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第二十二話 手紙


小瀧が出て行った教室は小瀧が来る前の賑やかさを徐々に取り戻した。


しかしそれで信介と新城の噂が無くなる訳ではなく、ましてや新城に告白し振られた事のある小瀧が教室にやって来たお陰で更にその話の信憑性は上がったらしく、教室内では信介を見てはコソコソと話をする生徒が増えたように見える。



「あれだな。先輩が来たせいで話に現実味が増したな」


「ほんと、いやになるよ」



苦笑いをする近藤を他所に信介はヘトヘトだ。


すると突然木村が



「そう言えば新城さんの方は大丈夫なのかな?信と同じ状況になってたりして.....」



と口にする。



「確かに........」



木村の言ったことは信介には同調せざる得ない事であった。


噂が信介と新城の関係性についてならば、注目を集めるのは信介だけではなく新城もだ。


普段から抜群の容姿とルックスで注目を集めている新城だが、信介は彼女がそう言った視線を常日頃から校内で浴びているからこそ自分に向けられる視線に滅法鈍くなっている事を2人で買い物をしている時に知ってしまった。


だが今回はそのような下心ある視線ではないので、新城も気付くはずだ。



(いくら視線に疎いアオでも、ここまで見られていては苦労するだろうな)


「新城には中条も遥も居るんだから案外大丈夫じゃないか?」


「まあそうなんだけどね」


「俺、一応連絡してみるわ」



スマホを取り出して連絡アプリを開きトークの1番上にいる新城を押す。


「なんか噂になってるけどそっちは大丈夫?」と打ち込んで新城に送信する。


送信したメッセージの横に“既読”のマークがついたのは送信して直ぐであり、返信も速攻で帰って来た。



「新城なんだって?」


「『大丈夫だよ!でも、沢山の人から信くんと付き合ってるの?って聞かれて大変だよ〜』...........あっちも苦労してるっぽい」


「だろうね」



新城から送られて来た文字を一言一句間違えずに決して周りで噂を気にしているクラスメイトには聞こえない声量で2人に話す。


木村は言葉で同調し、近藤も言葉には表さないが頷く。



「手紙の事は聞かないの?」


「..............」



信介は迷う。


今もリュックには収めずに机に出している差出人不明の手紙。


手紙の内容にこの噂が出始めのこのタイミングで、信介はこの手紙がただの嫌がらせの類だとはどうしても思えなかった。


警告なのか何なのかはまだ分からない。


もしかしたら本当に嫌がらせだけかも知れない。


しかし不気味なこの手紙を新城に伝える事は信介の中では無しだった。



「いや、やめとこう。これが本気かどうかも分からないし」



2人もこれには賛成のようで「その方がいいね」「俺もそれで良いと思う」と言ってくれた。


そしてなるべく存在を認識したくなくて手紙をリュックに投げ入れた。




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