「手術の日――小さな勇気」
少しずつ育まれていた穏やかな日常。その中に突然現れた、長女の目の異変という現実。
前回、先天性白内障という診断を受けた彼女のために、私たち家族が下した決断とは――
夫にとっては、普通の人以上に辛い宣告だったと思う。
自分と同じ右目が、しかも自分の娘に。
誰よりも“片目で生きる”という現実の苦しさを知っている夫だからこそ、その悲しみは計り知れなかった。
「ごめんね……」
私は胸が詰まりながら、何度も心の中で繰り返した。
どうしてもっと早く気づいてあげられなかったのだろう。
もしもう少しだけ早ければ、少しでも視力が育っていたかもしれないのに――。
けれど、くじけてばかりはいられない。
医師は「見えるようになる可能性は低い」と言ったけれど、「手術はできます」とも言ってくれた。
その言葉に、私たちは一縷の望みを託した。
私たち夫婦は、眼科で有名な大学病院に娘を連れて行き、手術の準備を進めることにした。
5歳とまだ幼い長女が不安にならないように、入院する部屋は個室を選び、私が付き添って泊まれるようにお願いした。
そして、ついに手術の日がやってきた。
手術は全身麻酔。
小さな体に麻酔を打たれ、ストレッチャーで運ばれていく娘を見送るとき、私は泣いてはいけないと必死に堪えた。
頑張れ。頑張れ。
その小さな体に、私たちの願いと祈りをすべて託して。
――今はただ、成功を信じて、待つしかなかった。
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ここまで読んでくださってありがとうございます。
今回の話は、我が家の中でも忘れられない「手術の日」について綴りました。
まだ5歳だった長女の勇気と、夫の涙、そして母としての葛藤。
思い返すだけで胸がぎゅっとなります。
次回は、手術後の経過についてお話ししますね。




