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「この子を信じきれなかった私へ」

うちの子だけが、みんなと違う

そんな風に感じた瞬間から、私は少しずつ自信を失っていきました。


まわりに合わせようと必死で、子どもの“そのまま”を受け入れられなかった頃のこと。

今なら少しだけ、あの頃の私に「大丈夫だよ」と言ってあげられる気がします。


同じように悩んだり、比べてしまったりしている方がいたら、

ほんの少しでも心がゆるむきっかけになれば幸いです。

リトミック教室には、結局、長男が幼稚園に上がるその日まで通い続けた。

大きな変化はなかったけれど、小さな成長を確かに感じる日々だった。

そして私は、新しい環境なら――きっとこの子はもっとのびのびとできるはず、と信じていた。


そうして私たちは、新しい一歩を踏み出すことになる。


――幼稚園という、次のステージへ。





---

入園式の朝、制服に袖を通した長男は、少し誇らしげな顔をしていた。

 私は、それがただ嬉しくて、何枚も写真を撮った。


 新しい園生活が始まった――

 けれど、現実はすぐに私たちに牙を剥いた。


 「お友だちとは仲良くしましょう」

 「順番を守って、静かにお話ししましょう」

 「おもちゃはみんなのものです」


 園の方針は決して間違っていなかった。

 けれど、それはまるで、長男の特性に蓋をするようなものだった。


 少し興奮するとすぐに声が大きくなり、気になるものがあると走り出す。

 手を出してしまうこともあったし、うまく言葉で伝えられないと泣き叫ぶこともあった。

 園の先生からは、連絡帳や電話で日々の出来事が報告された。


 「今日は少し落ち着きがありませんでした」

 「お友だちとトラブルになってしまい…」

 「集団行動に難しさを感じています」


 家でその報告を読むたび、胸の奥がズキズキと痛んだ。

 頑張っているのは分かっていた。でも――

 「どうしてまた、私の選択は間違ってしまったのだろう」

 そんな思いが、また私を責め始めた。


 子どものために良かれと思って選んだ幼稚園。

 でも実際には、私の理想や世間体、まわりの評価ばかり気にしていたのかもしれない。

 「この子の特性に合った場所を探す」

 それよりも、「みんなと同じようにできる子に育てたい」

 ――私は、まだあの頃の自分を引きずっていたのだ。


 夜、眠れずにソファでひとり考え込んでいると、帰宅した夫がそっと隣に座った。


 「今日も大変だった?」


 私は頷くことしかできなかった。

 でも、夫は責めなかった。

 私の話を、途切れずに最後まで聞いてくれた。

 その静かな時間が、どれだけ救いだったか、今でも思い出すたび涙が出そうになる。


 長男は、決して「ダメな子」なんかじゃない。

 ただ、少し違っているだけ。

 その“違い”を、もっと早く大切にしてあげるべきだった。


 でも――

 私はまだ、やり直せるだろうか。

 この子のために、今からでも向き合い方を変えていけるだろうか。


 長男の寝顔を見ながら、私は静かに自分に問いかけていた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


あの頃の私は、子育てに“正解”を求めすぎていたのかもしれません。

「普通にできること」が幸せだと思って、子どもの個性を見落としかけていました。


今振り返って思うのは、あの子はあの子のペースでちゃんと育っていたということ。

そして、私自身もまた、母親として少しずつ育てられていたのだということ。


もしこの物語が、どこかで同じように悩んでいる誰かの心に届いたなら、

書いてよかったと心から思います。


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