表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/28

【番外編】〜未来の私からあの頃の私へ〜

今回は、25歳だった当時の私に向けて、今の私が贈る手紙を描きました。

過去の自分を励ます気持ちを、そのまま読者の皆さまにも届けたいと思います。


25歳だった頃、息子は4歳、娘は2歳だった。

毎朝の幼稚園の送り迎え、洗濯、掃除、食事の支度――日々のルーティンは、まるで休む暇のないマラソンのようだった。

それでも、子どもたちの笑顔を見れば疲れが少しだけ消える。そんな小さな希望を頼りに、私はなんとか毎日をやり過ごしていた。


手先は不器用で、流行りのキャラ弁なんて作れなかった。

料理や家事を本格的に始めたのは、20歳になって結婚してからのこと。

それまでは、母がやらせてくれなかった。不器用な私に、やり方も教えてくれなかった。

だから、結婚してすぐに子どもができた時、私は何の知識もないままに母親になってしまったのだ。


息子の幼稚園の担任の先生は、私と同い年だった。

明るく、しっかりした印象の彼女と比べると、私はいつも自信を失っていた。

その視線には、私への軽蔑めいたものが隠れていた気がする――勘違いかもしれないけれど、当時の私にはその一瞬も耐えがたく重くのしかかった。


お弁当作りひとつとっても、上手にできた日は数えるほど。

「また市販のおかず? 手抜きすぎじゃない?」

心の中で自分を責めながら、焦る気持ちでキッチンに立ち続ける。

子どもたちは何も言わず笑顔で食べてくれるけれど、その笑顔すらも私には時々、申し訳なさの象徴のように思えた。


家事を終え、子どもを寝かしつける頃には、私の体と心は限界に近かった。

泣きたい気持ちを必死で押さえ、誰にも言えない孤独と戦った日々。

「私はまだ母親として未熟すぎる…」

毎晩、自分を責めながら眠りについた。


外の世界では、同じ歳のママ友たちが楽しそうに話している。

「今度みんなでランチ行こうよ」

笑顔の裏にある自信と余裕。

その姿を見るたび、私は自分の未熟さを突きつけられるようで、胸が締めつけられた。


幼稚園の行事もまた、私にとっては試練の連続だった。

運動会では、みんな上手にお弁当を作り、衣装を用意し、子どもたちの練習を楽しそうに見守る。

私は手際が悪く、準備に時間がかかり、周囲に迷惑をかけてしまうこともあった。

「どうして私だけこんなにうまくできないんだろう…」

涙をこらえながら、心の中で自分を叱った。


それでも、子どもたちは私のそばにいて、笑顔を向けてくれる。

泣きそうになる心を押さえながら、私はその笑顔に救われた。

「大丈夫、ママ。楽しいよ」

小さな声が、何よりの励ましだった。


あの頃の私は、自分の気持ちを誰にも話せなかった。

弱さを見せることは恥ずかしく、許されないことのように思えていた。

友達に相談することもできず、孤独の中で毎日を耐えた。


でもね、10年後の私は知っている。

あの頃の私が、どれだけ必死に、そして真剣に子どもたちを愛していたかを。

泣きたい時に泣き、休みたい時に休んでいい。

完璧でなくても、あなたは十分に母親として頑張っていたことを。


そして、過去の私に伝えたい。


「大丈夫だよ。

泣いてもいいんだよ。

自分を責めなくていいんだよ。

ちゃんと育ててる。

子どもたちは、あなたを愛してる。」


過去の自分に寄り添い、抱きしめるように言葉をかける。


「ママも辛かったね。

でも、あなたは一人じゃなかった。

いつもそばにいて、支えてくれる未来の私がいる。家族がいる。

だから泣かなくていい。

あなたは、大丈夫。」


そして最後に、そっと伝える。


大好きだよ、25歳の私へ。



---

過去の自分を思い出すと、あの頃の不安や焦りがよみがえります。

でも、振り返れば、ちゃんと前に進んできた自分がいてくれました。

この手紙を読む方も、過去の自分を抱きしめ、少しでも心が軽くなれば嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ