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第五十八話 屋上会話


 怪我をして暫く学校を休む事になった信介と心配で看病しにずる休みをした葵。


 この二人を除いた残りのいつメンは昼休みに突入した途端、すぐさま屋上に集合した。


 学校の屋上は基本生徒の出入りは許しており、様々な学年の生徒が昼休みになると集まりそこで昼食を取っている。雨の日は屋根がないので誰も居ないが本当に晴れの日は沢山集まる。授業を休む人間がこの屋上を利用する事があるので時々教師が見回りが来ることがあるので気は抜けないがそれ以外の時間は皆楽しくこの場を使っている。


 今日も多くの生徒が賑わう屋上の中、端の一角のスペースに集まる四人は辺りの楽しそうな雰囲気とは違い何とも重苦しい空気を醸し出して昼食を口にしていた。


「それで......今日新城は?」

「”信くんが心配だから今日は学校行かない!”....だって」

「つまり看病しに行ったと。でも看病する程の怪我じゃないんだよね?」

「槙本くんのお母さんが葵に連絡してくれたからね」


 裕樹はこの場にいない葵の存在を同じクラスの二人に訊ねる。そして返ってきた答えに裕樹は苦笑いを隠せなかった。


「........新城、信と付き合い始めてホント変わったな。まあ、いい方向にだけど」

「そう?私的にはあんまり変わった感じはないかな~。強いて言うなら、槙本くんへの想いが爆発してるぐらいかな」


 裕樹と遥の二人が話した事に残りの駿と千鶴の二人も”確かに”と言葉ではなく頷きで同意した。


「そういえば近藤と木村が今みたいに葵と絡むようになったのって信繋がりだもんね」 

「確かに。俺と信は中条と接点はあったけど」

「俺は一年の時に遥と新城だな。でもその時から新城とはそんなに話した事ないんだよな」


 こうしてみると二年できっちりとクラスが分かれた形になっている。


「それで話は戻すけど田中の様子はどうなんだ?」


 これまでのお気楽な雰囲気を一気に消して裕樹は真剣な表情に変わる。


 今回この四人が屋上にまで来て集まったのはなるべく同じ学年の人間に話を聞かれたくないため。問題を大きくして田中に非難を浴びせたい気持ちはあるが、友達の負った傷を公にしたくない。その気持ちからこうしてコソコソして集まったのだ。


「いつもと変わらないって感じ。まだ信があの工場から居なくなったことに気づいてないみたい」

「つまり田中は、朝はあの工場に行ってないって事か」

「でもバレるのも時間の問題だよ。最低でも今日の夜。田中はあの工場に行くと思うよ」

「俺もそう思う。でもその後の田中の行動を確認してからじゃないと俺達も無理に動けない」


 信介と葵の二人が信介の家にいる事は分かっている。今回の件に関わった人間でそれを知らないのは実行犯の田中一人だけ。


 警察に任せるのが一番安全で危険が少ない。それは全員が理解している。


 しかし、ある噂がもしかしたらと嫌な予感がしてそれを実行に移せないのだ。


「でも、田中の家が結構な家って本当の話なの?」


 田中は二年の間では、本当に嫌な奴として有名であるが他学年に伝わっている話がある。


”二年生の田中って男子生徒は有名な会社の息子”というもの。


 つまり金持ちのぼんぼんなのだ。


「それは本当らしいよ。本人が自分で言ってた所を聞いた事があるって人が結構いるから」

「うっわ、なにされ。金持ちで成績優秀で性格悪いって」

「恋愛漫画における絶対に好かれる事のないのにヒロインと主人公の間を邪魔する屑キャラじゃねえか」


見事に田中の悪口だらけ。しかしこの四人だけではなく、田中を嫌っている人間は学年で考えれば殆ど。学年の枠を超えた場合、どれだけの繋がりがあるか分かったものではないがそれでも田中を良く思っている人はいない。


 確信はないが人から好かれる画がこの四人には想像出来ない。


しかしそれと同時に、この後起こる出来事もまたこの四人の想像できない事態になる事をまだ誰も知らない。







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