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番外編 大学生活 合コン

完全な思いつき

付き合ってくれたら幸いです


「......マジで言ってる?」

「大マジなんだよ!!」


 多くの若者が行き来を繰り返す大学の学食の一角にて、信介は食べようと箸で掴んだ唐揚げをそのままに目の前で一生懸命で必死な様子の友人の話を聞き言う。友人はそれに全力で答える。しかし、それでも何故自分にその話が来たのかイマイチ納得がいかない信介。


「それって人数合わせだろ?それなら俺でなくても良いと思うんだけど」

「こんな事頼めるの信介ぐらいなんだよ」


 とにかく適当な理由で話の方向を変えたいところだが、友人はそうはいかない様子だ。


 元々の話は、今夜信介と話している友人とその他この場にはいない数人の男子が他の大学の女子グループと食事会をするというもの。そこに信介は参加する理由がなかったので既に最初の方で断りを入れていた。しかし当日になった今、参加するはずだった男子一人が急遽高熱を出し参加する事が出来なくなった。それにより男と女の人数が合わない事に焦った男、今信介に説得を試みている男が信介に今夜その食事会に参加するよう説明を促している。


「でもさあ、それって合コンだよな?」


 合コン。それは男女の出会いを目的に開かれるものだ。主に彼氏彼女が欲しい連中が集まるらしいが、既に出会っている信介は今まで一度もそれに参加した事はない。大学に入る前から”そんな誘い本当にあるのか?”と半信半疑だったが大学に入ってからかなりの頻度で誘いの連絡が大学に来て出会った友人達から送られてくる。


「一回ぐらい頼むよ。人数合わせだからな?それにもしかしたらお前も良い子が見つかるかも知んねえし」

「前から言ってるけど、俺には彼女がもういるんだって」

「でもお前が女の子と二人っきりになってる所なんて構内でも外でも見た事ねえよ。それに写真だって見せてくれねえし」

「......」

「それで俺達は気づいた」

「あ?」


 何を?


「お前が言っている彼女とはこの現実世界に存在しないという事を。だから写真も実物を見せようとしない。何故なら実在しないからな」

「...........」


 前々から友人達には葵という高校から付き合い始めた彼女がいる事を言っていた。しかし誰もそんな事を本気にすることがない。ましてやまさかの三次元ではなく二次元に存在しているものを彼女と呼ぶ痛い奴というレッテルを勝手に貼られている事に信介は友人を目の前にして呆れて言葉を失う。


「でも大丈夫だ。今日参加すればお前の人生も変わる事を俺が保証してやる」

「いや、だから...」

「じゃあ今日の十九時に連絡する店まで来てくれよな!!」

「あ.....」


 行くとも返答していないのに友人はそのまま学食から出ていってしまった。逃げられた。


「.....面倒な事になった」


 強制的に槙本信介、合コン参加が決定した。






【信介】:彼女がいる身で合コンに参加する男ってクソだと思うか?

【裕樹】:クソだな

【駿】 :クソだね


「やっぱりクソかよ」


 やはりここは親友と呼ぶにふさわしい高校からの友達二人に聞いてみたが結果は信介も思った通りの答えだった。


【駿】 :なんか大学イベントって感じの来たね。でも何で参加する事になったの?信ってそういうの断ってたんでしょ?

【信介】:相手の勢いに負けたのと断る前に逃げられた。さっきから連絡しまくってるけど一向に折り返しも既読もない。完全に逃げられた。

【裕樹】:嫌なら行かなきゃいいだろ

【信介】:それだと男連中が困るんだと。いつも女に飢えてるような奴らだから

【裕樹】:じゃあ行くのか?このお人よしめ

【駿】 :新城さんにバレたらまずいんじゃない?


「そうなんだよな」


 大事な彼女がいるのに出会いを求める場に行く。まだ行ってもいないのに彼女に向けての罪悪感がとんでもなくわいてくる。


【信介】:事情を説明してから行こうと思ってる

【駿】 :ケンカにならない?

【裕樹】:流石の新城も怒るんじゃねえか?

【信介】:取り合えず葵には説明する。それでケンカになれば許してもらえるまで何とかする

【裕樹】:でも新城なら分かってくれる気がするな。優しいし

【信介】:じゃあちょっくら説明してくる。結果は明日にでもするよ

【駿】 :面白い結果を期待してる


 こっちはそんな事を望んでいないと思いながら三人のトーク画面を閉じる。スマホを操作して”葵”と表記されている所を押し電話を掛ける。夕方で大学の講義は終わっている筈だ。今日はバイトのシフトも入っていないと言っていた気がする。


『もしもし』


 聞き馴染みのある声がスマホから聞こえてくる。


「もしもし葵、今大丈夫?」

『うん。丁度講義が終わってこれから帰ろうとしてたとこ』


 彼女である葵は信介の通っている大学よりもレベルが高い大学に通っている。しかし二人とも実家暮らしを継続しており、週末は必ず葵が槙本家にお泊りをしている。仲は良好で高校よりも自由度の高い大学に入ってからの方が仲の良さが深まっている。


「.....あのさあ....非常に言いづらい報告がありまして」

『...うん。何?』


 話は手短にする。そうすればいらない余力を使わないで済む。しかし急に信介がかしこまった口調で話始めるので聞く側の葵も声に変な緊張が伝わっている。


「合コン...に参加する事になりました」

『...........』

「葵さん......?」

『私は......信介の何なのかな?』


 怒っている。それも今までにない程の怒りをスマホ越しでも伝わってくるのを信介は感じる。ケンカなんて殆どしたことがないが俗にいう”普段怒らない人ほど怒ると本気で怖い”通りに葵は怒らせたらダメな人種である事を信介は知っている。

 

「彼女です!」

『そうだよね。だったら何でそんな場所に行くのか、ちゃんとした理由もないと流石の私も納得できないんだけど?』

「実はですね、友人から先ほど急に来れる筈だった男が一人熱を出したそうでその代わりにという事で強制参加する事に。所詮人数合わせの為だけに行く感じです、はい」

『ちゃんと私の存在があるって説明してたんじゃないの?』

「普段からそれでそういう誘いを断ってたんだけど友人達には葵の写真すら見せてなくて、そのせいで俺の彼女は現実にはいない事にされました」

『.........どんまい』

「はい」


 最初は怒った様子であったが、信介の大学内での友人達からの認識のされようにまさかの励ましの言葉を贈る葵。


『........分かった。今回だけは許します』

「いいの?」


 スマホから聞こえたのは参加する事を了承してくれる言葉だった。案外あっさりと許しを得れた事に思わず信介は聞き返す。


『信介にも友達付き合いがあるし毎回断るのも人間関係に影響するでしょ?仕方ないよ。たまにはそう言った集まりにも参加しなきゃ』

「葵さま!」

『あ、でも一つだけ条件つけるね』

「え」

















「それでは....かんぱ~い!!!!」


”かんぱ~い!!!”

「...........」


 結局合コンに強制的に参加する事となった信介は周囲の異様な盛り上がりの雰囲気に最初から飲まれる形となった。そんな遅れ気味の様子の信介を差し置いて信介の男子チームは目の前にいる違う大学に通う女子大生相手に浮かれ気分で盛り上がりまくり。鼻の下を伸ばしているのがバレバレだ。


 そんな男子チームを前にする女子グループは参加した理由がこの場にいる全員が殆ど同じような出会いを目的としているので全く持って引いておらず、ましてや一緒に盛り上がろうという感じだ。


(ノリで仕方なく来てみたは良いけどどんな顔でいれば正解なのか)


 見知った人達でのこのような場なら少し騒げるし会話も出来るが、少々信介自身人見知りがあるので相手側の女性メンバーに知り合いがいないので話せない。別に出会いを目的としていないので話さなくても良いのだが隣にいる友人達のポイント少しでも上げるように努めなくてはいけないのかと考えてしまう。


 この場の自分の立ち回りに悩む信介。 


「あれ、楽しくない感じかな」


 信介の前方に座る黒髪セミロングの女性が信介を面白そうに見て言う。


「.....俺?」

「キミ。なんか他の男とテンションが違うね」


 確かにこの場で静かに過ごしているのは無理やり参加させられた信介と今信介に話しかけている女性だけで、他のメンバーは互いに何かの話題で盛り上がっているのか大いに話をしている。


「まあ、元々来るつもりは無かったから」

「へ~、じゃあ私と同じだ。私は今日急に入ってたカラオケのバイトが無くなって人数合わせで参加したの」

「俺は今日ここに来る予定だった奴が体調を崩してその代わり」

「なんか似てるね」

「似てるって言うか同じだな」


 信介は話しながら目の前に置かれたオレンジジュースの入ったジョッキを持つ。まだ二十歳の誕生日前でアルコールの入った飲み物は飲めない。


「なんか子供っぽいね」


 オレンジジュースを飲んでいると女性は微笑んで言った。


「ほかに飲めるものがなかったんで」

「じゃあ、ちょっと私の飲んでみる?案外いけるかもよ」


 そう言って女性が見せるのはどこからどう見てもビールの入ったジョッキだ。


「.......俺まだ未成年です」

「あ、そうなんだ。じゃあ私の方が年上だね」

「だからって飲まないです」


 年上命令!と言われる前に信介は予防線を張る。


「ちぇー、つまんないの」

「俺を玩具扱いしないでください」

「別にいいじゃん。どうせこの場だけの関係なんだし。それにキミ、これいるでしょ」

 

 女性は信介以外には見えないようにして小指を立てた。


「.....よくわかりましたね」


 日本で小指を立てる意味は主に”恋人”や”愛人”と言う意味がある。


「さっきからチラチラとスマホ確認してたし、時間でも見てるのかな?って思ったけど流石に数分に一度見ないでしょ。どうでも良い内容なら無視しそうだしねキミ」

「はあ.....」


 探偵でもしてるのかと思うほど先ほどからの動きを把握されている事に驚きのあまりそのような曖昧な言葉しか出てこない信介。確かにちょくちょく葵とスマホを通してやり取りをしている。内容は主に俺を心配しての事。彼女なので信介を心配する気持ちは分かるので信介も律儀にちゃんと返している。


 それを目の前にいる女性はばっちりと見ていたのだ。


「....ねえ、キミ私と秘密の関係になってみない?」

「.......は?」

どうでしたかね、信介の大学生活の出来事。

自分は大学生活を送っていないでの想像で書きましたけど。

この後の続きはどうしようか正直迷ってますね。最後の終わり方が癖で次回に続く感じになってしまいましたし、でも思いつきなのでね。

所詮読んでくれた人達のご要望次第ですね。自分勝手でごめんなさい!



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― 新着の感想 ―
[良い点] キャラの距離感や関係性が好きな作品なので続きが読めて嬉しいです 本編は綺麗に終わりましたがエピローグまでに存在する恋人としての数年間は是非見てみたいとおもっていたので補完する形で出してもら…
[一言] キター! そして現実にはいないことにされたとかいう字面よ。
[一言] びっくりしたぁ( ºωº; ) 続き書いてほしいです‼️
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