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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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55 物々交換 修


 シルルンたちはキャンプ村から東の方角に進んで、隣のエリアにあるキャンプ村に向かっていた。


 先頭を進むのはブラたちで、そのすぐ後ろにリジルと三人の男盗賊が追従している。


 彼女らが『危険察知』を所持しているからだ。


「それにしても、すげぇな……」


「あぁ、十人共美人な上にいい体してるぜ」


「リジルの姉御も美人だがこりゃ甲乙つけがたいな」


「うひひ、全くだ」


 男盗賊たちは下品な笑みを浮かべている。


「こらっ!! 聞こえてるわよ!! あっちに聞こえるとまた死にかけるまで殴られるわよ」


 リジルが害虫でも見るような目で男盗賊たちを睨む。


「ううっ……」


 男盗賊たちは顔を見合わせて肩をすくめる。


 中間を進むのはリザ、ラーネ、シルルンとアミラたちだ。


 アミラたちは元娼婦たちとメイを守りながら進んでいた。


 ビビィはタマに乗ってマルとキュウを率いて好き勝手に動き回っており、それを一人の男盗賊が追いかけていた。


「な、なんてこった最悪だぜ……なんで俺がこんな葉っぱのガキを追いかけまわさなきゃならんのだ……あっちが羨ましいぜ」


 視線をブラたちの方に向け男盗賊が忌々しげな顔をしている。


 ビビィは好き勝手に魔物と戦って好き勝手に逃げるので、彼は振り回されて疲れ果てているのだ。


 最後尾はラフィーネ、ヴァルラ、ゼフド、アキだ。


 シルルンたちは三十キロメートルほど進んだが魔物の顔ぶれは変わらず、周辺には冒険者たちも多いのでブラたちだけで難なく魔物を倒して進んでいく。


 さらに十キロメートルほど進んだところで、ブラは遠くに視線を向けて眉を顰めた。


「あれはレッサー アースゴーレム……だけどまだ遠いですね。マスターたちが追いついてからでも十分に間に合いそうです」


 レッサー アースゴーレムは土で形成された人型の魔物で、力は強いがその動きは鈍重だ。


 ブラは足を止めて振り返る。


「マスターたちと離れすぎているのでしばらくここで待機します」


 ブラの言葉に、仲間たちは頷いた。


 しばらくすると、シルルンたちはブラたちに追いつく。


「この辺りは見晴らしが良さそうだから休憩にしようか」


 その言葉に、元娼婦たちは嬉しそうに鞄から紅茶が入った水筒やおかしを取り出して休憩の準備にとりかかる。


「マスター、あれを見てください。魔法生物系の魔物でレッサー アースゴーレムです」


「ふ~ん、そうなんだ。でも下位種だから弱いんでしょ?」


 レッサー アースゴーレムは一歩ずつ地響きを上げて歩いているが、その動きは激しく遅い。


「はい、強くはないと思います。ですがゴーレム系は体のどこかにコアという弱点があり、それを壊さないといつまでも動き続けると聞いたことがあります」


「ふ~ん、そうなんだ……けど胸の真ん中にある赤い玉みたいなのがコアなんじゃないの?」


「えっ!?」


 ブラはレッサー アースゴーレムを凝視する。


 すると、シルルンが言うように体の真ん中に赤い玉があり、丸出しだった。


「あはは、簡単に倒せそうだね」


「は、はい……」


 ブラは恥ずかしそうに顔を赤面させた。


「こんな待遇の良い奴隷があるんだな……」


「……あぁ、それは誰もが思ってるんじゃないか?」


「だよなぁ」


 男盗賊たちは飲み物と食べ物を食べながら、満足げな笑みを浮かべていた。


 彼らはボスだったリジルがシルルンの奴隷になると言い出したとき、もう人らしい生活はできないと覚悟していた。


 だが、リジルの判断は間違っておらず、シルルンは奴隷を仲間として扱っているので男盗賊たちは天に感謝したのだった。


「なぁ、あんたらは見た感じ戦闘系の職業じゃないんだろ? 特殊な何かを持ってるのか?」


 男盗賊たちの一人が、元娼婦たちに声を掛ける。


「ある意味では特殊な職業よ」


「へぇ、やっぱりそうなのか」


 男盗賊は満足そうな表情を浮かべている。


「私たちは元娼婦よ。悪かったわね、特殊な魔法や能力を持ってなくて」


「なっ!? えっ!? ……い、いや、悪かった……あんたらが常に守られているからよほどレアな存在なんだと思っただけなんだよ」


 男盗賊は戸惑うような表情を浮かべているが、男盗賊たちは訝しげな顔をしていた。


 彼らはここには美人が揃っているのに、なぜ娼婦を連れ歩く必要があるんだと思っているからだ。


「あんたたち、ほんとに分かんないの?」


 リジルはやれやれと溜息をついた。


「……」


 男盗賊たちは返す言葉がなく押し黙る。


「それはボスが男の中の男な上に優しいからよ」


「へぇ、解ってるじゃない……」


 元娼婦たちはにっこりと微笑んで、アミラたちも満足げな表情で頷いた。


「女は奴隷に落ちた場合、そのほとんどがあんたたちが考えてることを強要されて、目から光が消え失せて死んだ魚のような目になるのよ。でも、ここにいる女たちを見てみなさいよ。誰一人、そんな目をした女はいないでしょ?」


「うっ……」


 男盗賊たちはバツが悪そうに視線をそらす。


「私たちはルビコの街の外にいた難民だったのよ。それで食うに困って生きるために娼婦になったのよ。そこにシルルン様が颯爽と現れてなんの見返りも求めず、食料を分けてくれた上に襲ってきた狼の群れを軽く蹴散らしてくれたのよ」


 元娼婦たちはうっとりとした表情を浮かべている。


 だが、彼女らの話は激しく美化されていた。


 そもそも、シルルンは颯爽とは現れておらず、元娼婦たちはシルルンが悲鳴を上げてビビリまくっているのは演技だと思い込んでいるのだ。


「そ、そんなことがあったのね……そりゃ、惚れるわ。その時のことをもっと詳しく聞きたいわね」


 リジルとアミラたちも加わって元娼婦たちは語りだし、女たちはシルルンの話で盛り上がるのだった。


 一方、ビビィはミカンを十個食べて、さらにリンゴ五個を食い散らかしていた。


 この時点で置かれている果物はなくなり、彼女はシルルンにもっと果物を食べたいと強請りに行こうと思った時に不意にキュピーン!! と何かを感じ取った。


「何あれ!?」


 ビビィの視線はレッサー アースゴーレムに向いており、ビビィはタマに乗ってマルとキュウを率いて出陣した。


 男盗賊たちは居づらくなって少し離れたところで休憩していた。


「おい、お前はこんなところでゆっくりしてていいのかよ?」


「あ? 今は休憩中だろが。こっちは走りまわされて疲れてるんだよ!!」


「けど、お前の担当が魔物に乗って出陣したぞ」


「えっ!? マジかよ!?」


「ぷっ、大変だなお前……」


 ビビィ担当の男盗賊は、仲間たちを恨めしそうに睨んでビビィを追いかけた。 


 ビビィはゆっくりとレッサー アースゴーレムに近づいた。


 すると、ビビィに気づいたレッサー アースゴーレムが先ほどよりも速く動いて突っ込んでくる。


 だが、それでも動きは鈍重だった。


「むっ!!」


 マルとキュウはレッサー アースゴーレムに突撃して両側面から体当たりを叩き込んだ。


 レッサー アースゴーレムは両腕が崩れて半壊するがまだ動いている。


「しぶとい!! ウォーター!!」


 ビビィはウォーターの魔法を唱え、水の刃がレッサー アースゴーレムの頭に直撃して消し飛んだ。


 それでもレッサー アースゴーレムは動いており、身体は少しずつ再生してビビィに向かって接近している。


 ビビィは後退し、再びマルとキュウがレッサー アースゴーレムに突っ込み、両側面から体当たりを叩き込んだ。


 レッサー アースゴーレムの歩みは止まったが、少しずつ再生している。


「むむっ……」


 ビビィは不可解そうな顔をした。


「なぁ、譲ちゃん。試しに体の真ん中にある赤い玉を狙ってみろよ」


「むっ、あんた誰よ?」


「なっ!? ずっと一緒にいただろっ!! まぁいい……俺はあんたにつくように言われた盗賊だ。これからよろしくな」


 男盗賊はリンゴをビビィに投げ渡した。


 ビビィはリンゴを素早くキャッチし、リンゴにかぶりつく。


「あんた、なかなかいい奴ね」


 ビビィはリンゴを食べ終わると、レッサー アースゴーレムを凝視した。


 すると、彼女は体の真ん中に赤い玉があることに気がついた。


「ウォーター!!」


 ビビィはウォーターの魔法を唱えて、水の刃がコアを破壊し、レッサー アースゴーレムは崩れて土の塊になった。


「むっ、あんた、なかなかやるわね」


 ビビィは意外そうな表情を浮かべており、男盗賊は土の塊を探っている。


「そりゃ、どうも……おっ!? 鉄かと思ったらこりゃ銀だな……運がいい」


 レッサー アースゴーレムはコアを破壊されると鉄の塊を落とすが、稀に銀や金の塊も落とすのだ。


「なにそれなにそれ?」


「これは銀の塊だ。売れば結構な金になる」


「……どうでもいい」


 だが、ビビィははっとしたような顔をした。


 かねという言葉を聞いたことがあったからだ。


 彼女は湖暮らしの上にアホなので、通貨の存在を知らなかった。


「果物と交換できる?」 


「いや、この銀の塊を売って金に換えたら買うことはできる」


 それを聞いたビビィの顔はぱぁ~と明るくなった。


 すぐにビビィはシルルンの元に急行した。


「ん? 戻ってきたようだね」


 シルルンは安堵の微笑を漏らした。


 彼はチラチラと状況を見ていたのだ。


「シルルンこれっ!!」


 ビビィは屈託のない笑みを浮かべて、銀の塊をシルルンに手渡した。


「……これは銀だね。レッサー アースゴーレムが落としたのかい?」


「そうよ。それで果物何個と交換できる?」


 その言葉に、シルルンは面食らったような顔をした。


 ビビィが初めてまともなことを言ったからだ。


「そうだね、この銀の塊は売れば一万円ぐらいだから、この辺りの相場ならリンゴ三十個ぐらいかな」


「むっ、少ないわね……でも交換するわ」


 ビビィは激しく不満そうだ。


 彼女は三十個のことを三個だと認識していた。


 要するにビビィは片手の数しか数えられないのだ。


 シルルンは魔法の袋からリンゴを四十個の果物を渡すと、ビビィは大喜びしてリンゴを食い散らかした。


 休憩を終えたシルルンたちは東に向かって進み始める。


 進めば進むほどレッサー アースゴーレムの数が増えていくが、ビビィが片っ端から倒していき、マルやキュウの背中の上はドロップ品でいっぱいだ。


 そして、シルルンたちは難なくキャンプ村に到着したのだった。

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