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【番外編】息子がギラン・バレー症候群になりました。前編

こんにちは、透子です。

今回は、私の現実の出来事を綴らせていただきました。

高校1年生の息子が、夏休みの終わりに突然「ギラン・バレー症候群」という病気を発症しました。

母として感じた不安、後悔、そして息子の強さ――。

現実は小説のように綺麗にはいきませんが、それでも「家族の絆」が私を支えてくれました。

どうか、読んでくださる方の心にも、少しでも優しい灯りが届きますように。


息子は高校生になり、部活に勉強に、友だちとの遊びに――全てに全力投球でした。

夏の陽射しに焼けた腕を誇らしげに見せて、「この夏、最高だよ」と笑っていたのを覚えています。

けれど、その笑顔があんなにも急に曇るなんて、誰が想像したでしょう。


相変わらず不眠症はあり、軽い睡眠薬を飲んでいます。

「お守りみたいなものだよ」と言いながら、それでも前向きに頑張っていました。

部活の合宿に行く時も、眠れるか不安で、顧問の先生方に相談し、薬を持参しての参加でした。

それでも、息子は毎日楽しそうで――、私も安心していたのです。


そんなある日、夏休みの終わりになった頃。

彼は「ギラン・バレー症候群」という病にかかりました。


初めはただの風邪だと思っていました。

身体がだるく、咳が止まらない。

それでも「部活の疲れが出たのかな」と軽く考えていたのです。

けれど日を追うごとに、歩くのも辛そうになっていきました。


かかりつけの病院に何度も足を運びました。

「百日咳ですね」と診断され、私はその言葉を信じていました。

まさか、それが誤診だったとは――思いもしませんでした。


しかし、ある晩、息子が突然言ったのです。

「お母さん、救急相談に電話してほしい。顔が動かない。ちゃんと歩けない」


夜の九時を過ぎていました。

「大げさじゃない?」と、ほんの一瞬ためらってしまった自分が、今でも悔やまれます。

でも息子は、自分で電話を取りました。

震える声で症状を伝えると、救急相談の方はすぐに言いました。

「すぐ、救急病院へ連絡してください」


私は焦って大学病院に電話をかけました。

事情を話すと、「今すぐ来てください。車椅子を準備します」と言われたのです。

その言葉で、ようやく私は悟りました。

――息子の身体に、取り返しのつかないことが起きているかもしれない、と。


仕事中の夫に電話をし、すぐに帰宅してもらいました。

車に乗り込む頃には、息子はもう自分の足で歩けなくなっていました。


病院に着くと、用意された車椅子に乗せられ、すぐに診察が始まりました。

医師は足のすねを叩き、反射を確かめ、力を入れるよう促しました。

けれど、息子の足は動かない。

反応はなく、力は老人ほどしか残っていませんでした。


蛍光灯の白い光が、やけに冷たく感じられました。

キーボードを打つ音だけが響く診察室で、医師は淡々と言いました。


「この症状は、ギラン・バレー症候群で間違いないと思います。詳しい検査をします。」


その瞬間、時間が止まったように感じました。

何をどうすればいいのか分からないまま、私はただ息子の手を握ることしかできませんでした。


そして――そこからが、長い夜の始まりでした。



---


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

「ギラン・バレー症候群」とは、末梢神経の障害によって力が入らない、感覚がわかりにくい、しびれるなどの症状を起こす病気です。

多くの場合、発症前1ヶ月以内に風邪や下痢などの感染症が先行します。

日本での発症率は年間10万人あたり1〜2人ほど。やや男性に多く、小児から高齢者まで幅広い年齢層に起こりえます。

神経症状発症から4週間以内に症状はピークを迎え、その後ゆっくりと回復していきます。

重症化すると呼吸筋の麻痺や自律神経障害を伴い、命に関わる場合もあります。

死亡率は約1%、約20%の方は1年後もなんらかの障害が残りますが、多くは回復して元の生活に戻ることができます。


次回【後編】では、入院後の生活と、家族としてどのように支え合ったのかを綴ります。

読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます。


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