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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
ドラゴン内閣府発足

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閑話:宣戦布告と女の約束

前回のあらすじ

ワドの外回りに連行されたリッツ。国への平民女性の勧誘に協力します。リッツから見たリゼと、宣戦布告に至った想い…

ep.「建国の挨拶回り」~ ep.「船舶コンテスト」までのリッツ視点となります。

「あたしはエリーゼお姉ちゃんなら大丈夫だと思うよ!」


 あたしは従者見習いのリッツ。

 あたしの先生のエリーゼお姉ちゃんが、外務大臣をちゃんとやれるって擁護したよ。

 ワールドン様もリゼお姉ちゃんも心配しすぎだと思う。

 エリーゼお姉ちゃんはちょっと暴走する事があるけど、勝ち取りたい物は必ず手に入れる人だもん。なによりワールドン様の為の外務大臣を全力でやらない訳が無いんだよ!


 あたしはルクルとエリーゼお姉ちゃんの、秘密の特訓もずっと見てたから知ってる。エリーゼお姉ちゃんが並々ならぬ覚悟で挑んでる事をね。それにルクルが「今回はワドを軽くみる相手はいないから大丈夫」って言ってたんだ。

 あたしはエリーゼお姉ちゃんを信じてる。


 港町モンアードに来てからは、エリーゼお姉ちゃんから指示された通りに別行動だよ。役場で結婚相談の依頼を確認するんだ。あたしも頑張る!


「女性の結婚相談の依頼はありますか?」

「はい、ありますよ。13件御座います。年齢や条件などのご希望は殿方から出ていますか?」

「えっと、特定の相手はいなくて、ワールドン王国への移住の勧誘なんです!」

「詳しくお伺いしても良いですか?」


 役場の受付のお姉さんへ一生懸命説明したよ。ワールドン王国の独身男性のリストも、ルクルが用意してくれてたから資料を渡した。

 そしたら「資料が素晴らしいので、先に見せて頂きたかったです」と言われたよ……悔しい。

 あたしの説明より資料の方が遥かに分かりやすく纏められてるらしいんだ。

 ルクルはこの1年で別人みたいに優秀になっちゃった。あたしも追い付きたくて頑張ってるけど、まだ背中すら見えない。

 でも……


「在りたい自分の姿へと、常に全力ですわ!世の中、どんな事でも強い意志と気合いがあればなんでも出来ますわ!」


 エリーゼお姉ちゃんが授業でいつも言ってる事だよ。あたしの座右の銘と目標にもなってる。だってエリーゼお姉ちゃんは、常に有言実行なんだ。凄いよね?

 暫くして、あたしの受付番号が呼ばれたから、受付に向かったの。


「申し訳ありません。領地の移動ならばまだしも、国の移動となると該当者はいません」

「あ、はい。それでダフ村はモンアード領帰属のままなので、せめてダフ村に来れる方はいませんか?」

「なるほど……未亡人でも構いませんか?」

「はい。他の女性を招くにしても、男性ばかりの村はハードル高いので、女性比率を上げたいんだって!」


 ルクルから聞いた理由を話すと、受付のお姉さんは凄く納得の表情をしてたよ。こんな小さな事にも気配り出来るルクルが、あたしと2歳しか違わないなんて信じられない。

 残りの手続きは大人が提出できる依頼状だけになったよ。あたしはエリーゼお姉ちゃんを長椅子に座って待ってた。

 ……あ、ワールドン様とエリーゼお姉ちゃんだ!


「リッツ、お疲れ様」

「ワールドン様、エリーゼお姉ちゃん。結婚相談の依頼は幾つかあったけど、国の移動となると難しいかもだって」


 あたしがワールドン様に説明してる間に、エリーゼお姉ちゃんが依頼状を提出にいったよ。ワールドン様は役場が珍しいみたいでキョロキョロしてる。


(ふふっ、ちょっと可愛い)


 孤児院にも行ったけどダメだった。夕方なんだけどすぐにブールボン王都に移動する事になったよ。

 エリーゼお姉ちゃんは隣でスヤスヤと寝てる。薄い毛布をかけてあげて、あたしも眠りについた。


─────────────────────


 朝日が屋根の窓ガラスから差し込んできて、朝になった事に気づいたけど、リゼお姉ちゃんが何かしてる。

 マイティさんから、寝てる間にリゼお姉ちゃんのしてる事は「見ない」「聞かない」「言わない」ように厳重注意されてる。

 あたしは聞かないふりをしていた。


「……ん……ルクル……」


 ハッキリとルクルって言ってる。あたしはこれ以上の聞かないふりが出来なかった。


「リゼお姉ちゃん!ルクルの事が好きなんでしょ?」

「リッツ!?起きてたの!?今……リゼがしてた事は見て……いたの?」

「マイティさんに注意されたから見ないようにしてたの!でも、ルクルの名前を何度も呼んでたら気になるよ!」


 完全に目が覚めたから、朝の準備をする為に動く。動きながらリゼお姉ちゃんを追求したよ。


「いい加減認めたら?餃子の時からバレバレだよ?」

「だって、リゼはワドが一番好きなの……」

「リゼお姉ちゃん、毛布仕舞うから早く渡してよ!」

「だ、ダメなの!リゼが片付けるから!」

「なんで?従者の仕事を奪うの?」

「ダメ!ダメなの!」


 今日は着替えのお手伝いも拒まれたよ。

 追求がそんなに嫌だったの?でも、素直にならないリゼお姉ちゃんにはモヤモヤするの!こんなんじゃ、あたしだってルクルに全力でアプローチしにくいよ!

 ブールボン王都につくまで丸一日かかるから、今日はじっくり話すよ!


「ねぇ、ルクルを好きな事を認めないのは、ワールドン様が一番好きだからだよね?」

「そうなの、リゼは……」

「両方好きじゃダメなの?」


 リゼお姉ちゃんは真っ赤にした顔をそむけた。


「そ、そんなのダメなの!」

「どうして?」

「……そんなの……幸せ過ぎるの……リゼには許されない」


 あぁ、まただ。またリゼお姉ちゃんは自分を責めてる。だから、あたしもモヤモヤするんだ。


「ダメかどうかはワールドン様が決める事だよ!今日の夜に直接お伺いすれば?」

「でも本邸だと部屋も別なの……それに……」

「あーもう!お風呂の時にでも聞けばいいでしょ!何を怖がってるの!?」


 煮えきらないリゼお姉ちゃんにイライラして声を荒らげちゃったよ。


「……分かったの。ワドに相談してみる」


 やっと少し素直になった。外は雨が降ってるみたいで、雨音と雨の匂いがしてる。


(なんか揺れが強くなったかな?)


 お姉ちゃん達の本邸についたらすぐにお風呂になったよ。ワールドン様がずぶ濡れだったからね。ワールドン様は「ずぶ濡れ」以外の表現はヤメテっていつも言ってるから、あたしだけは言いつけを守ってる。ルクルはわざと別の言い方をしてると思うな。

 お風呂では、リゼお姉ちゃんは相談しようとワールドン様を何度もチラチラ見てたけど、勇気が出ないのか言葉は掛けられなかったみたい。


(あーもう!イライラするよ!)


 お風呂の後にお食事を終えて、割り当てられた部屋にそれぞれ向かう。あたしは思い切ってリゼお姉ちゃんの自室に押しかけた。

 そして強く怒鳴ったよ。


「リゼお姉ちゃん!なんでワールドン様にご相談しなかったの!」

「だって……」

「エリーゼお姉ちゃんだったら『全力ですわ!気合いですわ!』ですぐに聞いてたよ!」

「……リゼはあの子みたいに強くないの……」


 リゼお姉ちゃんの頬を涙が伝ってたよ。

 あたし、泣かせるつもりじゃ無かったのに……思うようにいかないな。

 あたしは優しい声で語りかけた。


「リゼお姉ちゃん。あたしはルクルが好きだよ」

「知ってるの。だってバレバレだもの」

「そんなのリゼお姉ちゃんだってバレバレだよ?……それとね、リゼお姉ちゃんも好きだよ」

「……リゼを?」


 リゼお姉ちゃんは心底理解できないって顔をしてる。でも、リゼお姉ちゃんは自分で思ってる以上に色んな人から好かれてるんだ。


「エリーゼお姉ちゃんも、ワールドン様も、マイティさんも……ルクルもリゼお姉ちゃんの事が好きだよ」

「そんなの……嘘よ」

「嘘じゃない。リゼお姉ちゃんに幸せになって欲しい人はいっぱいいるよ」


 リゼお姉ちゃんは震えてた。

 そう……幸せになっちゃいけない。素直になっちゃいけないって思ってる。素直になるのが怖いみたい。

 でもね、あたしが背中を押してあげる!


「あたしはリゼお姉ちゃんと全力の勝負をする!どっちが先にルクルのハートを射止めるか勝負だよ!」

「……でも」

「言い訳はナシね!勝負だから勝った方がご褒美を得る権利があるんだよ!」

「ご褒美?」


 あたしはニッと笑う。


「ルクルの恋人になって幸せになるってご褒美だよ!頑張ったご褒美ならいーんでしょ?おねだりしてたの知ってるよ」

「誰から聞いたの?あの子?マイティ?」

「ワールドン様だよ!リゼお姉ちゃんがいっぱい頑張ったらご褒美あげるって約束したって!」


 リゼお姉ちゃんは嬉しそうにはにかんだ。ワールドン様が約束を覚えててくれたのが凄く嬉しいみたい。


「ワールドン様にも宣言するからね!正々堂々と真剣勝負だよ?手を抜いたら許さないから!」

「……ん……分かったの」

「約束だよ」


 あたしは約束して抱擁を交わした。

 エリーゼお姉ちゃんが、リゼお姉ちゃんも自分自身を許せるように頑張ってる気持ちが分かる。リゼお姉ちゃんは幸せになるべきだよ。

 最強のライバルを作っちゃったけど後悔はしてない。全力の相手から勝ち取らなきゃあたしも幸せになれないんだ!


 翌日、ワールドン様に宣戦布告の件を伝えたの。ワールドン様は何か勘違いしてるみたいで「危ない」「戦力が」とか言ってるけど、あたしの意志は変わらない。

 エリーゼお姉ちゃんが戻ってきたら、すぐに街に出掛けて、孤児院から4人も来てくれる事になったよ。それから出会った宿屋のお姉ちゃんが爆弾発言をしたの!


(ヤバいヤバいヤバい大量にライバル増えてる!リゼお姉ちゃんと相談しなきゃ……)


 それから猫魔族の国へ移動中に、リゼお姉ちゃんにルクルのお嫁さん候補が増えた相談をしたの。


「……そのアンの胸は脅威ね」

「どうしよう?」

「ワドの光ガードを参考にするの。あの子にも協力して貰うから」


 作戦を聞いて少し安心したよ。……そしたら翌節の話になったの。


「リッツは希望何かある?もうすぐ誕生節でしょ?」

「……いいの?」

「あの子も祝いたいって」

「あたしも、お姉ちゃん達みたいに日記でやり取りしたい!それと……やっぱりまだ人で居たいかな……」


 誕生節のお祝いは嬉しかった。ワールドン様はどうしてかしょんぼりしてたな。


 そして……


 ルクルがアンさんを見ようとしたら、お胸だけは何とか視界を遮る作戦が始まった。



(あっ!そこはリッツガードだよ!)



ワドがしょんぼりしてたのは、汚染物扱いが割とショックだったからです。

そして、リッツガードがはじまりましたw


───説明しよう。

リッツガードとは、ルクルがアンのお胸を見ようとしたとき、その視界の直線上にリッツが立ちはだかって阻止することを指す。

エリーゼやリゼ、他のドラゴン学院女子生徒も面白がってこのガード活動に参加しているのだ。

……と、後日誰かさんが解説をしていたようです。


次回からは新章「ドラゴン学院」となります。

次回は「校舎建設とインフラ整備」です。

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