「守りたい――あの日の弟と、今のわが子と」
幼稚園という小さな社会の中で、長男が直面した「誤解」と「責め」の日々。
子どもの味方でありたいと願う親としての私と、その時できなかったこと――
苦しくても、見つめ直したい出来事を綴っています。
私は、あのとき守れなかった弟の分まで、今のこの手で、長男の心を守りたいと思っていた。
――けれど、それは簡単なことじゃなかった。
長男の幼稚園生活は、小さな誤解の連続だった。
周りの子どもたちに比べて、長男はひと回り体格がよかった。
ただふざけて肩を組んだだけでも、相手の子の身長が足りず、気づけば首を絞めるような形になってしまったり。
ちょっと押したつもりでも、相手が倒れてしまったり。
――そんなふうにして、いくつもの誤解を生みながらも、それでもなんとか日々を送っていた。
けれど、年長のある日。
私は忘れられない「電話」を受け取ることになる。
「お母さん、今、お時間ありますか? 少しお話がありまして……」
その声の重さに、私はすぐにただならぬ事態を感じ取った。
長女を背負いながら、息を切らせて幼稚園へ向かった。
到着すると、そこには先生たちに囲まれた長男と、
その向かいには険しい表情の女性――怪我をした女の子のお母さんがいた。
女の子はすでに病院に行き、足を縫うほどの怪我を負ったという。
事態の大きさに、私はまず何も考えず、ひたすら頭を下げていた。
謝るしかない、と思っていた。
長男は黙ったまま、先生たちに「どうしてこんなことをしたの?」と責めるように問い詰められていた。
その姿に、私は胸がぎゅうっと締めつけられた。
――でも、冷静になって話を聞いてみると、状況ははっきりしていなかった。
怪我の瞬間を見ていた人はおらず、他の子たちも「よくわからない」と言っていた。
それでも、大人たちは「やったのはこの子」という空気のまま、
ただ黙る長男を責めたてた。
私は、長男の顔をまっすぐ見られなかった。
そして、あとになって何度も自分に問いかけた。
――どうして、あのとき、長男の言葉をまず聞かなかったのか。
――なぜ、もっと早く「大丈夫だよ」と抱きしめてやれなかったのか。
――最初に謝ったのは、本当に正しかったのか。
今でも、その答えは出ないままだ。
その後、相手の親御さんも怒り、先生と両家の両親を交えての話し合いが行われることになった。
私は緊張と不安で、胸の中が張り裂けそうだった。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
親としてどうふるまうべきだったのか、今でも考えることがあります。
子どもたちと向き合う時間は、時に自分自身とも向き合う時間になりますね。
暗く重たい話が続いてしまい、ごめんなさい。
けれど、もう少し書きたいことがあります。
この経験を通して、少しずつ見えてきた希望もあるので、どうか最後まで見守っていただけたら嬉しいです。




