表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/42

13話 アニキ!

「あっ、レオンさん、クライドさん、おかえりなさい! 成果は……どう、でした……か?」


 冒険者ギルドで執務作業をしていたシェフィは、レオンとクライドが戻ってきて笑顔を見せた。

 ただ、異様な光景を目の当たりにして、すぐに怪訝そうな表情に。


「アニキ、おつかれさまでした! アニキの荷物、ここに降ろしておきますね!」

「あ、いや……」

「進化体の討伐で、アニキも疲れたでしょう? 肩でも揉みましょうか? って、すみません! 進化体ごとき、アニキの敵じゃないっすよね! ってか、実際に敵じゃなかったですからね!」

「えっと……」


 「助けてくれ……」という感じで、レオンはシェフィを見た。


 しかし、シェフィはまったく事情がわからない。


 出発前は、クライドが先輩風を吹かせて、とても偉そうにしていたのだけど……

 戻ってきたら立場が逆転していた。


 なぜ?


 シェフィは、「説明してください」と逆に助けを求める目を送り返した。


「あー……その、なぜかわからないが、クライドの態度がこのように急変してな。俺も戸惑っているところだ」

「えっと……とりあえず、詳しい経緯をお話いただいてもよろしいですか? クライドさんの様子も気になりますけど、今、聞き捨てならない単語も聞こえてきたので」

「そうだな……順を追って説明しよう」




――――――――――




「……と、いうわけだ」


 俺は、クライドと狩りに出て、ギルドに戻ってくるまでの経緯をシェフィに説明した。


 最初は狩りは順調で、ウルフの群れを掃討したこと。

 その後、進化体が現れて、交戦したこと。

 討伐は完了したが、なぜか、クライドの態度が豹変したこと。


「なるほど……それで」

「クライドの態度の変化に心当たりが?」

「クライドさんは、良くも悪くもとても素直な方なので。レオンさんの強さに惚れてしまったのではないかと」

「ああ、その通りだ! 俺、アニキがあんなに強いなんて知らなくて……マジですごかった! アニキ、俺を舎弟にしてくれ!」

「しゃ、舎弟……?」

「頼む! 靴磨きでも荷物持ちでもなんでもやる! だから、だから頼む!!!」

「あー……」


 この場合、どうしたらいいのだろう?


 困り果てて、シェフィに助けを求める視線を送る。

 このやりとり、何度目だろうか?


「舎弟というか、弟子にしてあげてはどうでしょう?」

「弟子……と言われてもな」


 部下を持ったことはあるが、弟子をとったことはない。

 どのようにすればいいか、まるでわからないのだが。


「アニキ、お願いします! 俺、アニキの舎弟にしてもらえるまで、ここを一歩も動きません!!!」

「あの……ここはギルドなので、ここから動かないというのは私が困るんですけど……」

「アニキ、お願いしやす!」


 話を聞いていない様子で、クライドが必死に訴えかけてきた。


 ……そんな彼を見ていると、昔の自分を思い出した。


 リュシアに聖女の素質があると判明して。

 娘を守りたいと、騎士になることを決意した俺は、騎士団の門を叩いたな。

 素人なんて必要としていないと追い返されたが、諦めず、何度も何度も赴いて……


「……わかった」


 昔の自分を重ねて見てしまい、とてもではないが断ることはできなかった。


「アニキ、本当ですか!?」

「弟子をとったことはないから、なにを教えればいいかわからないが……それでもいいのなら」

「はい、大丈夫です! ありがとうございます!!!」


 くすぐったい気持ちだな。


 ただ、まっすぐなクライドを見ていると、これも悪くないと思えてくる。

 俺にどれだけのことができるかわからないが、彼の成長の手助けができるようにがんばろう。


「それで……」


 話がまとまったところで、シェフィが真面目な顔になる。


「進化体が現れたというのは本当ですか?」

「ああ、本当だ。これを見てほしい」


 掃討したウルフ達の素材を取り出して。

 続けて、進化体の素材を取り出した。


 大きさがまったく違い、サイズが違うことは一目瞭然だ。


「これは……確かに、進化体のようですね」

「今までに、この近辺で進化体が現れたという話は?」

「ありません」

「ないっすよ、アニキ」


 二人がそう言うのなら間違いないのだろう。


「進化体に成長する要因は、未だハッキリとは解明されていない。このようなところでも進化体が誕生する可能性はあるが……」

「えっと……いくつか例はあるみたいですね。ただし、数えるほどですが」

「ん? ってことは、ただの偶然ですかね? なーんだ、焦る必要なかったか」

「いや、楽観はできない」


 進化体が現れたということは、魔物が進化体となる条件が整っていた、ということだ。


 ここ最近、ウルフが出没していたのは、先の進化体のせいだろう。

 ならば、進化体が出現したのは、なぜか?


 その理由を考えると、悪い想像しか出てこない。


「進化体があの一匹だけとは限らない」

「あ、アニキ、脅かさないでくださいよ……」

「もちろん、可能性の話だ。ただ、今は、最悪の想定をしておいた方がいい。外れたら笑い話にすればいいが……」

「当たりだとしたら、早急に対策を練らなければいけませんね」

「その通りだ」


 ただの杞憂であってほしいが、果たしてどうなるか……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://book1.adouzi.eu.org/n8290ko/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ