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24話 かつての仲間

 ティカが見せた力は、どう見ても聖女の能力だった。


 しかし、すでにリュシアという聖女がいる。

 同じ時代に二人の聖女が現れるなんて話、聞いたことがない。


 もしかしたら、リュシアが偽物でティカが本物の聖女……?

 あるいは、ティカの力は聖女に似て異なるもの……?


 わからない。

 あれから時間をかけて何度も考えたものの、答えが見つからない。


 ひとまず、ティカの力は秘密にすることに。

 村のみんなに話しても、奇異の目で見られるとか迫害されるとか、そのようなことは絶対にないと思うが……

 ただ、どこからどこまで話が流れていくかわからない。

 秘密を知る者は少ない方がいい。


 それから、村長とも話し合ったけれど、やはり答えが見つからない。


 ティカの両親は、特別な力を持つことはなくて、普通の人だったらしい。

 夫は農夫で、妻も農婦。

 農作業を通じて知り合い、恋仲に発展して、ティカが生まれた。


 ただ、ティカがもっと小さい頃に、事故で二人共他界してしまったという。


 両親から話を聞くことができればよかったのだけど、それができないのなら仕方ない。

 俺は、別の人を頼ることにした。


 手紙をしたためて、週に一度、村にやってくる商人に配達を依頼する。


 ……そして、さらに一週間後。




――――――――――




 コンコン。


 村長は出かけ、ティカと一緒に過ごしていると、玄関の扉をノックする音が響いた。


「はーい! どちらさまですかー!?」


 ティカが元気よく返事をして、表に出る。

 一人では心配なので、俺も一緒についていく。


「やっはろー」

「んゆ? ……やっはろー!」


 ゆるい挨拶をされて。

 ティカは不思議そうにするものの、すぐに笑顔でゆる元気な挨拶を返した。


 ぶかぶかの魔法衣。

 それと、同じく大きな魔法使いの帽子。


 その下に見えるのは、まだ幼さの残る顔。

 綺麗と可愛いの中間で、庇護欲をそそられるような愛らしさがある。


 輝くような銀色の髪は、足に届くほどに長い。

 それと、ピンと尖る長い耳。


「ファムか!」

「手紙、読んだよ。こんな僻地まで来てあげたんだから、感謝してよ?」


 ファム・ミリアリア。

 王国の宮廷魔法使いで、その実力はトップクラス。


 見た目はお子様ではあるが、エルフなので、実年齢は百を超えている。

 詳細な年齢を聞こうとすると怒り出すので、そこは知らない。

 小さな体の話をすると、やはり怒り出す。


 彼女は優れた魔法使いというだけではなくて、幅広く、とても深い知識を持つ。

 まだ聖騎士だった頃、彼女の知識に何度も助けられたものだ。


 王国にいた頃の、数少ない友達……だったと思う。

 ティカの件で、ダメ元で連絡をとってみたが、まさか、本当に来てくれるとは。


「すまない。俺だけでは、どうしても答えがわからなくてな。かといって、放っておくこともできない問題で……わざわざ、ここまで来てくれて助かる」

「いいよ。レオンには、すごくすっごく助けられたからねー。スケジュール調整とか転移魔法とか、ちょっと面倒なところはあったけど、それはそれ。恩返しはしておかないと」


 はて?

 世話になったのは俺の方なのだが……


「いやいや。私の方が何度も助けられているよ? 魔物の討伐とか研究素材の採取とか、それこそ数え切れないほど。レオンがいなかったら、私、とっくに辞めていたかも。っていか、たぶん、騎士団もバラバラの空中分解してたと思うよ。あー……だから今、レオンがいなくて大変でブラックすぎて、めっちゃ辞めたい。辞めていい?」

「コメントに困るが……」


 そこまで頼りにされていたのか。

 嬉しいと思うと同時、追放されて、このようなところにいるのを申しわけなく思う。


 ただ、もうここを離れるつもりはない。

 俺は、ティカを守ると決めたのだ。


 ……今度こそ守る。


「ねえねえ、お姉ちゃん、だぁれ?」

「ふっふっふ。お姉ちゃんは、実は……」

「実は……?」

「正義の魔法使い、ミラクルマジカルガール、キューティーマジシャンなのだ!」

「わー、かっこいい!!!」


 そういうのが好きなのか、ティカは、目をキラキラと輝かせた。

 ファムも調子に乗り、ビシッとポーズを何度も決める。


 そうだな。

 とても頭がよく、賢い友人ではあるが、このようにお調子者だ。


 とはいえ、それが悪いということはない。

 むしろ、俺は好ましく思っていて……

 気楽に付き合うことができるファムのことを、性別を超えた親友だと思っている。


「私は、ファム。お嬢ちゃんは?」

「ティカだよ! ティカ・リュミエール!」

「……なるほど、ティカちゃんか。可愛い名前だね」


 今、一瞬、間があったような……?


「私は、レオンの友達なんだ。ちょっと近くに用事があって、ついでに、顔を見ようとここにやってきたんだよ」

「そうだったんだ! レオンおじさん、こんなに素敵なお姉ちゃんの友達がいたんだね。よっ、色男!」

「……ティカ、どこでそのような言葉を覚えたんだ?」

「? 酒屋のおじさんが言っていたよ」


 今度、変なことを教えないように説教しなければ。


 ……なんか、発想が父親じみてきたな。


「あ! お客さんだから、お茶を出さないと。待っててね!」


 ティカは、慌てた様子で家の奥に消えた。


「元気な子だねえ」

「ああ」

「というか、レオンの子? なんか、よく似ているし、めっちゃ相性が良さそうなんだけど」

「まさか。ティカは、居候先の娘さんだ」

「そっか。普通に、親子に見えたんだけど……」


 ティカが娘……か。

 そうなるとしたら嬉しいかもしれないな。


「話は後にして、今は、あの子のお茶をいただこうか?」

「そうしよう」

「ついでに、私も美味しくいただいちゃう?」

「冗談はやめろ」

「本気なんだけどなー、ちぇ」


 ファムは、ちょくちょくこういう冗談を口にする。

 俺のような者をからかい、なにが楽しいのだろうか?


「……むぅ、やっぱりレオンは手強いなあ」


 ファムは、一人、よくわからないことをつぶやいていた。

本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!

レオンとティカの物語、いかがでしたでしょうか?

少しでも「続きが気になる」と思っていただけたら、ぜひ評価やブックマークをお願いします。

次回もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
ファムのお調子なキャラはビステマのルナを思い起こさせます…。 でも、精霊に対してエルフだし…
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