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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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53 パパの言葉 修


 シルルンたちはキャンプ村には入らずに北の方角に進んでいた。


 周辺は冒険者たちが魔物の群れと戦いを繰り広げており、シルルンたちは難なく進んでいく。


 シルルンたちが三十キロメートルほど進むと巨大な山が見えてきた。


 その山には巨大な洞穴があいており、多数の冒険者たちが守りを固めていた。


 ブラックから降りたシルルンは、両手を頭の後ろで組んで白々しい口笛を吹きながら洞穴に向かって歩いていく。


「おい!! 見ない顔だな。何しにきた?」


 冒険者たちの一人が訝しげな眼差しをシルルンに向ける。


「僕ちゃんはここに採掘ポイントがあるって聞いたから見にきたんだよ」


「はぁ? お前もここのポイントのガードの仕事をしにきたってことか?」


「ううん、僕ちゃんもこの辺りを掘ろうと思ってるんだよ」


「あほか!! そんなことできると思ってるのか!! この辺り一帯はガドー様が仕切ってるポイントだ」


「えっ!? 掘っちゃダメなの?」


 シルルンは驚いてきょとんとする。


「ダメというかガドー様のポイントに手を出したら殺されるぞ」


「えっ~~~っ!? マジで!?」


 シルルンは驚きのあまりに血相を変える。


「あほだなお前……ここのポイントを守るために俺たちが雇われているんだろが」


「えっ!? そうなの? 魔物から守ってるだけじゃないの?」


「当然、魔物の侵入も俺たちが食い止めてる。だが、ここのポイントに手を出す奴も攻撃対象になってるんだ。まぁ、採掘ポイントっていうのは早い者勝だ。お前が採掘して見つけたポイントはお前のポイントだろ? 違うか?」


「あっ、そうかもしれない」


「もう一箇所、大規模な採掘ポイントがあるのを知ってるか?」


「うん、知ってるよ」


「その大規模ポイントを最初に発見したのは俺たち人族なんだが今は亜人族や獣人族が仕切ってる。要するに力尽くで奪われちまったのさ。だから、俺たちのような者がガードとして雇われるんだ」


「そ、そうなんだ……」


 シルルンはがっくり項垂れた。


 シルルンたちは採掘ポイントを後にして、南にあるキャンプ村に向かって進み始める。


 冒険者たちがあちこちで魔物の群れと戦いっており、シルルンたちはそれを避けながら進んですぐにキャンプ村に到着する。


 シルルンたちはキャンプ村に入り、中央に向かって進んでいくと様々な商店が建ち並ぶ区画に到着した。


「やっぱりここも中央に店が集中しているみたいだね……とりあえず、ご飯を食べようか」


 シルルンたちは店の看板を見ながら進んで飲食店に入った。


 店員に空いたテーブルに案内されたシルルンが席に座るとブラックも席に腰掛けた。


「……ご、ご注文は何に致しますか?」


 店員は視線をブラックに向けて目を見張った。


「とりあえず、焼肉の大盛りを五つとブドウ酒を一本お願い」


「畏まりました」


 店員が下がるとパプルがシルルンのシャツの中から跳び出して、テーブルの上でぴょんぴょん跳ねている。


 それを見たプルとプニもシルルンの肩から跳び下り、テーブルの上で三匹並んでぴょんぴょんと跳ねている。


 三匹共仲良しだ。


 しばらくすると、店員が焼肉大盛り五つとブドウ酒をテーブルに並べて下がった。


「へぇ、何の肉かは分からないけど結構おいしいね」


 シルルンは肉を頬張ってブドウ酒を飲んでおり、パプルは嬉しそうに肉を『捕食』している。


 一方、ブラック、プル、プニは『触手』でナイフを掴んで肉を切って『捕食』している。


「オラ、飯だ!!」


 テーブル席に一人で足を投げ出して座っている冒険者風の男が食べ残しを地面に捨てた。


 すると、地面に座っている男三人と女二人は、地面に落ちた食べ残しを我先にと奪い合っている。


 この店のテーブル席に座っている客はシルルンを除いて七組いるが、その全ての席に地面に座っている奴隷がいた。


「おう、兄ちゃん何見てんだ!?」


 足を投げ出して座っている冒険者風の男は射抜くような鋭い眼光をシルルンに向けた。


「ううん、別に見てないよ」


 シルルンはさっと視線を戻した。


「ぎゃはははっ!! 嘘つけ見てただろうが!! 奴隷が珍しいのか?」


「ううん、僕ちゃんにも奴隷がいるから珍しくはないけど、せめてご飯ぐらいはテーブルで食べさせてあげてもいいじゃないかなぁと思っただけだよ」


「ああん? 言うじゃねぇか!! この中層の物価は高くて飯ひとつ食わすにしても馬鹿になんねぇんだよ!!」


「論点が違うよ。僕ちゃんはご飯ぐらいはテーブルで食べさせてあげてもいいんじゃないっていってるんだよ。ご飯代が高いとかは関係ない」


「あああん? ますます言うじゃねぇか!! これは躾だ躾!! こうでもしないとこいつら奴隷は言うこともろくに聞きやしねぇからなぁ」


 男は忌々しげな表情を浮かべている。


 彼が言うように反抗的な態度の奴隷が多いのも事実で、その理由は奴隷証書つきの奴隷ではないからだ。


「まぁ、そうなのかもしれないけど僕ちゃんなら、ご飯ぐらいはちゃんとテーブルで食べさせてあげるけどね」


「なら、腹を減らした俺の奴隷にお前の金で飯を食わせてみろよ!!」


「それは別に構わないけど、ちゃんとテーブルの上で食べさせてあげてよね。そうじゃなきゃ、僕ちゃんお金は払わないよ」


「いいぜぇ、その条件を呑んでやるよ」


 男は人を馬鹿にしたような薄笑いを浮かべる。


「じゃあ、焼肉大盛りを五つでいいよね?」


 シルルンは店員を呼んで焼肉大盛りを五つ注文した。


「おい待てよ!! 俺たちの奴隷にも食わせろよ!! 条件は呑むからよ」


 話を聞いていた残り六組のマスターたちも話に割り込んできた。


「ぎゃはははっ!? おいおいどうすんだよ? 全部で四十人はいるぞ?」


 男は嘲うようにニヤニヤする。


「別に構わないよ」


 シルルンはフフ~ンと胸を張る。


「ほう……分かってんのか? 奴隷の数は四十一人だ。軽く百万を超えるんだぞ?」


 男は眉を顰めた。


「じゃあ、焼肉大盛りを四十一人分でいいんだよね」


 シルルンは再び店員を呼び出して、焼肉大盛りを四十一人分を注文した。


「なっ!? こいつ……」


 男は大きく目を見張り、マスターたちも信じられないといったような表情を浮かべている。


 やがて、料理は各テーブルに運び込まれて奴隷たちはテーブル席に座って、焼肉大盛りを凄まじい勢いで平らげた。


 それを見届けたシルルンは合計百三十八万五千円を店員に支払って店を後にした。


「待ってくれ!!」


 絡んできた男の奴隷五人がシルルンを追ってきた。


「あはは、お礼なんかはいいよ」


 シルルンはにっこりと微笑んだ。


 しかし、奴隷たちはいきなり抜刀してシルルンに襲い掛かってきた。


「俺たちにはあんたの金が必要なんだよ!!」


「肉は美味かった!! だが、それはそれだ!!」


「ひぃいいいぃ!? なんなんだこの村は!?」


 シルルンは魔法の袋から素早くミスリルソードを取り出し、奴隷たちの攻撃をことごとく避けるか、あるいはミスリルソードで弾き返した。


「なっ!? 馬鹿なっ……」


 奴隷たちは驚きのあまり血相を変える。


 シルルンたちは一瞬でその場から逃走し、キャンプ村から出て東の方角に疾走した。


「ふぅ、散々な目にあったよ……」 


 シルルンは自嘲気味に肩をすくめる。


「ぬう……恩を仇で返す輩を生かしておいてよいのですか!?」


 ブラックは憤怒の形相を浮かべている。


「あはは、僕ちゃんのパパが昔僕ちゃんに言ったんだよ。奴隷に生半可な気持ちで接するな。ひどい目に遭うぞってね」


「ぬううう……」


「あはは、まさにその通りになったよね」


 シルルンたちは魔物の群れと戦う冒険者たちを避けながら進んでいくと冒険者たちがいなくなり、前方からレッサー アントの群れがシルルンたちに目がけて突っ込んでくる。


「エクスプロージョンデス!!」


「エクスプロージョンデシ!!」


「アース!!」


 プルたちが唱えた魔法がレッサー アントの群れに直撃し、レッサー アントの群れは壊滅状態に陥った。


 シルルンは薄い青色のミスリルの弓で狙いを定めて風の刃を放ち、生き残ったレッサー アントたちに止めをさしてレッサー アントの群れは一瞬で全滅した。


 プルとブラックはレッサー アントの死体を次々と『捕食』していき、シルルンたちは遭遇する魔物を全て殲滅しながら疾走するのだった。


















 大連合を組んだ五十人ほどの集団がキャンプ村を目指して西の方角に進んでいた。


「ちぃ!! 前から百匹ほど突っ込んでくるぜぇ!!」


「ぐっ、休む暇もねぇなぁ!!」


「やべぇぜおいっ!! 左からも百匹ぐらいが突っ込んできてる!!」


「マ、マジかよ!?」


 冒険者たちは驚き戸惑っている。


 しかし、稲妻のような速さで何者かが魔物の群れを駆け抜けると同時に、凄まじい魔法の爆発音が辺りに響き渡り、左から突っ込んできていた魔物の群れが一瞬で壊滅した。


「おいおい、マジかよ!?」


「いったい、何が起こったんだ!?」


 冒険者たちの顔が驚愕に染まる。


 その場所には少年が一人立っているだけだった。


「た、単独なのかっ!?」


「マ、マジかよ!? 俺たちは大連合を組んでんだぞ!?」


 冒険者たちは呆けたような顔を晒していた。


 魔物の死体が次々に消えていき、三匹の魔物が少年の元に集まって少年は魔物の頭を撫でている。


「ま、魔物使いなのか……」


「だが、それにしても強すぎる……何者なんだ?」


 しかし、立っていた少年の姿がブレた瞬間、少年の姿は消えた。


 だが、前方から突撃してくる百匹ほどの魔物の群れのほうから、凄まじい爆発音が辺りに響き渡り、またもや魔物の群れは一瞬で壊滅していた。


「つ、強ぇ!?」


「魔物使いはあんなに強かったか!?」


「しかし、正直助かったぜ。マジでやばかったからなぁ」


 冒険者たちの顔には安堵の色が滲んでいた。


 冒険者たちは礼を言おうと少年に向かって歩き出したが、すでにその場所に少年の姿はなく、代わりに彼らの遥か後方から爆発音が響き渡っていた。


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