第63話 修練場の戦い その18〜おっぱいの大きな女優の密やかな悩み〜
「いやいや、初めての采配でここまでやれれば十分過ぎてお釣りがくるほどだ。それにリプルよ、魔法無しの勝負とはいえ我相手に引き分けるとは、さすが我が見込んだだけのことはある。堂々と胸を張って誇るが良いぞ。あ、言っておくがいやらしい意味じゃないからな」
相変わらず余計な一言をつけ足すが、魔王の講評は部下に対する思いやりに溢れていた。
「えええええ、そそそそそんな、メメメメメディットさんのお陰です……」
「目がががががガオーっ!」
翼を擦り合わせてモジモジし、ひたすら照れまくるリプルが鉤爪で指し示す軍師殿は相変わらずム◯カみたいに絶叫を繰り返すのみだったので、見かねたミレーナがグイッと引っ張って医務室へと連れ去った。ちゃんとぬるま湯で目を洗ってくれるかどうか心配だが。さて、気がつけば眼前には身づくろいするリプルが立っていたため、僕は極めて紳士的に穏やかに彼女に語りかけた。
【リプルさん、本当にあなたは凄い方です。相当な努力家ですし、かといってそれを鼻にかけず、控えめで優しい女性だと思います。ただ、惜しむらくは一族の気風が荒くて厳しく、あなたの自己肯定感を奪ってしまったのでしょう。早くに両親をみまかったと聞きましたが、そのことも影響しているのかもしれません】
「……」
彼女はやや緊張した面持ちで耳を傾けているが、時々コクリと首を縦に振るってくれる。
「どうしたんだムネスケ、なんか変なものでも食ったのか? まるでお医者さんみたいじゃないか」
【お医者さんなんですよ、本当に! てか何も食べられませんよ! 知ってるくせに!】
僕は茶々を入れてくる魔王に突っ込みで返すと、記憶の糸を辿って脳内で話をまとめた。いよいよ本題だ。
【僕らの世界にも、あなたのように幼少期に親元から離され里親の家や施設をたらい回しにされ、話す時に詰まってしまう、いわゆる吃音症になった女性がいました。ノーマ・ジーンという名で、あなたと同じく薔薇のように綺麗な美人でした】
「おっぱいもリプル同様大きかったのか?」
【魔王はちょっと黙ってて! 確かにデカかったけど! さて、彼女は話すのは苦手でしたが、その美貌から女優に抜擢され、自分の話し方を改善しようと努力して、遂に克服しました。どうやったと思います?】
「「むむむむ……」」
聴衆の二人、すなわち魔王とリプルは共に考え込んだ。




