第79話 金泥の海とおっぱい その2
次にレミッチは携えていたハサミを使って前髪を一房切り落とすと、何故かそれを水筒の中へと投下した。
【な、なんの儀式ですか、あれは!?】
とうとう我慢出来ずに僕は口を開いてしまった。
「しーっ、エロ箱くん、今いいところなんだから黙っているガオ!」
【エロ箱じゃねえよ! てか何故断髪式するんですか!?】
「あれは子供を作るための聖液をこしらえている最中ガオ。とにかくうるさいから後ろで見ているガオ!」
【はぁ……】
怒りの形相のメスライオンに怒られて、仕方なく俺は皆から数歩下がった。レミッチはといえば水筒をシェイカーよろしくシャカシャカ振っていたかと思うと、蓋を開けて中身をそーっと右手に垂らし、なんとそれを身体に塗りつけ始めた。
【き、金粉ショー!?】
「だから黙れ小僧ガオ! ああやって満月の夜に誰かの身体の一部を金泥に浸した聖液を身体に塗布することで、上手くいけば妊娠して、数ヶ月後にはめでたく出産するんだガオ。猫獣人の場合は大体4カ月くらいだけど、なんでもこっそり産むらしいガオ」
ついつい声を発してしまった僕に、メディットが振り返りもせずに面倒くさそうに説明する。彼女の言う通り、レミッチは日焼け止めオイルでも塗るように、身体中満遍なく金色の液体を擦り込んでいく。下着の下にも手を入れて丹念に行っているため、その姿はなんともなまめかしかったが、月光を受けているせいか、神秘的でもあった。一同から揃ってため息がこぼれ出る。
「すっげえニャン……背筋がゾクゾクものだニャン!」
「これでご飯三杯はいけるニャア……あのお転婆な姉とは別人だニャア!」
「悔しいけど綺麗じゃねえかてやんでえべらぼうめ!」
(なるほど、これが男無しで繁殖する方法なのか……それにしてもこの金泥、知れば知るほど凄すぎる……! だけど確か金泥に関して他に何か言っていたような気が……?)
1人離れている僕はこの世界の秘密の一端に触れて、ちょっと感動するとともに、頭の隅に引っかかるものがあって首はないけど心の中で小首を傾げていた。だが、メディットの金糸のごとき長髪が視界の端で揺れているのを目にした時、興奮状態の最中で耳にした彼女の声が蘇った。あれは、確か……。




