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10話

10



 ザリガニは蝦蛄のような味で美味かった、殻が固くなかなか解体できずイライラし直接火の中に突っ込んで直火焼きしてやったら、どうやら熱に弱かったらしく簡単にむくことができた。また、水色の玉もそれぞれ1個ずつ計3個ゲットした。おそらくかなり価値あるものだと思うが利用方法がわからないとりあえず確保しておく。


 玉のことはわからないが、わかったこともある、獲物を仕留めた時に感じる爽快感の正体だ。おそらくRPGでいうところのレベルアップというやつだろう。爽快感の直後から、急に力が増したり、素早くなったりということがなかったのでわからなかったが、どうやらこの世界のレベルアップは「器」を広げるという仕様のようだ。もっと言えば、筋力やら素早さの絶対値を上げるということだろうか。

例えば、元々俺の握力はどんなに鍛えても250キロとしよう。しかしレベルアップすることで270キロまで上げられるようになる。ただ何もしなければ250キロのままで、鍛えることにより20キロ増すという仕様だ。異世界転移なんてファンタジーなのに実に現実的仕様だ。


 なぜこれに気づいたかというと日課のトレーニングが日ましに楽になっていき、ついには今まで砕けなかった岩を蹴り砕けたためだ。また一歩人外の階段を昇ってしまった・・・まあできなかったことができるようになるのはなんとも気持ちいいことであるし、この世界、この森の中で生き残るには強さは必要なのでレベルアップ大歓迎だ。この考えが正しいかどうなんてわからないが、とりあえず今日の糧を得るべくレッツハンティング。



 洞窟から5キロ圏内はほぼ探索し終えており、今日はそこから更に先を目指し進んで行く。途中見つけた木の実をタロウに差し出すと、前脚で払いのけるので捨てる。どうやらこいつは匂いで食えるか食えないか(有毒か無毒か)を判断できるらしい。以前の探索で見つけた木の実を齧ろうとしたところ、跳びかかってきてハタキ落としたので叱りつけて食ったのだが、激不味でおまけに下痢が止まらなくなってしまったことがあった。それ以来、初めて食べるものはタロウに確認してもらっている。本当にスーパーオオカミちゃんだ。ちなみにシッペイも同じことができる。


 洞窟を出発して5時間、距離にして15キロくらいか、植生が明らかに変わり、昆虫などの小動物にも変化が見られ、気温と湿度がぐっと上がった。アマゾンのジャングルって感じだ。僅かな距離でこうも環境が変わるとは今更だが異世界だと改めて実感する。生態系が変化しているのでまだ見ぬ猛獣がいるかもしれない、警戒して先に進もう。


 更に30分ほどすすむとシッペイが警戒の唸り声を発する。視線の先を双眼鏡で確認すると、2足歩行のトカゲが8匹程の集団で徘徊している。棍棒や槍のようなものをもっていることから、一応の知性は窺える。しかし爬虫類とコミュニケーションはとれそうにないし、逃げるべきか、戦うべきか迷うところだ。2頭の様子を見ると鼻息荒く早くも戦闘態勢に入っている、ならば飼い主としてはペットの欲求を満たすべく強襲すべきだろう。


 行けと合図を送ると弾かれたように駆け出す2頭。援護に投石スタート。200メートルくらいの距離をものともせず砲弾と化した石はトカゲ(リザードマン)集団に着弾する。当たるとは思っていなかったが運よく脚に当たったようで一匹がもがいている。続けざまに3投し、結果を見ずに突っ込む。


 到着するとそこは戦場だった。ゴブリンの時のように虐殺にこそなっていないがうちの愛オオカミたち暴れまわっている。パニックになっているトカゲを殴りとばす。肉を殴るという感触が拳に伝わり得も言われぬ快感が全身をつきぬける。しかも俺の一撃を食らったにも関わらず起き上がろうとしている。最高だ。狩りとはいえ弱い者いじめは趣味じゃない、全力で向かって来い。


「おらっ!   がっ!?」


 前蹴りをお見舞いしたところで、背中に衝撃、どうやら背後からもらったようだ。振り向き様に蹴り上げると棍棒でガードされてしまった。2メートル程後退させたがダメージはなさそうだ、こいつらかなり強い。


「行くぞおら」 


 蹴りを防いだ一匹に突進し、顔面を殴る、ふらついたところ捕まえ投げ飛ばす。技もなにもないただ腕力だけでの投げだ。しかし地面に叩きつけられそいつは口から泡を吹き沈黙した。とどめに首を踏みつけ脛骨を砕き次の獲物に襲いかかる。タロウを背後から襲おうとしていたリザードマンの尻尾を掴み、ジャイアントスイングのように振り回すと耐えきれなかったのか尻尾がちぎれ、リザードマンは岩に叩きつけられ絶命する。


 バチンと盛大な音を響かせ尻尾を叩きつけられる。


「いてーなおい」


 そのまま尻尾掴み引き寄せてから頭突きを食らわせる。予想以上に固く、目から火花がとんだが、相手は頭蓋を陥没させ痙攣している。


「キャン」


 シッペイが3匹に囲まれ、苦戦しているようだ。腰から山刀を引き抜き背後から切り付けるとあっさり首が飛んでしまった。驚愕する2匹を袈裟がけにすると力なく倒れ込んだ。シッペイは多少傷を負っているものの大丈夫そうだ。状況を確認するとタロウが最後の1匹の首筋に噛付き勝負を決したようだ。


 満足のいく戦いだったが反省も残る。戦闘中はどうも頭に血が上ってしまい周りが見えなくなってしまう。2発も不意打ちを食らってしまった。もう少し周りが見えていればシッペイが窮地に立たされることもなかっただろう。今後の課題だ。


 反省はこのくらいにして野営の準備を行う。流石に今から洞窟に戻るのは無理なので。


 火をおこし、テントをはり、リザードマンを捌く。玉を期待したのだが今回はなかった。まあ現状使い方がわからないのであってもなくてもいいが・・・リザードマンの皮はかなり丈夫で伸縮性に富んでいるようだ、食後に鞣しておこう。肉は鳥のササミっぽい味で取り立てて美味いというほどでもないが問題なく食える。タロウとシッペイもガツガツ食っている。ただ塩が少なくなっているので保存はできない。モットーに反するがこの場に放置していこう。それよりもようやく武器を手に入れることができた。リザードマンの持っていた棍棒である。俺の蹴りをうけてヒビすらはいらない頑丈さに20キロはあろうかという重み。長さも1メートルほどで扱いやすい。正に俺のための武器って感じだ。残念ながら一本しかないが今後活躍してくれるだろう。

 手早く片付けをして、警戒を2頭に任せ早めに寝ることにする。


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