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第五十四話 再会がシリアスにも感動にもならない

毎日投稿でもないけど、一年この作品が続くとは思わなかったな~


「信くん!」


 葵は信介の名前を呼びながら拘束され、傷ついた様子の信介の元へ駆け寄る。他の四人はその後に続いて信介の元へ駆けつける。


 信介はこんなな場所にいる筈のない五人が自分の元に来たと知り驚きのあまり目を見開く。


「なんで.....?」


 そんな疑問を五人にぶつける。


「そんな事今はどうでもよい!お前大丈夫か?」

「頭から血.....結構傷になってるね」

「何か血を止めるものないの!?」

「こんな事になってると思ってなかったから」


「....あ....ああ」


 四人が信介の身を心配する中、ただ一人葵は信介の傷ついた姿を間近で確認すると顔色を悪くする。そしてウルウルとさせた瞳から涙が零れ落ち、しまいには拘束された状態の信介にしがみついた。


「信くん、死なないで!お願いだから!」


 たったの二日間会えなかっただけで葵の信介に対する想いは強まっていた。それがいざ再会を果たしたとなれば信介はロープのようなもので監禁されて額から血が少なくない量垂れている。ようやくその目で確認できたのにボロボロで虚ろな様子でいる信介が、葵にとって本当に遠くに行ってしまうと錯覚させる程に見えた。


 だからこそ、葵は信介の意識が無くならないように必死に信介に声を掛ける。


「私の前からいなくならないでよ。これからも二人で一緒にいようよ!」


 涙を流しながら必死に懇願する葵。


 信介はそんな自分の胸に顔を突っ込む葵の顔を隙間からチラッと確認したのちに


ポッ


「.....!!」


 葵の頭に顎をのっけた。


「大丈夫。いなくならない。まだまだ二人で過ごしたいし、それに」


 顎を葵の頭から離す。頭に乗っけられた温もりが消え、再度不安そうな眼差しで葵は信介を見詰める。


「俺の彼女さんは、今俺がいなくなったら今以上に泣いちゃうみたいだしね」 


信介は少しでも葵の動揺と不安になっているであろう気持ちを落ち着かせるように少し笑みを浮かべて言った。


「う......ううう~~~!!!」

「あれ?」


 しかし泣き止むどころか更に涙を流し、声を上げて泣き出した。そして上げた顔を再度信介の胸に埋めてそこで泣き始める。落ち着かせる思いだったが更に泣き出した葵を胸に感じながら信介は困惑する。


「信、流石にお前今自分の状態理解しろよ」

「結構ヤバい見た目してるよ」


 そんな二人の様子を静かに見持っていた四人だったが、自分の状態を客観的に認識していない様子でいる信介に裕樹と駿の二人は釘をさす。


「ほら葵。信介から離れて」

「怪我してるんだから」

「いやだ~!」

「いいよ。あんまり力が入ってないから痛くないし」


 信介の身体は田中に蹴られたりしてかなり痛みが残っていて服の下には痣が複数出来上がっている。その上から葵は信介にくっついているので触れるだけで信介の身体には激痛が走る。


 しかしこれ以上不安な気持ちにさせまいと号泣する葵を見る信介は痛みを我慢する。下唇を噛んで違う痛みで誤魔化す。


「何彼女の前だからってカッコつけてんだよ」


ヒョイ


「あっ」


 葵は戸惑いの声を出した。ようやく再会を果たした恋人の安否と生きている証拠でもある体温の温もりを感じていたはずなのに今はそれを感じない。それに目の前にいる信介の姿が少し遠く感じる。


「新城も。取り乱しすぎ。少し冷静になれ」


 首根っこを掴まれる感覚に葵は自分を信介から遠ざけた人物を見る。裕樹だ。


「近藤くん!?」

「遥、中条。新城捕まえといて」

「ほいほいさ~」

「任せて」


 裕樹はジタバタする葵を千鶴と自身の彼女である遥に預け、その画を見て笑みを浮かべている信介とその信介の無事を本人に確認している駿の傍に行く。


「信、痛むところは?見た感じ頭から血が出てて重症に見えるけど」

「めちゃくちゃ痛い。泣きそう」

「他に田中にやられた部分は?」

「腹を結構を蹴られた」

「だったら、今の新城のハグは痛かっただろ」


 裕樹は目線を信介と駿に合わせるべく片膝をつく。


「.....まあね。でも、そこで痛いって言ったらもっとアオを不安にさせそうだったし」

「それで傷が悪化したら元も子もないだろ。ちょっと服めくるぞ」


 裕樹は信介のシャツをめくり、裕樹と駿の視界には信介の蹴られて青く変色した痛々しい痣が映る。


「これ絶対一回じゃないだろ」

「どうだか。無抵抗でそれなりに痛いから蹴られた回数なんて記憶してない」

「これで回数知ってたら信のイメージが少し変わる気がする」

「取り合えず、寒いからあんまり長時間めくらないで。あと、この縄ほどいて」

 

 十二月ともなればいくら都内とはいえ体感温度は零度近い。その中布一枚支給された拘束状態で耐えるのはインドアな信介には限界を超えていた。


 裕樹と駿の二人に縄をほどいてもらい信介は同じ姿勢で固まった体をゆっくりと動かす。そして特にきつく縛られていた両手の手首部分をさする。手首はやはりそれなりにきつく縛っていて縄の取れた部分にはしっかりとした赤紫の痕がついていた。


「あ~、手に血が流れる」


 じんじんと手に血液が流れるのを感じる信介。しかし、あとの二人はそこではないとツッコみたくなるほど信介に呆れた顔を向ける。


「そこじゃない」

「え?」

「すぐに病院行くよ」

「新城!信の母さんに連絡して車だしてくれるか聞いてみてくれ!出来なきゃ、救急車でもタクシーでも良い。怪我して常識が欠如しているこの馬鹿を病院に連れてくぞ!」



丁度一年だけど結構自分のメンタルに左右されて書いてる時あるから、当初より予定していた展開じゃない事やってたりするんだ~


ダメですな~ほんとに。あと凄い今更だけど全然キュンキュン展開を文字だけで表すの難しいし、この作品は果たしてジャンル通りの恋愛に当てはまってるのかも定かじゃない気がする。

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