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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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52/310

52 衛兵 修


 中層に辿り着いたシルルンたちは魔物を倒しながら北の方角に進んでいくとキャンプ村に到着した。


 キャンプ村の外周は石の外壁で囲まれて地上のキャンプ村とは比較にならないほど堅牢な作りだ。


 ワーゼたちとはキャンプ村に着いた時点で別れた。


 彼らは採掘ポイントに向かうために仲間を探す必要があると言って去って行ったのだった。


 キャンプ村の門の前には多数の門番が守りを固めているが門は開放されており、外壁の周りには多数の冒険者たちが巡回していた。


 シルルンたちはキャンプ村の中に入ると、ブラたちが通りすがりの冒険者たちに話し掛けた。


 ブラたちは何やら話し込んでおり、しばらくするとブラたちは戻ってきた。


「店は中央に集中しているようで宿屋もあるそうですが、冒険者たちのほとんどが四隅に設けられたスペースで野営しているそうです」


 ブラがシルルンの前で跪いて報告した。


「じゃあ、とりあえず今日は一番近い南東か南西のキャンプ場で野営しようか」


「はっ」


 シルルンたちは南東のキャンプ場に移動した。


 そこには無数のテントが並んでおり、冒険者たちがテントの前で食事をしながら談笑していて騒がしい。


 シルルンたちはテントを横切って、奥へ奥へと進んでいくと開けた場所に出た。


 シルルンは魔法の袋から魔車を取り出して地面に置いて三台並べた。


「じゃあ、今日はゆっくり休んでね」


 シルルンたちは魔車に入って眠りについたのだった。 


 夜が明けて朝食をとった仲間たちは、シルルンの指示で情報収集に出かけた。


「むふぅ……頑張ってねぇ」


 ヴァルラが酒を飲みながら手をひらひらさせており、空になったシルルンのコップにメイがブドウ酒を注いでいる。


 残っているのはヴァルラ、メイ、元娼婦たちだ。


 シルルンたちが一時間ほど魔車の中で酒を飲んでいると、シルルンが立ち上がってフラフラな足取りで魔車の最後尾にあるトイレに歩いていく。


 だが、誰かが入っており、シルルンは魔車から出て隣の魔車のトイレに移動して用を足した。


 シルルンは魔車から出ると、声が聞こえて声の方向に顔を向けた。


 すると、五人の男が魔車を必死の形相で押していた。


「もっと力を入れろ!! ほとんど動いてないぞ!!」


「全力で押してるぞ!! この魔車がおかしいんだよ!!」


 シルルンはフラフラした足取りで男たちの傍に歩いていく。


「ねぇ? 何やってるの?」


 シルルンは怪訝な表情を浮かべている。


「ちっ!? ガキかよ、ビビらせやがって!!」


「失せろ!! ブチのめすぞ!!」


 男たちは怒りの形相で声を張り上げた。


 シルルンは怪訝な面持ちを深めた。


 彼は酒に酔っており、魔車が邪魔なのかと考えた。


「アース!!」


 ブラックは唐突にアースの魔法を唱えて、無数の岩や石が男たちに直撃した。


「ぎゃああああああああああぁぁ!!」


 男たちは吹っ飛んで地面に転がった。


「キュアデシ!!」


 プニはキュアの魔法を唱えて、酒という毒がシルルンから消え去った。


「ひぃいいいいいい!? 何やってんの!? ……あれ?」


 シルルンは驚きのあまりに血相を変えたが、はっとしたような顔をした。


「こいつら泥棒じゃん!!」


 シルルンは顔を顰めた。


「ぐぅうう……」


 男たちの一人が苦痛に顔を歪めて立ち上がる。


 プルは『浮遊』で浮かび上がり、ふわふわと飛んでゆっくりと男に近づいていく。


「ビリビリデス!!」


 プルは『ビリビリ』を放ち、稲妻が男に直撃した。


「がぁああああぁ!!」


 男は痺れて地面に突っ伏した。


 プルは空中でゆっくりと方向転換して、シルルンの肩に戻った。


 彼が『ビリビリ』を選択したのは、シルルンに人族は殺すなと言われているからだ。


 シルルンはプルの頭を撫でる。


 プルは嬉しそうだ。


 シルルンは魔法の袋からロープを取り出して男たちを縛り、人が乗っていない二台の魔車を魔法に袋に入れた。


「衛兵は中央にいるのかな?」


 ブラックに乗ったシルルンはロープを引っ張り、男たちを引きずりながら中央に向かって移動する。


 シルルンたちは冒険者たちとすれ違うが、冒険者たちはシルルンたちを一瞥するだけだった。


「ふ~ん、ここでは珍しいことではないみたいだね」


 シルルンは意外そうな顔をした。


 シルルンたちは中央に移動して、シルルンは建ち並ぶ店に視線を向けながら進んでいく。


 だが、いくら探しても衛兵は見つからなかった。 


「もしかして衛兵はいないってことなのかなぁ……」


(お店の人に聞いてみてもいいけど買いたいものが見つからない……)


 シルルンは考え込むような顔をした。


 彼は衛兵を探しながら店に並ぶ商品などを見ていたが、トーナの街で一つ百円のリンゴがここでは安くても三百円で、魔物の素材の買い取り価格はトーナの街の半値だった。


「う~ん、物価がこんなに高いのは、ここまでの輸送コストなんだろうね……」


 シルルンは複雑そうな表情を浮かべていたが、急にめんどくさくなって消費の激しいリンゴを購入しようと食料品店に移動した。


「リンゴを百個もらえるかな」


「毎度あり!!」


 シルルンは銀貨三十枚を手渡して、リンゴ百個を魔法の袋にしまった。

 

「ちょっと聞きたいんだけど、このキャンプ村には衛兵さんはいないの?」


「いませんよ」


「えっ!? なんで?」


 シルルンは面食らったような顔をした。


「この鉱山で発見されている大規模ポイントは二箇所だけで、国が発見したポイントじゃないからですよ」


「でもここは村でしょ?」


「そうですが、国が作った村ではないんですよ。つまり、勝手に作った村だということです。ですから国は大規模ポイントに監査官だけを派遣して税金を納めさせているんですよ」


「そ、そうなんだ……じゃあ、衛兵さんがいないなら悪人を捕まえたらどうするの?」


「それは当人同士の話し合いになりますねぇ」


 店員は訝しげな眼差しをロープで縛られた男たちに向けた。


 彼は少年が奴隷を引きずって遊んでいるのだと思っていたのだ。


 この中層のキャンプ村では珍しくもない光景だからだ。


 物価が高く素材の売値も安いこのキャンプ村では、仲間を戦闘や病気で失うと途端に稼げなくなり、少数で生き抜くのは難しく借金奴隷に落ちる者が後を絶たない。


 そもそも、衛兵がいないということは法が成立しない場所であり、強者がルールという無法地帯で、地上に比べてここで暮らす奴隷たちは軽んじられてその状況は悲惨だった。


 ちなみに、このキャンプ村での奴隷の割合は六割を超えており、この店員も奴隷だ。


「そ、そうなんだ……その二箇所のポイントはここから遠いの?」


「一箇所は近いですね。このキャンプ村から北に三十キロメートルほどのところにありますね。もう一箇所はこの村から西に百キロメートルほど進むと、ここと同じようなキャンプ村があり、そのキャンプ村から北に三十キロメートルほどのところにありますよ」


「どうもありがとう」


 シルルンは軽く頭を下げた。


「とりあえず、キャンプ場に戻ろうかな……」


 シルルンたちは男たちを引きずりながら店が建ち並ぶ区画を抜けて、人通りが少なくなったところで唐突に女に道を遮られた。


「ねぇ? そいつら何かしたのかい?」


 女は探るような眼差しをシルルンに向けた。


「えっ!? うん、僕ちゃんの魔車を盗もうとしたから捕まえたんだよ」


「ふ~ん……そうなんだ……そいつらをどうするつもり?」


 女は妖しげな顔で上着の胸元をはだけさせて、シルルンたちに向かってゆっくりと歩いてきた。


「えっ!? なんでそんなこと聞くの?」


 シルルンは怪訝な表情を浮かべた。


「そいつらが私の仲間だからさ!!」


 言うと同時に女は剣を抜いてシルルンに目掛けて突撃した。


「ひぃいいっ!? この村はいったいどうなってんだよ!?」


 シルルンは驚きのあまりに血相を変える。


 一気に距離をつめた女は剣で横一線に斬りつけたが、シルルンは魔法の袋からミスリルソードを素早く取り出して難なく剣を受け止めた。


「そ、そんな馬鹿な……!?」


 女は信じられないといったような表情を浮かべている。


「アース!!」


 ブラックはアースの魔法を唱えて、無数の岩や石が女に襲い掛かる。


「きゃああああぁぁ!!」


 無数の岩や石が女に直撃して、女は派手に地面に転がった。


「ひぃいいぃ!? し、死んだんじゃないの?」


 シルルンは倒れている女の傍に寄って状態を確認した。


 すると、女は血塗れで足がおかしな方向に曲がっていた。


「とりあえず、息はあるから大丈夫そうだね」


 シルルンは女もロープで縛り、シルルンたちはキャンプ場に移動した。


 キャンプ場に到着したシルルンは難しそうな表情を浮かべていた。


 泥棒たちの処遇を決めかねていたからだ。


 シルルンは急にめんどくさくなって魔法の袋から魔車を一台取り出して地面に置いて、その中に泥棒たちを閉じ込めたのだった。



















 シルルンたちはキャンプ村から北に向かって疾走していた。


 周辺では魔物の群れと冒険者たちが戦いを繰り広げており、シルルンたちはほとんど戦うことなく進んでいくと巨大な山が見えてきた。


 シルルンたちは巨大な山に近づいていくと巨大な洞穴があり、その洞穴の前で白オークたちと熊の獣人が二匹の魔物と戦っていた。


 白オークたちは鉄製の重装備に身を包んでおり、大盾でアリゲーターの突撃を受け止めた。


 アリゲーターは後方に下がろうとするが、白オークたちは一斉に斧を振り下ろし、アリゲーターはぐちゃぐちゃに切り刻まれて血飛沫を上げて絶命した。


 一方、熊の獣人はスネークと戦っていた。


 スネークの全長は八メートルを超える巨体だ。


 スネイクは大口をあけて熊の獣人に襲い掛かるが、熊の獣人が鋼の爪を振るうとスネークの頭と胴体が分断されて頭は地面に転がり、スネイクは胴体から血を噴出させて即死した。


 熊の獣人は無造作にスネイクの頭を蹴り飛ばし、スネイクの胴体を片手で掴んで食い散らかしている。


「ひぃいいいいぃ!? これじゃあ、どっちが魔物か分からないよ……」


 シルルンは声と表情を強張らせる。


「とりあえず、戦いは終わったから洞穴の中に入ってみようかな……」  


 シルルンたちは巨大な洞穴に向かって移動する。


「待て!! 人族のガキがここに何の用だ!!」


 熊の獣人は訝しげな表情を浮かべている。


「ひぃいいぃ!? 僕ちゃんはここに採掘のポイントがあると聞いて見に来たんだよ」


「この採掘ポイントは亜人族、獣人族が仕切ってる。人族は失せろ!!」


 熊の獣人は怒りの形相で声を張り上げた。


「ひぃいいいいいいぃ!?」


 シルルンたちは逃走したのだった。

















 シルルンたちは村に戻ってから西に向かって疾走していた。


 だが、西に三十キロメートルほど進んだ辺りから冒険者たちの数が減り、その代わりに魔物の数が極端に増えた。


 そのため、シルルンたちは思うように進めなくなった。


「う~ん、魔物の数が多すぎるね」


 シルルンは薄い青色のミスリルの弓で風の刃を撃ちまくり、魔物を皆殺しにしながら進んでいく。


「……たぶん、こんなに魔物の数が多いのは上層から下りてきてるんだろうね」


「主君、南からラット種が百匹ほど西からアント種、ホーネット種が合わせて二百匹ほど、北からセンチピード種、スコーピオン種が合わせて五百匹ほどがこちらに向かってきておりますぞ」


「うん、知ってるよ」


 シルルンはしたり顔で言った。


 彼は『魔物探知』で頻繁に辺りを探っており、魔物の位置は把握していた。


「主君、ではどれを皆殺しに致しますかな?」


「とりあえず、囲まれる前に西を全滅させるよ」 


「はっ!!」


 シルルンたちは西に疾走し、魔物の群れに攻撃を仕掛けた。


 プルたちは魔法を連発し、シルルンは風の刃を撃ちまくり、二百匹ほどの魔物の群れを瞬殺した。


 シルルンたちは出くわす魔物の群れを皆殺しにしながら突き進んでキャンプ村に到着したのだった。


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