2人で何かをやっているみたいだけど、僕には教えてくれないんだ。リッツからは「もし、伝心で読み取ったら、絶対に許さない」と言われているし、内容が分からないんだよね。
「ワールドン様!わたくしの誕生節のお祝いは2日間開催でお願いしますわ!」
「それは当然だね。2人が参加できないのは僕もヤだよ」
「それからワールドン様のプレゼントはお姉ちゃんのおねだりの内容にして欲しいよ!」
「それも良いんだけどさ、リッツは防護服を着なくて大丈夫になったん?」
明らかに「しまった!」って表情で慌てて着替えに行ったね。
どうやら、ガトーが不在だから油断していたみたいだよ。
早着替えして戻ったリッツに、説得を試みた。
「ねぇ、もう人族でいる事を諦めたら?」
「シュコーシュ!シュコココー!」
「わ、悪かったから……その、ごめんね?」
(そうだった!リッツもアニメ見てるんだった!)
そのセリフを言われると、諦めるように諭すことは出来ないよ。
それから日程の相談をした。去年はエリーゼ、リゼの順番だったから、今年はリゼ、エリーゼの順番になるように開催日を調整していく。
幹部には、プレゼントを用意するように連絡済み。後は当日を待つだけになった。
時は過ぎて、今日はリゼの誕生節のお祝いだ。
テトサや子供達も料理に協力してくれたから、凄い量の料理が並んでいる。
あ、そうそう。ガトーとストローも帰還済みだからね。
「リゼ、誕生節おめでとう」
「リゼお姉ちゃんおめでとう!」
「リゼ氏!おめでとうにゃ!」
僕の言葉に、リッツとカルカンが続く。
アルとルクルも、笑顔で祝福し始める。
「姉上、おめでとうございます」
「リゼー、おめでとー!」
「皆、ありがとうなの」
宴が始まり、それぞれがプレゼントを渡す。
アルは、僕にプレゼントしたのとお揃いのワンピースと靴だった。カルカン&ガトーは、風の最高品質の銃と、小剣をプレゼントしていた。2人の合作だそうだ。
リッツは手作りのバタークッキー。ルクルは何も渡さずに耳打ちだけしていた。
(うーん、そのプレゼントはドン引きだな)
ルクルはエリーゼから貰った、リゼの下着を返そうとした時に、断られている。代わりに、ルクルの下着を誕生節のプレゼントで、おねだりされていた。
耳打ちした内容は「ここでは渡せないから後でね」だよ?
(僕、ドン引きなんだけど?)
そして、僕の番なんだけど……まだ、おねだりの内容を知らないんだ。2人とも「当日に言う」と内緒にしてきたから。
「おねだりの内容を教えてくれる?」
「り、リゼに香油を塗らせて欲しいの」
「香油?」
「その……リッツは塗れないし、マイティの代わりに塗りたいの」
そっかー、温泉の時にマイティに「冴えてます」と言っていたし、あれはリゼ好みだったんだね。
……ん?
「手で塗るんだよね?温泉の時みたいなのはダメだよ?」
「ふふっ、覚えててくれて嬉しいの……勿論、手で塗るから安心して欲しいの」
「それなら大丈夫」
「その代わり……あの、お薬を少し入れてもいい?」
リゼから媚薬を使いたいおねだりが来たぞ。どうしよう?
あれから、男の子の子供達に触れられても発作は起きていない。マイティにも服用がダメって言われているけど、塗るだけなら大丈夫かな?
「偶にならいいけど……必ず僕の許可を取ってね?」
「うん。約束するの」
リゼは深い安堵の息を吐いていた。断られないか不安だったんだろうな。おねだりが、叶えられる範囲の内容で良かったよ。
それから、楽しい時間はあっという間に過ぎた。
カルカン&ガトーは見事に酔いつぶれているね。ビール派閥からの勧誘が凄いから、ガトーは飲まされ過ぎて陥落していたよ。
……ドドドドドド!
エリーゼが朝から突撃してきた。リゼはエリーゼを頼る直前まで我慢していたらしくて、それに関する感謝の言葉をずっと繰り返した後、「2人きりでおねだりをしたい」と告げられた。
(なんだろ?マイティやリッツまで断るなんて)
僕の部屋で2人きりになってから、エリーゼが転写の魔術具を取り出した。
僕の撮影かな?
僕、濡れているけど服着替えた方がいいのかな?
「僕の撮影でしょ?衣装はこれでいいの?」
「ワールドン様!先におねだりのポーズを見て下さいませ!」
「おねだりのポーズ?」
「もう一人のわたくしが、ワールドン様におねだりしたいポーズを用意してますわ!」
な、なるほど?グラビア撮影で欲しいポーズのリクエストが既にあるって感じなんかな?
とりあえず、見せて貰った。
(あかーん!これR18だよぉ?)
そこには、エロエロなポーズとアングルで映っている、全裸のリゼの画像だらけだった。光ガードが、絶対に必要な事くらい僕でも分かるのに、完全無修整だよ!アウトだよ!
「このポーズを服きてやるんだよね?」
「いえ、服はお脱ぎになって、この映像の通りにお願い致しますわ」
「光ガードは……ダメか消えるし……泡ガードはありだよね?」
「ダメですわ!さぁ、ワールドン様!早く撮りましょう!この映像はプレゼントするのですから」
えー?いや、エリーゼとリゼしか見ないとしても、抵抗あるよ?だってこの映像とかモロだしさ。別に見られるのはいいんだ。けど、流出したら……(社会的に)死ぬやつだよね?
「この映像を貰っても、僕はあんまり嬉しくないなぁ……保管にも困るし?」
「プレゼントするのはワールドン様ではありませんから大丈夫ですわ」
「へ?僕じゃないの?誰にあげるの?」
「ルクルに差し上げるのですわ」
はいーーー?ちょちょっとーーー?
これ、リゼだけどさ、映っているのはエリーゼでもあるんだけど?
「エリーゼはこれを見られても平気なの?」
「平気とは?映ってるのは、もう一人のわたくしであって、わたくしではありませんわ」
そうだった。下着の時もそうだ。エリーゼの中でリゼは完全に別人扱いだったな。でもさ、流石にこれはアウトだよ!
「このおねだりはダメ。ルクルにも見せるのはダメだから」
「ワールドン様……わたくし、もう一人のわたくしに幸せになって欲しいのですわ……」
エリーゼは泣き出した。大粒の涙をボロボロと零している。
4時間の泣き落としの末、僕の方が折れた。
(だってだって、ほんとに悲しそうだったから、これ以上断るの無理だったん!)
「絶対に他の人には見せない事!」
「当然ですわ!」
僕の撮影会は終わった。流出したら、僕は死ぬ。
夜には再び宴だ。今日はエリーゼへのプレゼント。アルからは秘密箱、カルカン&ガトーからはガントレットだ。建国祭の時のバージョンアップ版らしい。リッツからは苺似のショートケーキ。
ルクルは、アレを受け取るのがエリーゼのリクエストだった。必ず1人で見るように念押しされている。
(見たら絶対ビックリするよ?)
リゼにとってはかなり前進しましたね。
やっと肌に触れる許可を得れて喜んでいます。
次回は「マラソン大会」です。




