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気づくには、あまりにも遅すぎたけれど

誰よりもそばにいたはずなのに、私は気づいていませんでした。

あの子の「わからない」には、理由があったのに。

今回は、長男が中学2年生になって初めて明かしてくれた苦しみ、

そして私自身が母として直面した“気づきの瞬間”を描いています。

兄が中学生になると、日々の勉強はますます難しさを増していきました。

中間テスト、期末テスト……新しい科目、新しい単元。だけど兄はそれなりに点数も取り、部活のバスケットボールにも夢中で、毎日を楽しんでいるように見えました。


私は、その姿を見て安心していたのです。

きっと大丈夫。どこにでもいる、普通の思春期の男の子。そう思い込んでいたのです。


しかし――

中学2年のある日。高校受験がちらつきはじめた頃、兄が静かに私に言いました。


「……漢字が、どうしても覚えられないんだ。頑張っても、すぐに頭から抜けちゃう。

数学も、計算はできるのに、文章題になると意味がわからなくなる。国語も同じ。

なんていうか……頭の中が、グチャグチャになっちゃうんだ」


その言葉に、私は息を呑みました。


――なんてことだ。

ずっと、私は見過ごしていた。

「些細な間違え」「注意力の問題」「やればできること」と、勝手に決めつけていた。


兄は、苦しんでいたのです。

ずっと、誰にも気づかれないまま、助けを求めていたのに。


私はすぐに、発達障害について調べ始めました。

すると――出てくる特徴のほとんどが、兄にも、そして妹にも、当てはまっていたのです。


「どうして、もっと早く気づいてやれなかったんだろう……」


自責の念で、胸が締めつけられました。


すぐに、発達障害に詳しいメンタルクリニックを探しました。

けれど、子どもの診療を受けてくれる病院は思った以上に少なく、予約すら取れない日々が続きました。


それでも諦めませんでした。

兄が、そして妹が、本当の意味で「苦しまないですむ道」を見つけてほしかったから。


ようやく見つけた一件の病院。

そこは、子どもの心と向き合ってくれる、数少ない専門のクリニックでした。


診察を経て――

医師から告げられたのは、「発達障害」という診断でした。


あの時の感情は、今でも言葉になりません。

でも確かにその瞬間から、私たち家族の「新しい理解」が始まったのです。



---

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。


我が子の異変に気づけなかったこと。

そして「きっと大丈夫」と思い込んでいた私の無知――

すべてが悔しくて、情けなくて、しばらくは涙が止まりませんでした。


でも、兄が勇気を出してくれたおかげで、私は立ち止まることなく“探す母親”になることができました。

たとえ遅くても、気づいたその日から始めればいい。

そう信じて、これからの道を共に歩いていこうと思います。


次回は、診断を受けた後の家族の変化、そして葛藤を描きます。



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