第三十一話 夏への想い
「へ〜信から告ったのかよ!」
「意外。男なんだね信も」
「意外で悪かったな」
午前の授業も終わり2人にはどのような経緯で付き合う事になったのかを事細かく話した。
それだけ2人が信用出来ると判断してだ。
全てを言い終えると、興奮した様子でいる近藤に話を聞いて尚の落ち着きようを示す木村の2人は信介の想像通りの反応を見せてくれる。
そんな中ーー
「それより信、お前いつものコンビニのパンは?」
近藤は昼時になると毎日信介の前に置いてある複数のコンビニのパン達がない事に気づく。
本当は話を聞いている時にも全然パンが出てくる気配がないと気付いていたのだが、話し終わってから出すとばかり思っていたので、昼休憩になって十分程経った今でも出そうとしない事を疑問に思い尋ねた。
これに信介は“あ〜”と少々訳あり風に言う。
実は今日信介はコンビニによって居ないのだ。
その訳は新城と登校した事にある。
家はいつも通りの時間に出てコンビニに寄る時間を考慮しているのだが、今日は予定に無かった新城との登校と言うイベントが起きたため予定が狂ったのだ。
それも告白に時間を取られたのもあり既にコンビニに寄っている時間が無くなったのだ。
それにより信介は今の昼の時間に何も食べるものがなく、ただ空腹を我慢するしかなかった。
「告白に時間掛けてコンビニ寄れなかったんだよ」
「何やってんだよ」
これには流石の友達も呆れた顔をしていた。
この反応にはしょうがないと机に伏せると目の前に何かが置かれ影が出来た。
顔を上げると目の前に“うす塩味”と記載された国民的お菓子の袋が置かれていた。
「これ、俺からお祝い」
置いたのは木村のようでお祝いらしい。
木村は人に興味がなさそうに見えるがそれでも周りをキチンと見ている。
お祝いなのだと素直にそれを受け取り遠慮なく袋を開けて中に入っているチップスを口の中へ入れていく。
正直こんなので空腹の腹が満たされるとはいくら小食でも無理だと分かっているがそれでも何も食べないよりかはマシだと思いどんどん腹の中へ入れていく。
「これが新城を虜にさせる男とは........」
そんな自分を見る近藤の目は“とんだ物好きがいたものだ”と言っているようだった。
実際似たような意味合いを持つ言葉を口にしているが、それでも友達として付き合ってきた近藤の言葉は全然イヤな気持ちになどならない。
「でも、いよいよ新城さんと付き合うならこれまで以上に田中が煩いんじゃないの?」
木村はスマホ画面を動かす手を止めて言った。
これにはチップスを食べる手を一旦止めるが、信介は意外にも気にしてなさそうに止めていた手を再度動かしてチップスを口に入れていく。
「逆に静かになると思うけどな.....」
「いやいや。あの自分最強!みたいな奴だぞ?変な言葉並べてちょっかいでも掛けられるんじゃないか?」
確かに近藤の言い分にも一理ある。
これまでにも色々と言われてきたが田中の言っている事は基本無視して居れば気にならない。
最初から信介は田中と真面目に関わるつもりはない。
「あんな性格じゃなかったら普通なんだけどね。なんて言うか全部あの性格が田中の全てを台無しにしてるよね」
そこからは田中の悪い点だけが挙げられる時間となった。
信介はそれを聞いているだけだったのだが今は新城との新たな関係へと発展した事を心の中でそっと喜んでおく。
今は5月後半で来週からは6月に入る。
2年生は3年生になるまでの準備期間であり、早い人では現段階で将来の設計が出来ている同級生だっている。
恋人同士になっても受験やら就活やらで来年は遊ぶ機会は無いと考えて良いだろう。
中間試験が終わったばかりの今だが、次の試験である期末試験が終われば直ぐに学生の味方である長期休暇、夏休みが始まる。
そこで思い出を残さなくては。
折角付き合えたのなら祭りなどのイベントが多い夏はもってこいではないかと。
信介は例年の自分なら考えもしなかった夏の予定を既に考えようとしていた。
そこまで自分が浮かれている事にも気付かないで。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
これにて第一章の終わり1学期が終了しました。
次回から第二章の夏休み編へ突入致します。
それに関しての報告。
今回久しぶりの約1週間程の毎日投稿でしたが、休みが終わると言う事で次回から投稿ペースがまた遅くなります。
自分勝手な理由ではありますがすみません。
それにこの一章の終わり方も最後の方が適当であると言う自覚がありますが、大目に見て頂ければ幸いです。
こんなくだらない話をブックマークしてくれている方々に、感想などを綴ってくれる方々、そして評価をつけてくれた方々には感謝しかありません。
それでは、また次回、いつになるかは分かりませんが、第二章の夏休み編にお会いしましょう!




