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38話 我が子あればこそ

「いけー、お父さん! やっちゃえー、がんばれーーー!!!」


 ティカの声援が聞こえてくる。

 その度に、体中に力がみなぎるような気がした。


 いや。

 実際に力が湧き上がっていた。


 今まで以上にスムーズに。

 そして、圧倒的な『聖闘気』の解放に成功した。


 ティカが聖女として覚醒して。

 俺がその聖騎士となり。

 真の能力が使えるようになったのだろう


 痺れを切らした様子の王子が騎士に突撃を命じたものの、その全てを一撃で撃退することに成功した。

 自分でも驚くほどの威力を出している。


「この力は……」


 聖女の……ティカの力なのだろうか?


 聖騎士が聖女の力を引き出すように。

 聖女もまた、聖騎士の力を引き出しているのだろう。

 すさまじいな。


 なんにせよ。


「ティカの応援があれば、俺は負けることはない!」


 聖女の力とか、そういうものは関係なく。


 親は、子の前でかっこつけたいものだ。

 故に、絶対に負けることはない。


 力を込めて剣を振り抜いた。

 刃を横にして、斬るのではなく叩く。


 手加減した一撃ではあるが、それで十分だ。

 再び、騎士達がまとめて吹き飛んでいく。


「くそっ、怯むな!」

「どのような任務であれ、俺達は……!」


 複数の騎士が包囲網を形成して、時間差で斬りかかってきた。

 威力、速度。

 そしてタイミング、全てが完璧だ。

 熟練の騎士の実力を見た。


 ……が。


「その程度では、やられてやるわけにはいかないな」


 騎士達の連携は見事なものではあるが、俺は、さらにその上を行くことができる。


 次々と繰り出される攻撃をミリ単位で見切り、必要最小限の動きで回避。

 一撃毎にカウンターを繰り出して、剣の柄を腹部に叩き込んでいく。

 『聖闘気』もあるため、力負けすることもない。


 結果、倒れるのは包囲網を敷いた騎士達の方になった。


「おいっ、アレを使うぞ!」


 残りの騎士達は、焦りを含み、宝石に似た魔道具を取り出した。

 なにかしらの魔法が込められているみたいだが……


「来い!」


 宝石が砕かれると、地面に魔法陣が浮かび上がり、意思を持って動く鎧……リビングアーマーが出現した。


 なるほど。

 そういえば、自由に使役できて、かつ強い力を持つリビングアーマーの研究を誰かがしていたな。

 すでに実用段階になっていたか。


 大きさは二メートルほど。

 巨大な剣と盾を軽々と持ち上げて、こちらに突撃してくる。


 これが騎士達の切り札なのだろう。


 納得だ。

 これほどの相手、倒すとなると骨が折れるだろう。

 怪物のような膂力に、全身を覆う頑強な鎧。

 こちらの攻撃は通じることはなくて、手痛い攻撃を喰らうばかり。


 普通なら、そんな一方的な戦いになってしまうだろう。


「この程度なら、まだ戦いようがある」


 リビングアーマーは強烈な攻撃を繰り出してくるが、俺は、その全てを避けて、あるいは防いでみせた。


 王子と同じだ。

 強い力を持つが、技術がない。

 そして、心がない。


 そのような剣は軽いだけ。

 なんの意味もない。


「お前は眠れ」


 刃を正面に。

 地面を踏み抜くような勢いで蹴り、一気にリビングアーマーの懐に飛び込んだ。

 その勢いのまま、下から上に剣を突き上げる。


 ギィッ!!!


 リビングアーマーの胸の中心を貫いた。

 カタカタと震えて……

 そのまま機能を停止する。


「おい、嘘だろ……最新技術を結集して作られたんだぞ、あいつは……」

「俺達だって、まとめてかかっても勝てるかどうか……」

「やっぱり、隊長は隊長だ……最強の伝説はまったく衰えていない……」


 切り札を破壊されたことで、騎士達の心は折れたみたいだ。

 誰も動こうとしない。


 騎士の方はこれでいいだろう。

 あとは、適当に王子の相手をすればいいが……


「くっ……そぉおおおおおお!!!!!? なんだ、なんなんだ、お前は!? この僕の邪魔をするな! 何様のつもりだ!?」

「王子……あなたこそ、俺の邪魔をしないでほしい。それに俺は、当たり前のことをしているだけだ。親は子を守るもの……ティカを理不尽に連れ去ろうというのなら、俺は、ただ剣を振るまでのこと」

「ぐっ、貴様ぁ……!!!」


 王子はまったく諦めていない。

 今も剣を握り、隙あれば斬りかかろうとしているくらいだ。


 彼の相手を続けるのは問題ないが……

 少し追いつめすぎたかもしれない。


 狂気すら感じる王子の表情を見ていると、なにをしでかすかわからない。

 下手をしたら、予想外のことをやらかして、被害が出るかもしれない。


 できる限り時間を稼いでほしいとファムに言われたが、この辺りが限界かもしれないな。


 俺は剣を構えて……


「はいはーい、そこまで!」


 突如、戦場に響いた声に、俺は笑みをこぼした。


 ようやくか。

 待ちかねたぞ……ファム。

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