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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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73 北東の険しい山道 ラーネ②


 ラーネは森のエリアを進んでいるが、まだ一度も戦っていなかった。


 森のエリアに入ってすぐのところで十匹ほどのウルフの群れと遭遇したが互いにお見合い状態になり、ウルフの群れは激しくラーネを警戒していたがしばらくすると撤退した。


「……なんだが、出端を挫かれたみたいで微妙な気分ね」


 ラーネは拍子抜けしたような表情を浮かべていたが、ゆっくりと進み始めた。


 遭遇する魔物の群れはいずれも戦闘状態で、図式でいえば虫系の魔物と動物系の魔物が戦闘を繰り広げているが、ラーネは魔物たちが戦っている横を悠々と通り過ぎていく。


 虫系の魔物の多くはアント種で、動物系の魔物はラット種、フロッガー種、ウルフ種が応戦していい勝負をしているが、コックローチ種がその速さをいかした戦いを展開しており、動物系の魔物たちを圧倒していた。


 だが、コックローチ種はアント種にも攻撃を仕掛けていた。


 つまり、動物系の魔物たちは共闘しているが、虫系の魔物たちは共闘しておらず、それでもなお虫系の魔物たちの方が優勢な状況だった。


「……強い魔物はいないのかしら?」


 ラーネは不満そうな顔をした。


 すると、ウルフ種四匹がラーネに向かって凄まじい速さで駆けてきた。


 ラーネの前に現れたのは三匹のハイ ウルフと、その後ろに控えているのは全長六メートルを超える巨体の魔物だった。


 ハイ ウルフから突然変異で進化したフェンリルである。


 その体毛は金色に輝いて美しかった。


「強き者よ。ここへは何をしに来られたのか伺いたい」


 フェンリルは地面に伏せて平伏している。


「そんな馬鹿な……」


 それを目の当たりにしたハイ ウルフたちの顔が驚愕に染まり、すぐに王に倣って平伏した。


「フフッ……ただの散歩よ」


 (欲しい……この魔物を連れ帰ればマスターは喜んでくれるはず……)


 ラーネは獰猛な笑みを浮かべた。


「で、あれば『威圧』を解いていただきたい」


 フェンリルは顔面蒼白になっており、ハイ ウルフたちはピクリとも動くことができなかった。


 彼らは絶望的な戦力差を痛感して戦慄を覚えていた。


「あなた、私と一緒にこない?」


 ラーネは『威圧』を解いて、探るような眼差しをフェンリルに向けた。


「……断れば命はないと?」


 フェンリルはゴクリと固唾を呑んだ。


「……あなたたちはどうせ負けるでしょ?」


「先行きが暗いのは確かです。だが、あなたといけば狼族は裏切り者になる」


 フェンリルは意を決したような面持ちで言った。


「盟約でも結んでるのかしら?」


「一年の共同戦線を結んでいますので、あと半年ほど残っています」


「仕方ないわね……それじゃあ、半年後に迎えに来るわ」


「……承知」


 フェンリルは緊張した面持ちで頷いた。


「もし、負けそうなら私のマスターがいる拠点が北西にあるから、そこまでまで逃げてくるのよ」


 ラーネは満足そうな笑みを浮かべて進み始めた。


 フェンリルたちはピョンピョンと跳ねながら遠ざかっていくラーネの姿を、安堵したような表情で見送ったのだった。















 ラーネは森のエリアを抜けて先に進んでおり、山を登っていた。


 すると、ポツポツと魔物の死体が転がっており、その魔物の死体はレッサー ビー(ミツバチの魔物)だった。


 ビー種はホーネット種と同様にモフモフで可愛らしい姿をしており、下位種の段階ではホーネット種と同等の強さだが、通常種以上になるとホーネット種よりもかなり劣る種だ。


 しかし、上位種になってもモフモフで可愛らしいので、テイマーたちには人気がある魔物だ。


 ラーネはレッサー ビーの死体を『捕食』しながら山を登っていたが、登っていけばいくほど死体の数は増えていた。


「それにしても魔物の死体がビー種しかないわね……」


 (雑魚しかいないこのルートは失敗ね……引き返かえそうかしら……)


 ラーネは顔を顰めて立ち止まると、巨大な岩の側面にへばりついている巣を発見した。


 大きさは直径三十メートルほどの丸型の巣で、魔物の巣にしては小さかった。


 ビー種は小規模の巣を無数に作っており、数だけは異常に多い。


「エクスプロージョン」


 ラーネはエクスプロージョンの魔法を唱え、光り輝く球体が巣の下側にある出入り口に直撃し、出入り口は爆砕して大きく広がり、怒りの形相のビー種が飛び出してきた。


 百匹ほどのビー種が辺りを警戒しているが、ラーネには気付いていなかった。


 ラーネはエクスプロージョンの魔法を連続で唱え、光り輝く球体が次々にビー種の群れに直撃して大爆発が発生し、ビー種の群れは砕け散って即死した。


 爆発の影響は巣にも及んでおり、原型は留めているが半壊して内部が丸見え状態になっていた。


 ラーネは地面に落ちたビー種の死体を全て『捕食』し、しばらく待ってみるがビー種は巣から出てこなかった。


「話にならないわね……」


 ラーネは不満そうな表情を浮かべており、大きく跳躍して巣の中に進入して進んでいくと三匹の魔物の姿があった。


 クイーン ビーとハイ ビー二匹だ。


「……弱そうね」


 ラーネはがっかりしたような表情を浮かべている。


 クイーン ビーの全長は四メートルほどあるが、ハイ ビーの全長は二メートルほどでモフモフで可愛いらしい姿をしている。


 当然、上位種の中では弱い部類に入り、ハイ アントと同じぐらいの強さしかない。


 ハイ ビーたちは決死の形相でラーネに目掛けて突撃した。


 ラーネは『毒霧』を吐き、緑色の霧に覆われたハイ ビーたちは地面に墜落し、その場でのたうち回って全身から体液が噴出して動かなくなった。


 怒りの形相のクイーン ビーは『毒針』を放ち、針がラーネに襲い掛かるがラーネは難なく針を避けた。


「エクスプロージョン」


 ラーネはエクスプロージョンの魔法を唱え、光り輝く球体がクイーン ビーの胴体に直撃し、クイーン ビーは爆砕して即死した。


「なんて脆い種なのかしら……」


 ラーネは苦笑してハイ ビーたちの死体を『捕食』して奥に進んだ。


 すると、そこには数百匹のビー種の幼虫が所狭しと並んでおり、口を大きく開けて餌が運ばれてくるのを待っていた。


 ラーネは餌の変わりに『毒霧』を放ち、緑色の霧に包まれた幼虫たちは為す術なく即死した。


「フフッ……」


 ラーネは幼虫たちを『捕食』し、巣の外に出て辺りを見渡した。


 すると、新たなビー種の巣を発見して、ラーネは獰猛な笑みを浮かべたのだった。
















「ロード アントだと!? そんなのがいやがるのか!!」


 青い鎧の男は雷に打たれたように顔色を変える。


「なんとか半数は合流できたけど、リーダーがロード アントを引き止めてくれなかったら全滅してたわ」


 女魔物使いは沈痛な表情を浮かべている。


「なっ!? あいつが殺られたのか!?」


 青い鎧の男は放心状態に陥った。


 彼と赤い鎧の男は同じ隊の仲間で、二隊の大連合を編成する際に分隊していたのだ。


「まだ、殺られたとは決まってはないわ。その証拠にロード アントは私たちを追ってはこなかった……」


 剣士風の女は目に涙を浮かべて訴える。


「確かにあいつが簡単に殺られるとは考え難い。ロード アントに勝てるとは思わないが逃げ延びている可能性はあるだろうな……」


 青い鎧の男の表情は、どこか自分に言いきかしているような感じに見えた。


「……」


 (ロード アントが追ってこなかったのは、黒いスライムと交戦したからよ)


 女魔物使いは複雑そうな表情を浮かべていたが、結局、何も発しなかった。


「……撤退だな。この人数でここを抜けたとしても採掘するには厳しいからな」


「確かにロード アントに殺されたのは前衛職がほとんどだからね」


 女魔物使いは同意を示して頷いた。


「でも、ロード アントはどうするの? 戻れば鉢合わせる可能性があるわよ?」


 剣士風の女の言葉に、冒険者たちは恐怖で顔が蒼くなる。


「まずは森のエリアに戻ってから判断するつもりだ。状況次第で森のエリアで野営してロード アントをやり過ごすのも手だ。最悪、違うルートを通るのも視野に入れている」


 その言葉に、冒険者たちは安堵したような顔をした。


「合流した者たちがある程度回復するまで、ここで待機だな。回復次第、出発する」


 冒険者たちは真面目な硬い表情で頷いた。


「また、来たぞ!! 全くきりがねぇなぁ!!」


「がははっ!! だが、弱ぇ!!」


 前衛職たちがビー種の群れを迎え討っており、周辺には多数のビー種の死体が転がっていた。


 彼らは多数のビー種の群れに襲われており、進軍速度が極端に落ちていた。


 だが、ビー種は弱いので青い鎧の男は気にも留めていなかったが、それを見つめる目があることに気付いていなかった。

面白いと思った方はブックマークや評価をよろしくお願いします。


フェンリル レベル1 6メートル

HP 4500~

MP 1200

攻撃力1500

守備力750

素早さ700

魔法 ウインド シールド ホーリー ヒール キュア

能力 統率 威圧 以心伝心 炎の息 光吸収 闇無効 物理軽減 魔法軽減 能力軽減



フェンリル(ラーネと話したフェンリル) レベル26 6メートル

HP 6200~

MP 1200

攻撃力2100

守備力1300

素早さ1460

魔法 ウインドシールド ホーリー ヒール キュア ブリザー ウォーター

能力 統率 威圧 以心伝心 炎の息 光吸収 闇無効 物理軽減 魔法耐性 能力軽減 回避


レッサー ビー レベル1 全長約1メートル

HP 60~

MP 10

攻撃力45

守備力30

素早さ60

魔法 無し

能力 統率 以心伝心 毒針



ビー レベル1 全長約1.5メートル

HP 200~

MP 30

攻撃力150

守備力80

素早さ120

魔法 ウインド

能力 統率 以心伝心 毒針



ハイ ビー レベル1 全長約2メートル

HP 550~

MP 100

攻撃力280

守備力170

素早さ200

魔法 ウインド

能力 統率 以心伝心 毒針



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