64 エンシュント ハイ ホーネット
シルルンたちは険しい山道を抜けると、開けた大地が見え始めた。
だが、先行していたリジルが戻ってきた。
「ボス、大きな岩の前に百匹ぐらいのホーネット種の群れがいるわ」
「ふ~ん、百匹ぐらいならなんとかなりそうだね」
シルルンは『魔物探知』で前方を探った。
「えっ!? マジで!? あの大きな岩は魔物の巣だよ」
シルルンは表情を強張らせた。
魔物の巣は丸型で横幅は百メートルを超えており、高さは五十メートルほどあるが地面にめり込んでいるのでその全容は計り知れない。
「すぐにブラたちを連れ戻してよ」
「わ、分かったわ」
リジルは頷いて前方に駆けて行ったが、シルルンは考え込むような表情を浮かべていた。
地理的に巨大な巣の前を通るしかルートがないからだ。
しばらくすると、リジルがブラたちを連れて戻ってきて、シルルンたちは後退して岩陰に身を隠した。
「う~ん、せめてあの百匹が巣の中に入ってくれれば通り抜けれるのになぁ……」
シルルンは眉を顰めた。
「まぁ、今は待つしかないんじゃない? 巣の中にはいっぱいいるんでしょ?」
「うん、とんでもない数がいるんだよ」
リザの言葉に、シルルンは頷いて同意を示した。
シルルンたちがホーネット種の群れを眺めていると、上空から百匹ほどの魔物の群れがホーネット種の群れに襲い掛かった。
ホーネット種の群れに襲い掛かった魔物は、レッサー ホースフライ(アブの魔物)の群れだ。
レッサー ホースフライは『疾風』を所持しており、圧倒的なスピードでホーネット種の群れを攻撃している。
ホーネット種の群れは全てが下位種なので次々と落とされていくが、巣の中からレッサー ホーネットが続々と姿を現し、速さ対物量の戦いが展開される。
「こ、これはどちらが勝つんでしょうか……」
ブラが複雑そうな顔で呟いた。
「そりゃ、勝つのは数が多いホーネット種よ。だけど、巣の前にいるホーネット種ぐらいは倒してほしいわね」
リザはしたり顔で言った。
しかし、空からドラゴンフライ種(トンボの魔物)の群れが出現し、レッサー ホースフライたちとホーネット種たちの戦いに割って入った。
十匹ほどのドラゴンフライが二百匹ほどのレッサー ドラゴンフライを率いており、ドラゴンフライたちは凶悪な牙を剥き出しにしてレッサー ホースフライの群れに襲い掛かった。
先ほどまで圧倒的なスピードでレッサー ホーネットたちを翻弄していたレッサー ホースフライの群れが、今度は逆にドラゴンフライたちに翻弄されて墜落していく。
「う、うわぁ……どうなるんだろこれ?」
リジルは不可解そうな顔をした。
「……ドラゴンフライ種がホースフライ種に襲い掛かったということは、ホーネット種と共闘関係にあるんではないでしょうか?」
ラフィーネは難しそうな顔で言った。
しかし、レッサー ドラゴンフライたちは、レッサー ホーネットたちに襲い掛かった。
「なっ!?」
仲間たちはびっくりしたような顔をした。
レッサー ドラゴンフライたちは間断なく攻撃を続けており、レッサー ホーネットたちは次々に落とされているが、巣の中からレッサー ホーネットが続々と現れて、巣の中への侵入を許さない。
「こうなるとドラゴンフライ種が有利だな……」
ゼフドは険しい表情で呟いた。
だが、空の戦いに割って入る魔物の群れと、地上からホーネット種の巣に向かって進軍する魔物の群れがあった。
空の戦場に割り込んだのは、通常種のホースフライが二十匹ほどだ。
ホースフライは『疾風』を所持しており、その素早さは五百を超える。
虫系の魔物で最速のドラゴンフライ種に、唯一肩を並べて飛行できるのがホースフライ種なのだ。
虫の世界では、トンボの中で一番速いギンヤンマが時速百キロメートル以上で飛行すると言われているが、それと同等か、それ以上といわれているのがアブなのだ。
ホースフライたちが、ドラゴンフライたちに襲い掛かり、空の戦いは激化する。
地上から進軍する魔物の数は千匹を軽く超える大群で、その魔物はアーミー アント種(軍隊アリの魔物)である。
「ひぃいいいいいいぃ!? 何なのあの数は!?」
シルルンは驚きのあまりに血相を変える。
地上ではレッサー ホーネットたちとレッサー ホースフライたちが乱戦になっており、落とされた数が多いレッサー ホーネットたちが有利に戦闘を展開していた。
飛べなくなったことで、レッサー ホースフライの素早さは激減したのに対し、レッサー ホーネットは空の戦いも地上の戦いも両方できるのでレッサー ホースフライには分が悪かった。
レッサー ホーネットたちに『毒針』を放たれ、無数の針が身体に突き刺さったレッサー ホースフライたちは、毒で体力が削られて動きが鈍くなる。
レッサー ホーネットたちは一斉に襲い掛かり、レッサー ホースフライたちを食い殺していく。
しかし、そこにアーミー アント種の大群が突撃し、頭部にあるクワガタのような鋏で解体されてレッサー ホーネットの群れとレッサー ホースフライの群れは瞬殺された。
アーミー アント種の大群はそのままの勢いでホーネット種の巣に取り付いてよじ登っていく。
虫の世界で軍隊アリは無敵だ。
一対一の戦いで強いというわけではなく、圧倒的な数の力で無敵なのだ。
その群れの数は、数万から数十万という大群だ。
軍隊アリは巣をもたずに女王を担ぎながら進軍し、その進軍方向にいる全ての生物に襲いかかる獰猛なアリなのだ。
進軍方向に川などの障害があっても、自分たちの体を繋ぎ合わせて橋を造って渡り、飼われている牛や馬などにも襲い掛かって食い殺し、ジャガーですら逃げ出すと言われているのだ。
では、魔物のアーミーアント種はどうかというと、大群で進軍し獰猛なのは同じだが軍隊アリと比べると種類が少ない。
軍隊アリは大まかに四種類のアリがいる。
橋を作るアリ、隊列を見守るアリ、獲物を運ぶアリ、戦うアリで、それぞれ、マイナー、メジャー、サブメジャー、メディアと言われている。
だが、アーミーアント種には二種類しかいないのだ。
四種類の役割を全てこなす基本種と戦闘に特化した種の二種類で、基本種はアント種と大差はないが戦闘に特化したメディア種は言うまでもなく強い。
アーミーアント種の大群が巣の頂上付近にある出入り口に向かって突進し、レッサー ホーネットたちは『毒針』を一斉に放って迎撃するが数が違いすぎて蹴散らされ、アーミーアント種の大軍は巣の内部に侵入した。
空ではドラゴンフライとホースフライの激しい戦闘が繰り広げられていた。
ホースフライたちは戦力を二分して、半数がドラゴンフライと戦っていた。
ドラゴンフライとホースフライの戦力は拮抗しており、ドラゴンフライが唱えるウインドの魔法は当たらず、ホースフライが唱えるパラライズの魔法も当たらずに決め手が欠けていた。
そもそも、空での戦いは一撃離脱が基本であり、速さと速さの戦いなのだ。
しかし、ホースフライの残りの半数がレッサー ドラゴンフライたちを攻撃しており、今度はレッサー ドラゴンフライたちが為す術なく落とされていく。
「……ホーネット種は寄って集って攻撃されて、巣の内部にまで侵入されて散々です」
ブラは不満そうな表情を浮かべている。
「このままいけばアーミー アント種が、ホーネット種の巣を占領しそうですね」
ラフィーネの言葉に、仲間たちも頷いた。
「どうするのよシルルン?」
リザは探るような眼差しをシルルンに向ける。
「う~ん……たぶん、勝つのはホーネット種だと思うよ。巣の中にとんでもない数がいるからね」
「えっ!?」
仲間たちは信じられないといったような表情を浮かべるのだった。
巣の内部に侵入したアーミーアント種の大群は、巣の内部で待ち伏せしていたレッサー ホーネットたちに空中から一斉に『毒針』を放たれた。
だが、アーミーアント種の装甲は硬く『毒針』は弾き返され、アーミーアント種の大群が巣の内部に侵入して進軍する。
巣の内部は、数本の柱に支えられただけの広い部屋で、その部屋の端に螺旋階段のような坂道が造られていた。
一つ目の部屋を突破したアーミーアント種の群れは、二つ目の部屋に繋がる坂道を下る。
アーミーアント種の先頭集団が、二つ目の部屋に到達した瞬間、無数の風の刃が二十匹ほどのレッサー アーミーアントの身体を切り裂いて、レッサー アーミーアントたちは血飛沫を上げて即死した。
彼らを迎撃したのは十匹ほどのホーネットで、空中からウインドの魔法を一斉に唱えて風の刃を放ったのだ。
先頭集団が壊滅しても、二つ目の部屋を目指してレッサー アーミーアントたちが次々と押し寄せるが、ホーネットたちが放つ『毒針』や魔法攻撃の前に、レッサー アーミーアントたちは何もできずに倒されて二つ目の部屋に到達できずにいた。
レッサー アーミーアントには遠距離攻撃手段がないからだ。
だが、風の刃は無数の岩や石で遮られた。
アースの魔法を唱えたのは、レッサー アーミーアント メディアだった。
レッサー アーミーアント メディアの全長は三メートルを超える巨体で、基本種では使えない魔法も所持しており、戦闘に特化した個体なのだ。
再びホーネットたちは空中からウインドの魔法を唱えて、無数の風の刃を放つが、レッサー アーミーアント メディアたちはその場に止まり、アースの魔法を唱えて、無数の岩や石で風の刃を遮り、その間にレッサー アーミーアントたちがホーネットたちを突破して、二つ目の部屋に侵入した。
しかし、二つ目の部屋に進軍するレッサー アーミーアントたちに対して、待ち構えていた五十匹ほどのレッサー ホーネットが空中から『毒針』を放った。
無数の針に貫かれたレッサー アーミーアントたちが数匹絶命したが、レッサー アーミーアントたちは止まらずに三つ目の部屋を目指して進軍する。
レッサー アーミーアント メディアの数が十匹を超えたところで、レッサー アーミーアント メディアたちは防御から攻撃に転じ、アースの魔法を一斉に唱えて、無数の岩や石がホーネットたちに襲い掛かり、岩や石にぶちのめされたホーネット三匹が墜落する。
地面に落ちた三匹のホーネットは、押し寄せるレッサー アーミーアントの群れに一斉に攻撃され、一瞬で解体されて即死した。
怒りの形相を浮かべたホーネットたちは一斉に『毒霧』を吐き、緑色の霧がレッサー アーミーアントたちを包む込んでレッサー アーミーアントたちは地面をのたうち回る。
ホーネットたちは『毒霧』を吐き続けており、レッサー アーミーアントたちは次々に地面をのたうち回って次第に動かなくなった。
『毒霧』は神経毒だからだ。
だが、レッサー アーミーアント メディアたちは『毒耐性』を所持しており、『毒霧』は効かなかった。
レッサー アーミーアント メディアたちは一斉にアースの魔法を唱えて、無数の岩や石がホーネットたちに襲い掛かり、ホーネットたちは岩や石にぶちのめされて墜落した。
地面に落ちたホーネットたちはウインドの魔法を唱えて、風の刃を放ったが、続々と押し寄せるレッサー アーミーアントの群れに一斉に攻撃されて、一瞬で解体されて即死した。
ホーネットたちが全て倒されると、レッサー ホーネットたちは三つ目の部屋に撤退した。
レッサー アーミーアントたちは三つ目の部屋に繋がる坂道を下り、三つ目の部屋に到達した。
しかし、三つ目の部屋には五十匹ほどのホーネットが待ち構えていた。
ホーネットたちは時間差をつけてウインドの魔法を唱えており、風の刃の波状攻撃でレッサー アーミーアントたちは一方的に狩られていく。
それでも、レッサー アーミーアントたちは狂ったように突撃し続けており、通常種のアーミーアントは切り裂かれた死体を盾にして突撃したが、風の刃の集中攻撃で身体中を切り裂かれて血飛沫を上げて即死した。
そこにレッサー アーミーアント メディアたちが到着し、魔法の撃ち合いになる。
ホーネットたちは間断なく風の刃を放っており、レッサー アーミーアントの群れは、レッサー アーミーアント メディアたちの前に出て、盾になって魔法攻撃を防いでいた。
レッサー アーミーアントの群れは風の刃に次々に切り裂かれて解体されていくが、レッサー アーミーアント メディアたちの数も増えていき、二十匹ほどに達したところで巨大な魔物が到着した。
通常種のアーミーアント メディアで数は三匹だ。
アーミーアント メディアの全長は六メートルを超える巨体で、そのステータスの値は上位種に匹敵する。
アーミーアント メディアたちはコンフューズドの魔法を唱えて、黄色の風がホーネットたちの体を突き抜けて、十匹ほどのホーネットが混乱して仲間たちに襲い掛かる。
だが、ホーネットたちは何の躊躇もなくウインドの魔法を一斉に唱えて、無数の風の刃が混乱したホーネットたちに直撃し、同士討ちが始まった。
しかし、レッサー アーミーアント メディアたちとアーミーアント メディアたちが一斉にアースの魔法を唱えて、無数の岩や石がホーネットたちに直撃してホーネットたちは一匹残らず墜落した。
地面に落ちたホーネットたちは、レッサー アーミーアントの群れに一斉に襲われて、一瞬で解体されて全滅した。
ホーネットたちが全滅すると、レッサー ホーネットの群れは四つ目の部屋に撤退し、レッサー アーミーアントの群れが四つ目の部屋に繋がる坂道を下っていく。
レッサー アーミーアントの群れが四つ目の部屋に侵入すると、そこには巨大なホーネット種が待ち構えていた。
上位種のハイ ホーネットである。
数は三匹だ。
ハイ ホーネットの全長は五メートルを超える巨体で、下位種や通常種はモフモフで可愛らしい姿だが、ハイ ホーネットは警戒色であるオレンジとクロのストライプ柄で、あの凶悪で獰猛なオオススメバチがベースなのだと一目で分かる姿をしていた。
虫の世界では、オオスズメバチが数匹いれば万を超えるミツバチを皆殺しにできる戦闘力があり、オオスズメバチは他種のスズメバチすら皆殺しにする凶悪なハチなのだ。
レッサー アーミーアントの群れはハイ ホーネットたちに目がけて突撃するが、ハイ ホーネットたちはスローの魔法を唱えて、黒い風がレッサー アーミーアントの群れを突き抜けた。
天井に張り付いている二百匹ほどのホーネットは嘲笑うような笑みを浮かべており、スローの魔法で動きが鈍ったレッサー アーミーアントの群れに一斉に『毒針』を放った。
上空から無数の針が降り注ぎ、針に体を貫かれてレッサー アーミーアントの群れは奇声を上げた。
ハイ ホーネットたちは『風のブレス』を放ち、巨大な風の刃がレッサー アーミーアントの群れを切り裂いて、レッサー アーミーアントの群れは一撃で全滅した。
それでも、続々と押し寄せるレッサー アーミーアントの群れは、ただ愚直にハイ ホーネットたちに向かって突撃し、何もできずに解体されていく。
だが、アーミーアント メディアたちとレッサー アーミーアント メディアたちが到着し、一斉にアースの魔法を唱えた。
無数の岩や石がハイ ホーネットたちに襲い掛かるが、前面に出ている二匹のハイ ホーネットはマジックシールドの魔法を唱えて、自身の前に透明の盾を展開しており、無数の岩や石は全て弾かれた。
しかし、レッサー アーミーアント メディアたちは全く怯む様子もなく、ハイ ホーネットたちに向かって突撃した。
ハイ ホーネットたちは『威圧』を放ち、レッサー アーミーアント メディアたちは萎縮して動きが止まった。
ホーネットたちは一斉にウインドの魔法を唱えて、無数の風の刃がレッサー アーミーアント メディアたちの身体を切り裂いて、レッサー アーミーアント メディアたちは何もできずに全滅した。
アーミーアント メディアたちは凄まじい速さで突撃して、一瞬でハイ ホーネットたちに肉薄し、巨大な鋏で攻撃するがハイ ホーネットたちは巨大な鋏を躱した。
ハイ ホーネットたちは凶悪な牙を剥きだしにして、アーミーアント メディアたちに噛み付こうとするが、アーミーアント メディアたちは後方に跳躍して避けた。
だが、回避できたのは二匹だけだった。
前面に出ているハイ ホーネットたちの後ろに控える、巨大なハイ ホーネットに攻撃したアーミーアント メディアは頭をバリバリと食われて即死していたのだ。
この巨大なハイ ホーネットの全長は七メートルを超えており、高レベルな個体で仮にここにアーミーアント種の上位種がいたとしても勝てないほどの化け物なのだ。
アーミーアント メディアたちはコンフューズドの魔法を唱えて、黄色の風がハイ ホーネットたちに襲い掛かるが透明の盾に弾かれる。
巨大なハイ ホーネットはテレポートの魔法を唱えて、アーミーアント メディアの背後に出現し、アーミーアント メディアの頭を食い千切ってそのままバリバリと食べていく。
ハイ ホーネットたちは凄まじい速さで突撃して凶悪な牙で噛みつき攻撃を繰り返し、アーミーアント メディアは身体中を食い千切られて力尽きた。
残ったレッサー アーミーアントの群れは無謀に突撃を繰り返しており、ハイ ホーネットたちに次々と倒されてレッサー アーミーアントの群れは全滅した。
ホーネットたちは解体された死体を爪で掴んで、地下に繋がる坂道へと消えていく。
大量にいる幼虫の餌にするためだ。
すると、地下に繋がる坂道から巨大な魔物が姿を現して、周辺を見渡した後、巨大な魔物の姿は掻き消えたのだった。
空ではホースフライたちとドラゴンフライたちの戦闘が繰り広げられていた。
レッサー ドラゴンフライたちは全て落とされており、数的にはホースフライが優勢だ。
だが、ホーネット種の巣の前に巨大なホーネット種が姿を現した。
「ひぃいいいいいいぃ!? ヤ、ヤバ過ぎるのが出てきたよ!!」
シルルンは『魔物解析』で巨大なホーネット種を視てみると、エンシュント ハイ ホーネットだったのだ。
エンシュントとは、古代から生き抜いてきた最強の上位種が得られる名で、その種で最強の個体なのだ。
エンシュント ハイ ホーネットの全長は十メートルを超えており、その姿は全身が赤一色に染まっている。
「ねぇ、あれがホーネット種の上位種なの? 姿が全然違うじゃない」
リザは訝しげな顔をした。
「ううん、あれは上位種以上の化け物なんだよ。あれが出てきたってことはアーミーアント種は負けたんだよ」
「えっ!?」
仲間たちは面食らったような顔をした。
エンシュント ハイ ホーネットはサイクロンの魔法を唱え、巨大な竜巻が出現して巻き込まれた十匹ほどのホースフライとドラゴンフライが風の刃に切り刻まれて塵となって消えた。
巨大な竜巻は凄まじい吸引力で、周辺にいるホースフライたちとドラゴンフライたちを引き寄せるが、高い飛行能力を所持する両者を吸い込むことはできなかった。
ホースフライたちとドラゴンフライたちは巨大な竜巻から離れて戦いを繰り広げていたが、五匹ほどのホースフライが唐突に巨大な竜巻の中に吸い寄せられて塵になった。
残ったホースフライたちとドラゴンフライたちも次々と巨大な竜巻の中に吸い寄せられて塵となり、ホースフライとドラゴンフライは全滅した。
ホースフライたちとドラゴンフライたちが、巨大な竜巻の範囲外まで退避したにもかかわらず、巨大な竜巻の中に吸い込まれて全滅した理由は、エンシュント ハイ ホーネットが所持する『空間消去』によるものだ。
『空間消去』は任意の空間を消去することが可能で、ホースフライとドラゴンフライは空間を消去されて巨大な竜巻に吸い込まれたのだ。
周辺を見渡していたエンシュント ハイ ホーネットは、テレポートの魔法を唱えて掻き消えた。
「消えた!?」
「い、いなくなりました!!」
「……ね、ねぇ、今がチャンスじゃないのシルルン!!」
仲間たちは嬉しそうな表情を浮かべており、視線がシルルンに集中した。
「じゃあ、一気にここを駆け抜けるよ」
シルルンたちはホーネット種の巨大な巣を警戒しながら移動し、巣の前を通り抜けて東に向かって歩き出した。
だが、シルルンは振り返り、ホーネット種の巨大な巣でなく、その対面にある山岳の頂上を見つめていた。
彼は『魔物探知』で消えたエンシュント ハイ ホーネットの居場所を探っていたからだ。
つまり、山岳の頂上にアーミーアント種の本隊が布陣しており、エンシュント ハイ ホーネットはそこに移動したのだ。
アーミーアント種の本隊には四匹の魔物しかいなかった。
三匹の上位種と巨大なクイーンだ。
三匹の上位種の内、二匹はハイ アーミー アントだが、残りの一匹はハイ アーミー アント メディアだ。
ハイ アーミー アント メディアのステータスは、ハイ ホーネットを大きく上回っているが、ここに現れたのはハイ ホーネットではなく、エンシェント ハイ ホーネットでその強さは桁が違う。
ハイ アーミー アント メディアは巨大な鋏をエンシェント ハイ ホーネットに向けて、凄まじい速さで突撃した。
しかし、エンシェント ハイ ホーネットは左の前脚の爪の一撃で、ハイ アーミー アント メディアの巨大な鋏を叩き折り、右の前脚の一撃を脳天に叩き込んでハイ アーミー アント メディアは一撃で砕け散った。
これを目の当たりにしたハイ アーミー アントたちは、巨大なクイーンを背中に担いでその場から逃げ出した。
ハイ アーミー アントたちは凄まじい速さで移動しているが、エンシェント ハイ ホーネットとの距離は変わらない。
エンシェント ハイ ホーネットは『空間消去』で大きく空間を消去した。
すると、両者の距離が一気に縮まって、エンシェント ハイ ホーネットは右の前脚で薙ぎ払うと、右の前脚が直撃したハイ アーミー アントたちは砕け散って巨大なクイーンは地面に落下した。
巨大なクイーンは体が大きすぎて自力ではまともに動くこともできず、エンシェント ハイ ホーネットに頭からバリバリと食われるだけだった。
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レッサー ホースフライ レベル1 全長約1メートル
HP 80~
MP 60
攻撃力 70
守備力 30
素早さ 120
魔法 無し
能力 溶解液 吸血 疾風 回避
ホースフライ レベル1 全長約2メートル
HP 500~
MP 50
攻撃力 200
守備力 80
素早さ 250
魔法 パラライズ
能力 溶解液 吸血 疾風 回避
レッサー アーミー アント レベル1 全長約1メートル
HP 100~
MP 10
攻撃力 80
守備力 70
素早さ 40
魔法 無し
能力 統率 以心伝心 毒牙 毒針
アーミー アント レベル1 全長約2メートル
HP 300~
MP 50
攻撃力 180
守備力 150
素早さ 90
魔法 無し
能力 統率 以心伝心 毒牙 毒針
レッサー アーミー アント メディア レベル1 全長約3メートル
HP 300~
MP 50
攻撃力 240
守備力 150
素早さ 100
魔法 アース
能力 統率 以心伝心 毒牙 毒針 毒耐性
アーミー アント メディア レベル1 全長約6メートル
HP 900~
MP 300
攻撃力 600
守備力 350
素早さ 250
魔法 アース コンフューズド
能力 統率 以心伝心 毒牙 毒針 毒耐性
ハイ ホーネット レベル1 全長約5メートル
HP 1600~
MP 400
攻撃力 650
守備力 400
素早さ 300
魔法 ウインド シールド ポイズン スロー マジックシールド
能力 統率 以心伝心 毒針 毒霧 毒牙威圧 豪食 強力 猛毒 風のブレス 毒耐性 物理耐性 魔法軽減
ハイ ホーネット レベル47 全長約7メートル
HP 12000~
MP 4500
攻撃力 2800
守備力 2300
素早さ 1800
魔法 ウインドシールド ポイズン スロー マジックシールド サイクロン テレポート
能力 統率 以心伝心 毒針 毒霧 毒牙威圧 豪食 強力 猛毒 風のブレス 毒耐性 物理耐性 魔法軽減 能力軽減
ハイ アーミー アント レベル1 全長約3メートル
HP 700~
MP 100
攻撃力 400
守備力 300
素早さ 150
魔法 無し
能力 統率 以心伝心 毒牙 毒爪 毒霧 毒針
ハイ アーミー アント メディア レベル1 全長約9メートル
HP 1700~
MP 300
攻撃力 900
守備力 600
素早さ 450
魔法 アース コンフューズド
能力 統率 以心伝心 毒牙 毒爪 毒霧 毒針 幻惑 毒耐性 物理耐性
エンシェント ハイ ホーネット レベル36 全長約10メートル
HP 20000~
MP 6000
攻撃力 11000
守備力 4500
素早さ 4000
魔法 ウインド シールド ポイズン スロー マジックシールド サイクロン テレポート
能力 統率 以心伝心 毒針 毒霧 毒牙 威圧 豪食 強力 猛毒 風のブレス 毒耐性 物理耐性 魔法耐性 能力耐性 空間消去




