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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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90/310

90 ダンジョン都市アダック① 修


「えっ!? アダックって違う国じゃん。そんなところまで転移したんだ……」


 転移したのはシルルンの部屋の中にいた全員なのだ。


「まぁ、僕ちゃんの部屋を登録しといてよかったよ。せっかく来たんだからちょっと見て回ってしばらくしたら戻ろうか」


「ちょっと待ってよシルルン。せっかく来たんだから潜ってみましょうよ」


「えっ? 潜るってどこに?」


 シルルンは目をパチクリさせる。


「ここは三大コアの中で一番深度が深いといわれているダンジョンで、ファーストコアの地下十六階なのよ」


「えっ!? ここってダンジョンの中なの!?」


 シルルンは雷に打たれたように顔色を変える。


「そうよ。ここはフロア全体が安全地帯になってるのよ」


「えっ!? ダンジョンなのに安全地帯があるの?」


 シルルンは驚いてきょとんとする。


「驚くのも無理ないけど、アダックには安全地帯があるダンジョンが三つもあるのよ」


「……誰かが結界でも張ってるの?」


「近いけど違うわ。要するにこのダンジョンはとても巨大な魔物ってことよ」


「ええ~~~~~~~っ!! マジで!? そんな無茶苦茶なっ!?」


 シルルンは大きく目を見張って絶句した。


「だから、普通のダンジョンと違って特殊な魔物も出てくるのよ。普通は魔物を倒しても素材ぐらいしか手に入らないけど、特殊な魔物を倒せば高確率で何かをドロップするのよ」


「えっ!? 何がドロップするの?」


「そうね……だいたいが硬い石か鉄の塊が多いけど、運が良ければ小さいけど魔石や魔鉄、魔鋼なんかもドロップするわよ」


「へぇ、魔石とかもドロップするんだ」


 (面白そうだね)


 シルルンは興味深げな顔をした。


「それに普通のダンジョンと違って宝箱も復活するのよ」


「えっ!? どういうこと?」


 シルルンは不可解そうな表情を浮かべている。


「ダンジョンは魔物だから人を来させるために宝箱を復活させてるって言われてるのよ」


「へぇ~~っ!? そ、そうなんだ……なら、ちょっとだけ潜ってみようかな……」


「宝箱が復活するなら面白そうね」


 リジルは嬉しそうに微笑んだ。


 何気にシルルンは視線をホーリーウィスプの群れに向けると、冒険者たちはホーリーウィスプに何かを渡していた。


「あれはホーリー(ホーリーウィスプのこと)に何でもいいからアイテムを渡すと気まぐれで体力を回復してくれるのよ。けど、攻撃すると合体して死ぬまで追いかけられるのよ」 


「し、死ぬまでってホーリーやべぇ……」


 シルルンは恐怖で顔が蒼くなる。


 ホーリーウィスプは『超個体』で合体し、一匹合体するごとにステータスの値が二倍になり、魔法や能力も増えていき十匹ほど合体した時点で、その攻撃力は七千を超えるのだ。


 冒険者たちはここを拠点に下の階を攻略しようとする者たちと、ホーリーウィスプの回復の恩恵にあやかりながら腕を磨く者に大きく分かれていた。


 シルルンはホーリーウィスプたちが密集している場所が二つあることに気づき、そこには冒険者たちが集まっていた。


「ん? あれは何をやってるの?」


「あれはここの名物みたいなものよ。ホーリーの群れの中に台座が二つあって武器が刺さってるのよ。私も抜こうとしたけど無理だったわ。ホーリーがあそこにいるのはその武器を護ってるからだとも言われているのよ」


「へぇ、強い武器なの?」


「分からないわ。『アイテム解析』ですら解析不能らしいから」


「ふ~ん、そうなんだ。まぁ、とりあえず潜ってみようか。ペットたちのレベル上げにもなるし」


 シルルンたちが移動しようとすると、軽装の女がいきなり話し掛けてきた。


「リザじゃない!? 戻ってきたんだ」


「……アニータ。ここに来たのは本当に偶然なのよ」


「ふ~ん……でも、潜るんでしょ?」


「……まぁね」


「アンディたちも戻ってきて、打倒、木偶車デクグルマって燃えてるみたいよ。まぁ、私はソロで活動してるんだけどね」


 アニータの顔に切なさの混じった笑みが浮かんだ。


 彼女の職業は怪盗だ。


 このダンジョンにはトラップが多く、盗賊系職業は引く手あまたなのだ。


「……木偶車デクグルマね。……まぁ、いまさらだけどね」


 リザは過去にアニータやアンディたちと組んでいたが、木偶車と戦って死に掛けてパーティ解散に至ったのだ。


「で、その二人が新しい仲間なわけね。私と同じ盗賊と魔物使い……でも、魔物が多すぎない?」


 アニータは軽く眉を顰めている。


「それはシルルンが凄いからよ。まぁ、言っても分からないと思うけど……」


 リザは自嘲気味に肩をすくめた。


「……うん、スライムテイマーなのは凄いと思うけど装備も貧弱だし、はっきり言ってただの少年にしか見えないけどスライムちゃんは可愛いわね」


「話はその辺にしてさっさと潜りましょうよボス」


「うん、そうだね」


 シルルンたちは歩き始めたが、アニータもついてきていた。


 安全地帯なので様々な商店が立ち並んでおり、シルルンたちはしばらく歩くと地下に下りる階段の前に到着した。


 地下十七階へと続く階段は螺旋階段になっており、シルルンたちはゆっくりと螺旋階段を下りて地下17階に到着する。


 すると、そこは巨大なホールになっており、千人ほどの軍や冒険者たちが待機していた。


「すごい人だね」


「半分ぐらいは軍関係なのよ」


「えっ!? なんでダンジョンに軍がいるの?」


「さっきも言ったけどこのダンジョンが魔物だからよ。軍は地下十六階の安全地帯に魔物を近づかせないようにしているのよ」


「地下十六階は安全地帯なんだから魔物は入れないんじゃないの?」


 リジルは訝しげな眼差しをリザに向けた。


「入れるわよ。元々、このダンジョンが出現したときは地下一階だけだったと言われてるわ。今はどのくらいまで成長してるのか全く分からないけど、地下十六階だけはコア破壊に成功したから魔物が湧かなくなったって話なのよ」


「……なるほどね」


「まぁ、私が潜ってた頃はダンジョンの入り口前にも千人ぐらいの軍隊が常時、待機していて魔物を出さないように守ってたわ」


「ふ~ん……そうなんだ」


「ふふっ、このダンジョンには地上では見ない特殊な魔物がいるんだけど、その姿を見たらたぶん驚くわよ」


 リザはいたずらっぽく笑った。


 シルルンたちは巨大ホールを抜けてダンジョンを進んでいく。


「私は体力を温存したいからしばらくは見学するわ」


「えっ!? マジで!?」


 (ペットたちの訓練程度に潜るつもりなのに、リザはどこまで潜るつもりなんだろう)


 シルルンは不安そうな表情を浮かべている。


「ボス、トラップは私に任せてよ」


 リジルは自信に満ちた表情で言った。


「うん、任せるよ」


「あっ!? 地図を買っていれば最短で下りれたのに失敗したわね」


 リジルは苦虫を噛み潰したような顔をした。


「それなら私が案内しようか?」


 アニータはにっこりと微笑んで話に割って入った。


「ちょっと、アニータ……あんたついてくるつもりなの?」


「……何よ、ダメなの?」


 アニータは悲しそうな表情を浮かべている。


「……」


 リザは探るような眼差しをリジルに向けて、すぐに答えを返せなかった。


 職業が被っているからだ。


「私のことなら気にしなくていいわよ」


「……そう、悪いわね」


 リザは申し訳なさそうな顔をした。


「私は地下二十階までなら案内できるわよ。一応言っておくけど地下十七階の地図の値段は百万円は下らないわよ」


「で、いくらで雇ってほしいの?」


「どこまで潜るのか知らないけど今回はリザもいるし百万円でいいわよ。普通なら二百万はもらうけどね」


「ひゃ、百万って高すぎない!?」


 リジルは面食らったような顔をした。


「まぁ、特殊なダンジョンみたいだし保険だと思えば安いものだよ」


 シルルンは魔法の袋から金貨十枚を取り出してアニータに手渡した。


「あ、ありがとう……」


 アニータは怪訝な表情を浮かべながら金貨を鞄にしまう。


 報酬は腕を見てから解散時に支払うのが一般的だからだ。


「ねぇ、リザのところのリーダーはお金持ちの坊ちゃんか何かなの?」


 アニータがリザに耳打ちする。


「……違うわよ。まぁ、ついてくるならシルルンの凄さがその内分かるわよ」


「ふ~ん……」


 シルルンたちは真っ直ぐに人の群れの中を進んでいくと通り抜けてしまい、シルルンは振り返る。


「あれ? 誰も先には進まないんだね」


「そりゃそうよ。ここは地下十七階なのよ」


 アニータはしたり顔だ。


「どういうこと?」


「ここから先はほとんどが通常種の魔物しかいないってことよ」


「……ふ~ん」


 (だからどういうことなんだよ)


 シルルンは不愉快そうな表情を浮かべている。


「軍を除いてさっきいた冒険者たちが動かない理由は下級職だからよ。下級職でもあそこを守っていれば日当がもらえるのよ」


 見かねたリザがシルルンに補足する。


「へぇ、その仕事は楽そうでいいねぇ」


「ボス! 索敵にでるわ」


「うん」


「真っ直ぐでいいわよね?」


 リジルがアニータに確認し、アニータが頷くとリジルは風のように消えた。 


 ダンジョンの道幅は三十メートルほどだが、高さにいたっては百メートルを超えていた。


 シルルンたちはゆっくりと進んでいると、数分後にリジルが帰還した。


「ボス! この先には罠はないけどスネークが二匹いるわ」


「了解」


 シルルンは思念で「前衛を任す」とタマたちに伝えると、タマたちは嬉しそうにシルルンの前に出る。


 シルルンたちはゆっくりと進んでいくと、前方にはスネーク二匹が佇んでいた。


 シルルンは『魔物解析』でスネークを視た。


「う~ん……やっぱり通常種はキツイねぇ……」


 (スネークたちの守備力が百六十、スカーレットの攻撃力は百六十でバイオレットの攻撃力は五十五だから、これじゃあ、ダメージを与えられないね)


 シルルンは表情を曇らせた。


「ちょ、ちょっと通常種はキツイとかいってるけど大丈夫なの?」


 アニータは不審げな眼差しをリザに向けた。


「たぶん、どのペットで攻撃するのか考えてるのよ」


「だったらいいけど……」


 しかし、アニータは心配そうな表情を浮かべていた。


 スネークたちはシルルンたちに気づいて、大口をあけてシルルンたちに向かって突撃した。


 だが、タマとマルが迎撃に出て体当たりをスネークたちに叩き込んで、スネークたちは後方に吹っ飛んだ。


 さらにキュウが側面から回り込んでスネークに体当たりを繰り出して、スネークは吹っ飛んだが体勢を立て直して怒りの形相を浮かべている。


 スネークは凶悪な牙を剥き出しにして『毒牙』でタマに噛み付いたが、タマにダメージはない。


 しかし、何度も『毒牙』で噛まれればいつかは毒をくらうことになる。


「う~ん……」


 (タマたちの攻撃力は二百ぐらいだからダメージは通るけど、時間が掛かりそうだね)


 シルルンは思念で指示を出してエメラリーとマーニャを参戦させた。


 エメラリーはスネークに接近して『溶解液』を吐き、液体を浴びたスネークは胴体が溶けて骨が剥きだしになった。


「ま~っ!!」


 マーニャは『風刃』を放って『全特効』が乗った風の刃が、スネークの胴体に直撃してスネークは大ダメージを負った。


 スネークは怒り狂ってマーニャに目掛けて突撃したが、マーニャは戦闘経験が皆無でビックリして棒立ちになってしまう。


「ひぃいいぃ!? や、やべぇ!?」


 シルルンは慌てて『念力』でスネークを掴んで動きを止めた。


 一般的な魔物使いならその場面に合った戦術を組み立てて、指示を出すのは当たり前のことだ。


 だが、シルルンはペットたちに具体的な指示を出しておらず、「攻撃」という大雑把な指示しかだしていないのでこのような事故は起こりうる。


 スネークが唐突に動きを止めたのでエメラリーは一瞬戸惑うが、すぐに『酸』を吐いて、液体を浴びたスネークはさらに胴体が溶け落ちた。


 マーニャは恐怖に怯えていたがエメラリーがスネークを攻撃したのでウォーターの魔法を唱え、『全特効』が乗った水の刃がスネークを貫き、スネークは血飛沫を上げて絶命した。


 タマたちはスネークを囲んで三方向から体当たりを繰り出すトリプルアタックをスネークに叩き込んで、スネークはたまらず絶叫した。


「ま~!!」

 

 マーニャは遠距離から『風刃』を放ち、風の刃がスネークを切り裂いて、スネークは血を撒き散らしてあっけなく即死した。


「攻撃強い……」


「すごい」


「すごいの!!」


 タマたちは思念でマーニャとエメラリーに言った。


 マーニャとエメラリーは褒められて嬉しそうな表情を浮かべている。


 ペットたちはシルルンを介して思念での会話が可能だが、タマたちは知性が低く会話は片言だ。


 だが、マーニャとエメラリーはさらに知性が低く、思念で話せるレベルにすら至っていなかった。


「う~ん……マーニャの『風刃』の威力が明らかに上がってるね」


 シルルンは『魔物解析』でマーニャを視た。


 すると、スネイクたちに止めを刺したことで、マーニャのレベルが六まで一気に上がっていた。


 経験値は止めを指した者が一番多く獲得できるのだ。


マーニャ ミニ キャット レベル6 全長約30センチ

HP 260

MP 270

攻撃力 260

守備力 120

素早さ 330

魔法 ウォーター マジックリフレクト ブリザー

能力 危険察知 回避 威圧 堅守 風刃 壁盾 結界 伸縮自在 必中 全特効 魔法軽減



「あはは、マーニャはやっぱり強くなりそうだよ」


 (レベル六で攻撃力が二百六十。『全特効』が乗れば七百八十になるからすでに上位種並みの強さだよ)


 シルルンは満足げな笑みを浮かべている。


「……ね、ねぇ、あのヌイグルミみたいな猫ちゃんは強すぎない?」


 アニータは腑に落ちないような表情でリザに尋ねた。


「そうね。マーニャがあんなに強いなんて私も知らなかったから驚いてるわよ」


「えっ!? そうなんだ……じゃあ、そこの猫ちゃんたちも強いのかしら?」


 アニータは視線をスカーレットとバイオレットに向ける。


「……たぶん、スネイクより弱いからさっきの戦いに出さなかったのよ」


「あっ、そうか……」


 アニータはシルルンの言葉を思い出して納得した。


 リジルは再び索敵に赴き、プルはスネイクたちの死体を『捕食』した。


「うわ、あのスライムちゃん、あんなに大きいスネイクの死体を一瞬で食べちゃった」


 アニータは目を剥いて驚いているが、リザは自身も似たようなことを思ったと昔を思い出して微笑が口角に浮かんだ。


「ボス!! 罠はないけど動く石みたいなのがいるわ!!」


 索敵から戻ったリジルは不思議そうな表情でシルルンに報告した。


「動く石? とりあえず、行ってみようよ」


 リジルは頷いて、シルルンたちは歩き出したが、リザとアニータはほくそ笑んでいた。


「ボス! ほらあそこにいるでしょ。動く石が……」


「えっ!? マジで!? ほんとに石みたいだね……」


 シルルンは狐に摘まれたような表情を浮かべている。


 立方体のような石がドスン! ドスン! と動いており、平べったい円柱のような石が転がりながら動いていた。


「ふふっ、驚いたでしょ。あれがこのダンジョン特有の魔物で木偶と車輪と呼ばれてる魔物よ」


 リザは弾けるような笑顔を見せた。


 シルルンは木偶と車輪を『魔物解析』で視た。



木偶 緑 レベル2

HP 60

MP 10

攻撃力 110

守備力 120

素早さ 20

魔法 無し

能力 無し


 

車輪 緑 レベル3

HP 39

MP 12

攻撃力 57

守備力 100

素早さ 110

魔法 無し

能力 無し



「ふ~ん……緑ってことは他の色もいるってことだね」


 シルルンは思念で「車輪を攻撃」とスカーレットに指示を出した。


 スカーレットは車輪に目掛けて突撃して前脚の爪を振り下ろして、爪が車輪に直撃した。


 だが、車輪は平然と体当たりを繰り出したが、スカーレットは横に跳んで躱して車輪の側面から爪の一撃を叩き込むと、車輪は霧のように消え、代わりに石のような物がドロップした。


 スカーレットはドロップした石をくわえてシルルンの元に戻ってきた。


「あはは、車輪は弱いね。車輪はスカーレットに任せるよ」


 シルルンはスカーレットから石を受け取って、スカーレットの頭を撫でる。


 スカーレットは嬉しそうだ。


 一方、素早さの低い木偶は、タマたちのトリプルアタックですでに倒されており、マルが石をくわえてシルルンの元に持ってきた。


「あはは、木偶も弱いね」


 シルルンはマルから石を受け取り、マルの頭を撫でる。


 マルは嬉しそうだ。


「緑色と青色はそれほど強くないけど黄色は強いわよ。そして、赤色はもっと強いのよ」


 アニータは真面目な硬い表情を浮かべている。


「へぇ、黄色と赤色は要注意だね。で、この石は何かに使えるの?」


 シルルンは何となくアニータに尋ねた。


 石は緑色で十センチメートルほどの大きさだ。


「売ると一つ千円ぐらいになるわよ」


「……ふ~ん、安いね」


 シルルンは魔法の袋に石をしまった。


 これらの石は【踊り戦士】や【吟遊詩人】の武器素材に集められているが、ほとんど知られていない。


 ちなみに、【踊り戦士】はアダック王国内でしか確認されていない激レア職業だ。


「索敵にでるわ」


「いや、黄色が出るとヤバイかもしれないから索敵はやらなくていいよ。とりあえず、罠に注意しといてよ」


 リジルは頷き、シルルンたちは進み始めた。


 だが、一時間ほど進んでも魔物に遭遇することはなかった。


「ていうか、魔物の数が少なくない?」


「確かに少ないと私も思うけど単に偶然が重なっているだけだと私は思うわ。地下十七階は定期的に軍が見回りをしているからそれが大きいかもね」


「ふ~ん……そうなんだ」


「最短で地下十八階に下りるならここを右よ」


 アニータの言葉に、シルルンは頷いてシルルンたちは右に曲がった。


 シルルンたちはしばらく進んでいくと、装備を統一した軍隊百名ほどが地下十八階に下りる螺旋階段の前で待機していた。


「よぉ、アニータじゃないか。今日は魔物が少ない……気をつけろよ」


 軍の隊長は神妙な表情で言った。


「ありがとう。気をつけるわ」


「余計なお世話だと思うが、そのメンバーで下の階に下りるのは危険だと思うぞ」


「心配しなくても大丈夫よ」


「……君はアンディ隊だったリザか!? 戻ってきていたのか……」


 一瞬顔を顰めた軍の隊長が思い出したように言った。


 冒険者ルーキーたちの中でアンディ隊の強さは頭一つ抜けていたので軍でも有名だったのだ。


「……たまたまよ」


 リザははにかんだような笑みを浮かべている。


 シルルンはそれを横目に軍を横切って地下十八階へと続く螺旋階段に差し掛かる。


 しかし、上空から凄まじい速さでシルルンに目掛けて突っ込んでくる魔物の姿があった。


「――っ!?」


 リジルとアニータは『危険察知』が発動して反射的に空を見上げたが、魔物の動きはあまりに速く何もできずに魔物がシルルンに突き刺さった。


「なっ!? 今のは棘!! しかも黄だったわ……」


 アニータは呆然として身じろぎもしない。


「――っ!? 戦闘態勢用意!! 相手は棘の黄だ!!」


 軍は即座に後退して棘の黄の動きを警戒する。


 だが、リザとリジルは涼しい表情を浮かべていた。


「ちょ、ちょっとリザッ!! あなたのところのリーダーが殺られたのになんでそんなに余裕なのよ!!」


 アニータは激しい怒声を浴びせる。


「言ったでしょ? シルルンは凄いって……確かに棘の黄はとても強いけどだからってシルルンが殺られるわけないわ」


 リジルも同意を示してうんうんと頷いている。


「な、何を言ってるの……!? 現に棘の黄があなたたちのリーダーに突き刺さってるじゃない!?」


「あはは、ちょっとビックリしたよ」


 シルルンは棘の黄を素手で掴んで止めていた。


 棘の黄は円錐のような姿をしており、全長は一メートルほどだ。


「なんデスかこれは?」


「デシデシ!!」


 プルとプニは興味津々といった様子でシルルンに尋ねた。


「たぶん、特殊な魔物の仲間だよ」


 シルルンは『魔物解析』で棘の黄を視た。



棘 黄 レベル15 全長約1メートル

HP 125

MP 230

攻撃力 420

守備力 320

素早さ 440

魔法 アンチマジック

能力 回避 魔法耐性



「へぇ、ステータス的には並みの上位種ぐらいの強さがあるよ」


 (で、どうしようかなこれ……)


 シルルンは急にめんどくさくなって棘の黄を地面に叩きつけた。


 すると、棘の黄は四散して消滅し、代わりに剣を落としたのだった。


「えっ!? 生きてるの!?」


 アニータは信じられないといったような表情を浮かべている。


「ば、馬鹿なっ!? あの棘の黄を素手で掴んで、しかも一撃で破壊しただと!?」


 軍の隊長は愕然とした表情を浮かべている。


 シルルンはドロップした剣を拾い、何事もなかったように地下十八階へと繋がる螺旋階段を下りていく。


「ほら、おいていくわよ」


 リザの呼びかけに、我に返ったアニータはこくこくと頷いてシルルンたちを追いかけたのだった。



















「……素手で棘の黄を掴む人なんて初めて見たわ。リーダーは一体何者なの?」


 シルルンの強さに疑念を抱いていたアニータだが、一転してはしゃいでいた。


「だから、シルルンは凄いっていったじゃない」


「それは聞いたけど、凄いっていうより強いってほうがしっくりくるのよ」


「それもその内に凄いに変わるわよ」


 リザはしたり顔で言った。


 地下十八階はトラップが多く、落とし穴や毒霧、落石などの典型的なトラップばかりだが、リジルが事前に発見して事なきを得ていた。


 このダンジョンのトラップのほとんどはトラップのエリア内に入ると発動するというもので、一度トラップが発動するとトラップが別の場所に移動するのでトラップの位置を憶えていても意味はない。


 そのため、盗賊系の職業はパーティには欠かせない存在なのである。


「……あなたなかなか凄いわね。察知系の能力を何か持ってるのかしら?」


「『危険察知』をもってるわ」


「へぇ、『罠察知』じゃないのにその精度は凄いわね」


 リジルは洞穴の拠点内を見回っているので『危険察知』が日々磨かれているのだ。


 シルルンたちは進んでいくと骨のような魔物たちに遭遇する。


「スケルトンよ。ここからはアンデッドが多くでるのよ」


 スケルトン種の数は十匹ほどだ。


「へぇ、初めて見たよ」


 シルルンは『魔物解析』でスケルトン種の群れを視ていく。


 すると、ほとんどが通常種だが、二匹ほど下位種が交ざっていた。


 シルルンは姿を見比べてみると、何かしらの武器を持っているのが通常種で素手が下位種だと判明した。


「あはは、下位種は弱いからちょうどいいね」


 (レッサー スケルトンの守備力は二十だから、やっとバイオレットのレベル上げができるよ)


 シルルンは思念で「下位種を攻撃しろ」とバイオレットに指示を出し、レベルの低いペットたちには通常種を攻撃しろと指示を出した。


 やっと活躍の場を与えられたバイオレットは嬉しそうにレッサー スケルトンに突撃して、前脚の爪の一撃を叩き込むとレッサー スケルトンは崩れ落ちた。


 もう一匹のレッサー スケルトンがバイオレットに向きを変えて突撃した。


 だが、レッサー スケルトンの動きは遅く、バイオレットは前脚の爪を振り下ろし、爪が直撃したレッサー スケルトンはバラバラに飛び散って絶命した。


 タマたちはスケルトンの群れに突撃して丸くなって体当たりを叩き込み、スケルトンたちは一撃で砕け散り、マーニャやエメラリーは『風刃』や『酸』で攻撃してスケルトンの群れは一瞬で全滅したのだった。


「あはは、十匹程度じゃ相手にならないね」


 シルルンは満面の笑みを浮かべて、戻ってきたペットたちの頭を撫でていく。


 ペットたちは嬉しそうだだ。


 その後もスケルトン種の群れや木偶や車輪の群れと遭遇するが、ペットたちの敵ではなかった。


 シルルンたちは順調に進んでき、見通しの良い場所で休憩をとることにした。


 シルルンは地面に座り込んで魔法の袋から紅茶のセットと干草と干し肉を取り出して地面に置くと、プルがコップに紅茶を注いでいく。


 タマたちは干草を嬉しそうに食べており、エメラリー、スカーレット、バイオレットは干し肉にかぶりついている。


 だが、マーニャは干し肉を食べずに紅茶を飲んでいた。


 プルとプニは口の中からトマトを取り出して、おいしそうにトマトを食べており、それを見たエメラリーは物欲しそうな顔でトマトをじーっと見つめている。


 それに気づいたプルはエメラリーにトマトを一つ手渡すと、エメラリーは嬉しそうにトマトを食べ始めた。


 どうやらエメラリーもトマトが大好きなようだ。


「ねぇ、棘の黄が落とした剣を見せてくれないかしら」


「うん、別にいいけど……」


 シルルンは魔法の袋から剣を取り出して、アニータに手渡した。


「……永久型の氷の属性剣……し、しかも、虫族と亡者族の特攻までついてる!!」


 アニータは驚きのあまりに血相を変える。


「えっ!? アニータは鑑定系の能力をもってるの?」


 シルルンは軽く目を見張った。


「私は『アイテム解析』をもってるわ。そ、それにしても凄い剣よ……売れば百億は確実な剣で名前は氷撃の剣」 


「ひゃ、百億……」


 リザとリジルは呆けたような表情を浮かべている。


「棘はよく武器を落とすみたいだけど、これほどの剣を落としたのを私は聞いたことがないわ」


「ふ~ん、そうなんだ……」


 (あげてもいいけどまたケンカになるよね……)


 浮かない表情を浮かべるシルルンはため息をつきながら氷撃の剣を魔法の袋にしまった。


「棘を倒しまくるしかないか……」


 シルルンは誰にも聴こえないほど小さな声で呟いたのだった。


 シルルンたちは休憩を終えて進み始めると、開けた場所に出た。


 すると、多数の魔物の群れが先に続く道を塞いでいた。


「す、すごい数ね……しかも、交ざってるし」


 アニータは不可解そうな表情を浮かべている。


 魔物の数は百匹を超えており、アンデット系の魔物と木偶や車輪の姿があった。


 シルルンは思念でタマたちに攻撃するように指示を出した。


 タマたちはスケルトン種の群れに突撃するが、十匹ほどの木偶の黄がタマたちの突撃を受け止めた。


 さらに空中に浮いた幽体のような魔物五匹が、ウォーターの魔法を唱えて水の刃がタマたちの装甲を貫いた。


 タマたちは大ダメージを負って後退するが、空中に浮いた幽体のような魔物たちはタマたちを追いかける。


「やべぇ、ゴーストだよ……タマたちとは相性が悪すぎる」


 『魔物解析』で空中に浮いた幽体のような魔物を視たシルルンは表情を強張らせた。


 ゴーストはステータスの値は低いが物理無効で、タマたちは物理攻撃しか備えていないので天敵のような相手なのだ。


「まーっ!!」


 マーニャはブリザーの魔法を唱えて、冷気がゴーストたちに直撃して、ゴーストたちは体が凍りついて地面に落ち、砕け散って消え去った。


 『必中』を所持する彼の攻撃は必ず当たるのだ。


 タマたちは痛みに顔を歪めてシルルンの元に辿り着き、プニがヒールの魔法でタマたちを順番に回復してタマたちの体力は全快して殻も復元した。


「う~ん……厄介だね……ん?」


 魔物の群れを凝視したシルルンは、スケルトンより一回り大きいスケルトンを数匹発見して『魔物解析』で視ると、その魔物は上位種のハイ スケルトンと、上位種からさらに進化したスケルトンメイジとスケルトンナイトだった。


「……」


 (だけど強い部類の上位種よりステータスの値は低い……けど、まともに戦えるのはマーニャだけだね)


 シルルンは考え込むような表情を浮かべている。


 十匹ほどの車輪の黄が凄まじい速さでマーニャに目掛けて突撃した。


 『危険察知』で危険を感じたマーニャは『結界』を発動して透明の球体に包まれた。


 車輪の黄たちは一斉にエクスプロージョンの魔法を唱えて、無数の光り輝く球体がマーニャに襲い掛かる。


「まーっ!!」


 マーニャはマジックリフレクトの魔法を唱えて、自身の前に七色の盾を展開した。


 無数の光り輝く球体は七色の盾に直撃したが跳ね返って車輪の黄たちに直撃し、車輪の黄たちは大爆発に巻き込まれて掻き消える。


 車輪の黄たちが一発の魔法で即死したのは、マジックリフレクトで跳ね返った魔法にも『必中』と『全特攻』が乗っているからである。


「あはは、やっぱり、マーニャは強いね」


 (けど、この魔物の群れは統率された動きだよね。やっぱり、スケルトンメイジあたりが指揮してるのかなぁ?)


 シルルンは難しそうな顔をした。


「ど、どう考えてもおかしいわ……地下十八階でこんなに多数の黄色が出るわけないのよ」


 アニータは声と表情を強張らせる。


「それにこの統率された魔物の動きからしてあいつがいるわね……」


 リザは軽く眉を顰めている。


「えっ!? スケルトンメイジが指揮してるんじゃないの?」


「違うわよ。特殊な魔物と普通の魔物は連携したりしないのよ。連携する場合は必ず特殊な魔物であるヘッドが後方から指揮してるのよ」


「えっ!? マジで!?」


 シルルンは『魔物探知』で魔物の群れの後方を探ると、五十メートルほどの高さのところにヘッド 黄という魔物を捉えた。


 シルルンは『魔物解析』で玉の黄を視る。


「後方に玉の黄ってのがいるよ。『号令』とサモンっていう魔法をもってるよ」


「なっ!? 玉の黄がいるの!? そんなの地下二十階までで見たことも聞いたこともないわよ!!」


 アニータはガツンと頭に衝撃を受けたような顔をした。


「玉は『号令』で魔物を操るから緑や青でも厄介なのに黄だともっとやばそうね」


 リザは深刻な表情を浮かべている。


 玉の黄はサモンの魔法を唱え、木偶の黄が十匹ほど召喚されて魔物の群れに合流した。


「玉の黄がサモンの魔法で木偶の黄を十匹ぐらい召喚したよ」


「う、嘘でしょ!? そんなの反則よ!! 勝てるわけないじゃない!!」


 アニータは放心状態に陥った。


 特殊な魔物たちの黄色のステータスの値は弱い部類の上位種ほどの強さがあり、そんなものを無制限に召喚されてはアニータが勝てないと思っても無理はなかった。


「あはは、棘の黄を召喚しないかなぁ? 召喚してくれたら良い武器が手に入るのに」


 シルルンはタマたちを後方に下がらせて、ゆっくりと歩き始めた。


「リ、リーダーは何を言ってるの!? 今すぐ逃げるべきよ!!」


 アニータは取り乱してヒステリックに叫んだ。


 だが、リザとリジルは平然と成り行きを見守っている。


「……マーニャはともかく、今まで戦ってたペットたちはまだまだ弱いのよ。けど、シルルンの肩にのっているスライムのプルとプニ、ロパロパのブラックはビックリするほど強いのよ」


「えっ!?」


 アニータは面食らったような顔をした。


「まーっ!!」


「あはは、マーニャも戦う気のようだね」


「やるデス! やるデス!!」


「デシデシ!!」


 プルはシルルンの肩からピョンと飛び降り、ブラックの頭に着地した。


「フハハ!! 皆殺しにしてくれるわ!!」


 だが、唐突にシルルンの『危険探知』が警鐘を鳴らす。


「うおぉお!?」


 その魔物は『死の手』でシルルンの顔を掴もうとしたが、シルルンは間一髪回避した。


 シルルンは慌てて『魔物探知』と『魔物解析』でその魔物を視た。


 すると、その魔物はハイ ゴーストだった。


 ハイ ゴーストはインビジブルの魔法で姿を消して、テレポートの魔法でシルルンに一気に近づいて『死の手』でシルルンに触れて殺そうとしたのだ。


「や、やべぇ!? ハイ ゴーストだよ!! 『死の手』で触れられたら即死してたかもしれない……」


 シルルンは恐怖に顔を歪めて戦慄を覚えた。


「サンダーデス!! サンダーデス!!」

「サンダーデス!! サンダーデス!!」


 プルは『連続魔法』『並列魔法』を発動してサンダーの魔法を唱え、四発の稲妻が姿を消したハイ ゴーストに偶然直撃して、ハイ ゴーストは一撃で即死したが、サンダーの魔法が直撃した地面は広範囲に陥没していた。


「な、なんて魔法の威力なの……」


 アニータは目を大きく見開いて絶句した。


「けど、いきなりシルルンを狙ってくるなんて、やっぱり玉は厄介ね」


 リザはただならぬ表情を浮かべている。


 玉の黄は木偶の黄たちを前衛にして守りを固めており、ゴースト種たちに攻撃命令を出していた。


 しかし、シルルンは気を引き締めて『魔物探知』で魔物の気配を常に探り、インビシブルの魔法で姿を消したゴースト種の位置を把握していた。


「フハハ!!」


 プルを頭に乗せたブラックが凄まじい速さで突撃して一瞬で木偶の黄たちに肉薄し、マーニャも後を追いかけるが根本的な速さが違いすぎて全く追いつけない。


 プルとブラックはエクスプロージョンの魔法とアースの魔法を唱え、木偶の黄たちや魔物の群れに直撃して、百匹ほどの魔物の群れのが一瞬で掻き消える。


 だが、姿を消したハイ ゴースト三匹が凄まじい速さでプルたちに接近しており、その内の一匹がテレポートの魔法でプルたちの後ろに出現して『死の手』でプルに触ろうとした。


 しかし、シルルンが薄い青色のミスリルの弓で狙いを定めて風の刃を放ち、風の刃がプルたちの後ろに出現したハイ ゴーストを射抜いてハイ ゴーストは即死した。


 シルルンはさらに風の刃を放って、プルたちに接近するハイ ゴーストたちを射抜いてハイ ゴーストは全滅した。


 マーニャは駆けながら残った百匹ほどの魔物の群れに『風刃』を放ち、風の刃は魔物の群れを突き抜けて十匹ほどのスケルトン種が即死する。


 だが、玉の黄は指揮を執りながらサモンの魔法を唱え続けており、玉の黄の周りには棘の黄が三十匹ほど召喚されていた。


 棘の黄たちは空から一斉にプルたち目掛けて凄まじい速さで突撃した。


 プルはエクスプロージョンの魔法を唱えて、十匹ほどの棘の黄が爆砕して即死したが、残りの棘の黄たちがプルたちに襲い掛かる。


 ブラックは棘の黄の攻撃を難なくで回避しているが、スケルトンメイジが棘の黄もろともプルたちを始末しようとエクスプロージョンの魔法を唱えて、光り輝く球体がプルたちに襲い掛かる。


「まーっ!!」


 マーニャがブラックの前に立ちはだかり、マーニャはマジックリフレクトの魔法を唱えて、自身の前に七色の盾を展開した。


 光り輝く球体は七色の盾により跳ね返り、光り輝く球体がスケルトンメイジに直撃して、スケルトンメイジは爆砕して即死した。


 しかし、マーニャは『結界』で身を包んでいるものの棘の黄が何本も体に突き刺さって虫の息になった。


「笑止!! 余計な真似を……」


 ブラックはマーニャに突き刺さった棘の黄たちに『痺れの息』を吐き、棘の黄たちは麻痺して行動不能に陥った。


「エクスプロージョンデス!!」


 プルはエクスプロージョンの魔法を唱えて、光り輝く球体が空を駆ける棘の黄たちに直撃し、十匹ほどの棘の黄が撃ち落されて即死した。


 ブラックはマーニャの身体から麻痺した棘の黄たちを『触手』で引き抜いて『治療』でマーニャの傷を回復してマーニャを頭にのせて後退した。


 残った棘の黄たちがブラックを追いかける。


「エクスプロージョンデシ!!」


 プニはエクスプロージョンの魔法を唱えて、光り輝く球体がブラックを追いかける棘の黄たちに直撃して、棘の黄たちは爆発に巻き込まれて掻き消えた。


 スケルトンナイトとハイ スケルトンはシルルンに目掛けて突撃したが、シルルンは薄い青色のミスリルの弓で狙いを定めて風の刃を連発し、多数の風の刃に貫かれたスケルトンナイトとハイ スケルトンはシルルンに近づくことなく地面に突っ伏して動かなくなった。


「エクスプロージョンデシ!!」

「エクスプロージョンデシ!!」


 プニは『並列魔法』でエクスプロージョンの魔法を唱え、二発の光り輝く球体が残った魔物の群れに直撃して、とんでもない大爆発が発生して魔物の群れは一瞬で掻き消えて全滅した。


「な、な、なんて威力の魔法なのよ!?」


 アニータは雷に打たれたように顔色を変える。


「言っとくけど、あれでも本気じゃないのよ」


「えっ!?」


 アニータは呆然として身じろぎもしない。


「……」


 (この戦いでマーニャが死ぬとこだったよ……次からはもっと注意しなくちゃいけないね)


 険しい表情を浮かべるシルルンは麻痺して地面に転がっている棘の黄たちを踏み潰し、玉の黄に向かってゆっくりと進んで空を見上げた。


 玉の黄の全長は一メートルほどで、球体のような姿をしていた。


「……」


 玉の黄は全く動く気配を見せない。


 シルルンは薄い青色のミスリルの弓で狙いを定めて風の刃を放とうとした。


「……こんなん勝てるかよ!!」


 玉の黄はそう言い放ち、その場から掻き消えたのだった。


「……えっ!? 今、人族語で玉の黄が話したよね」


 シルルンは面食らったような表情を浮かべて立ち尽くしたのだった。

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レッサー スケルトン レベル1 全長約1.5メートル

HP 20~

MP 5

攻撃力 15

守備力 20

素早さ 5

魔法 無し

能力 無し



スケルトン レベル1 全長約1.5メートル

HP 100~

MP 60

攻撃力 80

守備力 100

素早さ 80

魔法 無し

能力 無し



ハイ スケルトン レベル1 全長約2メートル

HP 600~

MP 120

攻撃力 160

守備力 200

素早さ 160

魔法 無し

能力 堅守



スケルトンナイト レベル1 全長約2メートル

HP 800~

MP 250

攻撃力 260

守備力 350

素早さ 260

魔法 ブリザー

能力 堅守 魔法耐性



スケルトンメイジ レベル1 全長約2メートル

HP 600~

MP 800

攻撃力 160

守備力 250

素早さ 160

魔法 ウインド ブリザー エクスプロージョン パラライズ スリープ マジックドレイン アンチマジック シールド マジックシールド

能力 堅守 魔法耐性 MP回復



レッサー スケルトンの骨 1000円

スケルトンの骨 5000円

ハイ スケルトンの骨 5万円

スケルトンナイトの骨 100万円

スケルトンメイジの骨 200万円



ハイ ゴースト レベル1 全長約2メートル

HP 250~

MP 700

攻撃力 100

守備力 物理無効

素早さ 300

魔法 コンフューズド ウォーター カース マジックドレイン インビジブル スロー シールド テレポート

能力 魔法耐性 MP回復 死の手



木偶 黄 レベル1 全長約1メートル

HP 180~

MP 30

攻撃力 300

守備力 360

素早さ 60

魔法 シールド

能力 無し



車輪 黄 レベル1 全長約1メートル

HP 90~

MP 30

攻撃力 150

守備力 300

素早さ 300

魔法 エクスプロージョン

能力 無し


玉 黄 レベル1 全長約1メートル

HP 30~

MP 300

攻撃力 30

守備力 300

素早さ 150

魔法 スリープ ウインド サモン

能力 号令 MP回復 瞬間移動

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[気になる点] 『治療』 いつの間に手にいれてたんですか? 持ってたのヒールだったんじゃないですか?
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