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第四十六、五話 その後の展開

短くてすいません


「違和感」


 信介は自分の見ている光景を見てそのような感想を口にして出した。誰かに伝えたくて言ったのではなく単に心だけに留めておくと後々その気持ちが膨らむと思っての事だ。それはそうと、視界の先には数分前までには無かった光景が広がっている。


「それでね、信ちゃんってば寝言でずっと「く、来るな」って言ってたの。本人に聞いてみたら自分に向かってた猫に言ってたんだって」 

「猫に襲われる夢でも見てたんですかね?」

「かもね!それと.......!」


 自分の彼女と従姉弟がとても親し気に自分の話で盛り上がっている。


自分が日葵に言われた通りに公園内にある自販機で三人分の飲み物を買って戻ってくるこの僅か数分の間に二人の仲が急に縮まるような事があったのだろうか。一体何があったと思わざる得ない。


(それにしても....)


 信介は少し離れた位置でガールズトークを繰り広げる従姉弟の姉と彼女を改めて確認する。身内贔屓なしに美人の日葵と学校の高嶺の花的存在である彼女の葵が並ぶと周りに花が咲いている幻覚が見えてきだす。華やかだ。これが若い男のいない公園だったから良いものの、これが街中にでればナンパされるのは間違いなしの気がする。

 

 正直二人の華やかな空間に入りたくない気持ちがあるが、それでも腕で抱えている三人分の飲み物をずっと持ちたくないので嫌々な気持ちで近づく。


「あ、遅いよ信ちゃん」


 日葵が葵との話で高まったテンションそのままで話しかけてきた。遠くから見ていて分かったが、明らかに二人の間にあった若干の距離がなくなっている。


「随分仲が良くなったね」

「そうだよ~。葵ちゃんと色々とお話をしてね~。良い子だよ葵ちゃん!」

「それは日葵よりも理解してるつもりだけど」

「お?早速彼女自慢ですか?”俺の方が葵の事理解してるから”的な」

「うるさいな」

「ははは.....」


 アオよ。笑っているのなら助けて欲しい。


 信介は買ってきた飲み物を二人に渡す。九月に突入したとはいえ今年の夏の猛暑の残りはまだ続きそうだ。


 飲み物を渡された葵と日葵の二人だが、そのあとも信介を中心とした話で大いに盛り上がっていた。同じベンチに信介がいるにも関わらず。


「さて、じゃあそろそろ私は退散しますかね」


 買ってきて一気に飲み干し空になったペットボトルを持ち立ち上がった日葵は言った。


「帰るの?」

「流石に友達との約束まで時間があるからね。家でゆっくりしてますよ~」


日葵は言い終わると葵に顔を向ける。


「じゃあ葵ちゃん。これからも信ちゃんをよろしくね。なにかあったら直ぐ私に相談するんだよ?」

「はい。その時はお世話になります」


葵は日葵に言った。その時の表情は最初の緊張した顔とは違う、程よく力の抜けた笑顔だと信介はすぐに分かった。本当にこの二人の仲は自分のいない数分間で劇的に縮まっている。信介は日葵の人との距離の縮め方がとても気になるところであった。


 日葵は本当に帰っていった。元気よく手を振りながら。


「そうだ信くん」

「ん?」


 彼女が口を開き、信介はそちらを見る。葵は怒っているような顔つきになっていた。主にオーラが。


「......なんでしょう」


 この言葉遣いにしたのは少しでも相手を機嫌を損ねないように努めた結果だ。しかし無残にもその努力は彼女の怒りゲージを減らすには至らないようだった。


「日葵さん。今は信くんの家で寝泊まりしてるんだね」


日葵の奴


「信くん?」

「すいません」 


 付き合いが長いと言うのは困ったものだ。何を考えているかと細かい内容までは分からないにしても、本題と違う内容の事を考えていると悟られてしまう。


「どうして私が少し怒ってるのか分かる?」


 はっきりと口にした。怒っていると。


「分かりません」

 

 彼女からの問いに信介はそう言った。分かるはずもないと言うより、怒らせる要素が今回に限り色々と多いからだ。


「なんで信くんは、私に日葵さんの事を隠してたのかな?」


 やはりそれだった。


 信介は裕樹と木村の二人に学校で話した通りに理由を口にした。その時の葵が黙ったまま聞いているのも信介の中での恐怖度を高める要因になった。


その後、葵のご機嫌を取るのに苦労させられた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 色々、信なりに考えがあったのかもしれないが、やはり根本的に面倒くさがりな所が今回の要因だと思います。 従姉とはいえ、親が居ない家に男女二人きりになることを黙っているのは、そりゃ恋人ならば嫌…
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